小話 魔女育成計画
短いです。
「ふぅん……」
カオルコは広場にて訓練中の魔女達を眺め、難しい顔で溜息をついた。
「どうした?」
そんな彼女にクローフが声をかける。
カオルコは振り返ってクローフを一瞥する。
「最近、魔女達が伸び悩んでる」
「銃を使い出してそれほど日が経っていない。それに、元々戦いも知らない人間ばかりだ。仕方ないだろう」
「その言い訳で、相手が手加減してくれればいいがな」
カオルコの言葉に、クローフは肩を竦めた。
不意に、彼女はクローフの顔を見上げた。
「なぁ、あれをやってみようと思うんだがどう思う?」
「あれ?」
クローフは怪訝な顔をする。
「海兵隊式訓練だ」
口汚い罵倒によって人格を徹底的に否定し、毎日へとへとになるまで訓練をさせて心身を追い込み、それが終わると屈強な兵士ができあがるという有名な訓練方法である。
「やめておけ。下手な事をして、精神的な疾患にかかる可能性だってある。うちは無尽蔵に徴兵できるわけじゃないんだ。数は大事だ。減らすような事はするべきじゃないだろう」
「質だって大事だろ。だったら、試しに志願者だけでやらせてみればいい」
カオルコの提案にクローフは思案する。
カオルコの意見ももっともだ。
御世辞にも今の魔女達は質がいいと言えないのだから。
「……途中で止める自由も許可してやれ」
やがて、クローフはそう答えた。
クローフの賛同を得て、海兵隊式訓練は実施される事となった。
その数日後、結果として質の良い兵士の育成に成功した。
「うん。悪くないな。何人か脱落者が出たが、ついてこれた奴は軒並み能力が向上した」
カオルコは満足そうに言った。
「そうだな」
対してクローフは歯切れ悪く答えた。
そして、視線を休憩している魔女達へ向ける。
「あの可愛らしい唇から、あんな! あんなっ! 口汚い言葉が私に向けられるのよ。何だかたまらないわ! はぁはぁ」
「明らかに年下の女の子に罵倒される。私が全否定される。悔しい……っ! でも、ドキドキする。はぁはぁ」
「この前なんか、胸ぐらを掴まれて耳元で罵倒されたのよ。屈辱だわ! はぁはぁ」
「私なんか、みんなの目の前で罵倒されてすごく恥ずかしかったんだから! はぁはぁ」
談笑に耽る魔女達を見るクローフの目はどこか憂鬱そうだった。
「訓練の成果は良好だが……。変態が増産されたな」
「?」
その呟きに、カオルコは首を傾げるだけだった。
当作品はもともとは出版社へ応募した物だったので、話自体がざっくりとし過ぎています。
なので、ここは足りないな、と思ったり、意見などがあったりすればこういった小話として話を追加するかもしれません。




