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誰でも勇者になれる世界  作者: ゆゆゆゆゆ
第3章 勇者に友達ができる話
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第27話 「入学式」

文章書くのって難しい……

 カナンと一緒に入学式の会場へ戻った時のアルフレッド、セリーヌ、アレッディオさん、エミーさんの様子は言うならば四者四様であった。


 アルフレッドは「落としたか……流石は俺の子だ……」と感慨深そうにウンウン頷いて。

 セリーヌは「あらあらまあまあ」と口に手を当てて笑顔を浮かべ。

 アレッディオさんは「手を繋いでいただけだし……いや、それでも早すぎるか……いやいや……」と何やら自問自答し。

 エミーさんはカナンと小声で何か話をした後「良かったわね。頑張りなさい。この機会を逃しちゃダメよ」等とカナンに声を掛けていた。


 ちなみにカナンが上級生達に絡まれて(?)いた事は話していない。

 何故だか分からないが自問自答していたアレッディオさんの耳に入れたらイケない気がしたためである。


『只今より第89回サンオー学院入学式を開式いたします。新入生及び保護者の方々は席にご着席ください』


 タイミングよく式典開始のアナウンスが聞こえてきたのは非常に助かった。


「おお、もうそんな時間か。それじゃあみんな行こうか」


 アルフレッドの言葉に従い、僕達6人は席へ向かう。

 ちなみに席順は特に決まっていないようで会場の前部分に生徒用の椅子が、後部に保護者席が設けてあった。

 僕としては適当に後ろの方の席にでも座ろうかと考えていた---が。


「ああ、そうそうヒロちゃんはあそこに座っていてね」

「えっ?」


 そうセリーヌに示された席は最前列の一番端の席だった。


「おお!!今年はヒロマサくんだったのか。いやー大したものだ」

「ええ、本当に素晴らしいですわ」


 その瞬間、嬉しそうに声をかけてくれるアレッディオさんとエミーさん。

 どんどん嫌な予感が募ってくる。


「あの……なんのことでしょうか?」

「何ってヒロマサ……セリーヌ、お前ヒロマサに伝えてなかったのか?」

「あら、そうだったかしら。たしかお話していたと思ったのだけれど」


 そう言いながら笑みを浮かべるセリーヌの姿は確信犯のそれであった。

 その天真爛漫というかいたずらっ子の様なセリーヌの笑顔の前では大抵の事がどうでもよくなりどうであるが、残念ながら今の僕には通用しない。


「それで、一体どういう……ん?どうしたのカナンちゃん」


 セリーヌに問い詰めようとしたら不意に洋服を引っ張られ、引っ張られた方を向けばまるでアイドルでも見るように目をキラキラさせたカナンちゃんの姿があった。


「す、すごいよ……ヒ、ヒロマサくん……」


 ああそう言えば初めて名前で読んでくれたなあ、などと思いつつ続けて発せられたカナンちゃんの言葉で入学式を適当にやり過ごそうと思っていた僕の思惑は初めから木っ端微塵に砕かれていた事、セリーヌのあの笑顔の意味を知ることになった。


「首席入学者だよ」




§§§




『---続きましては学園長挨拶になります』


「はぁ」


 結局、それから状況を変えられる訳もなく。

 現在、僕は最前列で絶賛入学式中である。 

 思えば心当たりはあった。

 簡単な入学手続きだからと碌な説明もされぬまま、サンオー学園に連れて行かれ適性検査と言われ他の子供達と受けたペーパーテスト。

 当然学術的な問題を就学前の子供が解けるはずもないので、問題内容は僕の前世で言うIQテストに近いものであった。セトナの世界に来てからあまり刺激のある生活を送っていなかったことも有り、ついつい夢中で問題を解き進めてしまった。

 自分で言うのもなんだが僕の地頭はそこまで悪くはない。前世でも通っていた学校は一応ある程度有名な進学校であったし、成績もどちらかと言えば良い方であった。

 本来ならば子供向けに作られた問題をそんな僕が受ければ悪い成績を出すほうが逆に難しいだろう。

 サンオー学園からの入学通知が来た時、アルフレッドとセリーヌの喜ぶ様子が少し大げさな印象を受けたが、今ならその意味が分かる。


「何で入学通知の時に教えてくれなかったんですか?」

「土壇場で言ったほうが面白いと思ったの。ごめんなさい」


 テヘッと悪びれる様子もなくそう告げたセリーヌに僕は何も言えなかった。


「えー、ワシがサンオー学園、学園長のルードファル・ヒース・ファンジアじゃ。気軽にルード学園長と呼んでおくれ。まずお主達に言っておきたい。入学おめでとう」


 思い返している間に学園長の挨拶が始まったようだ。

 ルード学園長と名乗ったその初老の男性はとても長くて白い顎鬚が特徴的だった。

 自己紹介してから優しそうな笑みを浮かべつつ新入生たちを見回してはウンウンと頷いている。

 途中、僕の方を見て少々動きが止まった様子に見えたのが気になったが、今の僕・・・には些細なものであった。


「これからお主達は5年間このサンオー学園で共に学ぶ『仲間』となる。そしてこの学園でかけがえの無い多くの経験をすることになるじゃろう。平民であろうが貴族であろうが関係はない。この学園ではどのような者であっても生徒として尊重される。『学びたい者に機会を』それが本学園の理念でもある」


 そもそも貴族という存在があるこの世界においてとても高尚な理念だと思った。

 それが本当に実現さ・・・・・・れていれば・・・・・の話であるが。


「じゃがひとつだけ覚悟をしておいて欲しい。その経験の中には楽しい事、嬉しい事だけではなく辛い事、悲しい事も沢山あるじゃろう。しかしながら、お主たちならばきっと乗り越えることができるとワシは信じておる。ひとりで乗り越えることが難しいのであれば周りを見てみるがよい。『仲間』が沢山おるであろう。勉学に励むだけでなく共に苦難を乗り越えることのできる『友』を見つける場としてもサンオー学園は最適な場所じゃ。もちろん必要とあればワシ自身も手助けをする。そしてこれはサンオー学園で働く者一同共通の思いじゃ。新入生諸君、是非このサンオー学園で大いに学び友との絆を深めて欲しい。以上じゃ」


 ものすごく良い事を言っているとは思うが、5歳そこらの子どもたちにはピンときていないようだった。


「『友』、かぁ……」


 今更|この歳(20歳オーバー)になって新たな友達を作ろうとも思わないし欲しいとも思わなかった。

 幸いなことに僕には大抵のことであればひとりで乗り越えることができるだけの力もある。

 せいぜい親戚であるカナンちゃんを気にかけるくらいで良いだろう。


『学園長ありがとうございました。それでは引き続きまして表彰・・へ移らせていただきます』


「面倒くさいなぁ……」


 ポツリと零した僕の本音はすぐに会場の沈黙に溶けていった。

 そう、首席入学者が最前列に座る理由など壇上に上がるしかない。

 サンオー学園では毎年、首席入学者については入学式で表彰され、賞状と記念品が贈呈されるらしい。

 賞状はどうでもよいけど記念品は気になるところである。


「それでは、今年度の主席入学者、『ヒロマサ』くん。壇上へ上がって下さい」


「……はい」


 静まり返った会場に今度は僕の声が響き渡っていった。




ヒロマサくんは一体何を貰うことが出来るのか。

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