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063 助け

■助け■




二宮と和人は、逃げるようにして出た。


「さっきのユティスの報告はおまえがしろよ!」

「でも、直接まかされたのは、先輩でしょうが」

「ユティスを呼び出して、滅茶苦茶にしたのはおまえだろ?」


つんつん。

二宮は和人のわき腹をつついた。


「あれはオレが呼んだんじゃないですよ。ユティスが勝手に・・・」

「女の子に責任をなすりつけなんて、なんて卑劣なヤツだ」


ぽかっ。


「痛っ。先輩だって最初っから放り投げてたじゃないですか?」

「岡本さんにユティスがなりすましていたからだろ?」

「だから、あれはオレじゃなくユティスの意思です」

「往生際の悪いヤツだな。とにかく、オレはしゃべらないからな」

「先輩・・・!」

「和人、おまえにまかす。以上」




用を足して、二人は会議室に入った。


「なんか、会議室が異常ににぎやかだったけど、なにをそんなに盛り上がってたの?」

真紀が二宮にきいた。


「まぁ、その、そういうことになるでしょうか。ははは・・・」

「和人、学生の世話は大丈夫だったのか?」

「ええ・・・」

「イザベルってビジネススーツ似合うわねぇ・・・」

「そうでしょう。えへ・・・」


でれでれ・・・。

二宮はデレーっとした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「二宮、役得だったな」

「うっす。感謝しております。常務殿」

「こら。二宮、そう言う時のあなたは必ずなんかウラがあるんだから」

真紀が二宮を見透かすように言った。


「白状しろ」

俊介が二人を交互に見つめた。


「へっ、なんのことで?」

二宮はとぼけた。


「ユティスという社員は、ここにはおらん・・・」

俊介はいきなり核心にせまった。


(げ、げ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス、ここにいたんでしょ?」

真紀が二宮にきいた。


「えー。オレは夢なんてものは・・・」

「夢に出ただけじゃないってことよね?」

「あー、あのですね。オレもそんな社員に会ったことは・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮は涼しい顔で和人に視線を移した。


「ほう。おまえは知ってるようだな・・・」

俊介はにやにやしながら和人を見た。


「オ、オレですか・・・」

和人は冷や汗が噴出してきた。


「ここで会ったんだろ、ユティスに?」


(どうしよう・・・。ユティスは、精神体で、彼女もオレも、エルフィアと地球を行き来できること、まだ先輩には言うべきじゃないって・・・。社長と常務はスターチャイルドってことも、二宮さんには内緒だよな。この二人にはユティスのこと洗いざらい言いたいけど、ここで言っちゃっていいんだろうか・・・)


ぱさっ。

真紀は紙を取り上げておもむろに読み始めた。


「じゃ、これ、読むわね」

「え?」


「ユティスさん。ダークブロンドにアメジスト色の瞳。ユーモアもあって、とってもすてきな方。なんて可愛くてきれいな人でしょうか。うらやましいです。お会いできて光栄です。この会社、国際的ですね。気に入りました・・・。これは、イザベルの・・・」


ぱさ。

俊介は次の一枚を取り上げた。


「こっちはこうだな。ユティスさん、なんてすてきな方でしょうか。あんなに優しくて聡明な方がいらっしゃるなら、この会社はとても素晴らしい会社に違いないと思います」

「ふむふむ・・・」

「ところで、一つ質問です。ユティスさんの出身国、エルフィアって、聞いたこともないような気がしますが、それって、どこにあるんですか?」


「そ、それ・・・」

「これよ。学生募集の手助けをしてもらったようね。お礼したいわ、ユティスに・・・」

「文明支援の一環か?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ばさ・・・。

真紀は和人と二宮の前にそれを広げた。


「げ、げ。学生の訪問感想アンケートだ・・・」

「さぁ、観念するのね。ユティスはここに現れたんでしょ。白状しなさい、二人とも」

真紀は身を乗り出して二人を見つめた。


「ユティスに会ったんでしょ?」

「オレは知りません」

二宮は即答した。


「じゃ、和人?」

「ええ?オレ・・・」

「そうよ。さ、おっしゃいなさい」

真紀は和人にやんわりと言った。


「二宮、行っていいぞ」

俊介は二宮を解放した。


(ラッキー、常務殿・・・)


「うっす。失礼します。じゃぁな、和人」


がたっ。

二宮は、嬉しそうに席を立った。


「あ、二宮、ちょっと待って」

真紀がそれを制した。


「は?」

「イザベルに聞かれた時には・・・」

「イザベルちゃんにですか?」

「そう。その時はあなたが答えるのよ。本当のことを」

「ええ?」

「あれだけ印象を残したんだから、道場であったら、聞かれないわけないわよねぇ」

「そ、それは・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「行ってよし」

二宮は立ったまま身動きできなくなった。


「本当のことって・・・」

「おまえもからんでいるってことはお見通しだ」


すとん。

結局、二宮はそのまま立ち去ることができず、席に座り直した。


にやっ。

「認めたな・・・」

俊介はにやりとした。


「さてと、あらためて報告をしてもらいましょう」

真紀は二人を見つめた。


「4人とも入社意思はありますよ」

二宮はまたまたはぐらかした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「そりゃ、けっこうね。でも、わたしがききたいのはユティスのこと」

「なんで黙ってる?」

「いつ、どうやって来たの?少なくとも、わたしたちにわからないように」

「あー、ははは。和人くんの・・・」

「和人の?」

「おまえが言えよ、そんなこと」

いきなり二宮は和人に振った。


「・・・」

真紀と俊介は待った。

(先輩あのまま行ってくれてた方が話し易かったよ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


4人とも無言で3分経った。


「ま、無言ってのは事実を認めてるってことよね?」


真紀が話し始めた。

「わたしたち時間がないんでもう出かけるけど、あの学生さんたちが周りにいろんなことしゃべらないとも限らないわよねぇ。どうなると思う?」

「え?」

「あ・・・」


「一企業の社長として、世間に変な勘ぐりを入れられるのは、嫌なの。わかるでしょ?」

「はぁ・・・」


和人の心配事がわかってるかのように俊介が言った。


「和人、オレがいつか言ったとおりだが、ユティスの助けが必要だ。さっき会えなくて残念だったよ。今度は、是非、彼女に直接会いたい。そして話したい。今度現れるなら、オレたちに引き合わせてくれ。以上だ」

「わたしたち用事があるから、もう出かけるわ」

「おす・・・」

「はい」




仕事が終わり、二宮と和人は焼き鳥屋に入っていた。


「おまえ、ユティスの精神体とかのことちゃんと考えとけよ。オレ、本当におまえたちのこと知らないんだからな」

「はぁ・・・」


「へい、大生、二丁!」

「ありがと・・・」


「ナンコツ、カシラ、レバー。全部塩で2人前」

「へい、喜んで!」


「じぁ、ユティスに乾杯」

「ユティスにですか?」

「そうだよ。ついでにおまえにも」

「オレはついでですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいじゃないか、祝ってやるんだから」

「じゃ、イザベルさんに」

「おう。お互いにな」


かちん。

ぐびぃ・・・。


「和人、真紀さんの話だと、ユティスが精神体で現れたってことにえらく関心があるようだけど、なんかそれに特別な意味があるのか?」

二宮は和人を見た。


「なんかって・・・」

「例えばだな、精神体とはいえ、それはユティス本人の意識だろ?」

「ええ、確かにそうですけど・・・」

「ということはだ。ふむ。本人がここに来た。それに間違いない、よな?」

「そういうことになります」


「精神体で、何百光年か何千光年か知らないが、その途方もなく遠いところから一瞬でやって来た訳だ」

「はぁ、そう考えると、ものすごいことだけでは片付けられないですね?」

「うむ。そこでだ」

二宮の口調は俊介のそれになっていた。


「その逆ということも、可能性があるかもしれない、ということだよな?」

「逆の可能性?」

和人は二宮の洞察力に驚いた。


どき・・・。


「そう。つまり、そのテクノロジーでおまえも精神体でエルフィアに行く。いや、行った・・・。てことは、十分可能だったんだよな?」


(す、鋭い・・・)


「先輩、なにを?」

「おまえ、毎日のように昼休み中エルフィアに行ってきてるんだろ?」

「あ・・・。ええ・・・」


ぴんぽーーーん。


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうだった?」

「どうって・・・」

「だから、どんな景色とかさぁ。きれいな女の子がいっぱいたとか、いなかったとか」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ちょっと、待ってください。オレ・・・」

「なんだよ?羨ましくないって言ったらウソになるけど、だからっておまえに嫉妬してる訳じゃないぞ」


「先輩・・・」

「で、どうだった?」

「あ、はい。とってもキレイなところです」

「だろうな。で、景色だけじゃなく女の子もか?」

「は、はぁ・・・?」


(結局、そこですか、先輩。常務と同じだな・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


和人はアンニフィルドとクリステアを頭に浮かべた。


「そりゃ、もちろん美人で、武道の達人で・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そっかぁ。ところでよぉ・・・」

「はい、なんでしょう?」

「学生の会社案内だけど、最初はどうなるかと思ったぜ」

二宮は和人が精神体でエルフィアに行ったことについては、それ以上突っ込んでこなかった。


「女の子はともかく、あの男子二人は、いい感触じゃないでんすか?」

和人がほっとしたように言った。


「ああ。しっかし、イザベルちゃんだよなぁ、問題は・・・」

「やっぱ、それですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「当たり前よぉ。他は、オレにとって関係はない」

「言い切りますか、先輩?」

「でへへ。あの初々しいオフィススーツ、よかったよなぁ。意外に出てるところは出てて、引っ込んでるところは引っ込んでて、グラマーだってわかったし・・・。なぁ、和人?」


でれ~~~。


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮はイザベルを思い出して一人笑みを浮かべた。


「先輩、よだれ、よだれ!」

「ん、なに。うわっ」


--- ^_^ わっはっは! ---




(いやぁ、ホントに奢らされちゃった。それにしてもタダ酒ならいくらでも飲むんだもんな、二宮先輩)


--- ^_^ わっはっは! ---


(もう、11時だよ。ユティスには昼間会っちゃったから、今日は、もう来ないんだろうなぁ。こっちにいれる時間に限りがあるって言ってたし。さっさと風呂入って、寝よ・・・)




(和人さん・・・、和人さん・・・)

和人は枕元にユティスが現れた夢を見た。


(なんか、妙に現実っぽいぞ・・・)


「ユティス!」

和人は飛び起きた。ユティスは和人の枕元に正座していた。


「ユティス、どうしたの?」

「和人さん、起こしてしまいましたか?」

「う、うん・・・」


「なんか、和人さんに無性にお会いしたくなってしまいまして・・・。そちらが深夜だとは、わかっていたのですが・・・」

「いいんだよ。会えて、嬉しいな・・・」


にこ。

「うふ。和人さんの寝顔、とってもステキでした・・・」

「うわっ、なに言ってるんだよ。ずっと見てたの?」


かぁーーー。


「うふ。数秒程度ですけど、長すぎましたか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことはないよ」

「良かった。昼間のことですけど、みなさんを驚かせてしまいまし。ごめんなさい。びっくりなさったでしょう・・・」

「う、うん。でも、気にしなくていいよ。みんな、きみのこと歓迎してるしさ・・・」

「まぁ、本当ですの?」


「リーエス。アステラム・ベネル・ナディア(こんばんは)、ユティス」

和人はあらためて挨拶をした。


「はい。アステラム・ベネル・ナディア(こんばんわ)。うふふ」

ユティスも笑顔で答えた。


「今日は、なにかいいことでもあったの?」

「リーエス。和人さんにこうしてお話ができました。んふ?」

「ユティス・・・」


和人は目頭が熱くなり胸が高鳴った。


「ほんと?」

「リーエス」

「う、嬉しいよ」

「はい」

「でも、なんか伝えることがあるんでしょ?」


「リーエス。わたくしが地球に来るために必要なことです。それをお話したいのです」

今晩のユティスは少し真剣で切実な感じがした。


「和人さん。地球は宇宙のどこにあるかご存知ですか?」

「え?そんなのわからないよ・・・」

「わたくしもです・・・」

「そ、そうだね・・・」


「これで、わたくしが和人さんにお会いできると思われますか?」

「無理・・・かな・・・」


「絶対に実体同士でお会いしましょうねと、お話しましたよね?」

「リーエス。したね・・・」


「そのお気持ちに変わりはございませんか?」

「リーエス。今も会いたくしょうがないよ・・・」

「わたくしもです・・・」


「どうすればいい?」


「地球のある天の川銀河、その宇宙座標。天の川銀河での太陽系の座標。これらの情報をいただきたいのです。わたくしからは、エルフィアについて、その情報をお出しいたします。双方で、その位置を確認し合うことが、早急に必要となっています。ご協力いただきたいの。今日は、あまりお時間がありませんわ。それで、今度、和人さんをご招待する時には、エルフィア銀河についていろいろとお教えいたします」


「リーエス。助けが必要なら言ってよ・・・」


にっこり。

「リーエス。是非とも、和人さんのお助けが必要です・・・」

ユティスは和人に微笑んで、愛しそうに見つめた。


ちゅ・・・。


「では、また・・・」


しゅうーーーん。


ユティスの精神体は空中に溶けるようにして消えていった。ユティスのキッスを、和人は頬に感じることができなかった。


ずきん!

(痛いよ・・・、ユティス・・・)


しかし、和人のハートに確実に突き刺さっていた。

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