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048 勉強

■勉強■




和人はその日の仕事を定時で終えようとしていた。


「今日は、これで失礼します」

「お疲れ様でした」

「お疲れ様」


「おっ、和人、ユティスとデートか?」

二宮が羨ましそうに言った。


(ここは否定すると、また突っ込まれるだけだ。先輩には申し訳ないけど、堂々としちゃおう・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「ま、そんなとこです」

「ちっ。こうも簡単に肯定されると、からかう気もしないぜ。じゃぁな」


案の定和人の思惑通りになった。


「おーお、和人くんは、いいよなぁ・・・」


(係わらない。係わらないっと・・・)


「失礼します」

事務所の人間が一斉に二宮を見送った。


(おっと、時間、時間・・・)


その時を見計らったかのように、石橋が勇気を出して和人のもとに来た。


「和人さん?」

「あ、石橋さん・・・」


(やばーーー。二宮さんとの会話、聞こえちゃったかなぁ・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


「あのぉ・・・。今日、ご一緒していいですか?」

「え?」


「IT研究会・・・、ですよね?」

「あ・・・。知ってたの?」


きょとん。

(なんで、石橋さんが、知っているんだろう?)


「はい。父が和人さんの名刺見せてくれて」

「えーっ!どうして、そんなものを、石橋さんのお父さんが・・・?」

和人は仰天した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふふふ。不思議ですか?」

「は、はい・・・」


「父に、どこで、和人さんと会ったのってきいたら、IT研究会だって」

「そういうことですか・・・」


「ええ。父は、KBBIにいるんです」

「げ・・・。KBBIといえば、大手通信キャリアじゃないですか・・・」


(ちょっと、待ってよ・・・。思い出したぞ・・・)


「覚えてらっしゃいますか、父のこと?」


(確か、半年くらい前だ・・・)


「えーと、石橋さん・・・。KBBI・・・」

「ええ、今は一線退いて子会社で顧問をしています」


「あ・・・!」

和人は口をあんぐり開けて石橋を見つめた。


「石橋専務だぁ・・・。下の娘さんて。石橋さんのことだったのか・・・」

和人は半年前のことを思い出した。


「わたしのことを言ってたのですか、父が?」

「ええ。下の娘さんが、ソーシャルマーケの一風変ったIT会社に、勤めているんだって」


きょとん。

「一風変った?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは・・・」

石橋は和人が噴き出しそうになるのを不思議そうに見た。


「はい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ははは。狭い。この業界、滅茶苦茶狭い・・・」

「それで、1週間前にこの会のことをはじめて知ったんです」

和人はたっと石橋がIT研究会のことを知っているのかわかった。


「真紀社長や常務はお父さんのこと知ってるんですか?」

和人が石橋にきいた。


「はい」


「会社のみんなも?」

「それはわかりません。でも、それ以来父も忙しくて・・・」


「IT研究会には出て来られなかったんですね」

「ええ」


「どうしてKBBIに行かなかったんですか?」

「確かに専務の娘なら会社には入れたかもしれません。でも・・・」


「嫌っだたんですか?」

「大きいところはなんか規律だけ厳しくて、仕事も決まりきってて、退屈してしまいそうでした・・・」

石橋は和人の知らないことを言った。


「そんなことないと思いますけど・・・」

「父は、好きにしろって」


「ふうーーーん。できたお父さんですね・・・」

和人は感心した。


「はい。わたしもそう思います。それに大手のサラリーマンの嫁に行ったら、旦那さんの顔見れるのはお盆とお正月だけだって・・・」

石橋は上目遣いに和人をちらりと見た。


(嫁・・・?旦那・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


「だから。比較的自由なWebビジネスがいいなぁって・・・」


(嫁って、婿探しで、ここに来たわけじゃないだろうな、石橋さん・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうだったんだ・・・」

「それに、窮屈なビジネススーツを着て来なくてもいいし・・・」


「でも、みなさん、とってもステキに決めてるじゃないですか」


「そうですか?」

「ええ」


ぎくっ・・・。

石橋の何気ない視線に和人はどきっとした。


--- ^_^ わっはっは! ---


(うわぁ、石橋さん、さっき口紅塗りなおしたのかなぁ?なんか妙にキレイ、というか、すごく色っぽく見える・・・)


「今日はビジネスの勉強になるからって、父が誘ってくれたんです」

「えーっ、石橋さんのお父さん、来るの?」

「はい」


(父親が娘の婿探し。まさかね・・・)

和人は嫌な予感がした。


--- ^_^ わっはっは! ---


(まさかとは思うが・・・)


「あのぉ、和人さん?」

「あ、はい・・・」


「早く行きましょ・・・」

「ええ・・・」


「お先に失礼します」

「お先です」


ぺこ。

ぺこり。


「お疲れ様でしたぁ・・・」

「・・・したぁ・・・?」

と言いつつ、事務所の人間はびっくりしたように石橋と和人を見送った。


--- ^_^ わっはっは! ---


二人が並んで事務所を出た後、すぐに事務所は騒がしくなった。


「石橋が和人と・・・」

「珍しいわねぇ・・・」

「ホント」


「どうしたの、岡本?」

「いや、真紀。あの石橋が和人と一緒にさっさと帰っちゃったの」


「和人と一緒?」

真紀も驚いたように出口に目をやった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うん・・・」


「デート?」

「怪しいわね・・・」


「あの二人、ここ数日で進展したのかしら?」

「さぁ・・・、別になんにも言ってなかったようだけど・・・」

岡本が首を傾げながら言った。


「こんなの、はじめてじゃない?」

「そうかも・・・」


「そう言えば、IT研究会がどうのこうのって言ってたわよ」

茂木がちらっと聞いたように言った。


「IT研究会・・・?ふふふ・・・」

真紀は思わず笑った。


「なにか、おかしいですか?」

「勉強ね・・・。和人らしいわ」


「なるほど。そういうことか」

「これを二宮か俊介が言ったなら、ただ飲みに行くってことだけど・・・」


「アル研ね・・・」

「あははは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは。言えてる。けど、和人なら本当だと思わ」

「ふふふ。そういうこと。岡本、どうもありがとう」

「どういたしまして」




「あ、ようこそ。宇都宮さん。いつもお世話になります」

IT研究会の会場の受付で、和人は会費の5000円を払いチェックインした。


「そちらの女性はご一緒ですか?」

「はい。石橋と申します。和人さんと同じ株式会社セレアムです。お代は別でお願いします」


「承知いたしました」


ささ。

石橋も5000円を払った。


「こっちですね?」

「そうです」


領収書と今日のプログラムをもらうと、二人は会場へ足を踏み入れた。既、会場はゆうに100人以上が集まっていた。ホスト役の大谷社長が3人目の発表を案内していた。


「もう、始まっちゃってますよ」


「はい。うわーぁ、こんなにいらっしゃるんですか・・・」

「そうですね。今日はまだ少ないくらい」


「ほら、和人さん、そこ席が2つ空いてますよ」

石橋の案内で2人はそこに座った。



「今日は、みなさん、すごいサービスをはじめた方がおられますよ。間々ままださんと言う方なんですけどね、ボクとちょうど5年前くらいでしたか一緒の仕事をしたことがあって、その時飲みで語られたことを実際に商売にしてしまった方です」


大谷社長はそう言って次のプレゼンテーターを紹介した。


「ご紹介にあずかりましたエース・テクノロジの間々田です。大谷社長とは5年来のお付き合いで、当社のサービスを紹介する機会をいただき感謝しております。当社のサービスは、一言で言うとクラウド型の家計簿サービスなんですが、今までの家計簿と違うところがあります。それは、資産と負債をきっちり定義し、老後の生活を豊かにするため、BSとPLとの関連付けを自動でおこなうところにあります。一般にいう家計簿は、手取り収入をもとにつけますので、大切なものに多くの主婦たちは気づきません。ここにいらっしゃる方々は会社の経営者様ですから、お気づきと思いますが、これのどこがいけないかわかりますか?」


そこまでしゃべると間々田は会場を見渡した。


「さてと・・・」

間々田社長と石橋の目が合った。


「じゃ、そこのお美しい女性、おわかりになりますか」

「お美しいって・・・、わ、わたしですか?」

石橋はびっくりした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい。あなたです!」

ホストが石橋にマイクを渡した。


「いやだ・・・。美しいだなんて・・・」


ぽ・・・。

石橋の声はマイクを通して会場にこだました。


--- ^_^ わっはっは! ---


ぱちぱちぱち・・・。

たちまち会場で拍手が起きた。


かぁーーー。

たちまち、石橋は赤面した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「お美しいですよ。お隣の男性、ボーイフレンドの方ですか?そう思いますよねぇ?」

間々田が和人に同意を求めた。


「え・・・?ええ、もちろん。それにとっても可愛い人だと思います」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おーーー」


ぱちぱちぱち・・・

どよめきと拍手がおこった。


「和人さん・・・」


かぁーーー。


--- ^_^ わっはっは! ---


(しまったぁ・・・。石橋さんのボーイフレンドになっちゃた・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


石橋を見て和人は思った。


自分の言った言葉の影響、そんなことは一切無視して石橋を見つめ、間々田はすぐに本題に戻った。


「さぁ、従来の家計簿のどこがいけないか、おわかりですか?」


「えーと、手取りからはじめると、あらかじめ天引きされたものがなにか、それがいくらか、どこに支払ったかがわからなくなる、ということではないでしょうか・・・?」


うん、うん。

間々田は大きく頷いた。


「はい。ご名答!みなさん、彼女に拍手!」


「おーーー!」

「すばらしい!」


ぱちぱちぱち・・・。

会場は拍手に包まれた。


ぱちぱちぱち。

和人も石橋に感心した。


(恥ずかしい・・・)


かぁ・・・。

石橋は和人に賞賛の眼差しを送られ、赤くなった。


「はい。そちらの女性の回答で大正解なんですね。税金、保険金、その他、勤め人は、いろいろと天引きされますよね。知らないうちに強制的にね。政府の素晴らしいサービスですよねぇ」


「あっはっは」


--- ^_^ わっはっは! ---


会場は笑いの渦になった。


「もぉっと素晴らしいことは、あなたが昇給すると政府も自動的に昇給することなんですよねぇ。あなた以上の速度で」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ある一定の金額を超えると、ガンガン所得税があがるでしょう。累進税です。管理職のみなさん、累進税率を見ながら上がってくださいね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それに新幹線通勤してる人もそうです。通勤手当って所得税のもろ対象ですよぉ。所得1万あがって税金100万上がるなんて、割りに合いませんからねぇ」


「あっはっは」


--- ^_^ わっはっは! ---


「残った給料から買うものに、また消費税25%かかります。こういう税金、これこそ人生で一番大きい出費なんです。死ぬまで続きます。もちろん、政府にとっては収入ですよぉ。その税金でいくらか公共サービスも向上するでしょう。期待しましょうね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「世の中、サラリーマンがほとんどですよね。残念ながら、このことをチェックしないことで、お金に苦労する家庭が続出しています。でも、本当はもっと恐ろしいことがあるんですよねぇ」


「もっと恐ろしいことですか?」

石橋はそのまままだマイクを持ったままでいたので、その会場にその声は響いた。


「あっはっは」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうです。とても、恐ろしいことです・・・」


にっこり・・・。

間々田はまず石橋に微笑みかけ、そして会場を見回した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それは、人生最大の出費でありながら、天引きされているということすら、頭からなくなってしまうことです。それが習慣になってしまうことですよぉ。だれも気にしない。だれもおかしいとは思わない。なぜ、同じように働いていても、事業主と同じように経費が認められないのか、まったく気にもしなくなるんです」


「ええ?そうなんですか・・・?」

セレアムは社員とはいえ個人事業主の石橋はピンとこなかった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ありゃ、わたしの説明が足りませんでしたか?」

「いえ・・・」


「じゃ、続けますよぉ。サラリーマンには給与控除というものがあるものの、その額は収入によって一律決められてます。経費を多く使おうが、少なかろうが、政府が大体これぐらいだろうということで決められるんです。あなたに代わって必要経費を決めてあげますよってことですね。なにも考えない人はコロリと賛同させられちゃいます。ここにも何名かおられるようですねぇ」


「あっはっは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


にたり。

間々田は会場を見回してさらに続けた。


「ここにいらっしゃる社長さんや営業のみなさんは、仕事に使うお金は内勤者とは随分違いますよぉ。まず、背広やネクタイ、カバンは必須だし、上司や、友人や、お客様や、取引先や、そういうお付き合いも大変です。それが、同じ年収なら、内勤者と同じ率で簡単に片付けられてるんですよ。例えば、今日の懇親会費とか、昨日のスナックのカラオケ代とか、ママへのプレゼントとか・・・。これは、ちょっと無理か・・・。とにかく大きなお世話ですよね?」


「あっはっは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

「あははは!」


会場は間々田のおどけた説明に笑いの渦となった。


「会社を辞めて、はじめてそれがいかに高額だったかわかるんですよ。社会保険事務所、市役所、そういうところから、一斉に送られてくる請求書を見て・・・。それで卒中になるんです。ピキーーーッ!わたしのヘソクリより遥かに多いと。奥様が真っ先に・・・」


「あっはっは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーーーっはっは!」

「あなた、わたしより先に、こんなに沢山のお金を人に渡すとは許しませんわよーーーっ!てな具合です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

「ほら、危険でしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

「あははは!」

会場は大きな笑いに包まれた。


「わたしは、サラリーマン家庭を助けたいのです。当社の家計簿は、天引きも含んだ総支給額からスタートします。そうすると、いったい、なににどれくらい使っているか、本当の姿が浮かび上がります。年間で、なにがどれだけ出費となっているか見えてくるんです。そして、節約すべきところが見えてきます。そして、次に打つ手も明らかになります。なににお金を使うべきかもです。この研究会では大いに使って結構ですよ」


「どうも、間々田社長!」

大谷がすかさず礼を述べた。


「あっはっは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「さて、経営者のみなさんは、当然のことのように経費を計上できますよね、ビジネスに関連づけられる支出を。でも、サラリーマンは一切できません。年末調整でバッサリおしまいです。算出式は奇奇怪怪で素人にはサッパリわからないようにできていますから、大概の人は1万円返ってくれば大いに喜びます。実は政府はもっと喜んでいるんですよぉ。おーーーお!」


「あははは!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「これって、21世紀の年貢制度ともいえるひどい内容ではないでしょうか?わたしは、なにもサラリーマンを止めろというつもりは毛頭ありません。ただ、もう一つの収入源として、自分のビジネスを持ち、経費を使えるようなことをしたらどうかということです」


「わたしたちは経費を使えますけどぉ・・・」

「そうなんですか、お嬢さん?」

マイクを持ったまま席に座った石橋の言葉に、間々田は驚いた。


「はい・・・」

石橋は和人を振り返り賛同を求めた。


「ええ、そうです。交際費とか・・・」

和人が石橋から回されたマイクを受け取ると、しかたなく答えた。


「なるほど・・・、交際費ですかぁ・・・」


にっこり。

間々田は石橋と和人を見て微笑んだ。


「あっはっは!」

会場は爆笑した。


(しまったぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「いや、失礼しました」


ぺこ。

間々田は石橋と和人に頭を下げた。


--- ^_^ わっはっは! ---

 

「とにかくですね、当社の家計簿をつけることで、多くのサラリーマンはそれに気づくでしょう。ご主人がサラリーマンなら奥様は自由業。せめて経費が計上できる仕事にした方が、よろしいとは思いませんか?奥様もパートだとご夫婦とも給与所得者になり、経費はまったく計上できませんからね。お二人も、今から考えておいた方がいいかもしれませんよぉ」


「あっはっは!」

再び会場がどよめいた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「げっ。それ、うちの社長の実践してることじゃないですか・・・」

和人が驚いたように言った。


「ええ。わたしたちサラリーマンじゃないですから」

石橋も相槌を打った。


「でも、オレもそうだったけど、サラリーマンはほとんどが気づかないんですね・・・」


「なぜでしょうか?」

「さぁ・・・」


間々田社長の話は10分ほど続いた。


「どうです、みなさん。間々田社長は、ご自分がサラリーマン時代に疑問を持ち続けていたことを、独立してサービスとしてビジネスにしたわけです。スマホから入力できて、これで、月おいくらでしたっけ?」


ホストの大谷は間々田を振り返った。


「80円です」

間々田が答えた。


「80円。80円ですよ、みなさん。BSとPLが付いてこれです。革命的ですね。政府は嫌がるでしょうね。いや、ビジネスで黒字を出してれば、結局ビジネスした分余計に税金がはいるし、失業率減少に大いに効果がでるわけでしょう」


ささ・・・。

ひらひら・・・。

大谷は右手でマイクを掴み、左手で間々田のソフトのパンフを高く掲げた。


「ええ。だから、サラリーマン、独立してビジネスすれば、国が潤うわけですよ」

間々田が説明した。


「それじゃ、余計に税金を払うことになりませんか?」

だれかが茶化すように言った。


「なるほど。でも違いますね」

それに対して、間々田に代わって大谷が答えた。


「その何倍ものビジネス収入が増えるのではないでしょうか?それにかかった支出は経費として税金を相当節約できるわけです。税金は総収入にではなく、経費を差し引いた所得にかかるわけですから。実質所得は相当自由になると思います。ま、ボクの見解ですが。間々田社長、違いますか?」


「いや、大谷社長のおっしゃるとおりで。大谷社長は節約の天才ですからね」

「いや、もっと大先輩がいらっしゃるんで。ボクのレベルじゃ・・・」


「あっはっは!」

間々田と大谷は会場の笑いを取った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「はぁ、そうでしょうか?」

質問した男性は、今ひとつ納得していない様子だった。



「あの方はサラリーマンなんでしょうね?」


つんつん・・・。

石橋が、和人をつついた。


「そうじゃないかな。あれだけ説明されたら、大抵わかるんだけどなぁ・・・」

「父が言ってました。サラリーマンとビジネスオーナーの間には、鉄の壁があるって」


「鉄の壁ですか?」

「はい。頭の中にあるんです。考え方を変えて、それを超えるのは容易ではないってことです」


「そうなんだ・・・」

「はい」



「では、間々田社長、ありがとうございました」

大谷社長は次の発表者を紹介した。


プレゼンテーターは全部で4人だった。それが終わると、第2部の立食パーティー兼名刺交換会が始まった。


「さて、乾杯のご挨拶は、株式会社ABCDの壬生みぶさんにしていただきましょう」


「えー、ご紹介にあずかりました壬生みぶでございます。本日は僭越ながら、わたくしめが乾杯の音頭を取らさせていただきます。では、ここにお集まりの方々のご健康と、ご商売の益々の繁盛と、IT研究会の発展を祈りまして・・・、乾杯!」


「乾杯!」

「乾杯!」

和人と石橋もビールに口をつけた。



石橋は、ようやく、どうして和人が自腹を切ってまでしてこの会に来るのかわかった。


(社長さんたちの会なんだわ。いきなりトップの方とお知り合いなれるチャンス。そしてトップの方の考えや課題も共有できる。そして自分自身のビジネスへの応用も・・・。いろんな方がいて、いざという時、知恵や助けをいただけるかもしれない。この会、うまく利用できれば価値はとっても大きいわ)


「おつまみ、いかがですか?」

「あ、どうも」

大谷のところの社員が和人と石橋の横に乾き物を置いた。


(これ・・・ゴマスリ出世のサラリーマン感覚では、絶対にこの会を楽しめない。和人さん、頭の中は完全にビジネスオーナーなのね。いくら稼いでるかは問題じゃない。稼ぐということがどういうことかわかってるかどうかだわ・・・。そうしてみると、サラリーマンはというのは・・・、もらうだけなのね、お給料を。そして取られるだけ、税金を。しかも、お給料をもらう前に・・・。なんということ・・・)


石橋は自分の考えに集中していた。


(わたし、今わかったわ。そして、わたしがKBBIじゃなく、なぜセレアムを選んだかその訳が。あの時はわからなかった。KBBIのあの息苦しさが。そしてセレアムの快適さが・・・。今はわかるわ。なぜ、お父さんがKBBIを奨めなかったのかも。そういうことだったのね。お父さんは、わたしに自由であることを選ぶようにしてくれたんだ・・・)


石橋はとりあえず和人の存在を脇に置いた。


--- ^_^ わっはっは! ---

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