049 顧問
■顧問■
IT研究会で和人と石橋は懇親会兼名刺交換会に臨んでいた。
「石橋さん?」
「は、はい、和人さん」
石橋は自分の考えから現実に戻った。
「お父さんは?」
「それが、まだ来てないようなんです」
「そうですか」
(さっきの間々田さんのプレゼンに同席してなくてよかった・・・)
和人は少しほっとした。
--- ^_^ わっはっは! ---
その時だった。
「こっち、こっち!」
どかどかどか・・・。
IT研究会のホストを務める大谷社長が、片手にビールの入ったグラスを持って、石橋の父親を二人のところに連れてきた。
「いやいや、先ほど大正解をされた女性は、石橋さんのお嬢さんでしたか!僕もびっくりです!」
大谷社長は石橋可憐の前で、大げさに喜んだ。
「また、これはすばらしく可愛いらしいお嬢さんで。いや、セクハラにとらんでくださいよぉ。純粋に褒めてるんですから。ボクだって、十分に気を使ってますよぉ」
「ははは。今日は、大谷社長をびっくりさせようかと思ってね」
石橋の父親は気を良くした。
「石橋の娘の可憐です」
ぺこり。
「か・れ・ん、さん?いやはや、名は体を表すと申しますが・・・、文字通り、なんと可愛いらしいお嬢さんかと・・・。ですよね?」
大谷は和人を向いた。
「あ、はい、もちろん」
--- ^_^ わっはっは! ---
かーーーぁ。
「そんなぁ・・・」
可憐はさっと顔を赤らめた。
「で、こちらは?」
「娘の会社の同僚の、えーと・・・」
「宇都宮と申します」
「いや、宇都宮さん。ようこそ、IT研究会へ。よくいらしゃいました。石橋さんのお嬢さんのボーイフレンドとかで・・・」
「はいっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「本当のこと言いますと、石橋さんは先輩なんですよ。わたしの方が年上ですけど・・・」
「いや、いや、恋に歳は関係ないでしょう。ね、石橋さん?」
「無論です」
(かんべんしてくださぁーーーい!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「宇都宮さんも、なかなか好青年ですよ」
「そ、そんな・・・」
「いやいや 謙遜なさらなくても。せっかくお二人でお越しになったんだから。邪魔者はこのへんで、ちょっと失礼しますよぉ」
どかどかどか・・・。
大谷社長は石橋顧問と二人を後に、次のテーブルに行った。
「ここで、一つのテーブルで飲み食いしてるようでは、チャンスをみすみす逃しているようなもんだね。そうは思わないかね?」
石橋可憐の父、石橋顧問は笑顔で言った。
「はい。なんといっても、交歓会ですから」
和人は石橋の父親に言った。
「わはは、よくわかってるじゃないか。とはいえ、やみくもにあたっても、しょうがない。効率よく自分をアピールしないといけないよ」
「はい」
「和人くん、少し付き合ってくれるかな?」
(げげ、下の名前で呼ばれちゃった。既にそんな関係なのかぁ・・・?)
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい」
「うーーーん・・・」
石橋顧問は顎に手をやった。
「はい・・・?」
「和人くんが娘と同じ会社だなんて、偶然にしちゃでき過ぎだね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええ?」
「可憐。和人くんと、毎日一緒なんだろ?」
「え、まあ、そうだけどぉ・・・」
かぁーーー。
石橋の顔が若干紅潮してきた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そう言えば、ハイキングで可憐が足をくじいた時、和人くんが助けてくれたんだったよね。どうも、ありがとう。礼を言うのが遅れて申し訳ない」
「い、いえ、そんな。当たり前のことをしただけですから」
「なにを謙遜してるんだね。きみがいなかったら、可憐は山で遭難していたところだ」
「大袈裟ですよ。北アルプスじゃないんですから」
--- ^_^ わっはっは! ---
「お父さん・・・」
ぴくぴく。
石橋は父親の袖を引っ張った。
「なんだ、可憐?和人くんには、ちゃんと礼を言ったのか?」
「え、ええ・・・、一応・・・」
「もちろんです。十分にいただいてます。それに大分前のことですよ」
「お、そういうことなら・・・」
「お父さんたら・・・」
かぁーーー。
石橋は和人を見て頬を染めた。
「親バカかもしれないが、これでも、可憐はけっこういい線いってると思うんだが、和人くんはどう思う?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええ?」
「お父さん!」
ぴっ。
石橋は父親の背広を引っ張った
(げ、なんで、そっちの話になるんだよぉ。いやーな予感が当たりそう)
--- ^_^ わっはっは! ---
「も、もちろん、ステキなお嬢さんです」
「そうか、そうか。いや、娘にはサラリーマンの女房の辛さを味あわせたくなくてねぇ。これの母親は、安定安心だ、とKBBIへの就職を最後まで主張したんだが・・・」
「わたしが最終的に決断したの」
石橋が口を挟んだ。
「とはいえ、これが、なにがビジネスなんかわかるはずもなく、どうしたものかと思っていたんだ・・・」
「結果、セレアムで良かったの。なによりも自由だから」
可憐が答えた。
「そういうことだ。ビジネスについて、講義はいくらでも受けれるが、そんなものじゃなに一つ身に付かんよ・・・。本当に、これだけのことを机について習おうとすれば、いつになってもわからんだろうな。だが、セレアムのたった1年で、これは重要なことを一通り学んだんだ。可憐、どう思う?」
「ええ、お父さんの言うとおりよ」
「和人くん、おわかりかな?21世紀はゲゼルシャフトの完成の時代ですよ」
「ゲゼルシャフトですか?」
「ヴァーチャル人間。平たく言うと会社や法人や組織だ。会社は、国を越えて、人を契約で支配する。金も稼がせてくれるが、従業員という形で人間も縛り付ける。儲けたお金が国を超えるということで、一国の政府より遥かに強い力を持つんだ。わかるかな?」
「はい・・・」
石橋顧問は和人の反応を確かめた。
「IVM、JM、ソヨタ、マップル、マクロ・ソフト、ママゾン、ゾニーやバラソニック、国際金融を牛耳っている、ボスチャイルドやバンコメをご覧なさい。これらの持つ権利と権力。もはや人間個人の権利など、ゲゼルシャフトのものに比べれば、ないに等しい」
「はい・・・」
「ゲゼルシャフトを、持つか、持たれるか。これで運命が決まるんだ。可憐には、小さくてもいい。持つ方にまわってほしい。KBBIでは、持たれる方の教育しかしないんでね。産業革命前は、ほとんどの人が自分のビジネスを持っていたんだが・・・」
「ええ・・・」
和人は石橋顧問の話がよくわかった。
「おっしゃる通りかと。そして石橋顧問も・・・」
「なぜ、わたしが持つ方でないとわかるのかね?」
にっこり。
石橋顧問は最高の笑みをこぼした。
「あなたは、以前、おっしゃったではないですか。上場会社の役員といえど、経営を任せされてはいるが持たざる方の人間だって・・・」
「なにをかね?」
「起業家と資本家としての知恵と資産です」
「はっはは。100点満点、和人くんきみは最高だ!」
「はっははは・・・」
「はじめて、和人くんと会話した時、ああ、この青年はビジネスオーナーの頭だなと思ったよ」
「お父さん、どういうこと?」
可憐がきいた。
「この会の会費を自腹で支払ってた」
「なぜ、わかったんです?」
「それはね・・・」
石橋顧問はにやりとした。
「領収書の宛名に個人名を要求してたんじゃないのかね。それとも、株式会社セレアムと書くよう依頼したのかな」
(半年も前の一瞬のことを覚えているんだ・・・。なんという意記憶力・・・)
和人は考えていた。
「それを見ておられたんですか?」
「ああ。だから懇親会でぜひ彼と話がしたいと思ってたんだ」
石橋顧問は続けた。
「もし、会社に請求するつもりなら、宛名に自分の名前を要求したりはせんだろ?」
「確かに」
「個人名を要求するってことは、ビジネスオーナーでなければしはせんよ。大方のサラリーマンなら領収書をもらおうとそもそも思わないがね」
「和人さん・・・」
石橋可憐は和人を尊敬の眼差しで見つめた。
「まいったなぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(あの一瞬を・・・。さすがに、一部上場企業の役員になるだけあるよ・・・)
石橋顧問の観察力と記憶力に和人は舌を巻いた。
「可憐もいい人たちに恵まれているようで、わたしも安心だよ。はっは。可憐、和人さんはおまえの後輩とか言ってなかったっけ?」
「ええ。和人さんは、入社はわたしの1年後よ。でも歳はわたしが1年下なの」
「それはどういうことかね?」
「わたしは大学を中途して、ITの専門学校に入り直したんです」
和人が答えた。
「ほう・・・。今時の青年には珍しく将来を見据えているんだな?」
「というか、自分のビジネス立ち上げのための準備を大学では教えてくれないんです。専門学校には技術を身に付け独立する道があります」
「そういうことか・・・。可憐。わたしは宇都宮さんを益々気に入ったよ!」
(わーっ、藪蛇だぁ。まずい方向に行きそうだよぉ!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「えっ、ちょっと、待ってください!」
(このままだと、婿養子にされちゃう!)
--- ^_^ わっはっは! ---
(そうだ。ユティス、助けてよぉ!)
和人は心で叫んだ。
「可憐、おまえは和人くんをどう思ってるのかな?」
「お父さん!」
可憐は傍目に見ても頬を染めているのがわかった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはは。可憐、やけに顔が赤いな・・・。もう酔ったのか?」
石橋はそれをほろ酔い加減と誤解した。
「え、ええ、ちょっと・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「じゃ、和人くんさん、セレアムでは可憐をよろしく。仲良くしてやってはくれまいか?」
「はい」
(これ以上、話が石橋さんのことのなりませんように・・・)
和人は祈った。
--- ^_^ わっはっは! ---
(ユティス、ピンチ。助けてよ!)
石橋の父は可憐がよそ見をしている隙に、和人だけにわかるように耳打ちした。
「聞きくまでもないな、和人くん。可憐はきみに夢中だよ」
「えーーーっ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかってるさ、それくらい。きみに無理強いをする気はさらさらないよ。安心したまえ。わたしはきみの意思も尊重しているんでね。あれは、真剣に恋をしたことなんかないんだよ。まだまだ努力が足りない。そうだね?じゃ、わたしはここいらで挨拶回りでもするかな」
すたすた・・・。
石橋顧問はテーブルを後にした。
「助かった・・・。で、でも・・・。ぜんぶ、お見通しだよ・・・」
和人はとりあえず胸をなでおろした。
「あ、来てるな。野木さん」
和人は会場ですぐに野木を見つけた。
「やあ。あれ・・・、石橋さん?」
「こんにちわ。いえ、こんばんわ」
「どうしたんだい、二人して・・・?」
「たまたまでして・・・」
「いやぁ、知らなかったぁ。そういうことだったのかぁ。お似合いのカップルって感じだよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そ、そんなんじゃないです。カ、カップルだなんて!」
石橋はあわてて否定した。
「ビジネスの勉強ですよぉ」
和人ももっともらしい返事をした。
「へえーーー。・・・にしても、宇都宮さんも熱心だねぇ・・・」
にたぁ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ま、まあ、そんなところでして・・・」
和人はしどろもどろに答えた。
「ほんとに、それだけ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
にこっ。
野木は和人と石橋を見比べて微笑んだ。
「でさぁ。あの件だけど、上に説明したら、すぐに幹部説明会を実行しろって」
「ええっ、そうなんですか?」
「そうなんだよ。役員を入れて15人。来週やってくれないか、プレゼン?」
「は、はい」
にやり。
野木は笑った。
「それでだけど、石橋さんが仕上げたんでしょ、あの資料?」
「ええ・・・」
「見易いし、要点もわかり易くまとまってて、ポイント高かったよ。特にフォントの大きさは得点に貢献したと思うね。資料を読む時、うちの上が眼鏡もはずさず一発でOKしたことなんて、今までに数えるほどしかないんだから」
「そ、そうなんですか・・・」
石橋は真っ赤になった。
「もしかして、お酒、弱いの?」
「は、はい・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「その前に、サイトアクセス状況のモニタをとらないと・・・」
石橋が言った。
「わかった。そのしかけ、明日できるかなぁ・・・?」
野木は和人を見た。
「頼みますよぉ・・・」
じーーーっ。
和人は石橋を見つめた。
「できそうですか、石橋さん・・・?」
かぁ・・・っ。
「お・・・、お断りなんか、できないじゃないですか・・・」
石橋は酔いも手伝って赤くなりながら和人を見上げた。
「和人さんのご依頼ですから・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
石橋は一歩和人に近づき、肩が触れ合わんばかりになり、目は潤んで今にも和人に抱きつきそうな様子だった。
「おいおい、頼んでんのはボクなんだけど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
野木はにこにこしながら言った。
「そ、そうですね」
ささっ。
慌てて石橋は和人と距離を取った。
「ははーーーん。やっぱり・・・。宇都宮さん!」
「は、はい。なんでしょう?」
「石橋さんには、ちゃんと優しくしてあげてくださいよ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ど、どういう意味ですか!」
ぱちっ。
「そういう意味に決まってるじゃないですか」
--- ^_^ わっはっは! ---
どきっ・・・。
和人は野木のウインクに心臓が止まりそうになった。
かぁーーーっ。
「・・・」
石橋は下を向いたまま、一言も出せなくなった。
「いやぁ、まいった。まいった!最高のチームがうちについてくれたようだよ」
野木がごきげんだった。
--- ^_^ わっはっは! ---
(よかったですわね!)
突然、声が聞こえ、ユティスの精神体が現れた。
(ユティス、来てくれたんだね!)
(和人さん、アステラム・ベネル・ナディア(こんばんわ))
(ベネル・ナディア)
ぽわん。
和人はユティスの生体エネルギーを感じた。
(よかった・・・)
(リーエス。和人さん、なんだかとっても困ってらっしゃるみたいですわ。うふふふ・・・)
ユティスはにこにこしながら、和人に囁いた。
(面白がってるでしょ、ユティス?)
(うふふふ)
「あっ・・・」
可憐は和人がにわかに落ち着いてきたのを察した。
(なんなのこれ?和人さん、今までと全然違う。なにが起きたの?)
「石橋さん、和人さんを助けていただきまして、ありがとうございます」
ぺこり。
ユティスは石橋に丁寧に礼をしたが、石橋にはユティスの姿は見えなかった。
--- ^_^ わっはっは! ---
(和人さん、ここは?)
(一種の社交場。IT関係の経営者たちが集い、情報交換してビジネスを相互に高め合うんだ)
(みなさん、とても熱心なんですね?)
(リーエス)
「和人さん、どなたかと話してるの?」
「え、いや、別に・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(石橋さん、お父様も来られているんですね)
(そうなんだ。もうびっくり。KBBIの顧問で、元専務だよ)
(まあ、すごい。和人さん)
「あのぉ・・・」
「石橋さん、なにか?」
「皆さんと名刺交換しないんですか?」
「うん、そうだね。オレたちも行きましょうか」
「ええ」
(それが和人さんのIDですか?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(いや、身分証明書じゃなくて名刺。自分はどこのだれで、なにをしていて、どこにいるのか、また連絡方法なにがあって、どうなのか、そんなことが書いてあるんだ。ビジネスには必須のアイテムさ)
(なるほど。わたくしも作りましょうか。?エルフィア、文明促進支援委員会、最高理事直轄、地球担当、超A級エージェント。ユティスって)
--- ^_^ わっはっは! ---
(それを、みんなに配るのかい?)
(ふふふ。いけませんか?)
(だれも信じないか、とんでもない大騒ぎになるかのどちらかになると思うよ)
(そうでしょうか?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(だめだめ。そんなことをしたら、ユティスの身の安全が脅かされちゃうよ。二人で一緒にいれなくなっちゃう・・・)
(その時は、和人さんがわたくしを守っていただけますよね?)
(えっ!)
どきっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
(う、うん。リーエス・・・)
(嬉しい!)
ユティスは笑った。
「和人さん・・・?」
石橋は急に不安になっていた。
「どうしたのですか?和人さん、急に心ここにあらずって感じなんですけど・・・」
(しまった・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
ほわん。
ユティスは自分の生体エネルギー場で石橋を優しく抱きしめた。
「心配ございませんよ、石橋さん。さぁ、和人さんと一緒にご挨拶回りしましょう」
ほんわかぁ・・・。
(え?なに、これ・・・?)
「だ、だれかが話しかけてきたような・・・。そんなこと・・・」
石橋は密かなる声になんとなく落ち着いてきた。
「あのテーブルを回りましょう」
「そうですね」
和人は石橋と一緒に、ユティスの精神体を従えて、優しそうな表情の男性がいる、となりのテーブルに移った。
「少し、よろしいですか」
「ええ」
「株式会社セレアムの宇都宮です」
ぺこ。
「株式会社セレアムの石橋です」
ぺこ。
「YBMの鹿沼です」
ぺこ。
「エルフィアのユティスです。よろしくお願いします」
ぺこり。
「はぁっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
鹿沼はもう一人女性の声がしたのであたりを見回したが、石橋一人しかいなかった。
(気のせいかな?確かにエルフィアのなんとか言ってたような・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(あーあ、ユティス、またやっちゃったでしょ?)
(うふふふ。忘れていましたわ。ごめんなさい、和人さん。みなさんには、わたくはお見えにならないのですよねぇ・・・)
(うん。ユティスは本当にまじめだから・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(うふっ。それは皮肉ですか?)
(とんでもない。真実だよぉ・・・)
鹿沼は、2人なのに3人に声をかけられた気がして、首をかしげながらも、和人に話しかけた。
「わたしのところは、IT機器の調達をしておりまして・・・」
鹿沼が回りを気にしながら話した。
「はい・・・」
石橋と目が合った鹿沼は、石橋と話し始めた。
「わたしは株式会社セレアムの・・・」
石橋も少しこの場になじんできたようだった。
「すいません。ちょっと、自己紹介していいですか?」
鹿沼の相手を石橋がしているのを見て、一人の男が和人に近寄ってきたが、和人は気づかなかった。
(和人さん。どなたか、男性がお一人お近づきになりたいようですわ)
(男性ね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
ユティスの囁きで、和人は左から近寄ってきた30代と思われる和人と同じくらいの背格好の男に気づいた。
「はじめまして、リッキー・Jと申します」
(Z国大使館、日本通商部、主任。リッキー・J・・・)
名刺を見て和人は驚いた。
(どうかしましたか、和人さん?)
(あ、いや。ちょっと変った国だから・・・)
「はじめまして、宇都宮和人と申します。Z国の方ですか?」
「はい」
「全然なまりがなく、きれいな日本語をお話になりますね」
リッキー・Jの流暢な日本語に和人は舌を巻いた。
(ユティス並に日本語ができるじゃないか)
--- ^_^ わっはっは! ---
(あら。わたくしのは、地球語ではないのですか?)
(地球語ね・・・。それはそうだけど・・・)
(それに、精神波ですから、和人さんの頭脳に直接意味が伝わってます。実際にお話してるわけではありませんわ)
(どのみち、スゴイと思うけどなぁ)
(うふふ。和人さんだからです・・・)
ユティスはにこやかに答えた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「いやぁ、とんでもない。もう、かれこれ半年も住んでますから」
リッキー・Jは照れるように言った。
「たった半年ですか?」
和人はびっくりした。
(どうやら、頭のできが違うらしいや、先輩。オレもだけど・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(そんなことありませんわ。集中力と興味の差です。和人さんも、興味のあることでしたら、あっと言う間にマスターできますわ)
(そんなもんかな?)
(はい!)
にっこり。
ユティスは微笑んだ。
「それで、わたしたちの通商部は・・・」
リッキー・Jは続けた。
「通商部の主な業務は、日本の最新IT企業にわが国への投資される場合の案内、コンサル等でして。また、わが国のIT技術者の日本への留学や就職を斡旋もしております。御社はなにを?」
「われわれはソーシャルメディア・マーケティングの方を」
和人がリッキー・Jに答えた。
「ああ、ツブヤキ・サイトとか、ササヤキ・サイトとか?」
「はい」
「それに、アエギ・サイトとか?」
「アエギ・・・?それは、アダルト・サイトでしょう」
--- ^_^ わっはっは! ---
「違うんですか?」
「まったく違います」
「それは失礼しました。最近の日本でITのトレンドはなんでしょうか?」
(そっちの方が知ってるんじゃないかな?)
Z国は産業スパイはお手の物だった。和人はそう思いながらも話した。
「なにも持たずに、なんでもできる。ヒューマンセントリック。このへんがキーになるのではないでしょうか」
「なるほど。ホラエモンの世界ですね。いずれ、スマホは不要になりますか」
「将来的にはです。でも当分先のことですよ」
「なにか、次世代のすごいものを日本は研究してるんですね?」
リッキー・Jはにこやかに笑った。
「いや、ゴーグルとか、他の国でも、トップIT企業なら、どこも似たようなものですよ」
そこに突然ユティスが警告を発した。