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鉄火の魔女王  作者: 8D
アルカ国革命編
30/46

プロローグ 牢の男

 ティラーを倒した後、アルカ国と戦った時の話。

 緩やかに、アルカ国へ対するゲリラ戦を展開する予定です。

 アルカ国王城。

 その地下にある牢獄に、一人の男がいた。


 その男の前に、別の男が現れる。

 長身痩躯の中年男性だ。

 ほっそりとした顔つきには、どこか陰険な雰囲気があった。

 その男はアルカ国の大臣に任じられた男だった。


「グラント・マニエ」


 大臣が名を呼ぶと、牢の中の男は顔を上げて格子の外を見た。

 その顔は髭が伸び放題になっており、捕らえられる前の風貌は見る影もない。


「何の用です? 私の処刑でも決まりましたか?」

「そのような事はしない」


 大臣の答えに、グラントは目を細める。


「お前にはもう一度、軍人として戦場へ出てもらう。ただし、前のように部隊を任される事はないと思え」

「ふふふ」


 グラントは笑う。

 大臣は怪訝な顔をする。


「何がおかしい?」

「私を利用しなければならない程、魔女は手強かったという事ですか。あてがはずれましたね」


 忌々しげに、大臣はグラントを睨んだ。


「口に気をつけろ! 貴様の命など、今からでも容易く潰せるのだぞ!」

「だったら、この国が魔女に滅ぼされますね」

「くっ」


 大臣は悔しげに呻いた。


 彼の言葉は真実だった。

 アルカ国の命運は今や、彼が握っていると言っても過言ではないのだ。


 事の起こりは三ヶ月前。

 ビルリィ教の教皇、ティラー・リスリングが魔女によって倒された事が始まりである。

 同時にビルリィの王都支部が魔女に襲撃され、壊滅した。

 その際に、主要な幹部達も大半が殺害されている。

 これからビルリィが弱体化する事は目に見えていた。

 その隙を衝いて、国王はビルリィの弾圧を始めた。

 アルカ国王は、かねてより自分よりも強い権力を持つビルリィを目障りに思っていたのだ。

 国軍を使い、魔女と協定を結んでビルリィを叩いた。


 しかし、国王としてはそのまま魔女を生かし続けるつもりもなかった。

 あくまでもビルリィの力を削ぐために、一時の共同戦線を張ったに過ぎない。

 ビルリィの力をある程度弱らせれば、その後に魔女達も潰してしまう予定だった。

 そして、その考えを実行した。

 だが、そこで予定外が起こる。

 魔女達はあまりにも強かったのだ。

 国軍は、魔女達の使う武器によって多くの損害を出す事になった。


 その現状を打破するための鍵を牢内の男は握っていた。

 そして、彼自身その状況を把握しているようだった。


「いいですとも。出していただけるのなら、人質にでも旗印にでもなりますよ。ただ、部隊をいただけなくとも、直属の部下を一人ぐらいなら返してくださるのですよね?」

「ふん、あの忠犬か。いいだろう。あやつは貴様以外、誰の言う事も聞かん。それどころか、貴様を逃そうと画策し、今は別の獄で繋がれておる。念入りに、鎖を巻きつけられてな」

「目に浮かぶようだ」


 グラントは笑う。


「たいした忠誠心だな。それとも、恋慕故か?」

「ただの幼馴染ってだけですよ」

「まぁいい。せいぜい、アルカのためにその身を捧げるが良い」

「わかりました。何かのために人生を捧げる事は、慣れている方ですからね」

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