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065 七夕

■七夕■




そんな、和人とユティスの二人に、エルフィア人たちは優しく微笑みかけた。


「みんな、とてもステキは服を着ているんだね?」

「リーエス」


エルフィア人は、自分たちの服装も制服やスーツのように機能をとことん追及したものから、多少無駄や遊びがあるもっと心が安らぐ自然な服装にしたのだった。女性も男性も身体的な特徴や精神的な特徴をあえて隠さないようなものだ。そうすることで、人々は自分の性を確認し、自分自身の精神を癒された。中には体と精神の性が異なる人々もいたが、差別的な扱いをされるわけでもなかった。少なくとも和人には見分けることはできなかった。



「うふふ。和人さんと二人で歩けるなんて、とってもステキですね?」

「うん・・・」


どきどき・・・。

和人は精神体であっても、心臓がドキドキするのわかった。


ユティスと夜の薄明かりの中で、二人一緒にゆっくりと歩くことは、ユティスの言ったように『星空のデート』だった。


(うん。最高の夜だよ・・・)

本当なら、ユティスは和人に腕を絡ませて歩いたに違いない状況だった。


「あは・・・」


「どうかしまして?」

「う、うん・・・。別に・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---



精神体でしかない和人は、ユティスと手をつなぐことが絶対にできないのが残念だったが、ユティスのそばにいることは最高に幸せな気分だった。ユティスも和人と一緒にいれることが楽しかった。


「ユティス?」

「はい?」


「あ、なんでもない・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ、変な和人さん」


「あはは・・・」

「うふ」


二人は時折見つめあっては目をそらしたり、また見つめては微笑んだりした。二人の歩調は完全に一致し同調していた。


「ユティス。あの・・・」


「和人さん?」

「あは。やっぱり『デート』にしといてよかった・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。わたくしもそう思います。こうして、和人さんといるととても幸せですから・・・」


「ほんと?」

「はい・・・」


「オレ、死にたくなるくらい幸せだよ」

「おお、和人さん。死ぬなんて、おっしゃらないで・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ごめん。ものの例えだよ」

「そうですか。よかった・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あぁ、ユティス、きみはとってもキレイだよ」

「嬉しい・・・。和人さんから、そう言ってもらうのが一番嬉しいですわ」


和人は胸が高鳴りっぱなしだった。


「ほら、あそこ・・・」

「あら、とても美しいお花」


「きみに摘んであげられないのが残念だよ・・・」

「いいえ、いいえ。そのお気持ちだけで胸が一杯ですわ」


「ユティス・・・」

「和人さん・・・」


(精神体でなければなぁ・・・。手もつなげないなんて。はぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうかされましたか?」

「うん。人間の欲って、どんどん膨らむんだなって・・・」


「どういうことでしょうか?」


「きみに会う前は、きみが本当にいればなぁと思ったけど。いるとわかったらすぐにでも会いたくなって、会えば今度はいつも会いたいなぁって思うし、いつでも会えるようになると・・・」


「会えるようになると・・・?」


きらきら・・・。

ユティスは目を輝かせて、先を聞きたがった。


かぁ・・・。

和人は赤面した。


「手でも・・・」

「手でも、なんでしょうか?」


「握れないのかなぁって・・・」

和人は勇気を出して言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「まあ。そんなことでしたの」

「でも・・・」


「リーエス。とても残念ですわ。わたくしも・・・、和人さんに実体としてお会いして、腕をお組みしたいですわ・・・」

ユティスは少し顔を曇らせた。


「ごめん・・・」


「ナナン、しかたありませんもの」

和人を振り向いたユティスの目が少し潤んでいた。


「和人さん・・・」


ぽろっ。

つつーーーっ。


涙が一筋ユティスの頬を伝わった。


「ユティス・・・」


すぅ・・・。


涙を拭こうと和人の伸ばした手はユティスの頬を素通りした。


ぐぐ・・・。


切なさで胸が一杯になった二人はベンチに一緒に腰掛けた。


(こういう時は女の子の肩に腕をまわすんだよなぁ。ホントなら、ユティスを抱きしめて、キッスするのに・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「・・・」

「・・・」


沈黙がしばらく二人を包み込んだ。ややあって、ユティスが口を開いた。


「和人さん・・・」

「なんだい?」


「ご自分のイメージを強く描いていただけますか。お手伝いをいたしますから・・・」

「うん・・・」


和人は自分のイメージをユティスのいうとおりに、強く描いた。


「我願う。すべてを愛でる善なるものよ。汝、宇都宮和人を、彼を写す姿と我の姿に魂と力をも与えたまえ・・・」


ぽわん。

ぽわん。


精神体の和人に生体エネルギー場が浮き出てきた。


ぽわぁ・・・。


ユティスにも、虹色の美しい生体エネルギー場がにじみ出ていた。


すす・・・。


ユティスが、和人の頬に手を伸ばすと、和人はわずかにそれを圧力として感じることができた。


「和人さんの生体エネルギー場が増幅して、わたくしの生体エネルギー場と触れ合うと、それを少しだけ感じることができるんです。ただ、握ったり触れたりはできませんが、なにもないよりは・・・。ましになりましたでしょ?」


「リーエス」


「それに、こういうことも・・・」


ぴと・・・。

ユティスは、自分の生体エネルギー場を、和人のそれに溶け合うように重ねた。


ほわぁ・・・。


「ああ・・・っ」


和人は声をあげた。ユティスの暖かい心が、優しく直に和人の心に入ってきたのを感じた。


すぅ・・・。


ユティスの優しく清らかな心は、和人を抱擁するように包み込んだ。


きゅぅ・・・。


和人はまるでユティスに抱きしめられているような感覚になった。


「・・・」

「・・・」


「ユティス・・・。ありがとう・・・」


「きっと、いつか、できるだけ近いうちに必ずお会いしましょうね。わたくしが和人さんのもとにまいりますわ。うふ」

「うん・・・」


ぽっ・・・。

ユティスに微笑みかけられて、和人は真っ赤になった。


(ユティス、きみはなんてステキなんだろう)


「あははは。あっちに、ちょっと行ってくるよ」

和人は照れ隠しでそう言うと、早足で進んだ。


「リーエス」




アンニフィルドは、たまたま、そんな二人を見ていた。


(ユティス、和人・・・。いい雰囲気だわ・・・)


アンニフィルドも安心した。


(あーあ、でも、精神体じゃこれが限界かな。ユティスったら本当に和人のこと好きなのね。自分の生体エネルギー場を相手に重ねるなんて、恋人同士のすることじゃない。ユティスがここまで切なくそして幸せそうなのは、見たことないわ)


「ベネル・ナディア(こんばんわ)。ユティス」

アンニフィルドはユティスに寄ってきた。


「まあ、アンニフィルド。アステラム・ベネル・ナディア(こんばんわ)。そこにいらしたの?」

ユティスはアンニフィルドを見た。


「和人は?」

「その辺をお散歩です」


「そっか。見ちゃった・・・。えへ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えっ?」

「ユティス、和人がホントに好きなのね・・・」


かぁ・・・。

たちまち、ユティスは頬を赤く染めた。


「リーエス・・・」

ユティスはしばらく間を置いて答えた。 


「もう、自分でもなんと言っていいかわからないくらいに。和人さんのこと・・・」


「和人もあなたにメロメロよ。知ってるんでしょう?」

「リーエス・・・」


「応援するわよ」

アンニフィルドはユティスに手を置き微笑んだ。


「アンニフィルド・・・」

「早く恋人宣言しちゃいなさいよ。トルフォなんか恐れちゃダメ。和人が守ってくれるわ」


「そんな・・・」

「わたしとクリステアもいるのよ。エルドだって内心はトルフォのこと良く思ってはいないはず。これ以上トルフォに好き勝手させないわ」


「でも、和人さんが精神体のままでいる限り・・・」

「ふむ。そういうことなのよねぇ・・・」


「・・・」


「トルフォはそれを知ってるってわけ?」

「リーエス。恐らく・・・」


(トルフォ理事。委員会の理事の一人。実力者。最高理事エルドの次を望んでいる方。もう5人も奥様を変えているのに・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(わたくしを自分の妻にすると、はばかることなく公然とわたくしにせまって・・・。いつまで、ごまかし続けれるかしら・・・)


ユティスは思った。


(ユティスはこんなに素敵なのに、最近は思ったほど男のうわさがない。あの憎きトルフォのおかげね。男どもはトルフォを恐れて、ユティスにあえて近づかないようにしているわ。でも地球人の和人なら、トルフォが何者なのかそんなの知らないし、利害関係もない。ひょっとして、これはユティスに吉報なのでは・・・。やはり、相性99.99%は間違いないわ。ユティスが和人を好いているのは傍目でも明らかだし。和人はもちろんユティスにメロメロ・・・。さてと、どうしようかなぁ・・・)


アンニフィルドは素直な和人を気に入っていたので、ふたりの関係を進展させようと考えを巡らすのだった。


「和人?」

アンニフィルドは、ユティスから少し離れて歩いている精神体の和人を掴まえた。


「あ・・・」

「アンニフィルドよ」


「や、やあ。なんだ、アンニフィルドか」


に・・・。

和人は照れ笑いをした。


「なあに、それが挨拶なの?失礼しちゃうわ。『お目にかかれて光栄です、美しいアンニフィルド』、とかないの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そ、そうだったね・・・。あははは」


ぴきっ。

「そうだった?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ち、違うよ。アンニフィルド、きみがすっごくキレイなんで、そのぉ、見とれちゃってたんだよ」

和人はアンニフィルドの長いプラチナブロンドに見入った。


「もう。嬉っしいこと言ってくれてぇ!」


ころり。


「最初に言ってくれればもっとよかったのにぃ・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それで、言葉が出なくなちゃった」


「んーん」

アンニフィルドはウインクをした。


どっきん。


(なんて色っぽい・・・)

和人は思わず視線を外した。


「あなたにユティスがついてなければ、わたしが和人の・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド、いけないわ」

いつのまにかクリステアがそばにいた。


「あはっは、ジョーク、ジョーク」


(ジョークだったのか・・・。ホント、女ってわけわかんねえ)


「おっとっこ、もよぉ」


「あー、オレの心読んだな」

「だって、和人が大声で叫んでるんだもの、あなたの思ったこと皆に丸聞こえなのよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えっ、そうなの?」


「あはは、うっそ。わたしが言いたいのはねぇ・・・、これ。和人、あなた、けっこういい線いってるわよ」


「なんだよ、それ?」

「和人は、女受けするってこと」


「えっ。だって、オレ、ぜんぜん、女の子にもてたことなかったのに・・・」


「地球の女に見る目がないだけね。あなたの心の中の美しさまでは見ることができないのよ」


「心って、オレの心・・・。見れるの?」

和人は真っ赤になった。


「もう、丸見え。こっちが恥ずかしくなるくらいだわ」

「そんなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もう、いい加減にしてくだないな!」

珍しくユティスが大きな声を出した。


「わ、わかったわ。ごめんなさいね、ユティス」

アンニフィルドがすぐに謝った。


「ユティス、苛立ってるわねぇ・・・」

「アンニフィルド、きみのせいだろ」


「でも、あなたもしっかり反応してたからでしょ」

「な、なに言ってんだよぉ・・・」


「じゃ、行くわね」


「ベネル・ナディア(おやすみなさい)、和人」

「ベネル・ナディア(おやすみなさい)、アンニフィルド」

「アステラム・ベネル・ナディア(おやすみなさい)、アンニフィルド」




アンニフィルドとクリステアが去っていき、和人とユティスは『星空のデート』に戻った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さん、今度は地球の星空のご様子を教えていただけますか?」

「うん。主星は太陽ソルと呼ばれているんだ。スペクトクルGの主系列星で、誕生後50億年くらいらしい。絶対等級は4等から5等の間くらい」


「うふふ。あれから勉強なっさたの?」

ユティスは嬉しそうに微笑んだ。


「少しだけね。あは」

「それで、絶対等級とはなんなのですか?」

「うん。なんでも1パーセクって距離から見た恒星の明るさを示す単位で、すべての星の本当の明るさを表せるんだよ」


「パーセクですか・・・。光年でいうと、いくらくらいでしょうか?」

「確か・・・、32光年くらいだったと思うな・・・」

ユティスはすぐに暗算し終えたようだった。


「そうすると、太陽は、まだまだ何十億年も輝き続けることができますね」


「うん、後50億年くらいはね。太陽系の恒星はこれ一つだけ。中には、1光年くらい離れた、褐色矮星と連星系を作っているんじゃないか、という学者もいるらしいけど、まだまだ未確認でね。太陽の軌道のブレも未確認だし、証明はされていないんだ」


「そうですわね。星たちは大抵は連星系を作っていますもの」

「それに、大きなガス惑星が4つ。木星と土星は特に大きいけど、恒星になるほどは大きくはなくて、科学者たちは恒星になりそこねた星だと思っている」


「そうですか」

「地球は岩石惑星の一つで、太陽系の内側に全部で4つあるんだ。太陽から近い方から3つ目が、それが地球さ」


「エルフィアは4つめですわ」

「太陽系だと火星かぁ・・・。そうなんだ」

「んふ。リーエス」


「それに、惑星とは呼べない大きさの岩石の準惑星がたくさんあるよ」

「エルフィア星系には、大きな惑星は全部で12個ほどですわ」


「ずいぶんと多いんだね」

「平均的ですわ」

ユティスは頭上を見上げた。


「夜空はどうですか?」

「ああ、ここもエルフィア銀河の断面がとてもきれいだね」


「リーエス」


「地球では、ここのように天空を横切るようにして天の川銀河の断面が見えるんだ」


「銀河面に対して横倒しの形で、地軸が位置しているためなのですね?」

「そう。太陽系自体が63度くらい傾いてるって聞いたことがあるよ」

「エルフィアは45度くらいですわ」


「だから真上を見上げなくても、少し目の位置を上げるだけでエルフィアの天の川が見えるんだね」

「リーエス」


「それにしても、エルフィアの天の川ははっきり光ってて、とってもキレイだね?」

「そうですね」


「地球の天の川はもっと暗くてぼんやりしているよ。ここは、肉眼で見える星も地球の2、3倍はありそうな気がする。なんて美しいんだろう」


「リーエス。いつまでも眺めていても飽きませんわ。おそらくですけど、地球は銀河面には位置していると思いますが、銀河の主たる渦状腕から、少し外れているのかもしれません」


「どういうこと?」


「エルフィアは、エルフィア銀河の主たる2本の大渦状腕の一つにほど近いところに位置しています。星がたくさん集まっている部分です」


「だから、こんなにもたくさんの明るい星が見えるんだ」

「リーエス」


「でもね、和人さん。各々の星はみんな2億年くらいで銀河面を1周するように常に移動しています。地球の太陽だって、いつかは大きな渦状腕の中に入ることもあるはずですわ」

ユティスが感慨深げに言った。


「そして過去にも。何度かそれを繰り返していたはずです」


「へえー。すると、その時には、今よりずっと星空はにぎやかだったんだ」

「そういうことになります」

ユティスは夜空を見上げたまま言った。


「本当に、まるで宝石を撒き散らしたような星空だよ。ステキだね」

「リーエス」


にっこり。

ユティスは和人に微笑んだ。


にこっ。

和人も微笑み返した。


「それで、思い出した・・・。ステキな伝説を・・・」

「なんでしょうか?」


「地球ではね、天の川、あー、これは銀河を横から見た断面のことだけど、それをはさんで2つの明るい星があって、青白くて清楚な感じがする方が織姫、黄色ではつらつとしている感じの方が牽牛って名前がついているんだ」


「お話しからすると王女様と王子様かしら?」

「そんなとこ。それでね」


「リーエス?」


「2人は働き者だったんだけど、恋に落ちてからは仕事をサボって、デートばっかりしてね。ちっとも働かなくなったんだ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あらあら・・・」

「それで、天帝という社長さんが怒っちゃって・・・」


「社長さんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あはは。例えだよ。例え。とにかく、彼が川をはさんで2人を離れ離れにしちゃった、てわけなんだ」

「まあ、可哀想に。職権乱用ですわぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でもね、1年のうち7月7日の1日だけは、お互い会っていいことになったんだ」

「それはよかったですわ」

にこ。


「けど・・・」

「まだ、あるんですか?」


「うん。川を船で渡るから、その日に雨が降ると水かさが増して危険になるだろ?」

「リーエス?」


「だから、その時はいくら一年に一度とはいっても、船が出せないんだ」


「でも、この時期は梅雨と言って、日本は雨季なんですよね?」

「リーエス」


「どうして、わざわざ雨の降りやすい時期を選んで、社長さんはお会いになる日と決めたのでしょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「計らいってやつじゃない?」

「とても意地悪ですわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「雨だと、お二人、会えないんですね?」

「そうなるね」


「1年に、たった1日きりなのにですか?」

「リーエス」


「代わりになる日は、ないんですか?」

「ないんだな、これが・・・」


「まあ、可哀想・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうなると、次の1年を待つしかなくなってさ」


「また、その日に雨が降ると?」

「またまた、会えなくなる」


「天帝って、ひどい社長さん」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、その日にちゃんと晴れると、2人は1年ぶりの再会を1日楽しめるってわけ」

「そうですか・・・」


「と、まあ、こんな伝説でね。七夕って言うんだ。竹笹に願い事を書いた短冊を吊るして祝うのさ」


「それは恋人たちのお祭りですか?」

「恋人たちはもちろんだけど、それ以外の人もね。願い事がある人はもれなく。例えば、受験生。試験合格だとか。欲しい物とか。健康とか」


「なんでもですか?」

「リーエス。人殺しや泥棒といった、人に迷惑をかけるものじゃなきゃね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「和人さんも、お願いをしたのですか?」

「子供の頃はね」


「みんな、どんな風にお願いするのでしょうか?」

「どうだろうね。やっぱり、健康、お金、試験合格、それに、恋のお願いが、圧倒的に多いんじゃないかな」


「すると、若い男女が中心ですか?」

「リーエス。そういうことになるね」


にこ・・・。

ユティスはいたずらっぽく笑った。


「うふふ・・・」

「どうしたの?」


「願い事がたくさんあったら、どうしましょうか?」

「ぜんぶ書くんじゃないかな?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぜんぶは・・・」

「ユティスには願い事がそんなにたくさんあるの?」


「リーエス。早く和人さんのいる地球に行きたいとか。早く和人さんに会いたいとか。早く和人さんと一緒に歩きたいとか。早く和人さんにお料理を作りたいとか。早く和人さんと地球の夜空を見たいとか。早く和人さんの声を聞きたいとか。早く和人さんの・・・」


「ちょっと待った・・・。それ、一つにまとまらない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どう、まとめるのでしょうか?」


「んー。いっぱいオレが出てくるんだけど・・・」

「じゃぁ、こうしますわ!早く、和人さんと地球で七夕祭りを迎えられますように」

「そりゃ、いいや!」


「うふふ。和人さんは?」

「オレは・・・、ユティスと・・・」


「わたくしと・・・?」

「そのぉ・・・」

ユティスは目を輝かせた。


「なんですの?」

「ユティスと一緒に・・・」


「わたくしと一緒に?」

「一緒に・・・」


「お風呂に入りたい!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ・・・!お風呂にですか・・・?」


かぁ・・・。

ユティスは一瞬で真っ赤になった。


「んふ・・・」


にこっ。

しかし表情は少しも嫌という様子ではなかった。


かぁーーーっ。

和人も真っ赤になっていた。


「い、今、言ったの、オレじゃないからね!」

「違うんですか?」

ユティスが少し残念そうに言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「だ、だれだよ。今、言ったのは?」


すす。

アンニフィルドが真っ赤になったふたりの間に割って入った。


「ばあーーーっ。だーーーれだ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド!なんてタイミングで入ってくるんだよぉ!」

「あははは。冗談よ!」


「もう、心臓が飛び出るところだった。家に帰ったんじゃないのか?」

「と思ったんだけど、感が働いちゃって」


「なんの感だよ?」

「見逃してはならない、決定的シーンよ。うん!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「二人とも、見事にうろたえちゃって、可愛いわよぉ。あーーー、面白かった。じゃあね!」


「ちょっと、アンニフィルド?」

「ごめんなさい。わたし、デートがあるの」


「な、なんなんだよぉ。いったい・・・」

「失礼しちゃうじゃないの。助けてあげたのよぉ、SSセキュリティ・サポートとして・・・」


すっす・・・。

アンニフィルドは和人に近づいた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティスとその辺の会話ができるようによ」

「なにが、その辺だよぉ・・・」

ぽっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。ユティス、あなたのことまんざらでもないわよ。OKするかもね・・・。和人、本当はユティスとお風呂に一緒に入りたいと思ってるんでしょう?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「え・・・。バ、バカ言うなよ!」

「素直じゃないわねぇ。ユティスは絶対にその気あるわよ」

「ええ・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド・・・」

「じゃぁねぇ・・・」


アンニフィルドは和人にだけ聞こえるように話すと、さっさと後ろを向いて消えていった。

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