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はじめまして妖精さん

一話を書いてから世界観とか全体的な展開考えていたらこんなに遅くなるよそりゃ。

気が付いたらそこは森だった。

さすがに二回目にもなると完全に目が覚めるのも早く余裕が出てきた、ひとまず体を見回してみる。


いつの間にか体が献体そのもの…いやそれ以上の肉体になっていた。身の丈は多分3mを軽く超し、胴回りから指まで太く強靭になっていた。どこかで見たような肉体だが……そうだ。トラックの中で見たポスター、『デスマスク』そのものだった。もしやと思い顔を弄るとやはり分厚く硬いゴムに包まれていた。

……いや、これは顔そのものだ。後頭部は普通の長髪だったがこの頭の前の部分しかないマスクみたいな顔は瞼と口の周りの一部以外は全く動かない仮面みたいなものだった。

まさかピンク色じゃないだろうな……。弄れば弄るほど体に対する不安は募る、しかし幸いと言ってもいいのかわからないが記憶が無いせいであまりショックを受けることがなかった。


服装はこの筋肉のせいで気が付かなかったがズボンと丈夫な靴だ。眠る前はキチンと着ていた筈だが肉体改造の折に破けたか? だったらズボンが残っていただけでも良かった。


周りを見回すと巨大な木が至る所に立っており一瞬自分が妖精にでもなってしまったのかと思ったが、よくよく見てみたら足元に生えている草の大きさは普通だった、つまり辺りにあるのはただの巨木なだけらしい。

そんなことに気が付いた直後に木箱を見つけた、さっそく中身を見てみると中は手紙、地図、その他は後でよく見るとしてまずはその二つを手に取る。

手紙の中身にはこう書かれていた。


『この手紙を見ているということは無事たどり着いたみたいだね。

 まず、この世界で君にしてほしいことを今一度文章にして書いておくね。目的としては魂が欲しいんだ、悪魔だからね。そのためには生き物を殺さなければならない、勿論善人でも悪人でも善悪つかない動物だとしても魂なら何でもいい。しかし魂にも良い悪いがあってね、できるだけ善人の方がいい、かわいそうだけど目的のためなんだ、よろしく頼むよ。

 次にこの世界についてだ、この世界は魔法が主流でね君の価値観が違うことがあるかもしれない。君にもわかりやすいイメージとしては剣と魔法のファンタジーだと思ってもらっていいだろう。勿論君だって魔法を使えるしその他にも色々あるからそこのところは後にしておくよ。地図を見ればわかると思うけど近くに国があるからそこを拠点にするように、情報とか集めなければならないだろうしね。

 最後に君と武器と道先案内人についてだ。体の方は気に入ってくれたかな? 私の力を込めたから強化されている筈だ、身体能力は相当なもので怪我をしてもすぐ直るからね。だからといって粗末にせず大切にしてほしいものだ。因みに魂の回収によって少しずつだがより強くなれるから張り切ってくれよ。武器は主に二つ、鉈と拳銃だ。どちらも特別性だからとても役立つだろう、しかし拳銃の方は魔法を使うからそこのところはそっちに任せた。また、いずれ時が来れば他にも武器を送るから楽しみにしてくれ。それと武器などを収めるためにベルトがあるだろう? 変幻自在だから武器を収めるのに使うといい。最後に道先案内人の話だがそのことについては彼本人から話を聞いてくれ大きさ的に邪魔にはならないし可愛いものだろう。

 長々と書いてきたが無事魂が集まることを祈り、君の活躍を期待しているよ

                                        Byスケェアリィ』


長い長い手紙を読み終える頃には道先案内人とやらが目覚めたのだろう、木箱がひとりでに開いて中から何者かが顔を出してきた。


「ふあぁぁ……うーん、うん?……化け物!!」


失礼な。


「あ? あー……、そのマスク。もしやあんたがあの悪魔の? 」


「まぁそうだが、そういうあんたは『道先案内人』とやらか? ずいぶん小さいんだな」


目の前に現れた道先案内人と思わしき人物は、目元が隠れるほどの長い髪型と薄い緑色の髪色をした子供みたいな恰好をしていた。服装は薄いシャツと半ズボンで少年みたいな恰好をしており身の丈も見た目相応の十才位の大きさだった、それだけならまだ普通だと言い張れた。


だが彼の体を浮かせるには少しばかり心足りない薄い羽が、非現実性を強める。彼はいじらしい笑みを浮かべ口を開いた。


「いかにも、僕はスケェアリィから君のこと頼まれた妖精さ。妖精を見るのは初めてかい? ひっひっひ」


「ああ、初めてだ。だがもう悪魔にでも会ってしまったから驚くこともないぞ」


「それは残念……僕ばかりが驚かされるなんて不公平だー! 」


彼は小さい体を捩って抗議の意を示すが、服の摘まれて宙ぶらりんの状態になってしまった。


「それでお前の名前は? 無ければフェアリーちゃんと呼んでやろうか? 」


「やめろ! 僕にはヒアという立派な名前があるんだぞ! そういうお前は何て名前だ言ってみろ! 」


「俺の名前か? デスマスクだ、立派だろう? 」


そう言ってから不意打ちで手を放してやった。ヒアは急に落とされたもんで無様な音を立てて地面にキスしたようで恨みのこもった視線を投げかけてくる。


……ヒアか、どうにもそのいたずらっ子の様な雰囲気には似合わないがまあいいか。


「で? この後はどうするの? まず町に行かなきゃ話にならないじゃん」


「勿論町には行くよ、だがその前に獲物と身体能力を確かめなきゃなぁ」


「あっそう、それなら丁度いい団体さんだよ。相手してやったら? 」


ヒアはそう言って目線で向こうを示す、示した先にはイノシシの額にもう一本牙を増やしたかのような獣が複数体、此方を覗うようににじり寄っていた。


「悪魔からの力とやら、試してみるか」


全身に力を籠める、体の底から力があふれる。今にも爆発しそうな体をそのまま持たせながら獣の軍団に向かって飛び出そうとして。


「──がっ!! 」


斜め前に飛び出し木に激突してしまった、一瞬目の前が暗くなり目を開けるときに見たのは、大きく空いた穴からぽっきりと折れてしまった大樹とそれに怯えて逃げ出す獣の群れの後ろ姿だった。


「何やっているの? どうせ突っ込むならあいつらに突っ込んでよ」


こいつめ……言いたい放題言いよって、暫くは練習しなければ。




──────

────

──



大体は慣れてきた、これでなんかの拍子に上に向かって飛んでいくことは無いだろう。

落ち着いたところで他の荷物について調べておく、確か拳銃と鉈とベルトだったはず……。


箱の中から手紙と地図の下に隠れていた物を持ち出す、ベルトは太くちょっとやそっとでは千切れなさそうな代物だった、所々に何かを留めておくような紐やポケットが在るということはベルトに武器を付ければいいのだろうか? 後で考えることにしよう。

拳銃は見た目が古く西部劇で見るような形をしていた。しかし残弾を確かめようとしてシリンダーを動かそうとしてもビクともしない、……確か手紙では魔法を使うと言っていたな、魔法とやらが使えるようになれば使えるのだろう。

最後は鉈だ、しかし想像していた物とは割と違っていた。刃が分厚い所は鉈であるのだが先が丸くこの形ではマチェットと言うのではないだろうか。と言った代物であった。

確認を終えてベルトを胴体にX状に掛け、拳銃はベルトのわき腹辺りに取り付けマチェットは腰にぶら下げておいた。


「とりあえずは森を抜けるか、おいっ……ヒア、道はわかるか? 」


「わからないよ? 」


そいつはまるで当然だと言った風に答えた、その言葉を聞いたとたんに膝の力が抜けて軽く体勢が崩れてしまった。


「何でわからないんだ、貴様は道先案内人だろうが」


「だって眠る前は木の上だったんだよ? それが起きたら逆さづり。正直言って分らないと言うしか無いよ、……魔法を使わなきゃね」


彼はにやりと笑うと一言つぶやいた。


      「スキャン」


その瞬間、水滴が水面に落ちた様な波紋が広がる音が聞こえた。


「見えた、こっちの方向に建物と大勢の人がいる。暗くなる前に早く行こうよ」


「それが魔法なのか」


「便利でしょ? いろいろ判るんだ、もうすぐ戦闘が始まることもね」


ヒアの不穏なセリフを聞きながら俺たちは目的の場所に向かって走っていった。

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