第14話 「予感」
プロットってなんですか……?
それからは大変だった。
僕は再びセリーヌに抱き上げられるとアルフレッド、セリーヌと共に舞台を降り、招待した人達への挨拶回りをしているのだが、何しろ人数が人数である。
---「可愛らしい子ね」
---「なんて賢い子だ」
---「将来が楽しみな子ね」
どの人も僕を見てこのような言葉をかけてくれた。けれども、どうも僕はそれらの言葉を素直に受け止めることが出来なかった。
何でだろうか---どの褒め言葉も今の僕には皮肉にしか聞こえなかった。
(……ふぅ……何で何もしていないのに疲れるんだろうな……)
初めのうちはまだ良かったが、何度もテンプレート的な言葉をかけられるのにいい加減嫌気が差し始めていた時---
「兄さん」
「おお、アレッディオ、よく来てくれた」
アルフレッドによく似た雰囲気を持つ金髪の男性が声をかけてきた。
どうやらアルフレッドの弟のようだ。ということは僕の叔父にあたるのかな?
「この子が兄さんの言う『天使ちゃん』かい?」
僕を見ながら笑顔でアルフレッドに尋ねる。
「ああ!どうだ!可愛いだろう?」
完全にだらしない顔になっている島主がそこにはいた。
「あらあら、本当に可愛らしい子ですこと」
その言葉はアレッディオさんの後ろからスッと現れた女性のものであった。
綺麗な銀髪の長い髪を持つ『美人』というより『可愛らしい』という言葉が似合う女性だった。
「ありがとう、エミー」
セリーヌからお礼を言われた女性は笑顔を浮かべながら僕を見つめている。
どうやらこの女性の名前はエミーというらしい。
アレッディオさんと一緒に招かれていたようだし、雰囲気的に2人は夫婦なんだろう。
「ほら、こっちが私の弟のアレッディオでこっちがアレッディオの妻のエミー、お前の叔父さんと叔母さんだぞー」
どうやら僕の予想は当たっていたようだ。
(正直、他の人達の名前と顔は碌に覚えていないけど、流石に叔父さんと叔母さんくらいは覚えておかないとな……)
「ありぇっでぇお、えみぃ~」
僕は覚える意味も兼ねて2人の名前を発する。
「……すごいな、一度聞いただけで本当に私と妻の名前を理解してくれているのかい?」
「……ええ……先ほどの舞台上での立ち振舞といい、とても利発な子ですわ」
(そりゃあ中身は高校生だもんなぁ……)
何だろうすごいズルをしている気分になった。
見た目は子供、頭脳は大人なあの子もこんな心境だったんだろうか……
「恥ずかしながら兄さんの子とほぼ同い年のうちの娘はまだしゃべれなくて……」
「なーに、安心しろアレッディオ。たまたまうちの子は天才で喋るのが早すぎただけだ。お前のその娘もすぐに喋るようになるさ。なぁセリーヌ?」
「そうよ、そのうちお嬢さんが喋れるようになったら是非うちの子と仲良くして欲しいわ」
「ああ、ありがとう兄さん、セリーヌさん」
普通に聞けばただの嫌味にしか聞こえないのにアルフレッドが言うと不思議とそうは聞こえないのは何故だろう……
(それにしてもアレッディオさんとエミーさんには娘がいるのか……そうなるとその娘さんは僕の従姉妹?この2人の娘さんならすごい美人になるんだろうなぁ……)
そんな事を考えていると僕の意識の外からの信号で口が大きく開く。
「くぁ~」
「あらあらこの子ったらあくびしちゃって、そろそろお眠かしらね。あなた、私はこの子を寝かしつけてきますね」
「そうだな、そろそろ主役にはベッドの上にお戻りいただこうか」
いつの間にかどれくらい時間が経っていたのだろうか。
どうやらずいぶん遅い時間になっているようで1歳児の僕の身体は睡眠を欲しているみたいだ。
(目がしょぼしょぼする……)
「では私達は一度失礼いたしますね」」
僕を抱えたセリーヌはアレッディオさんとエミーさんに挨拶をして会場の出口へ向かって歩き始める。
(あぁ……ようやくこの苦行も終わりか。よかったよかった……安心したら更に眠気が……)
眠気でシャットダウン寸前の僕の頭であったが、去り際に聞こえたアルフレッド、アレッディオさん、エミーさんの会話によりそのシャットダウンは一時的に中断させられることになった。
「そういえば、あの子のお名前の件はどのようになっているのですか?」
「その件については明日サンオー寺院へ行く予定になっている」
「まぁ、神様のいる島のサンオー寺院で名前を頂けるなんて素敵ですわ」
「本当、兄さんの子が羨ましいよ」
「はっはっは、俺としてはあの子が神様に気に入られ過ぎて連れて行かれないか心配なくらいさ」
「まぁアルフレッド様ったら心配症ですわね」
「ははっ、兄さん、神様よりも僕がこのまま連れて行ってしまいたいぐらいだよ」
「…………今なんて言ったアレッディオ?」
「じょ、冗談だよ。ご、ごめんよ兄さん……」
(神様のいる島って……まさかね……)
もう少ししたら時間を飛ばす予定です。