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誰でも勇者になれる世界  作者: ゆゆゆゆゆ
第3章 勇者に友達ができる話
23/27

第23話 「親の心子知らず」

「おおー……」


 サンオー学園の正門前に停車した馬車から降りた僕は深くにも間抜けな声をあげてしまった。


「ははっ、どうだヒロマサ、サンオー学園は大きいだろう」


(大きいというか---ちょっと大きすぎない?)


 ちょうど正門の前に立っている僕は左右を見るが、サンオー学園の敷地を囲っているであろうレンガ状の壁は延々と伸びており終りが見えない。

 そして正門の向こう側に見える大きな建物---恐らく校舎だと思うが一体正門から校舎まで何メートルあるのだろうか……

 僕の想像していた学園とは規模からして異なるものであった。


「まだ式の時間まで時間はあるが早めに向かうとしようか」


 アルフレッドにそう言われ周りを見回すと、チラホラと入学式に来たであろう親子が目に入った。

 僕達と同じように馬車で来ている親子、徒歩で来ている親子もいる。

 馬車で来ている親子は恐らく僕と同じ貴族、歩いて来ている親子は平民だろう。

 ちなみに学園では貴族と平民でクラスが分けられたりだとか、勉強内容が異なるといったことは一切ない。貴族、平民に関係なく教育を受ける機会が与えられる。

 これはサンオー学園だけでなくセトナにある全ての学園でも同様らしい。

 『教育を受ける権利は貴族、平民に関わらず与えられるべきである』という教育理念かららしいが理想と現実(・・・・・)の食い違い(・・・・・)がないことを祈るばかりである。

 ちなみにサンオー学園はサンコスタの町のはずれに位置しており、町の中心部から歩いて向かう場合は20分程かかる。サンコスタの町内からならば十分歩いて来ることも可能だ。


「そうですね。さあ行きましょうかヒロちゃん」

「分かりました」

「では、私はこちらで馬車を見ておりますので。行ってらっしゃいませ」


 そしてマリーさんに見送られ僕達はサンオー学園の門を潜った。



§§§§§§§§§§§§§§§§



「やはり少し早く着きすぎたかな?」

「そのようですね」


 どうやら入学式は校舎とは別に建てられた講堂のような場所で行われるらしく、今僕達はまさにその講堂の中にいる。

 講堂内には大量の椅子が綺麗に並べられているが、半数以上は未だ空席である。

 入学式の開始時刻までまだ1時間以上もあるのだから当然であろうか。


「あいつはまだ来ていないのかな?」 

「どうでしょうね」


 そう言いながら誰かを探すように講堂内を見渡すアルフレッドとセリーヌ。

 そんな2人につられて探し人が誰かも分からないのに僕も周囲を見渡してしまう。

 しかし、探し人を見つけたであろうアルフレッドが手を挙げてその探し人の名を呼んだためアルフレッドとセリーヌが誰を探していたのかはすぐに分かった。


「アレッディオ!エミー!」


 どうやら探し人はアレッディオさんとエミーさんだったようだ。

 2人も僕達を見つけたようでこちらに歩いてきた。


「兄さん、随分早く来ていたんですね」

「久しぶりだなアレッディオ、エミーも元気そうで」

「ありがとうございます。アルフレッド様とセリーヌ様もお元気そうでなによりですわ」

「ふふ、ありがとうエミー」


 アレッディオさんとエミーさんと最後に話したのはもう4年前---2人の娘であるカナンが喋ったお祝いの席であったが2人の容姿は4年の年月を感じさせないものだった。

 それにしてもすぐ隣の島にいる叔父、叔母と4年間も顔を会わせないというのは僕の感覚からすればあまり考えられないものである。

 アルフレッドとセリーヌについても、たまに2人とは会っていたようだがそれは公務上の付き合いが殆だった。

 こちらの世界では親戚同士の付き合いというのは希薄なのだろうかと考えたこともあったが、4人の雰囲気からしてそれも違う気がする。

 個人的にはアルフレッドとアレッディオさんがお互い島主という立場であることが関係していると思う。

 この4年間アルフレッドとセリーヌを見ていて感じていたことであるが、島主とその妻はとにかく忙しいのだ。具体的に何をしているかは分からないが頻繁に外へ出かけたり、部屋に篭って書類と睨めっこをしている姿を見ていて一体2人はいつ休んでいるだろうと思った。

 そしてそんな中でも出来る限り僕と接する時間を作り、今日も僕の入学式なんかのために2人揃って予定を切り詰めてくれていることに僕は罪悪感を抱いていた。

 これはアレッディオさんとエミーさんについても同様に当てはまるんだろう。

 そうなれば4年間顔を会わせられなかったとしても納得はできる。


(あの2人がここにいるってことは---やっぱりカナンって娘もここに入学するのかな?でも姿が見えないな)


 笑顔で歓談している4人を見つめつつそう疑問に思っていると---


「ほら、ヒロちゃん。ご挨拶は?」


 セリーヌに促されはっと僕は挨拶をする。


「お久しぶりでございますアレッディオ様、エミー様。ヒロマサです」


 そう言い2人に向けてお辞儀をする。


「おお、ヒロマサくん。ずいぶん大きくなったじゃないか」

「本当、それに立派なご挨拶だわ」

「ありがとうございます」


 僕は御礼を返しつつ頭を挙げる。

 自然と2人と見つめ会う形となる。


「……」

「……」


 2人とも僕の顔をじっと見たまま何も言わない。


「あの……どうかなさいましたか?」


 僕は思わずそう訪ねてしまった。


「5歳でこれとは……将来が楽しみだね……」

「ええ……」


 アレッディオさんとエミーさんもよく分からないことを呟いているのでアルフレッドとセリーヌの方を見ると何故か2人はドヤ顔を決めていた。






「そう言えばアレッディオ、カナンちゃんはどうしたんだ?」


 僕の疑問を知っているかのようなアルフレッドの質問だった。


「ああ、カナンはさっき学園内を見たいと言って講堂の外へ出て行ってしまったよ」

「そうか久しぶりに顔を見たかったんだがな。それにしてもあれからカナンちゃんも随分可愛くなったんじゃないか?」

「あぁ……」

「どうしたアレッディオ?」

「いや、確かにカナンは可愛くなったんだけど……」

「それがどうしたんだ?」

「……可愛くなりすぎて変な虫が寄ってこないか心配なんだ……」

「……お前の気持ちは痛い程よく分かるぞっ……」

「兄さんっ……」


 アルフレッドとアレッディオは何やら言葉を交わした後にぐっと肩を抱き合っている。

 しかし、僕はそんな2人をよそに先ほどアレッディオさんの言葉を聞いた瞬間から疼きだした僕の中の好奇心に従いセリーヌに許可を求める。


「母様、僕も学園の敷地内を見て回ってきてもいいでしょうか?」


 校門から講堂まで歩いてくる途中に、遠目ながらいくつも気になる場所があった。

 寝っ転がったら気持ちよさそうな芝生(木陰付)、噴水広場、柵で仕切られた牧場のような場所---急がずともこれからいくらでも訪れる機会は有るであろうが早くこの目で見てみたかった。 


「あら、ヒロちゃんも外へ行きたいの?……でも1人でお外へ行くのは危ないわ……」


 これから5年間通うことになる学園内にどんな危険があるというのだろうか。


「学園の敷地内からでなければ大丈夫だろうセリーヌ」

「そうねぇ……」

「ヒロマサ、式の時間の前には帰ってくるんだぞ?」


 アルフレッドの出してくれた助け舟によりセリーヌはしぶしぶ許可を出してくれそうである。


「分かりました。行ってきなさい。ヒロちゃん、転んだりしないように気をつけるのよ?それとあまり講堂からは離れた所にもいかないでね?あと知らない人に声をかけられても付いて行ってはダメよ?ああ、それから---「そ、それでは行って参ります」」


 式の時間まで続きそうなセリーヌの忠告を遮り僕は慌てて講堂の外へ向かうのだった。

次回、ヒロインとの出会いとチートの片鱗

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