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080 会見

■会見■




ぽわんっ。


「和人さん、今日は、エルドにお引き合わせに、まいりました」

ユティスは和人の目の前で精神体化すると言った。


「ちょっと待って。エルドって、きみのお父さんでエルフィアの最高理事だよね?」

「リーエス」

「どうして・・・?」

「和人さんは地球代表です。エルフィアにとっては国賓です。彼がそう望むのは当然ですわ。むしろ、遅すぎるくらいです。それに・・・」

「なに?」

「わたくしも、是非、そうしていただきたいから・・・」

「オレ、きみのお父さんに挨拶だなんて、心の準備なんかできてないよ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふ。準備なんて必要ありませんわ。和人さんは普段のありのままの和人さんで十分です。では、まいりましょう」

ユティスはそう言うと、和人の精神体をエルフィへ召還した。




そこには長身の30代後半くらいの男性がいた。


「和人。ようこそ、エルフィアへ。わたしがエルドだ」

エルドは顔を崩すと、和人が名乗るのを待った。


「はじめまして、エルド。あなたのことは常々ユティスよりおうかがいしています」

「けっこう。和人、きみはには一度、われわれの支援システムにアクセスした時にビデオシステムでわたしに会ったと思うが、精神体であろうが、こうして直接会えるのは光栄だよ」

「エルドの言葉こそもったいないです」


「それでだ。どうやって、文明促進推進委員会のシステム・パスワードが入手できたんだね?」

和人は、どうせ考えを読まれテストされてるんだろうから、本当のことを話した。

「えーと、それは・・・」




「なるほどな。それで・・・?」

エルドは和人が真実を語っているとわかり満足した。


「超銀河間ハイパートランスポンダーか・・・、よくそんなものがカテゴリー2の地球にあったもんだ・・・」


和人の打ち込んだアルファベットは、国分寺の会社、セレアムのシステム室にあるハイパートランスポンダーを経由して、古代セレアム文字、つまりエルフィア文字に変換され、システムにログインを可能にしたのだった。


「ということは、地球には既に地球以外の異世界の住人がいる、ということになるが、そういうことだね?」

「その通りです」

和人はエルドの言葉を肯定した。




「和人の会社社長の祖父、オオタワラ・タロウか・・・」

「彼が、ハイパートランスポンダーを置いたのです」

「なるほど、彼はカテゴリー3の世界の住人ではないかということか・・・」

「文明レベルまではよくわかりませんが・・・・。そういうことです」

和人は大田原と国分寺姉弟のことを話した。


「して、その世界は、どう呼ばれているのかね?」

「セレアムとか・・・」

「ふむ、セレアム?」

「ご存知で?」

「ああ。そういうことだったのか・・・」

エルドは思い出すように話した。


「確か、1万年以上も前に、エルフィアはセレアムの支援をしたことがあった・・・」

「とてもステキな世界ということですわ」

ユティスはセレアムの話を聞きたがった。


「うむ。われわれにとって、セレアムのような例ができることは本当に嬉しい限りだよ」

「リーエス。でも、一つ問題が・・・」

「なんだね?言ってみたまえ、和人」

「リーエス。セレアムがどこにあるか、大田原さんにはわからないのです」

「自星の銀河位置かね?」

「セレアムの銀河座標ですわ」

ユエィスが捕捉した。


「ふむ。彼は、自星の銀河座標を失ったというのかね?」

「はい。彼は宇宙機の移動距離は知っていたんですが・・・」

「方向がわからんということか?」

「そうです。地球から見て、5000千万光年以上、6000千万光年未満。これがその範囲です」


「けっこうな距離だが、銀河クラスタ・レベルで考えると、まだまだ近いうちに入るな。やってみてわからんでもない」

「それは良かったです。基点は地球です」

「あっはっは。それでは地球の座標を求めない限り、セレアムだってどこにあるのかわからん、ということではないのかね?」

エルドは愉快そうに言った。


「リーエス。まさにそのとおりなんです」

「気を悪くせんでくれよ、和人。問題とはこのことか・・・」

「リーエス。地球の座標調査と併せて、セレアムの調査もお願いできますか?」


「もちろんだよ。オオタワラにセレアム周辺の銀河地図を聞くことは可能かね?」

「リーエス。彼が知っていれば・・・。それに・・・」

「なんですの、和人さん?」

「大田原さんが、天の川銀河以外から来たんだとしたら、地球にくる途中、天の川銀河を見たんじゃないかな、と思って・・・」

「まぁ・・・!」

「恐らく、いや、絶対に、見ているに違いない」

和人はエルドとユティスを見つめた。


「確かめてみたいんですが・・・?」

「結構。是非そう願いたいね」

「やってみます」


「うむ。それにしても、オオタワラはセレアムに連絡を取りたいのだろう?」

「リーエス」

「それで、今回のエルフィアの地球支援に、オオタワラはどういう考えを持っているか教えてくれたかね?」


「リーエス。セレアムはエルフィアと共同で、地球支援にあたりたいと・・・。そして、エルフィアの下で、自分たちでできることをしたいと。エルフィアが手がけるプロジェクトなら、エルフィアに任せた方が、遥かに好ましいし、自分はとても光栄だと・・・」


「なるほど・・・」

「ユティス、きみはオオタワラに会ったのかね?」

「ナナン。でも、彼のお孫さんたちにはいつもお会いしてますわ。わたくしからだけですけども・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「セレアムも地球を支援しようとしていると考えているわけか?」

「はい。地球の現状はとても厳しくて、オオタワラさんお一人では・・・。正直な話し、とても苦労されています」

「それで、エルフィアが来るのであればというわけか・・・」

「リーエス」

「きみにはやりがいがありそうだな」


にたり。

エルドは、ユティスを見ずに、和人に笑ってみせた。


「リーエス」


じわーーーっ。

「こ、こんな状況なのに、地球を・・・。見捨てないんですか?」


和人は、エルドとユティスを見つめて、涙が出そうになった。


「そうだな。いろいろ意見はあるが、わたし自身は隣人に対してまったくそういう気持ちはない」

「地球人をエルフィアの隣人として見ていただけるんですか?」

「何億光年離れていようが、こうして、いつでも話ができるんだ。精神体を交換できるし、ハイパー通信でなにか不便を感じるかね?」

「ナナン・・・」


(でも、手は握れない・・・)

(和人さん・・・)


「では、隣人だ」

エルドは大変心の広い人物だった。


和人はほっとした。

「平民のオレが、エルフィアの国賓とはね・・・」


「リーエス。ある方が社会的地位が高いからといって、その世界を語れるといわけではありません。むしろ、一般の方の方がより現実を知っていらっしゃるし、わたくしたちも正しい情報を得られますわ」


「その通り。われわれが知りたいのは、その世界の平均的な生活や考え、幸福度といったものだ。地位の高い上流の人間はどこの世界も変わらんものさ。上にいけばいくほど、理想や理屈をこねくり回して、現実離れした策略やウソしか伝わって来ん。大切なのは平均的な人々の現状はどうなのかという事実だ。それが、格好がいいとか悪いとかじゃない。脚色された情報ではまったく意味がない」


「ぷはー」

和人は思わず笑った。


「それに、とっても重要なことだが、その人間自身の精神レベルは社会的地位とはあまりリンクしていないということだ」

「わたくしたちの意図を素直に汲み取れる方は、そう多くはありません。特に権力をお持ちの方については、必ずしも歓迎されるわけではないのです・・・」


「カテゴリー2になったばかりの、奪い合う競争的な社会においては仕方あるまい」

「・・・」

「そういう意味で、和人、きみはうってつけなのだよ、地球という現場を知るのに」

「そうですか・・・」

「和人。ユティスの希望もあってだ。今後とも、ユティスを専属できみの担当をさせようと思うが、拒否つもりなら・・・」


ぎり・・・。

エルドはわざと和人を睨んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティスを、わたし専属で?」

「気に入らんか?」

「と、とんでもないです!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わはは。けっこう。それでだ。ユティスの予備調査中に心ない連中も次から次へと現われてくることだろう。それで、なにかにつけ、われわれをじゃまだてしてくると思う。彼らはわれわれを侵略者呼ばわりし、いろんな妨害をしてくるだろうが、どうか、ユティスを信じてもらえんだろうか?」


「リーエス。もちろんそうします!」

「厳しくなるぞ」

「リーエス」

「ユティスは、超A級エージェントだ。きっと、地球にとって素晴らしいことになる。そして、きみ自身にとっても・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたし自身にとってもですか?」

「そうだ」


ぽっ。

エルドが答えると、ユティスがほんのり赤くなって微笑んだ。

にこっ。

「和人さん・・・。うふ」


「システムがはじき出した二人の相性数値を、きみは聞いたかね?」

「リーエス・・・」

「前代未聞の高数値だった」

「・・・」


ぽっ。

和人も、ユティスをちらりと見つめ大いに赤面した。


「まさかと思って、3回もやり直させたが同じ回答だった。これがどういうことかわかるかね?」

「なんとなく・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「魂の伴侶・・・。いや・・・」

「なんでしょうか?」

「平たく言えば運命ってことかな」

「エルフィアのような世界でも運命ってのを信じるですか?」


「この宇宙は、『すべてを愛でる善なるもの』の意思によってあり、成り立っているんだよ」

エルドは優しく言った。


「愛ということですか」

「リーエス。そうだ。いくら科学が発達しようが、すべてが解けるどころか、謎は増えるばかりだ。人間の科学が、いつか宇宙のすべての真理を明らかにできるなんて、なにも理解していない愚か者の妄想にすぎん。時空の振動が宇宙のすべてだ。だが、時空とはなんだ?振動はなぜあるのだ?時空はどうしてそうなっている?一つわかれば10わからないものが増えいる。そうではないのかね?」


「恐らくは・・・」

「大宇宙の時空の振動、それこそ『すべてを愛でる善なるもの』の『愛』、というわけだ」

「愛?」

「はっはっは。今はわからんでもいい。いずれ、わかるようになる。それも、突然に」


「突然ですか・・・」

「そうだ、和人。ものごとは徐々にわかってくるようになるのではないよ。気の遠くなるような長くわからない時が続き、そしてある時突然知るのだ。ところが、それがいったいいつのことになるのかはだれにもわからない。これが適用されるのは、まじめにそれを考え続け行動を続けている人間だけだ」


「怠け者には権利がないというわけですね?」

「そう単純ではないよ。ちょっと違うな。どうして、そうしたいのか、その理由こそが問題なんだ。いくら毎日そう思っていても、利己的な利益のためばかり気にしているようだったら、辛抱しきれなくなるだろう。心底それを知りたいと願っているというか、そうしてるというか・・・」

「リーエス。なんとなくわかります」


「うむ、けっこう。そして、きみとユティスの関係だが、これは彼女のミッションとしてあるわけだ。同時に彼女のプライベートな問題でもある」


「なんでしょうか?」

「システムがはじき出したとおり、きみたち二人は仲良く信頼関係を築けるようになれるだろうということだ。これは、わたしの極めて個人的な見解だが、きみたち二人の間にお互いある種の好意的な感情が芽生えているとしたら。大いに歓迎することにする」


「エルド・・・」


ユティスはさっと顔を赤らめた。和人も体中が熱くなった。


(ある種の好意的な感情って、そのまんまじゃないか・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(エルドは、ユティスもオレのことを想ってくれているといいたかったのだろうか。当然、女神さま宣誓のことも知ってるんだろうなぁ・・・)


和人はユティスを見た。


ぱっ。

ちょうどユティスと視線が合い、二人とも視線をすぐに外した。


「はっはっは、わたしはきみたちのプライベートなことまで干渉するつもりはないよ」

和人にエルドの優しく暖かい気持ちがよく伝わっていた。


「和人さん・・・」

「リーエス・・・」

「わたくし、和人さんが他人とは到底思えません」


(てことは、家族、兄妹、姉弟、夫婦、婚約者、恋人、そのどれかだっていうんだよな・・・)


「和人、きみはどうなのかね?」

エルドが微笑みながら和人を見つめた。


「ユティスは、そのぉ・・・、彼女は最高です」

「最高か。うむ。なるほど、なるほど・・・」


エルドは大きく頷いた。

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