040 警報
■警報■
「資料は、お客さんの経営陣が見て一発でアピールできるよう、ぐだくだ文字を書くんじゃないわよ。書いてあることを読み上げるようなのは、プレゼンじゃないわ。それに、権限を持っている人だけを見つめてプレゼンして。その人の目や仕草に反応しなさい。わかった?」
「はーい」
「それから、本番前にリハを最低5回しなさい。持ち時間の時間配分も確かめること」
(真紀社長の言うこともわかるけど、5回もリハはムリだぜ。午前様になっちゃうよ。オレは男だからいいけど、石橋さんは女の子だもんな。夜中まで拘束したら夜道が危ないし。まだまだ担当者レベルの説明だし。とりあえず参加者くらいは確かめておくとして・・・)
和人は2社に連絡を入れ、参加人数やメンバーの情報を首尾よく入手した。和人がすべてを終えたのは9時近かった。
(そういえば、ユティス、あれから連絡来てないよな)
(ふう、これでいいわ)
石橋はプレゼン用資料の最終確認を終えた。
「石橋さん、ごめんなさい。すっかり遅くなっちゃった」
「いいえ、おかまいなく。お仕事ですから」
ぽん。
その時真紀が石橋の肩を叩いた。
「お疲れ様、お二人さんとも。お腹、空いたんじゃない?」
ぐぅ・・・っ
--- ^_^ わっはっは! ---
絶妙のタイミングで和人のお腹が鳴いた。
「うふふふ」
思わず石橋が笑った。
「あはは。正直だわねぇ、和人」
「えへへへ」
「ふふふ」
真紀も笑った。
「行こうっか?」
「はい!」
真紀はジョッキを傾けるふりをした。
(え・・・、和人さんとわたしを誘ってるんですか、真紀さん?)
「わたしは・・・」
石橋がためらった。
「明日があるから・・・」
「なに言ってるの?1時間だけ。わたしが送ってあげるから」
「は、はい」
「和人は聞くまでもないと。イタメシでいい?」
「はい!」
「よぉーし、じゃ、後片付けすんだら言って」
「はい!」
真紀が連れて来たのは感じのいいイタリアレストランだった。
「ここよ」
「どうも・・・」
「高そう・・・」
「大丈夫だから。さぁ、入って、入って」
真紀は、石橋を和人の隣に座らせた。
「さ、乾杯。乾杯」
和人たちはジョッキを合わせた。
「和人、最近スゴイわね!」
「なにがです?」
「商談発掘よ。あのB社で食い込めたのはあなたが初めてよ」
「あれは、たまたまで・・・」
「たまたまが、何度もつづくのでしょうか?」
石橋が尊敬を込めて和人を見つめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
かぁーーーー。
石橋は早くも赤面し始めた。
「いやぁ、今後はわかんないし」
「はっきり言って、わたしもスゴイと思うわ。これだけ和人が頑張ってくれてんだから、わたしたちもちゃんとフォローしてあげないとね。ねぇ、石橋?」
もじもじ・・・。
「はい・・・」
3人は話がはずんでいった。
「はい、カルパッチョとシーザーサラダ」
石橋が小皿を和人に渡した。
「あ、ありがとうございます、石橋さん」
石橋はアルコールが少し入ったので、感情がすこしずつ表に出し始めていた。
「うん。美味しい・・・!」
にっこり。
石橋は幸せそうに和人に微笑んだ。
「そうそう。いいわよ、石橋。そうしてれば、あなたとっても可愛いんだから!」
「そんなぁ・・・」
かぁーーー。
石橋はうつむいて赤くなった。
「本当ですよ。石橋さんは、とっても可愛いと思います」
にこっ。
和人も石橋に笑いかけた。
「和人さん・・・」
もじもじ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ほら、みなさい。でもさ、今の二宮が言ったら完璧にセクハラね」
「あはは」
「俊介もだけどさ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、可愛いってのはホントですよぉ・・・」
ぷぃ・・・。
石橋は格好だけすねて見せた。
「二人して、わたしをからかって楽しいいですか・・・?」
「からかってなんかないわよ」
真紀が真顔で言った。
「だって、真紀社長もすごい美人だし、事務所のみんなも・・・」
「じゃ、和人も美人ってかぁ?」
真紀が一気に落とした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だーーーぁ!オレ、女性じゃないです!」
「あははは!」
「おっかしい、真紀社長!」
石橋は陽気に戻った。
「そうだ!せっかくイタメシに来たんだから、アスティ頼みませんか?」
和人が提案した。
「あなた、知ってるの、アスティ?」
「ええ。ワインはスパークリング専門なんで」
「リッチねぇ」
「じゃぁ、シャンパンなんかもご存知なんですね」
石橋の目が輝いてきた。
「有名どころは一応。超有名どころは、そこそこで・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「すごい!」
「でも、高価だから美味しいってわけじゃなくて、結局個人の好みなんです」
「そうよね。確か、俊介はロイ・ルデレールのクリステアがお気に入りだわ」
「ええっ?真紀社長。それ滅茶苦茶高価じゃないですか」
「そうなの?」
「そうですよ。ボン・ペリニヨンの軽く倍はしますよ」
「えーっ!わたしもよく付き合わされるけど、そんなに高いの?即刻、無駄遣いを止めさせなきゃ!」
「シャンパンバーで頼んだら、フルボトルいったい何万することか・・・」
「うわーーーっ、それ、飲んでみたいです!」
石橋がはしゃいだ。
「わかった。今度、俊介に石橋と和人を連れて行くように言ってみるわ」
「やったぁ!絶対ですよ真紀社長!」
「近々ね」
「ねぇ、ボーイさん。アスティ・スプマンテ、1本お願い。グラスは3つね」
「かしこまりました」
「あ、そうだ。俊介に連絡するの忘れた。ちょっと外で電話してくるわね」
真紀は、和人には見えないように、石橋にウインクした。
(石橋、チャンスよ!)
(はい!)
真紀は、和人と石橋を残して、店の外に出て行った。
(石橋、ちゃんと和人と仲良くできるかしら?自然に粘って10分くらいかなぁ・・・。ちょっとその辺をぶらつくか・・・)
てくてく・・・。
真紀は歩きはじめた。
「和人さん、あのぉ・・・」
「うん・・・」
「一緒に、チーム組むの初めてですよね・・・」
「うん・・・」
「今日・・・とっても楽しかったです」
「もう帰っちゃうんですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ち、違います。お仕事のことです・・・」
「そうですか・・・」
「また一緒に組めるといいですね?」
「そうですね・・・」
「和人さん、わたしと組むのはご迷惑ですか?」
うるるる・・・。
石橋の目が少しだけ潤んでいた。
(石橋さん可愛いいよな、ホント・・・。でも、オレはユティスが・・・)
「あのぉ、ご、ご迷惑ですか?」
石橋は和人に再度きいた。
「あ、そ、そんなことはないですよ・・・」
「でも、今回はわたししか空いてなかったから、仕方なくですよね・・・」
「いや。こんなに石橋さんが優秀だとわかってたら、最初から指名してましたよ」
にこっ。
「本当ですか?」
「は、はい・・・」
「嬉しい!」
ぎゅっ。
石橋はアスティの勢いで和人の手を握ってきた。
ぷにゅ・・・。
「あ!」
和人は石橋の柔らかい手の感触にドギマギした。
「ん、ん・・・」
和人は咳払いした。
「シシリアン、食べないのですか?」
「はい。いただきます」
石橋は自分の更にスパゲッティを1さじ取った。
「シーザーサラダもどおですか?」
「はい」
「お待たせしました!」
そこにボーイがアスティを持ってきた。
「グラスは3つで」
「はい」
しゅわーーー。
「まるでシャンパンみたいですね」
「うん。イタリアのスパークリングもおいしいんです。これはちょっと甘口だから、口当たりはものすごくいいですよ。石橋さんも気に入ると思います」
「和人さんのチョイスですか?」
「真紀さんです」
和人はまだ真紀が戻ってきそうにないのが気になった。
「和人さん、二人で先に乾杯します?」
「ええ。でも真紀さんが戻ってきての方が・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「おあずけなんですかぁ・・・?」
じぃ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「味見くらいなら・・・」
和人は周りを見回して知り合いがいないのを確認してから、石橋を見つめた。
「じゃ、ちょこっとだけ、二人で先に乾杯!」
「乾杯!二人だけで・・・」
石橋は小声で付け加えた。
--- ^_^ わっはっは! ---
かちぃん・・・。
和人と石橋はグラスを触れ合わせた。
「うーーーん。おいしい!」
にこ。
石橋はアスティを一口つけると笑った。
(石橋さんの笑顔いいな。ユティスを知ってなきゃ、オレ、たぶん、石橋さんを好きになっちゃったかも・・・)
和人は認めた。
「明日のプレゼン、ううん。今日がうまくいくといいですね・・・」
じぃ・・・。
「今日ですか・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
突然、石橋が身を乗り出すと和人を見つめて囁いた。
「はい。今日です・・・」
「今日は大丈夫ですよ。プレゼンは明日ですから」
--- ^_^ わっはっは! ---
「でも、わたし、今日がプレゼンのような気がして・・・。なんかドキドキするんです・・・」
「そ、そうですか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたし、酔ってきちゃったかな。えへ・・・」
「でもまだ、ジョッキ半分ですよ」
「わたし、お酒弱いんです。特に和人さんといる時なんか。えへ・・・」
ぽっぽっ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「石橋さん、大丈夫ですか・・・?」
「はぁーい。あーっ、和人さんの睫毛長いんですね。うらやましい!」
「そんなこと・・・。石橋さんだって、大きな目が澄んでてきれいですよ」
どき・・・。
「目がきれい・・・」
にこっ。
石橋は明らかに嬉しそうになった。
ぽぅ・・・。
そして頬はどんどんピンクに染まっていった。
「ええ、とっても」
「ええっ?」
「和人さんの目も泉のよう、わたし吸い込まれそうです・・・」
石橋は目を伏せた。
--- ^_^ わっはっは! ---
(まさか・・・)
和人はようやく気づいた。
(石橋さんが、オレのこと・・・。本気で好きなのか・・・?)
「和人さん、今度またここに来ませんか?」
石橋は上目遣いに微笑んだ。
「は、はい・・・」
「二人きりで・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
石橋は勇気を出して言った。
「は・・・、はいっ?」
和人はびっくりした。
(これデートしてくれってことだよな。ちょっと待った。オレは、精神体だけど、ユティスが好きなんだぞ。そりゃあ、石橋さんはすごく可愛いけど、デートだなんて。困った。非常に困った。うっかりと答えられないぞ)
どきどき・・・。
「和人さん・・・、わたし・・・、わたし・・・」
(い、いかん。これ聞いちゃったら、後戻りできないぞ。えーと、えーと、なんかないか?なんかこの場を切り抜けられること・・・。真紀さん、なんだって帰って来ないんだよぉ・・・)
「わたし、和人さんみたいな人、ステキだと・・・」
うーーー、うーーー。
和人の頭の中で空襲警報が鳴り響いた。
うーーー、うーーー。
(真紀さん・・・)
和人は入り口を振り向いた。
がさっ。
「あ、ごめんなさい。電話が入った!」
とっさに和人は外に出た。
どたばた・・・。
(あーあ、逃げちゃった。どうごまかそう)
るるるーーー。
(あ、ホントに電話が入った!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人、オレ・・・」
「先輩!」
二宮だった。
「わりーーー、おじゃまだったかな?」
「いいえ、ベストタイミングです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうか。で?」
「どうでもいいですから、すぐにここから逃げ出す理由思いついてください」
「どういうことだ?」
「真紀社長にはめられました」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なに?」
「だから、やばいんです!」
「真紀社長は?」
「電話と言って出たっきり帰ってこないんです」
「じゃ、そこには・・・」
「オレと石橋さんだけです・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「は、はーーーん!そういうことか・・・。あっ、思いついた!」
「なんですか?」
「店の飲み代持ち合わせなくて、オレが店に足止め食らったってのはどうだ?」
二宮の陽気な声が返ってきた。
「それ、マジでしょう?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あはっは、わかるか?当座の2万5千円よろしく!」
「どこですか?」
間髪入れずに和人はそれに乗った。
「この前行ったスナック」
「エンジェル・ハウスですか?」
「ビンゴ。待ってるぜ。遅くなればなるほど5分毎にカラオケ代が増えてくるからな。借りじゃなくて、今回はおまえの驕り。ピンチを助けてやるんだから、当然だろ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だめです。お互いさまでしょうが!」
「あっそう。それなら、いいよ、来なくて。そこで石橋と仲良くやんな」
「先輩!」
「来るのか、来ないのか?」
「行きます!行きますよ、もう!」
苦虫を潰したような顔をして和人が戻ってきた。
「和人さん、どうかしました?」
石橋が心配そうに言った。
「ごめん。本当にピンチなんです・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「二宮さんが財布忘れたまんま、スナックでカラオケやって・・・」
「それで、どうされたんですか?」
「だれかがお金を払うまで、店を出させてもらえないんだそうで・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「うふふ、二宮さんらしいです!」
石橋は吹き出した。
「ぜんぜん気づかなかったらしいですよ・・・」
「二宮さんったら!」
「で、オレ、代わりにお金を払いに行かなくちゃ・・・」
「えーーーっ!今から、和人さんが、行くんですか?」
石橋は大いにつまらなさそうな顔になった。
「うん。先輩、オレが行くってわかった途端安心しちゃって、オレが5分遅れる度に1曲カラオケ代がかさむぞって・・・。無茶苦茶です」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ひどーーーい!」
石橋は和人に同調した。
「でしょう?」
「絶対にひどぉーーーい!」
「そういうことで、行っていいですか?」
和人はすかさず、それにつけ込んだ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええーーー、お一人で行くんですか?」
「え?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたしも一緒は・・・、嫌ですか?」
(げげげげ・・・。やばい・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
(ええーーー。作戦変更だ!)
和人は石橋の目を覗き込んだ。
「あ、石橋さんの瞳、明るくてきれい。薄茶色なんですね・・・」
かぁ・・・。
「いやです、そんな見つめちゃ・・・」
石橋はさっと赤くなって和人から視線を外した。
--- ^_^ わっはっは! ---
和人はその一瞬にさらにつけ込んだ。
「すいません。時間がないんで、オレ、行ってきますね。あは・・・」
和人は微笑んだ。
「は、はい・・・。わたしには『行かないでください』なんて言えません・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
かぁ・・・。
石橋は、頬を赤く染めて、和人を見ないように下を向いて言った。
(言ってるじゃないですか・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、ありがとうございます。石橋さん。真紀社長には『ごちそうさま』って言っといてください」
「うん、わかりました。和人さん・・・」
しゅぼしゅぼ・・・、しょぼぉ・・・。
石橋の勇気もさっきの言葉が限界だった。
「じゃあ」
「あのぉ・・・」
(まずい!まだ、なんかオプションがありそう・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたしと真紀社長とでご一緒するのは、どうですか・・・?」
(そ、そう、きたかぁ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「そりゃ、ちょっとまずいよ。真紀社長となんて・・・。二宮さんの立場が・・・」
「そ、そうですか・・・。ご、ごめんなさい・・・」
「謝るのは、こっちです・・・。でも、やっぱりオレ一人で行ってきます」
「ええ・・・」
がらぁーーーっ。
和人はレストランから出た。
(ふぅ。よかった。脱出成功。先輩も先輩だが、誤魔化したオレも人のこと言えないな・・・。本当にごめんなさい、石橋さん・・・)
がらぁ・・・。
「あれ、和人は?」
戸を開けて真紀が店に戻ると、石橋が独りアスティが注がれたフルートグラスを、つまらなそうにいじっていた。
かちーーーん。
「あの、二宮さんがカラオケバーで・・・なんです」
石橋は二宮の一件を説明した。
「なによ、それ・・・」
むっかぁ・・・。
真紀は憮然とした表情になった。
「またしても、二宮のヤツ!明日はただじゃおかないわよ・・・。で、石橋。あなたもどうして和人を行かせたのよ?」
「でも・・・」
石橋は申し訳なさそうにうつむいた。
「わたし・・・、和人さんに見つめられて・・・」
もじもじ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あーーー、もういいわ」
「すいません・・・」
「あなたが謝ることなんかないわよ。それにそこがあなたのいいとこでもあるんだし。まぁ、しょうがないわね。アスティ適当に飲んだら帰りましょう」
「はい・・・」
カラオケスナックに和人が到着した。
「先輩・・・」
「おお、やっと来たか!」
「おっす」
「ああーーーっ、常務も!」
そこには俊介もいた。
「いや、なんだ。財布をだな・・・」
「二人して。会社に忘れた」
二宮が続けた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そんなウソが通ると思ってますか?」
「思ってない。真実はだ、スリに盗まれた」
「ウソですね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ホントは、銀行行くの忘れた」
「カードがあるでしょ?」
「そうか、そいつはすっかり忘れていたよ。二宮、ここはマメックスで払っとけ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「常務!ここは和人の驕りってことなんっすよぉ」
「うっさい。立場を利用して後輩にたかる悪い先輩。オレはしっかりと目撃したぞ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それをいうなら、従業員にたかる悪い経営者でしょうが」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なに言ってる。おまえは個人事業主じゃないか。お互い経営者同士」
「で、マスター、カードで払えるんですよね、ここ」
和人は念のためにマスターにきいた。
「もちろん。うちは、JCBBか、マメックスとベザなら、かまいませんよ」
マスターは涼しい顔をした。
「先輩、カード出してください。持ってんでしょ、まだ使えるヤツ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「出せよ、二宮」
俊介も催促した。
「常務こそ、プラチナカードがあるでしょ!」
「財布と一緒で、おうちで寝ている」
--- ^_^ わっはっは! ---
「先輩・・・?」
「出しゃいんだろ、出しゃ。はい、これ!」
和人は二宮のカードをマスターに渡した。
「それじゃ、失礼します」
マスターはカードの認証を要求した。
ぴっ。
つーーー。
ぴぴぴ。
しゃーーー。
「はい、お返しします」
「うっす・・・」
「ほれ、カード止められたわけじゃないですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「オレは、ブラックリストじゃない!」
二宮は文句を言った。
「おっ、和人、せっかく来たのにすぐ帰るのか?」
「当たり前です。時間だし疲れましたから」
和人は店を出た。
「マスター?」
「なんでしょうか?」
「領収書」
「なんとお書きしますか?」
「食事代。株式会社セレアムで」
二宮が言った。
「わかりました」
「こら、オレの会社の経費で落とすつもりか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「常務の飲み代でしょうが?」
「うっせい。おまえも飲んだろ?」
「歌っただけです。一滴も飲んでません。流し込んだだけです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なお悪い!」
「結果、石橋をじゃました件、真紀さんに言いつけますよ」
ぎく・・・っ。
俊介は真紀の雷が落ちるのを想像した。
「わ、わかった。領収書出しとけ」
(くそっ、二宮の野郎、姉貴がオレの天敵だって知ってやがる・・・)
「ありがとうございます、国分寺俊介常務殿」
「フルネームで呼ぶなって。気持ち悪い」
--- ^_^ わっはっは! ---