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『檻と少女』
白い世界と黒い檻。
ここはそんな異世界だった。
彼は、檻だった。
檻の中には囚人が一人いた。
囚人はただの少女だった。
囚人は一糸纏わぬ姿で檻を掴む。
囚人の少女は檻の隙間を覗く。
囚人は脱獄する気もなく、外界を眺望する。
隙間からはどんな光景が見えているのだろう。
囚人の瞳は恐らく、絶望を写しているのだろう。
隙間からはどんな絶望が見えているのだろう。
ただ、
ただ、
ただ、
彼は『彼女』を隔離していた。
彼は『彼女』を遮蔽していた。
彼は『彼女』を保護していた。
何からだろうか。
恐らく、そう、世界の全てから。
「ご主人様が、私を監禁していたのですね」
湖畔に反射する月の輝き。
その白い光が降り注ぐ夜。
彼は、名も無き『彼女』と出会う。
それは、暖かく、どこか懐かしく。
まるで、『彼女』とずっと昔に逢っていたようで……。