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070 性格

■性格■




「はぁい、語り部のアンニフィルドよ。ここでちょっとおさらいね。大田原太郎おおたわらたろうを覚えてるかしら?少しまとめるから、見といてね」



国分寺俊介と姉の真紀は大田原太郎の孫だった。

そして、大田原は実は地球を遠く離れた別銀河にあるセレアム

という星から来た異星人だった。

つまり国分寺姉弟は4分の1、クォーターの

スターチャイルドなのだった。


大田原は地球探査にエンジニアとして来た。

そして、地球周辺で宇宙機が不幸にも事故に合い、

彼を除く全員が帰らぬ人となった。


大田原は地球の現状を憂慮し、

なんとか文明支援をし滅亡への道を改めさせようと考えた。

まずは、政治力が必要と考えた大田原は、

その智恵でもって日本で内閣顧問にまで

社会的な地位を上がっていた。

が、頼みの通信機は何十年経っても作動せず、

故郷セレアムとは通信できずにいた。


そこに、偶然にも国分寺の会社で働く宇都宮和人が、

エルフィアという超高文明の星とその通信機がもとで

接触を可能とし、お互い精神体を行き来できるまでになった。


エルフィアは、無償で宇宙の文明世界の支援を行っていて、

かつてはセレアムも支援したことがあった。

宇都宮和人は地球代表として、

エルフィアのエージェント、ユティスと接触を続けた結果、

彼女と互いに惹かれ合うようになった。


エルフィアは、地球文明の支援のための準備である

予備調査を行うことを決定し、

ユティスは実体(生身の身体)で実際に地球に来ることも決定した。

しかし、地球の宇宙座標は未だに不明であり、

それが地球とエルフィア、

和人とユティスの最大の問題になっていた。


大田原は、もしエルフィアが地球を支援することになれば、

自分の故郷であるセレアムへの通信も可能となるのでは

と密かに期待していた。

そういうわけで、国分寺たちは宇都宮和人をサポートし、

地球とセレアムとエルフィアを繋ごうとしていたのだった。


宇都宮和人は、真に平々凡々な青年で、

エルフィアのコンタクティーとなり

計らずとも地球の未来を背負ってしまった和人に、

国分寺たちは不安だらけだった。


「というわけよ。頭に入ったかしら?んふ。じゃ、続けるわね」





地球では国分寺俊介が内閣顧問の大田原太郎と話していた。


「じいさん、あの和人に地球人代表としてユティスの相手が務まるのか?」

「まだ、ダメと決まったわけじゃないぞ・・・」

大田原はやんわりと俊介に異を唱えた。


「向こうはエルフィアの全権大使なんだ」

「だから?」

「和人はただの平々凡々の地球の若者。科学的知識もユティスに比べれば、赤ん坊以下しか持ち合わせはない」

「そうだな」


「それに・・・」

「まだあるのか心配事が?」

「ああ。和人のヤツ、エージェントに個人的感情を持ってしまっている」

「ほう・・・。やるじゃないか」

「和人のやつ、精神体のユティスに一目惚れしちまったのさ」

「なにがいかん?好意的な感情なら歓迎すべきじゃないのか?」


「問題はあいつが女に告白したことがない、根っからの草食系男子だってことだ」

「草食動物には、つがいがいないとでも?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティスは羊じゃないんだぞ」

「卑下しすぎているな、俊介。地球のウサギは多産だぞぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーあ、心配するなって方が無理だぜ」

俊介は頭を抱えた。


「おまえの取り越し苦労じゃないのか?」

国分寺も大田原も、和人の女神さま宣誓騒動などまったく知らなかった。


「ユティスは、なかなかの美人だという話だが・・・」

「ああ。その通りだ。見てくれもだが、性格もなにもかも満点らしいんだ・・・」

「和人が、ユティスを気に入らないわけがないか・・・」

「そういうわけで、和人はユティスに首ったけなのさ」

「なるほど」

大田原は落ち着いて聞いていた。


「それで、あいつがユティスにベタ惚れってことはだな・・・」

「冷静さを甚だ欠いておるってことか?」

「その通り。しなくていい致命的な行動に出られたらと思うと・・・」

「まさかな。和人は、ユティスをどうこうしようなんて柄ではないだろう」

「もし、万が一、そんなことになったら、エルフィアは地球を見放すかもしれん」


「担当者間の個人的感情で、エルフィアが、地球に否定的な判断を下すとは、わたしにはとても思えんが・・・」

「保証できるのか、じいさん?」

「保証はできんさ。和人には、節度ある行動をしてもらうよりしかたあるまい。精神体とはいえ、ユティスも和人もお互いはっきり認識できるんだから。それに、わたしにはエージェントのユティスにしても、和人のことはまんざらじゃないと思えるが・・・」


「ああ、システムによる相性度は99.99%らしい」

「だったら、なおのこと本人たちにまかせればよいではないか。人の気持ちはなるようにしかならん。こっちのシナリオどおりにいきはせん。われわれがどう心配してみても、結局は本人次第だからな。ああ見えて、和人は大物かもしれんぞ」

「大物か・・・。それには同意する」

俊介は天を仰いだ。


「あいつに、どうしてこんな大役が回っちまったんだろう?」

「運命さ」

「これはしたり。セレアム人ともあろうものが、神秘主義を持ち出すなんて」

「ははは。俊介、地球の遅れた科学だけが真理を語れると思ってはいかんぞ。地球人類には、クォークの一つさえ作り出すことはできんのだ。E=mc2という式がわかったところで、結局、できあいの素粒子を、あっちへ変換、こっちへ変換してるだけさ。肝心の素粒子そのものを、時空から生成することも、純粋のエネルギーから生成することも、できやしない。生命となると、なにをやいわんやだ。単細胞生命一つ作れんではないか」


「確かに。じいさんの言うとおりだ。自分の子供は作れてもな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「俊介、おまえもそろそろ作ってくれんかのう・・・。じいも先が長うのうての、孫を一目見んと、死んでも死にきれんわい・・・」

大田原はわざと声を震わせた。


「や、ヤブヘビだぁ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「急に、じいさんらしくすんなって。オレはまだまだ独身を堪能しきってないんだぞぉ」


「冗談はさておきだ。今の地球の科学は、片方を見てもう片方を見ず。極めてアンバランスな綱渡りだ」

「それで?」


「運命とは、ある程度避けようもないどうしようもない未来の可能性さ。数式なんかで証明できるレベルにはない。いくら確率がゼロに近くても、起こるべき時には起きる。逆に、どんなに確率が100%に近くても、起きない時には起きないもんだ」

大田原は、政治や経済において、予測がいかに当たらないか、いやというほど経験していた。


「ならば、じいさんの考えじゃ、和人とユティスはどういう運命なんだ・・・?」

「お互い、魂の伴侶に違いないな・・・」

「おい、おい、じいさん。今度は、前世の話なんて言い出すんじゃないだろうな?」


ぽくぽくぽくぽく・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「いかにも。わたしはそれとて否定するつもりはないぞ」

「たまげたねぇ・・・」




「おい、和人」

「あ、二宮先輩」

「オレ、常務に聞かれたんでしゃべっちまったぞ」

「なにをですか?」


「おまえとユティスが、精神体で地球とエルフィアを行き来してるって話。もう、言い逃れできる状況じゃなくなった。わかってんのか?」

「ええ。常務も真紀さんもユティスに会わせろって言ってますし・・・」

「そっかぁ。おまえ、エルフィアに精神を召還されて以来、なんだか落ちこんでんなぁ・・・」


「はぁ・・・」

「なにかあったのか、ユティスと?」

「なんにもないですが・・・」

「だからだな?」

「はいっ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まさか、ふられたんじゃないだろう?」

「いや、そうじゃないんです。どっちかといえば、その反対・・・」


「じゃぁ、お互い気持ちを確認し合ったってことだろう。両想いってことじゃないか。めでたし、めでたし。素直に喜べよ、和人」

「そこまで、お互い確認したわけじゃないんです」


「じれったいなぁ、もう。いつもお互いに会ってる男と女の間の感情は、デジタルなんだ。好きか嫌いか。中間なんて存在しない。どちらかといえば好きは、明らかに好き。嫌いじゃないは、比較的好き。なんとも思わないは、好きじゃない。つまり嫌い。女の仕草や感情を見ろよ。女の言葉じゃないぞ。それから目を見つめすぎるな。判断を誤る。女が目を逸らさない時はウソを確信してつく時だ。なぁーーーんて、常務のアドバイスどこまでホントやら・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「すごいですね、先輩、どうして・・・」

「もてないかって?ぶっ殺すぞ、和人。知識だけじゃ、実践できないんだよう。どうやったら、イザベルちゃんが振り向いてくれるんだよう。和人、教えてくれぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうじゃなくて・・・。あの、泣きつかれても、困るんですが・・・」


しゃきっ。

「おまえの場合は結果オーライじゃないのかぁ。なんで、そんなに落ち込んでいるんだよ?」


「先輩だから言いますけど・・・」

和人は二宮にユティスとの話をした。


「ふむ、それで?」

「確かに、ユティスは言ったんです。オレのことを特別に大切なお方だと・・・」

「そりゃ、すごい!」

「オレ、期待していいんでしょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「当たり前だ。女の子にそこまで言わせておいて、なにを疑う理由があるんだよ?」

和人は考えていた。


(オレ。女神さま宣誓だろうが、なんだろうが、ユティスを好きってことには変わりがないんだ。会いたいよ、ユティスに・・・)


「でも、オレもユティスも精神体でないとお互いに会えないんです。実体じゃないんですよ。ちゃんと会えるかどうかもわかりません・・・」


「ふむ、ふむ・・・」

「決定的なのは、お互いの世界がどこにあるのか、宇宙座標がまったくわかんないことです」


「ふむ、ふむ・・・」

二宮はしばらく沈黙した後、言葉を選びながら言った。


「やっぱりそうか。つらいなぁ。そういう理由じゃ・・・」

「はい・・・」

二宮は声を低くして、噛み締めるようにゆっくりと言った。


「だがな、和人。精神体だろうがなんだろうが、会えるんだ。それも、いつも一緒に心を通わせて・・・」

「はい」

「オレからみると滅茶苦茶うらやましいぞ。それに、いつかきっと二人は実体で会えるさ。エルフィアはオレたち地球人には想像もできないくらいの超高文明なんだろ?」


「ええ。でも・・・」

「信じろよ。ユティスを。エルフィアの科学を。いつか会える日は近いってな・・・」

「ありがとうございます。先輩もいいこと言ってくれるんですね。ごくたまに・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ごくたまにとは、なんだぁ!」

「ついいつもの癖で、口が・・・」

「まぁ、いい」


(ユティスに会いたい。ちゃんとした実体で。二宮先輩の言うとおりだ。でも、やっぱり辛い。ユティスの涙を拭いてあげることも、座り込んでしまったユティスを抱き起こしてあげることも、できないなんて・・・)


「先輩、このままの精神体でユティスに会っても、会えば会うほど想いがつのる一方なんです。どんどん辛くなる・・・」

「じゃ、ユティスの精神体に会わないままにできるのか?」

「それは・・・」

「できないだろ?それでいいんだ。それで正常なのさ」

「先輩・・・」

「くっそう。なんでオレだけ片想いなんだよぉ・・・。イザベルちゃぁーーーん!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「いい、ユティス。あなたはだれにでも優しいから、いつか騙されちゃうわよ」

アンニフィルドはユティスのあまりに純な性格を心配した。


「はじめから人を疑うことなどできませんわ」

「ん、もう。どこまでお人よしなの。手短に言うからこれだけは聞いて。いい?」

「リーエス」


「トルフォ。理事のトルフォよ。彼の話には絶対に乗らないこと」

「トルフォ理事ですか?」

「そう。そのトルフォ理事。ケチで、スケベで、持つことによってのみ、自分を満たそうとしているわ」


クリステアが付け加えた。

「ユティスにはもてないくせにね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうよ。個人的な財産を、人から奪い取ってでも、増やすことしか頭にない、15万年は先祖返りのスーパー変態男さん」

アンニフィルドはユティスを覗き込むようにして、彼女の目を確かめた。


「いい。そのトルフォが、今一番手に入れたいのがユティス。あなたなのよ・・・」

アンニフィルドとクリステアは、ユティスにトルフォを警戒するように忠告した。


「お二人とも、ありがとうございます。でも、うわさだけで人を判断するのも、いかがなものでしょうか?」


にこっ。

ユティスは、一応礼を述べるがそう言って、微笑んだ。


「いつまでも、そんなに呑気に構えてはいられなくなるわよ、ユティス」

「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。ご忠告感謝しますわ」

「とにかく、注意をしてよ。女神さま宣誓のあった後なんだから・・・」

「それは・・・」

「ごめん、ユティス」


「でも、本当に、危ないんだからね。あいつ」

「リーエス。一応、トルフォ理事には近づかないようにします。今までは、うまくかわしてきましたが、今後もとは限らないでしょうから・・・」

「リーエス。その気持ちを忘れちゃだめよ」

「リーエス」


ユティスは微笑んだが、一抹の不安を拭うことはできなかった。

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