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008 会話

■会話■




カフェでは、和人がおっかなびっくりでPCの動きを見守っていた。


「ようこそ、エルフィア文明促進支援システムへ」

「コンタクティーのアクセスを確認」


(なんだ、こりゃ?)


「コンタクティー:ウツノミヤ・カズト」


(オレの名前だ・・・。なんで?どういうこと?)


「エージェント:ユティス・アマリア・エルド・アンティリア・ベネルディン」


(ユ、ユティスだって?)


「サイコセラピスト、ならびに、サイコヒーラー」

「コンタクティーへの概要説明メッセージを開始」


(ちょっと、待て。なんなんだ、これは?)


メッセージは、ユティスという一人のエルフィア人からのビデオメッセージだった。


「オーレリ、レイシス・アデル・ユティス、デュ・レルフィエーザ」

和人はPCからではなく直接頭にそれを聞いた。


それは和人が聞いたこともない言葉だったが、不思議となにを言っているのかその意味がわかった。


「わたくしは、エルフィアのユティス・・・」


(なんて言ってるのかわかんないけど、言ってる意味はわかるぞ・・・)


不鮮明な人物が画面に現れて、ユティスと名乗った。和人は耳を疑った。


(ユティス?まさかね。なにかの冗談だろ?偶然?本当にいるのか?オレの想像の世界の人物じゃないのか?誰かオレをからかってんだろうか。それとも、ユティスって、もしかして本当に天使・・・?いったいどうなってるんだぁ・・・?)


「ウツノミヤ・カズトさん、わたくしからいくつかご質問をさしあげますが、頭の中で言葉をつぶやいていただければけっこうです。あなたの意思はわたくしにそれで伝わりますわ」


言葉は和人の頭の中で日本語になってはっきりと響いた。和人はたちまち興味を覚えずにはいられなかった。


「わたくしの言葉がおわかりになりますか?」

「う、うん・・・」

「よかった・・・」


にこっ。

和人は、ユティスが微笑んだのがわかった。


(どういうことなんだ?メッセージの意味のすべてがわかる。まるで心に語りかけるようで、直接頭脳に伝わっくるぞ)


PCに映ったビデオの人物は像が不鮮明で、細かいところまではよくわからなかった。声の調子からは、メッセージを伝えてくる人物は明らかに若い女性だった。


(よく姿がわからないけど、女の子のような感じだ・・・)


和人の頭に聞こえてくる言葉は、英語、フランス語、アラビア語、中国語、その他、少なくとも、和人はまったく聞いたことがない言語だった。


(して言えば、ラテン系の発音に近いかなぁ・・・)


彼女の言葉は妙に音楽的響きがあり、発音もはっきりしており、極めて柔らかなものだった。和人に不安はなっかた。それどころか安らぎにも似た妙な感覚だった。


「驚かれてるのではないですか?申しわけございません。わたくしはユティスと申します。エルフィアよりあなたに大切なメッセージをお届けしています。通信機をお切りにならないで、どうかこのままメッセージをお聴きください」


ユティスと名乗る人物は、確認するように、ゆっくりとした口調でしゃべった。


「あ、うん・・・」

「よかった・・・。お名前はウツノミヤ・カズトさん。ご本人様ですね?」

「そう・・・」

「リーエス」

「リーエス?」


「あら、申し訳ございません。『リーエス』とは、そちらの言葉で、『はい』とか、『了解』という意味です。その反対が、『ナナン』です」

「『リーエス』と『ナナン』か・・・」


「リーエス。わたくしたちの世界は、エルフィアといいます。文明レベル、カテゴリー4の自然と調和した世界です。わたくしたちの使命は、この愛に満たされた平和的文明を大宇宙に広げ、調和のある世界を一つ一つ広げることにあります。ご心配はいりません。その代償をいただくことはありませんわ。すべて無償のボランティアで行なっています」


「なんの冗談だろう・・・?」


「うふ。冗談なんかではありませんわ。あなたの世界も、こうした世界にメンバーとしてご参加しませんか。お互いに尊敬し合い、行き交うことが自由にできる、そんな平和な世界を築くことを、わたくしたちがご支援いたします。まずは、わたくしたちのエルフィアとその活動が、どのようなものか、ご紹介いたします。添付の映像をご覧になってくださいますか?心配ございません。すべては、そちらの映像装置でご覧になれるデータで構成しています。あなたの装置を破壊するウィルスの類もありません」


(装置って、このパソコンのことだろうな・・・)


「しかし、これを信じろってかぁ・・・?」

和人は、急に可笑しくなったきた。

「あははは」

「んふ?」


和人は一瞬迷ったが、どういうわけか、ユティスの声にはなんの偽りも感じなかった。それで、和人はすぐに意を決した。


「わかった。きみの言うことを信じてみるよ」


かちかち。


興味を覚えた和人は、ユティスが開けろと言っている添付のファイルをダブルクリックして開けた。


ぽわぁ・・・。


すぐにはなにもなかったが、やがて明るく柔らかい光におおわれた一人の娘らしき姿がスクリーンに浮かんで来て、両手を広げ招くような仕草をした。


「『ようこそ、エルフィアへ・・・。わたくしたちはあなたを心より歓迎いたします』と娘は言った、ような気がする・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(なんか、冗談なんかじゃないみたいだぞ・・・)


「それでは、そちらの映像再生装置より、あなたの頭脳に映像を送る処理をいたします。この処理をすると、その装置なしでもあなたの頭脳にいつでも画像や音声をお送りできますわ。ご協力いただけますか?」


「かまわないけど・・・」

和人は合点した。

「PCがなくても、きみの声が聞こえるというわけだね?」


「リーエス(はい)。そういうことですわ。そして、視覚や聴覚だけでなく、臭覚や、少しですけど、触覚的なものも感じれるようになります」

「それは?」

「花の香りだとか・・・」

「あは。ホント?」


「リーエス(はい)。ウツノミヤ・カズトさん。では、わたくしの言うとおりにしていただけますか?」

「うん。そうするよ」

「目をお閉じになって」

「うん」

「なにか目の前に浮かんできますか?」


ほわぁ・・・。


和人は、淡く白い光の塊を感じた。


「白い光が・・・」

「リーエス(はい)。それですわ。その中に入っていくようなイメージをしてください」

「了解」


和人は白い光に入っていくイメージをすると、いきなり、目の前に実物大の揺らいだ輪郭を伴った娘が現れた。


ゆらーーーっ。


「あっ・・・!」

「あら、ちゃんとお見えになりましたのですね?」

「す、すごいよ・・・」


ゆらゆらゆら・・・。


娘の輪郭は徐々に色を伴いはじめた。


「これが・・・、きみかい?」

「はい。それはわたくしの意識がイメージとなった精神体です。まだ、最終的に鮮明に見えるようになるまでには、あなたの頭脳の活性化が進まなければなりませんが・・・」


「頭脳の活性化?」

「リーエス(はい)。わたくしがお見えになりまして?」


娘の姿はまだ大分滲んだ感じで、度の合っていない眼鏡をかけているような感じだった。


「うん。まだ画像が、かなりぼやけているようだね・・・」

「けっこうですわ。とにかく成功です。うふふ」


娘はとても喜んでいる様子だった。


「焦点が合ってないんで、なんか頭がくらくらするよ・・・」

「まぁ、ごめんなさい。初めてですから、多少は我慢していただくことになりますわ。申し訳ございません・・・」


ユティスは謝罪すると、一呼吸置いて和人の反応を待った。


「あ、うん・・・」


「それでは、説明を続けたいと思います」

「お願いするよ」

「これをご覧ください。こちらがわたくしどもの世界、エルフィアです」


続けてエルフィアらしき情景とひととおり説明があった。


しゃーーー。

時折画像ノイズが入り、像が鮮明とはいえないにもかかわらず、その色彩から、エルフィアがとても美しいところということは十分にわかった。緑ゆたかな大地に紺碧の空と海が広がり、ユティスはある白い建物のそばにいた。


「ここはどこなんだろう?」


曲線をうまく取り入れた建物は、回りの風景に融け込み、かつ美しく映えていた。


(なんてステキな風景なんだろう・・・)


和人は溜息をついた。


「んふ。エルフイアでは自然との調和をとても大切しています。建物があまり自己主張しすぎると、自然との調和が乱れ、人々の心の平安を失うもとになります」


娘は言った。


「さあ、一緒に中にまいりましょう」

建物の中にユティスは和人を連れて入っていった。


和人も建物の中の様子がわかった。白を基調とした明るく広い部屋で、数人が出迎えた。


「わたくしたちの文明の基本は、『なにも持たないけれど、すべてができる』というものです。ご覧になられますように、わたくしたちには特別な通信機は必要ありません。自分たちの頭脳を活性化し、それをシステムで支援することで数億光年の距離でも瞬時に意思を伝えることができます」


(すごい・・・)


「ウツノミヤ・カズトさん、あなたの世界では通信手段にまだ電磁波をご利用されているのかもしれません。でも、電磁波は体への影響を無視できませんわ。いつまでもそれに頼るのは得策ではないでしょう」


(スマホのことかなぁ・・・?)


「今、こうしてウツノミヤ・カズトさんと連絡できるのも、頭脳の活性化による能力のほんの一部ですわ。基本的に、わたくしたちは頭脳の活性化を促進させ、システムはその連携と能力アップの支援を行います。もちろん、システムは電磁波ではなく高次元の時空を通して、すべてのサポートをするのです」


和人は夢を見ているようだった。


「次に、エルフィアの文明促進委員会の最高理事、エルドをご紹介いたしますわ」


ゆらーーーり。


ユティスが言い終わり、ユティスの1メートルそばの空間が数秒揺らいだかと思うと、黄色がかった白い光に包まれ、30代後半か40代初めかと思われる、一人の背の高い男がいきなり現れた。


「ようこそ、エルフィアの文明促進支援プログラムへ」


男の声は透き通った低い声で優しさにあふれており、心地のよい響きがあった。


(げげ、この人、どっから現れたんだ?)

和人はびっくりした。

(まるでSF映画だ・・・)


「きみの疑問への答えはこうだ。わたしは、ここから数キロ離れた自分の執務室から直接来た。もちろん、歩いたわけでも、輸送機に乗ってきたわけでもない。これも頭脳活性化とシステムサポートによる恩恵だ。とはいえ、自分の足でよく散歩はするよ。天気の良い日に、小鳥が飛び交いさえずる、自然にあふれかえった道を、家族や仲のよい友人とおしゃべりして歩くのは、とても気持ちがいいし、楽しいし、すこぶる健康的だ。本当に精神が安らぐね。ただ、さすがに銀河間の移動にはもっとハイパワーが必要になる。それはすべてをシステムに頼ってはいるがね」


「あ・・・」


和人はあまりのことに唖然として声も出なかった。


「これがわたくしたちの平均的なお食事ですわ」

次にユティスは食べ物の紹介に入った。


テーブルには色とりどりのサラダと果物に加え、穀類やパンに似たものがあった。赤いスープに野菜とおぼしきものや、海藻のようなシーフードも見えた。白い飲み物はミルクかユーグルトのようだ。それらは装飾された丸皿に魅力的に盛られていた。


「わたくしたちは菜食が基本です。人間は本来的には肉食用にできていませんもの。これらの食物も自然のままの有機栽培、もしくは天然のものです。人工的に栽培もできますが、生産量だけを優先すると、地力を奪い、数年もしないうちにミネラル不足を起こしてしまいます。エルフィアではそれをコントロールしていますわ。植物と対話しながら収穫するのです」


「直物と対話?」

「はい。彼らはとてもコミュニケーション能力が高いのです。彼らは自分のコンディションの報告と必要なミネラルや有機肥料をリクエストをします。わたくしたちはそれを彼らに常にフィードバックして、最高の状態を提供してもらっていますの」


「驚いたね・・・」


「それに、栄養素も十二分に考慮しています。これらは体の毒素を外に出してくれ、自然に治癒力を高めてくれるのです。わたくしたちは、野菜や果物の形には、さほどこだわりません。エルフィアではみんな健康ですし、病気にかかる人は、ごくごくわずかです。病原菌による急性感染や、事故による外傷が、命に係わるほど極めて重いものでない限り、症状対応だけの薬は用いません。人間が自ら備えた治癒力をサポートするように、日ごろからハーブを食事に取り入れています。病気になりにくいように、根本的な体質改善を行っているのですわ」


「なるほど・・・」

和人は見入った。


「はっは。どうかね?」

エルドは和人より頭一つ抜けた非常に長身であった。


「ただただ、びっくりです」


「うむ。引き続き、きみにはユティスから説明をさせよう。わたしは用事があるんで、一旦失礼して自分の部屋に戻ることにするが、疑問があれば、遠慮なく彼女に言ってくれたまえ」


「あ、ありがとうございます。エルド・・・」

「では、また会おう、ウツノミヤ。カズト」


すーーーっ。

エルドは和人の目の前で消えていった。

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