第6話 「SとM」
忙しい&勢いで書いてるので投稿が遅くなる……
「うぅ~高野くんにキズ物にされちゃったょ……」
赤くなった頬を抑えながら幼女が呟いたが---その顔が恍惚としている様に見えたのは気のせいだろうか。
「お餅の刑では反省できないようですね……でしたらやはりあの刑しか---」
「ひっ、ごめんなさい!ごめんなさい!あの刑だけはどうかっ!!」
(神様がこんなに怯えるあの刑って一体なんなんだろう……そして高野さんは何者なんだ?)
あの後、『もう少し神様らしい言動をしましょうね』と言う笑顔の高野さんにほっぺたをグニグニと弄り回された(ほっぺたがお餅の様に伸びていたのであれがお餅の刑だったのだろう)幼女と共に僕と高野さんはようやく部屋の中に入ることができた。
神様のいる部屋だからさぞかしすごい部屋なのだろうと思いながら入室したが、部屋の中は意外にも質素なものであった。
部屋の奥には仕事机、部屋の中央部にはテーブルを挟むようにソファーが設置され、壁側にはいくつかの本棚があるのみで特にこれといった装飾品等もない。
「神様が贅沢をするといろいろケチをつけてくる輩が多いんですよ……」
僕が意外そうに部屋を見渡していたのを察してくれたのか高野さんが小声で教えてくれた。
(神様なんだから少しくらい贅沢をしても罰は当たらないと思うけどなぁ……というより神様が罰を当てるのか……)
あの世でも上に立つ者の足を引っ張ろうとする奴がいるのは変わらないようだ。
「う~、まぁ立ち話もなんじゃソファーにでも座れ」
「……はい」
未だに頬を抑えている幼女の指示に従い僕はソファーに座る。
僕の体重に合わせて程よく沈み込む柔らかさ、かつ沈み込み過ぎない硬さ---見た目はシンプルなただのソファーであるが流石に神様の部屋にあるだけのことはあると思わず感心してしまう程そのソファーの座り心地は素晴らしかった。
高野さんも僕と対面する様にテーブルの反対側のソファーに座る。
そして問題の幼女は---何故か膝上に座った。
「えーっと……」
今まで生きてきて幼女が自分の膝上に座ることなどなかったため反応に困っていると−−−
「はぁ……申し訳ありませんがどうか少しの間だけ我慢して下さい」
まるで慣れたことのように呆れた顔の高野さんにお願いされてしまう。
そんな高野さんなどお構いなしに---
「なかなか良い座り心地じゃなっ!」
その幼女は僕の膝上を堪能しているようだった。
「それでは、遅くなりましたが須藤さんご紹介いたします。といっても須藤さんは察しがよろしいようですのでもうお分かりかと思いますが、こちらの方は神様で天界の代表になります」
「うむ、私が神だ」
「はぁ……初めまして、須藤広将です。神様にお会いできて光栄です」
神様と言われても正直どうすればいいのか全くわからないため、僕は自分の名前と社交辞令的な返答しかできなかった。
「ほう、まだ若いのになかなか礼儀を知ったやつじゃな。気に入ったぞ広将」
「ありがとうございます……」
(見た目的には僕の方が歳上なんだけどなぁ……)
「では紹介も済んだ所で早速ですが「え~!!せっかく久しぶりに人と会えたんだからもう少しお話くらいさせてもらってもいいじゃないか。高野くんはせっかちじゃな~」
あっ……高野さんの顔が若干引き攣って……
幼女、いけない。ここは素直に高野さんに従う時だ。
しかし僕のそんな思いとは裏腹にその幼女は地雷を踏み抜いた。
「……しかし須藤さんは何も分かっていない状態ですので早く今後の事をしっかりと「はぁ~そんなにせっかちだから高野くんは年齢の割に老けて見えるんじゃぞ?」
幼女がそう口にした瞬間、いつの間に移動したのかテーブルの反対側にいた高野さんは僕と幼女の直ぐ側に立っていた。そして無言で幼女の襟首を掴み部屋の外へ引きずっていこうとする。
「………………」
「うわああああああああああああんんゴメンナサイ!ゴメンナサイイイィィィ」
そして---二人は僕達が入ってきたドアの向こうに---消えた。
二人が出て行く瞬間、高野さんの手に鞭と蝋燭の様な物が握られていたのは気のせいだと思う。
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残された僕はどうしていいかも分からないのでひとまず二人が戻るまでソファーに座っていた所、時間にして10分程だろうか二人は戻ってきた。
「須藤さん、お待たせしてしまって申し訳ありませんでした」
「ぐすっ……」
高野さんは笑顔であった。普通であれば多くの男性がその笑顔の虜となるのだろう。ただし高野さんの隣に涙目の幼女が存在することでその笑顔は畏怖の念を抱かせるものと化していた。
高野さんは再び先程と同じ場所のソファーに座る。そして涙を目に貯めた幼女は僕の方にトテトテと歩いてきてこれまた僕の膝上によじ登って来た。
(あっ、それでも僕の膝上に座るんだ……)
「うんしょ、うんしょ」
涙目の幼女が必死に僕の膝上に座ろうと僕の体をよじ登ってくる。その光景はとても可愛らしいものであった。この場に第三者が居たらその光景に頬が緩んでしまうかもしれない。
そうしてやっと僕の膝上に座ることができた幼女であったが、僕の膝上に座ると言うことは自然と僕の対面に座る高野さんと正面から向き合うことになる。
「うぅ~」
先程高野さんと部屋の外で行われた何かが原因であろうか、高野さんを正面に見据えた幼女の体は僕の膝上で怯えた様に震えていた。
なんだか震える神様---幼女を見ていたら無償に頭を撫でたくなってしまったので、僕は幼女の頭に手を伸ばしその髪に触れた。
幼女の髪の触り心地はまるでシルクの様で永遠に撫でていられる気がした。
しばらく撫でているといつの間にか幼女の震えは治まっており、気持ちよさそうに目を細めていた。
「うーん、お主なかなかのナデナデスキルじゃな……どうじゃ?私の専属ナデリストにならぬか?お主ならばそれなりの待遇を持って迎えるが」
「……」
(そもそもナデリストってなんだ?この幼女をひたすら撫でていれば良いのだろうか)
一瞬それはそれで有りな気がしてしまったが---
パチンッ!!
高野さんの方から聞こえた空気を裂く音にその思考は刈り取られてしまった。
「ひっ……」
そしてまた僕の膝上に座る少女の体が震えだしてしまった。
その音は明らかに紐状の何かを発生源とするものと考えられるが、何故だろうか高野さんにその正体を尋ねてはいけない気がした。
「はぁ///はぁ///」
そして震える幼女の瞳の奥に期待の光が浮かんでいる様に見えるのも気のせいだろう。きっとそうだ。