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062 勧誘

■勧誘■

 



学生たちにユティスは語り始めた。


「はじめまして、みなさん。わたくしはユティスと申します。エルフィアから来ましたの」

「エルフィア?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今は、ここでお勉強中ですわ。先ほどは驚かせてしまってごめんなさい」


にっこり。

ユティスは4人に向かって会釈すると優しく微笑んだ。


「う、うそぉ。天使みたいな人・・・」

思わずイザベルが言った。


「いいかい、ユティス。きみは精神体ってこと忘れちゃだめだよ。なんにも触らないこと、絶対に」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい、和人さん」


きょとん。


「精神体って・・・」

イザベルは不思議そうに、ユティスを見た。


「あはは。精神一体で頑張るってこと・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なるほど。とっても真剣なんですね?」

「はい」

にっこり。


ぽーーー。

さっきの疑惑はどこへやら、学生たちは夢見心地になっていた。


「ユティス・・・。すてきなお名前ですね」

もう一人の女子学生が言った。


「こんなこと言って失礼かもしれませんが・・・。なんて可愛いくて、美しい人なんだ」

男子学生の一人がもう一人に同意を求めた。


「そ、そうですよ・・・」

かぁーーー。


(愛想振り撒き過ぎだよ、ユティス・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスに微笑まれた男子学生2人はたちまち真っ赤になった。


「学校をご卒業されたら、絶対ここに来てくださいね。わたくし、一緒にお仕事できたらとっても楽しくなろと思いますわ」


にこっ。

ユティスは優しく言った。


「は、はい・・・」

ぽーーー。


「2人は確保だな。和人?」

「リーエス・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


二宮がほっとしたように小声で言った。


「それでなんですけど、地球の学校のことを少しお聞きしてよろしいでしょうか?」

ユティスが男子学生の一人に言った。


「地球の学校?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス、地球だけ余計!」

和人は気が気でなかった。


「んふ?」


「はい。なんなりと・・・」

かぁーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスに見つめられた男子学生は思わず目を伏せた。


「学校ではどんなことをお習いになってますの?」

「コンピュータとか、ソフトウェアとか、インターネットとかに関してです」

「んふ。楽しいですか?」

「はい、一応・・・」


にっこり。

「それは良かったですね。イザベルさんあなたは?」


(ほぇ・・・。この娘、イザベルって名なんだ)

(やっぱし、ハーフか・・・)


男子学生ははじめてイザベルの名前を知った。


「おい、こっちの女の子も、超可愛くないか?」


男子学生2人は互いに目配せした。


「ハーフだよ、絶対」


ぴきんっ。


(あ、この野郎、オレのイザベルちゃんに色目を使いやがって!)


--- ^_^ わっはっは! ---


男子学生たちの目線はたちどころに二宮のチェックにひっかかった。


(うーーー。こいつらに、右上段蹴りをプレゼントしてやってくれ、イザベルちゃん!)

二宮は頭の中でうなった。


「いけませんわ。二宮さん」

ユティスが言った。

「えっ、なにがいけないのでしょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぽかん・・・。

学生たちにもユティスの声が聞こえていた。


「ユティス!」

「すみません」


学生たちは、ユティスがみんなの頭で考えたことが聞こえているということを、そもそも理解していなかった。


「そうそう。うふふ。地球のコンピューターはどんな仕組みなんですの?」

「まただ。地球のコンピューターだって・・・」

学生たちは首を傾げた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「地球、地球ってどういうことかしら?」

学生たちはまた見合わせた。


(ユティス、地球、地球って、言っちゃダメだってば。きみが地球人じゃないことがバレちゃうじゃないか・・・)

(でも、こうしてお慣らししないといけない、とおっしゃたのは、和人さんですよ。うふふ)

ユティスは悪戯っぽく笑った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「どんなって、地球のコンピューターは、0と1のバイナリですけど・・・」

「そうですか。計算能力はすごいんでしょうね?」

「はい、最高のスパコンなら1秒間に100京回計算ができるはずです」

「それは素晴らしいわ」


にこ。

ユティスは微笑んだ。


「みなさん、学校には何年間いかれるのでしょうか?」

「大抵、6歳から9年間の義務教育をしてその後は人によりけりです」

「わたくはその後3年間高校に行って、情報系の専門学校の2年目です」

「わたしもです」

「なるほど、みなさんよくお勉強されるんですね?」

「ええ、まぁ・・・」


「それに、夜には焼き鳥屋さんで先輩による野外学習。お昼は、お昼ねの実習もあるんです。そうですよね、みなさん」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人が笑って付け加えた。


「あははは」

「うふふふ」

「まあ、楽しそうですわ!うふふふ」

「あははは」

一同は大笑いした。


「でも、課外学習は本当にあるんですよ」

イザベルが他の3人と頷きながら答えた。


「そうですか。正規の講習コースの他になにかなさってますの?」

「クラブのことですか?」

「リーエス」

「リーエス?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はいってことだよ。ユティスは、ほれ、外国人だから・・・」

「あ、そうでしたね・・・」

学生たちは一応納得した。


「軽音楽です」

男子の一人が言った。


「まあ、和人さんと同じなのですね?」


にこ。

「和人さん?」

4人はいっせいに和人を見た。


--- ^_^ わっはっは! ---


「彼氏さんですか・・・?」

イザベルたちはびっくりした。


「いやぁ・・・。みんながそう呼ぶんですよ。宇都宮じゃ、言うのに長すぎるからねぇ」

和人が弁解した。


「そうですか・・・」


(でも、あの宇都宮さんを見る目は、とっても感情がこもってたけどなぁ・・・)

イザベルはユティスを見つめた。


「あなたは、なにをされてるのですか?」

「テニスです」

「テニス?」

ユティスはテニスを知らなかった。


「ユティスさんはご存知ないのですか?」

「あ、はい・・・」

「しまった・・・」

和人は思わず言った。


「ユティス、ラケットでボールを打ち合うスポーツのことだよ」


(これこれ・・・)

和人は急いでユティスにイメージを送った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あ、なるほど、そういうのをテニスっていうのですね」

「そうそう」

「そういうのって・・・?」

「今、なんかちゃんとした説明してた?」

「いえ・・・」


(えっ。この二人なんなの。たいして会話してないのに、今のでテニスがなんだかわかったってことかしら・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(テレパシー?まさかね・・・)


ぷるぷる・・・。

イザベルは首を振った。


「ぼくはロボ研です」

「ロボ研?」

「ロボットを研究するところです」

「おもしろそうですね」

「はい」


「イザベルさんは?」

「カラテです。二宮さんと同じ道場に通ってます」

イザベルは二宮を見つめて、少しだけ微笑んだ。


(イザベルちゃん・・・)

でれでれ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


ぽーーー。


二宮はイザベルに見つめられ、舞い上がって赤くなった。


「そうでしたわ。イザベルさん、黒帯なんですってね。二宮さんからおうかがいしていますわ」


(げげ。それ以上言っちゃ、ダメ。ユティス)

(リーエス)


男子学生二人はイザベルを見てびっくりした。


「カラテ、黒帯、二宮さんと同じ道場ですか?」

「なんだぁ・・・、知り合いなのかぁ」


がっくり。


「たまにお会いするくらいですよね、二宮さん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


イザベルははにかむように言った。


「お、おす。コンビニで、その分埋め合わせいただいてます・・・」

「え?」


--- ^_^ わっはっは! ---


(うっせーな、おまえら。オレのイザベルちゃんに、ちょっかい出すんじゃねーぞ)

二宮は頭の中で毒づいた。


(ふふふ、ごめんなさい、二宮さん)

ユティスは二宮にそっと言った。


「質問していいですか?」

イザベルが手を上げた。


「はい、どうぞ」

「ユティスさんは、どうして、この会社に入られたのですか?」

「うーーーん。困りましたわ・・・。正式には所属してませんの」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えっ?」

「会社の方じゃないんですか?」

学生たちはびっくりした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「派遣ですね?」

男子の一人が口をはさんだ。


「今は、社長さんたちが手続き中なんです。近々、正式にそうなりますわ」


(ですよね、和人さん?)

(え?)


--- ^_^ わっはっは! ---


「そ、そんなとこかな・・・」


ひんやり・・・。

和人は冷や汗が出てくるのを感じた。


「ユティスさんは、どうしてここをお選びに?」

「お仕事が楽しいですし、スッタフの方が優しいしい方ばかりですし・・・」

ユティスは和人と二宮を見つめた。


じぃーーー。

どっきん・・・。


和人はユティスの大きなアメジスト色の潤んだ瞳に見つめられて、ドキドキして顔を赤らめた。


どきどき・・・。

かぁーーー。


--- ^_^ わっはっは! --- 


「あ・・・」

学生たちは声にならない声をあげた。


「好きな人がいるからとか・・・」


にたり・・・。

イザベルではないもう一人の女子学生が意味ありげに言った。


「え・・・。ええ・・・」

ユティスは間を置いた。


じいーーー。

ユティスの目線は和人に注がれていた。


ひょい。

学生たちは和人に視線を移した。


どっきん。

和人は明らかに動揺していた。

どぎまぎ・・・。


「あの・・・」


かぁーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


ユティスが言いかけて和人の顔が火照ってきた。


「わたくしはここのみなさんが大好きです・・・」

「ユティス・・・」


かちっ。

和人の心臓は爆発寸前でカウントダウンを止められた。


(ほっ・・・)


すかーーーっ・・・。

学生たちは拍子抜けした。


「また、いつかお会いしましょう。ステキな学生さんたち」

ユティスはなんともないように締めくくった。


「あのぉ、是非とも聞きたいんですが・・・」

「なんでしょうか?」

「この会社、なんか男女間に自由な雰囲気があるんですけど、社内恋愛も、比較的大らかなんですか?」

「うん、うん」

学生たちは頷いた。


「よろしいんでしょうか、ほっぺにキッスくらい?」

もう一人の女子学生が単刀直入にきいてきた。



(あー、ユティスが内緒話してきたところを誤解されちゃったぞ)


あたふた・・・。

和人はあわてためいた。


「うふふ、どうでしょうか。わたくしの個人的な感想ですけど、女性は本当に好きな人には、いつでもそうしたいものですわ。そして、相手からもそうしてもらいたいと・・・」

ユティスは和人を見つめて、すぐに目を伏せた。


「きゃあ、意味深・・・」

「やっぱりキッスされてたんですね。お二人、恋人同士なんですか?」

女子学生は喜んだ。


ぽかん・・・。

男子学生は口をあんぐり開けて今後のなりゆきを見守ることにした。


「おいおい、和人。どう後始末をつけんだよぉ。オレ知らないぞ!」

二宮が和人を小突いて小声で言った。


「二宮先輩・・・」


「それで、ユティスさんのお考えは?」

「・・・」


じぃーーー。


にっこり・・・。

ユティスは和人にありったけの想いを込めて微笑んだ。


「わたくしからはお答えできませんわ・・・。和人さんにお聞きになって・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「きゃあ、きゃあ!」

「ステキ!」


早速、和人は弁解をする羽目になった。


「ユティス、ここで振んないでよ。あのねえ、みんな、あれはキッスじゃないの。あの時はユティスがオレの耳元で内緒話をしただけ」


「えー、うっそー!」

「ホントにホント!だろ、ユティス?」

「リーエス・・・」

「なーーーんだ、びっくりしたぁ・・・」

学生たちはがっかりした。


「はぁ・・・」

今のユティスは精神体であることが恨めしかった。


「本当は、そうできればいいんですけど・・・」

「えーーー!」


--- ^_^ わっはっは! ---


という風に平和的に受け取れない輩もいた。


むかっ!


(くっそう、和人ばかりいい目にあって。イザベルちゃんが目の前にいるというのにオレのことまったく考慮してないぜ。ちくしょう、和人の野郎、今日は絶対ぶっ殺す!)


どか!

いきなり、二宮は和人の足を踏んだ。


「痛っ!」


ぐいっ。

「調子に乗るなよ」

「先輩・・・」

「今日はおまえの驕りだ」

「んな・・・」


ぽかり。

「うるさい。一人だけいい目に合いやがって!」


「それじゃ、わたくしは戻ります」

ユティスは優雅に膝を折って礼をした。


「ありがとうございました」

女子学生たちはユティスにため息をついた


「ユティスさん、なんてステキな人なの。まるで天使みたい・・・」

「うん。オレ、ここ真剣に受けようかな・・・」

「わたしも考えるわ」




「今日は、ありがとうございます」

「どうも」

「来春は、ここに来てくださいね」

「はぁい」

会社全員で学生たちを見送り、4人はセレアムを後にした。


和人たちはビルの1階まで同行して彼らを見送った。


「では、失礼します」

「失礼します」

「4月には来てよね」

「考えときます」

4人はセレアムを背にした。




「さてと、二人とも、会議室に戻って」


ぽん。

ぽん。

真紀が和人と二宮の肩を叩いた。


「会議室ですか?」

「当たり前だ。学生たちの会社案内、その結果報告をまだ聞いておらん」

俊介はニヤニヤしながらエレベーターのドアを開け二人を入れた。


「はぁ・・・」

和人は二宮を見た。


「あ、ちょっと、トイレ。失礼します」

二宮は時間稼ぎに走った。


「オ、オレも」

「待ってるわよ、お二人さん」


真紀は俊介の側で二人ににやりと笑った。

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