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091 η星

「アンニフィルドだけど、『η』って、どう言うか知ってる?エータって言うのよ。人によってはイータって言うけど、地球のギリシアって地域の文字らしいわ。わたしにはどうだっていいんだけど・・・。けどね、超新星って銀河団レベルでみると、毎年、どっかてボッカーーーンて、爆発してんのよね。それ一つで銀河と同じくらいの光を放つのよぉ。エルフィアの近くでそんなのが出てきて欲しくないわね。一瞬で丸焦げどころか蒸発だわぁ。地球だって、そうだってぇ?」

■η星■




ユティスが目の前で消えたため、和人はパニックになりかけていた。


「和人!」

「二宮先輩・・・」

「どうしたんだ?」

「消えちゃった・・・」

「消えた?」

「ユティスが消えたんです・・・」

「どういうことだ?」

「偶然繋がっていた高次元ハイパー通信が、時空かなにかの影響で、接続できない状況になったんです」


「接続が切れたら、ずっとそのままになるのか?」

「わかりません。待つしかありません。そして、ユティスの方も・・・」

「超遠距離恋愛は辛いな・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「超遠距離恋愛だなんて・・・」

しかし、和人の落胆振りは大きかった。


「おまえなぁ・・・」

「先輩・・・」


(はたから見てたら、立派な恋人同士にしか見えんちゅうに!)


「先輩・・・、オレ、なにもしてあげれないんです。ユティスに・・・」


ぷるぷる。

和人の声が震えていた。

「・・・」


さすがの二宮も、どう声をかければよいのやら迷った。


(なにを格好つけてんだ、和人のヤツ・・・。当事者だけがわかんないか・・・)


「そうだ!それどころじゃないんだ!ハイパーノバが・・・」

「ハイカラの婆って、なんだそりゃ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「こんな大事なときに、ボケかまさないでください先輩。常務に連絡を!」

和人は国分寺に連絡を入れた。




「和人か?」

「あ、常務」

「ユティスとの連絡は?」

「突然、途絶えたました」

「やっぱりそうか・・・」

「常務、理由をご存じなんですね?」


「ああ。7400光年先のエータ星という天の川銀河一重たいとされる星が、極超新星になった。ガンマ線バーストを伴い、大爆発したんだ。時空がその影響で相当おかしくなっている。エルフィアとの交信も影響を受けているに違いないと踏んでいたんだ」

「予想してたんですね、常務・・・」

「世界有数の超巨大望遠鏡がエータ星をウォッチしてる。オレのじいさんのところに情報は来てたんだ」


「これから、どうなるんでしょうか?」

「全世界に向けて報道がある。後1時間で日米首脳の共同発表があるんだ。詳細はそこで確認するしかない」

「日米トップによる共同発表ですか・・・」

「ああ。和人、地球は本当にエルフィアの助けが必要になるかもしれん」

「さらに悪いことでも?」


「そうだ。実は、同時にもう一つ超新星が出現しそうなんだ。それは、アルファ星だ。こっちは、地球からわずか640光年しか離れていない。光軸が地球に対して20度傾いているらしいことが唯一の慰めだが、地球の最大級の望遠鏡でも、確定は難しい。とにかく、超新星爆発すりゃ、確実に月より明るくなるだろう。肉眼で見ることは失明する危険性がある」


「同時に2個ですか・・・」

和人は、ユティスの話で心構えはしていたもの、2個とは考えてもみなかった。


「この2つの超新星のエネルギー放射で、もし、地磁気に異変が起こり、オゾン層が破壊されたり、あるいは、吹き飛ばされたりしたら、今までの何倍もの宇宙線が弱められることなく地上に降り注ぐ。強烈なレントゲンを数ヶ月浴び゛続けるというわけだ」


「そ、そんなぁ!」

「そこでだ、回避する方法と知恵を、エルフィアに求めねばならない。今すぐにだ!」

「そんなことを、おっしゃられても、常務・・・」


「とにかく、おまえしかいない。ユティスを呼び続けて欲しい。ノー・クエスチョン!」

「わかりました。今度は、エルフィアからのお願いです」

「なんだ?」


「地球の座標をください。超銀河団オーダーの宇宙地図が必要です。エルフィアに通知しないと、彼らも、われわれを助けようにも、助けられません・・・」

「もっともな話だな。しかし、70時間で特定できるのか・・・」

「できなきゃ終わりです」

「わかった。そっちはまかせろ」


「おい、和人。オレにはなんのことかさっぱりわからないんだが・・・」

和人と俊介の会話にまったく付いていけない二宮の額に、瞬く間にしわが寄った。


「結論だけ知っていてくればいいんです。エータ星という太陽の100倍以上重たい星に寿命がきて、それが大爆発して強烈な放射エネルギーが地球を襲うかもしれないということなんです。70時間以内にです。もし、エネルギーの放射方向が運悪く地球と同じだったら、みんな焼かれて、一瞬で消し飛んでしまいます」


「SFみたいだな・・・」

二宮は顔色一つ変えずに聞いた。


「先輩、驚かないんですか?」

「多少は驚くさ」

「でもいやに落ち着き払ってるから」

「仮にも、武道をたしなみ、常日頃、生死を肌で感じている者としては、気が引き締まりしこそ、臆病風に吹かれてパニックを起こすようなことなど金輪際ない」

二宮はきっぱりと言い切った。和人は感心した。


(いつもバカやってる二宮先輩だけど、意外に超のつく大物だったりして)


--- ^_^ わっはっは! ---


「二宮・・・」

俊介がやんわり言った。


「はい」

「おまえ、超新星って知ってるか?」

「あ、いや。つい最近できた星のことでしょ?」

「ま・・・、そういうことだ」

「じゃぁ、エータ星は、知ってるか?」

「ミッサン、もとい、ソヨタの新車の名前かなんかで・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介は、苦虫を噛み潰したような顔になった。


「和人、二宮はこの程度だ。無知ほど強いものはおらん、ということだな」

「は、ははは・・・」

「常務、そりゃないでしょ?」

「うつけものめがぁ!」

なにを言うかと二宮が抗議したが、俊介に一蹴された。




日本時間の深夜1時になり日米共同緊急発表が始まった。


「合衆国のみなさん、ならびに、日本のみなさん、そして世界中ののみなさん。人類は、今まで経験したこともないような、未曾有の宇宙的災害に見舞われる可能性があることが判明しました。これから70時間後です。エータ星という7400光年先にある、この天の川銀河一重たい特大の星は、2時間前、ハイパーノバと呼ばれる極めて危険なガンマ線を伴う大爆発を起こしました。最初の兆候として、日本のスーパーカミオカンデで、超新星爆発の先行現象であるニュートリノ放出を多量に検出しました」


大統領はにこりともしないで、カメラ越しに視聴者を見つめていた。


「ハイパーノバのガンマ線は、放射角2度という極めて狭い範囲にビームとなって放射されます。しかし、幸運なことに、その線上に地球が位置している確率は、非常に低いことがわかっています。とはいえ、すっかり安心もできません。そこで、みなさんに、ぜひお願いしたいことは、3つです。特に南半球のみなさん、りゅうこつ座の方角に極めて明るい星が現れますが、それを決して肉眼で直視しないでください。視神経を焼かれる可能性があります。最初の数分間が一番大切です。GRB、超新星爆発に伴うガンマ線バーストのことですが、それは、それが過ぎれば急激に下がります」


一般視聴者のほとんどは、なにが起こっているのか理解していなかったが、大統領の忠告だけはわかった。


「この24時間前より、世界中のすべての航空機の離発着を全面ストップさせます。1万メートル上空は、地上より遥かに多くの放射線を受けるからです。航空機に搭乗予定のみなさんは、空港ホテルで待機されるか、搭乗便の変更をお願いします。各航空会社にはその旨通知をしています。また、エネルギー波は電磁波の他、プラズマも伴います。電気電話その他、地磁気への悪影響が考えられます。つまり、すべての家電製品が停止したり誤動作したりする可能性があるのです。交通機関もマヒするかもしれません。できる限り、自宅に待機をお願いします。そして、落ち着いて政府の指示に従ってください。即、地球が破滅するということでは、決してありません。是非とも、みなさんの節度ある行動をお願いします」


大統領は原稿をちらっと見ると、さらに続けた。


「ISS滞在中の宇宙飛行士にも既に退去を指示しました。10時間後には、合衆国およびロシアから、帰還用のロケットを向かわせます。繰り返してお願いします。これから60時間後から、一つ、ハイパーノバを決して直視しないこと。二つ、自宅に待機すること。三つ、政府の指示に従うこと。では、これからは、日本の藤岡首相にバトンタッチします」


大統領がそう言うと、画面は一転して日本の首相官邸に移った。




「世界のみなさん。合衆国大統領の勇気ある情報開示に敬意を払いましょう。エータ星は南半球ですが、もう一つ、北半球から見えるアルファ星も極めて不安定な状況にあります。こちらも、近々スーパーノバ化する確率が非常に高いことが判明しております。こちらは、エータ星の10倍以上近距離の640光年という極めて近いところで発生するわけで、実はこちらの影響の方が、より深刻化する恐れがあります」


藤岡が合図すると画面には、アルファ星がアップになって映った。


「アルファ星のガンマ線光軸は地球から20度ずれる様子であり、これは幸運なのですが、地球に届いたエネルギー線でオゾン層が損傷したり吹き飛ばされたり、磁力線が大きく乱れることが懸念されています。もし、いずれかが起きたなら、地球を宇宙線から守ってくれていた盾がなくなるわけで、宇宙線は、無防備な地球に減衰することなく、降り注ぐことになります。どこまで影響があるのか、まったく不明です」


画面が切り替わった。


「政府の発表を慎重に聞いてください。くれぐれもパニックにならないように。まだまだ、地球が滅びるというわけではありません。これについて、合衆国と共同で、日本語と英語の情報提供サイトを、30分間以内に緊急開設の予定です。アクセスが集中しますので、各国のみなさん用には、各々の政府サイトにミラーをかける予定です。アルファ星についても、皆さんにお願いすることは大統領と同じです。決して、肉眼でスーパーノバを直視しないように。こちらも、満月レベルのマイナス12等星以上に増光すると思われます。では、スーパーノバとはなにか、T大高根沢教授より、ご説明いたします。高根沢教授」




画面はさらにT大に代わった。


「えー、今回の2個同時スーパーノバという、極めて珍しい天文現象について、ご説明いたします・・・」


高根沢より、簡単な説明があり、今回の2つのケースについてのコメントが付け加えられた。



「なんだ、あれは?」

「わたしたち、死ぬんでしょうか・・・?」

「どこに逃げればいいの?」

「秘密のシェルターを政府は持ってるんだぁ!オレにも入れさせろ!」


TV局と政府には、深夜にも関わらず問い合わせの電話やメールが、山のように押し寄せた。サーバーは、仮想化をして最大増強していたにもかかわらず、わずか2分でダウンした。


「ミラーサイトを10倍にして、アクセスを分散しろ!」


政府のシステム室には怒号が飛び交った。




「おい、和人。政府の情報提供サイトはどうなってる?見てみようぜ」

二宮がサイトにアクセスすると、エータ星の最新画像があった。


「これがエータ星らしいですね・・・」

「なんだこりゃあ!これが、エータ星かよ・・・。大パニックになるぞ!」

二宮は言った。


エータ星は、ものすごい爆発による勢いで、秒速何千キロという信じられない速度でガスを撒き散らしていた。また、エータ星を中心として、2つの対になった球状のガズ塊に覆われていた。そのガス塊はどす黒く極めて毒々しかった。いかにも地獄という様相を呈していて、このガスの塊は人形星雲と呼ばれていたが、とてもそのような可愛い様相ではなかった。


「アルファ星を見せて見ろよ」

二宮の要請で、和人はネットでそれを見つけ、拡大表示した。


「うぁあ、なんだこりゃあ・・・」

二宮は顔をしかめた。


アルファ星は、太陽を除き、地球からその表面を観察できる数少ない星だった。ネットの写真は、もう何ヶ月の前に撮られたものだったが、星は球形をは言えないほどいびつに歪んでおり、ここ数年間で直径が20%以上縮まっていた。


「先輩、このアルファ星の大きさどれくらいだと思いますか?」

「ウメボシみたいだから、ウメボシと同じ」


ぶぶーーー。


「もう、先輩、ふざけてるでしょう?」

「してないさ。ただ知らないだけ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「で、太陽と比べて、どっちがどのくらいのサイズかわかりますか?」

和人が二宮に問いかけた。


「そうだな、アルファ星は太陽の20倍だ・・・」

「ん・・・?」

「ち、外したかぁ。じゃ、90倍・・・」

「ん・・・?」

「180倍!」

「ん・・・?」

「じゃ、300倍だ!」

「ん・・・?」


「おいおい、和人、寝てんのかぁ?」

二宮は降参した。


「先輩、まだまだですね。約1000倍だそうです・・・」

「ええーーーっ。太陽の1000倍の直径だって;え・・・」


ぷち・・・。

びりびり・・・

ばちっ!


二宮のの思考回路がそこで止まった。

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