第18話 「ギフト」
何故か執筆途中のものを掲載していましたので修正いたしました……
お目汚し申し訳ございませんでした……
「どうやら見えているようじゃのう」
「はい、右上に電源ボタンのようなものが見えます」
「電源ボタン?」
「ふむ、お主の場合にはそうなるじゃろうな」
首をかしげている高野さんと、幼女の反応---これは僕にしか見えていないのだろうか。
「そのマークに触れてみるのじゃ」
「は、はい」
そう言われ僕は恐る恐るそのマークに手を伸ばし---触れた。
「うわっ!?」
その瞬間、僕の前にウィンドウが表示され僕は思わず声を上げてしまう。
出てきたウィンドウは半透明なもので、その先には高野さんと幼女の姿が透けて見えた。
(これって何て言うんだったっけ……えーと……あっ拡張現実だったかな)
実際には何のデバイスも使用せずに見えているので仕組みは全く異なるものなのだろうが、僕の知識の中で一番しっくりくる答えであった。
そして気になるそのウィンドウの表示内容であるが---
(どう見てもゲームのメニュー画面……だよね……)
ウィンドウの左部分には《道具》《魔法》《スキル》《ヘルプ》という項目が並んでおり、右部分には僕のステータスらしきものが表示されているのだが---
ヒロマサ=ルイン=ファーマ(1歳・♂)
Lv:100
状態異常:なし
加護精霊:なし
称号:【神を撫でし者】
色々と神様に問いただしたくなるステータスだった。
(Lv:100?加護精霊?称号についてはもうなんだこれ……)
「どうじゃ?」
何から聞けばよいのか分からず途方に暮れている僕に幼女から声が掛かる。
「えーと、なんだかゲームのメニュー画面みたいなものが出てきたんですけど……」
「うむ、成功じゃな。それが『おまけ』じゃ。名前は『パネル』という」
「パネル?」
「うむ。流石にいきなり異世界で勇者をやれと言われても困ると思ってのう、ちょっとした補助システムのようなものを用意させてもらった。お主の前世では勇者といえばゲームのイメージが強いであろう?」
「……まあ……そうですね」
確かに前世で僕が遊んだゲームには勇者を主人公とするRPGが多くあった。
「そこでパネルの出番というわけじゃ。このパネルを使えばゲーム感覚で道具の管理やら魔法やらを扱うことができるじゃろう」
「なるほど……」
確かにこのパネルとやらがあると途端に世界がゲームのように見えてくる……気がした……
「それじゃあさっき神様が僕にしたのは」
「ああ、お主がパネルを認識できるようにちょっと頭の中に細工をさせてもらったのじゃ」
「……」
さらりと怖いことをいう幼女だ。
「これが巷で言うところの『ゲーム脳』というやつじゃな」
(違う……)
面倒なので指摘はしないが、どうやらこの幼女は『ゲーム脳』について盛大な勘違いをしているようだ。
「ちなみにこのパネルはなかなか奥が深いものでのう。現在は初期設定のままの表示になっているが、お主のイメージ次第でいくらでもカスタマイズが可能じゃ」
「どういうことですか?」
「う~む、例えば初期設定ではパネルの公開範囲はお主のみに設定されているからパネルを他人が見ることはできん。じゃが、これを他人に公開したりすることも可能じゃ」
(なんだかSNSみたいだな……)
「まあ、細かいことは使っている内にわかってくるじゃろうし、ヘルプもつけてあるから参考にするとよい」
(そういえばパネルに《ヘルプ》って項目があったな。後で見てみよう)
「あの……神様、もしかしてヒロマサさんに『ギフト』を?」
「うむ、ヒロマサにはギフトを授けた」
「やはりそうでしたか……」
神様の説明を聞いていた高野さんが聞きなれないワードを挙げる。
「……あの、ギフトって何ですか?」
「ああ、すいません。ギフトと言うのは神様が特別に授ける能力のことです。このギフトを持っている人はギフテッドと呼ばれています」
「へえ、そうなんですか」
「ふふん、ヒロマサ、お主は運が良いぞ。通常ギフトは私が気に入った者にしか授けんからな」
ということは僕は神様に気に入られていたということか。ありがたいことだ。
「確かセトナには他にもギフテッドがおったはずじゃがな。まあ運が良ければそのうち会えるじゃろう」
どうやら僕の他にもギフトを授かった人がいるらしい。どんな能力を持っているのか気になるところである。
しかし今は更に気になることがひとつある。
先ほど僕がギフテッドと判明してからの高野さんの表情が明らかに不安に満ちたものになっているのだ。
ギフテッドには何か問題があるのかと思い僕は高野さんに尋ねる。
「あの、ギフテッドだと何かまずいこととかってあるんでしょうか?」
「……いえ、ギフト自体には何も問題はないですし、むしろ素晴らしいものなんですが……」
どうも歯切れが悪い。
「素晴らしすぎる---ということじゃな」
高野さんの代弁をするかのように幼女が口を開く。
「素晴らしすぎる?」
「はい……大抵のギフトはその内容に関わらず人智を超えた能力なんです。そんなすごい能力を持つギフテッドを周囲の持たざる人達はどう思うでしょうか」
「……」
何となく高野さんの言いたいことが分かった。
「ギフテッドを神と崇める者、利用しようとする者、迫害する者、嫉妬する者---このような者達が現れることは避けられないでしょう。実際、私も何人かのギフテッドの方を知っていますがみなさん苦労をされているようでした……」
これは何もギフテッドだけの話だけではない。
前世で散々僕は経験してきた。
勉強、運動、お金、何でもよい。人より恵まれた何かを持つ人が必ずしも周囲から歓迎されるわけではないのだ。
「高野くんの言うことはもっともじゃがヒロマサの場合はそんなに心配する必要もないじゃろう。幸いお主のパネルは設定を弄らない限り他人が見ることは出来ないのじゃから、自分から言いふらさない限り周囲にお主がギフテッドとバレることもあるまい」
「あっ、確かにそうですね。ヒロマサさん、あまりパネルのことは他人に言わないことをお勧めします」
「……分かりました。ありがとうございます」
(まあ僕のギフトってメニュー画面が出せるだけでそこまですごいものでもないだろうし、最悪バレても大丈夫だよね……?)