第5話 「見た目は幼女、頭脳はアダルト」
「はぁ……あまり来たくはないのですが……」
高野さんは溜息と共にそう言葉を漏らしたかと思うと意を決したようにドアをノックする。
そして扉の向こう側から発せられた返事に僕は思わず心のなかで突っ込んでしまった。
「はいってまーす」
(……トイレ?……それに声がなんというか……幼女?)
その言葉を聞いた高野さんは再び溜息をつくとドアノブに手を掛けようやく僕に口を開いてくれた。
「はぁ……須藤さん、私に続いてこの部屋に入ってください。それと……須藤さんの宗教観は存じておりませんがくれぐれも……くれぐれもッ!!……ショックを受けない様どうかお願い致します」
「わ、分かりました……」
あまりにも念を入れてくる高野さんに僕は思わずたじろんでしまう。
そして高野さんは手に掛けていたドアノブを回し扉を開いた。
その瞬間ドアの向こうから影が飛び出してきて---
「た・か・の・く~ん♥」
その影は高野さんに抱きついた。
高野さんに抱きついたその影の正体は---可愛らしい幼女だった。
見た目的には10歳そこらという印象を受ける。
ピンクや緑を基調とした巫女服に近い明るい服装、そして服とは対照的に、まるでその奥に宇宙空間が広がるかの様な奥行きのある美しく長い黒髪が絶妙なバランスを保っている。
そしてなにより、その幼女は『神々しい』という形容以外の言葉が見つからない雰囲気を醸し出していた。
この子が町中でも歩けば警察に捕まるような事をする紳士---いや、馬鹿が出てきてもおかしくないだろう。
そして僕はその幼女を見た瞬間、まだ紹介すらされていないにも関わらず本能的に理解した。
(ああ……この可愛らしい幼女が神様なんだ)
確かに見る人が見ればショックを受けるのも分かる気がした。
(でも見た目は幼女でも明らかにただの幼女ではないし、むしろこんな神様なら泣いて拝む人が出てくる可能性もある……?高野さんがあんなに念を押すほどの事でもないような気が---)
そう思いつつ幼女の抱きつき攻撃を受けている高野さんを見るが、彼女は困惑した笑みを浮かべているものの至って冷静であった。
そしてドアを開けてすぐに抱きつかれたため未だ部屋の中に入れていない僕らの現状を変えようと口を開くが---
「……中にはいりますよ」
「えっ……私の……?……高野くんなら……いいよ?(赤らむ頬)」
高野さんがショックを受けない様に言ってくれた本当の意味が分かった気がした。