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406/408

406 説明

「ハァイ、アンニフィルドです。またまた時間が空いちゃったね。ごめんなさいね、みなさん。個人的に超忙しくてアップする時間がなかったのよ。サボってたんじゃないかって?ひどぉーい。原稿はちゃんと書き溜めておいたんだからね。で、お話はSF的な要素で論理を説明するようなところも少し盛り込んだから、今回は笑いあり、思考ありの欲張り編だわよ。でも、ちょっとエッチっぽくなっちゃたかしら・・・。もう、いやん!」

■説明■




さて、石橋可憐とキャムリエルのグループも各人がせっせと生物撮影していた。


「じゃあ、わたしたちが警戒役をする番です」

石橋は撮影を終えるとキャムリエルを見た。


「あ、そうだったね、カレン」

にこ。


キャムリエルは石橋に微笑むと立ち上がった。

すくっ。


「カレン、そのまま動かないで」

ところがキャムリエルはすぐに言った。


「え?なんですか、キャムリー?」

石橋は足を止めると、キャムリエルがスマホを向けた自分の足元近くを見つめた。


「わたしの足元になにかいたんですか?」

「リーエス。たぶん、ヘビ・・・。毒を持ってるかもしれないから、動かないで」


「へ、ヘビ・・・?」

かちん!

石橋はたちまち凍りついた。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「そうそう、そのまま、動いちゃダメだよ、カレン。ぼくがヘビの注意をそらせるから・・・」

「あわわ・・・」


ぞぞぞ・・・!

石橋はたちまち真っ青な顔になって、今にも気絶寸前といった様子だった。


「ほら、こっちだ!お前の好きなピンクのパンツだぞ!」

ひらひら・・・!


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


キャムリエルがピンクのパンツを使ってヘビの注意を外らせた途端、それは一気にジャンプした。

びゅっ!


「きゃああああ!」

石橋の悲鳴が響いた。


ばしっ!

キャムリエルはそれを左手で叩きながら遠くに飛ばした。

びゅーーーん!


「さぁ、もう大丈夫だよ、カレン。やっこさん、200メートルくらいは空中遊泳してったから」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「あわわわ・・・」

石橋は震えながらヘビの飛んでいく様を眺めた。


ぴ。

「だれ、今の悲鳴は?石橋、あなたなの?」

インカムから真紀の声がした。


「な、なんでもないです」

キャムリエルが応答した。


「確認しました。小型の爬虫類がそばを離れていきます」

続いて宇宙船からモニターしていた船長の声がした。


「へ、ヘビをキャムリーがパンツで・・・」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「了解。そういうことね。みんな気をつけて。ピンクのパンツが好きな毒ヘビがいるかもしれないから、茂みにむやみに足を入れないこと。いいわね。了解なら、グループリーダーは返答しなさい」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「了解」

「了解よ」

「わかりました」

「うーーーす」


すぐにグループリーダーたちから返答があった。


「俊介、聞こえてる?」

真紀が俊介を呼んだ。


「リーエス。わたし、クリステア。了解よ。代わりにわたしが返答するわ、真紀さん」

クリステアが答えた。


「クリステア、ありがとう。あの二人、まだ、インカムのスイッチを切ってるわけぇ?」

真紀の不満たっぷりの声がみんなの耳に届いた。


「リーエス」

「全く・・・。いい、みんな、監視役の2名はしっかりね」

真紀が念を押した。


「了解」

「はいなっと」

「うーーーす」


一通りインカムでの会話が終わると、キャムリエルは再び心配顔の石橋に向き直った。


「心配ないよ。あいつをただ放り投げて傷つけたわけじゃないから」


200メートル以上先なので、石橋には確認しようもなかったが、キャムリエルがヘビを放り投げた時、ヘビは不自然にゆっくりと着地したかと思うと、茂みの中に隠れていった。


「見事、軟着陸ってところだね。あは」

「キャムリー、あなたがしたの・・・?」

石橋もエルフィア人のESP能力のことは十分に知っていた。


「リーエス。この星の生き物にびっくりさせられたというだけで、彼らを傷つけるわけにはいかないよ」

にこ。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「キャムリー、あなた優しいのね・・・」

きゅん・・・。


「ナナン。単にルールを守っただけさ。委員会規定第3条、エージェント並びにSSの現地生命に対する取り扱い、条項第15、補足第4項・・・。5項だったっけかな。あれ、何項だったっけ・・・?」

「あ、もういいです」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「それじゃあ」

くいっ。

キャムリエルは石橋の手を取って自分に引き寄せた。


「さぁ、カレン、こっちだよ」


「エルフィアの現地生物保護ルールはわたしのも有効なんですか?」

にこ。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


石橋は微笑んだままキャムリエルにされるがまま彼を見つめた。


「ナナン。ボクだけのルールだね」

キャムリエルは澄まし顔で言った。


「第一に大好きな人を守る。次に相手を無力化するけど誰も傷つけない。第3に大好きな人に安否を問いかける。SSの基本ルールのアレンジさ」

「え・・・?」


「では、早速、安否確認を・・・」

キャムリエルは石橋を見つめた。


じぃ・・・。


「な、なにを・・・?」

かぁ・・・。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「あは。大丈夫かい、カレン?」

にこ。


ぽりぽり・・・。

キャムリエルは頭を掻き掻き微笑んだ。


「は、はい・・・」


かぁ・・・。

どきどき・・・。


石橋の頬は紅潮し、ヘビに驚いた時の動機が完全には収まっていなかった。こういう時、大抵の人はどきどきしている理由を深く考えない。ただ、びっくりて鼓動が早まっているだけなのに、自分が相手の異性に惹かれていてると勘違いするものらしい。果たして石橋の場合は・・・。


「ところで、キャムリーがさっき振ってた右手のパンツ、だれのでしょうか・・・?」

「きみのだよ、カレン」

「ええ!?」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「昨日、酔いつぶれちゃった時にバッグから取り出して、未使用だから、これで顔を拭いてってボクにくれたじゃないか。いろんな使い方があるんだね?」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「・・・」


きっ!

「そんな使い方なんてありません!」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「そっかぁ。とにかく。肌身離さず、一生大切にするからね。あは」

「キャムリーの・・・、へ、変態!」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「そりゃないよぉ・・・」

「返してもらいます!」

ぐいっ!


「ええ?」

「離してください!」


ばっちーーーん!


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー




こんこんこん。

エルドはファナメルたちが待っているリビングのような部屋のドアをノックした。


「わたしだ。入るよ」

「リーエス、エルド。待ってたわ」


しゅん・・・。

かつんかつん・・・。


中から声がして、エルドはドアを開けて中に入っていった。


「お久しぶりね、エルド」

ファナメルとゾーレはあまり表情を変えなかったが、声の調子では訪問者を歓迎しているようだった。


「やぁ、ファナメル、居心地はどうかね?」

「おかげさまで、とてもいいわ」


実際、低い垣根のようなものがあるこの敷地にいる限り、彼女たちにはほとんど自由を与えられていた。


つかつか・・・。

きゅ・・・。

ちゅ。


エルドはファナメルに近づくと互いに軽く抱擁して頬にキッスした。


「きみもどうかな、ゾーレ?」

「変わりないわ」

ファナメルが終わると、エルドは次にゾーレと抱擁してキッスした。


「わたしもこっちでお世話になることになりました」

エルドの後ろからシェルダブロウが顔を覗かせた。


「待ってたわよ、シェルダブロウ」

にや。


「ホント、なにをぐすぐずしてたのさぁ」


にた・・・。

二人はからかうように笑ったが、久しぶりに会った友人同士のように、どこか親しみのある笑いだった。


きゅ・・・。

ちゅ。

そして、シェルダブロウも二人と互いに抱擁し合い頬にキッスした。


「みんなテーブルに着いてくれたまえ」

エルドはそう言うと3人にイスを勧めた。


「さてと、きみらはユティス拉致に直接絡んだということと、超銀河転送システムの乗っ取り無断使用の件で現在起訴、裁判、判決待ちの段階にあると思うが、それについて疑問があるかね?」

みんなが席に着くと、エルドは単刀直入で切り出した。


「それはそうとして、どうして、ここにリュミエラがいないのよ?」

ゾーレが不満そうな顔をした。


「リーエス。彼女を確保したんでしょ?リュミエラがここにいないのはどういうこと?」

ファナメルも同じ顔だった。


「彼女は別の場所にいる」

エルドは二人をじっと見つめた。


「別の場所って、シェルダブロウもここにいるじゃない。彼女だけ別ってさぁ、変じゃないのさ?シェルダブロウ、あなたは知ってるの?」

ファナメルはシェルダブロウがなにかを知ってそうだと思ったのか、彼を見つめて真実を確かめようとした。


「ナナン。わたしは知らない」

シェルダブロウはすぐに返答した。


「なるほど・・・。ウソを言ってるわけじゃなさそうね」

ファナメルはA級SSだったが、精神感応力は素晴らしく、相手の心を読み取ることにかけては超A級といってもよかった。


きゅ。

彼女から疑われたことに対し、シェルダブロウは一瞬片眉を上げただけだった。


「どうしたの?随分と無防備じゃない?」

「・・・」

シェルダブロウは精神ブロックをかけていなかった。


「納得してもらえたのなら、わたしはそれで満足だ」

一瞬間を置いてシェルダブロウが答えた。


「ふぅーん・・・」


「さてと・・・」

エルドは元SSの3人を見つめた。


「彼女からきみらのことで頼まれごとをされているが、聴く気があるなら話すが・・・、どうするね?」

エルドは秘書のメローズに合図した。


「リーエス。準備はできています」

メローズが答えた。


「もちろん聞くわよ」

「わたしも聞くわ」

二人は揃ってすぐに返答した。


「ナナン・・・。わたしが言ったのは聴く気があるかだ。中途半端に聞いて感想を答えるだけなら、これ以上の話はないね。リュミエラともそういう話をしている・・・」

エルドはじっと二人を見つめた。


「シェルダブロウ、あなたは・・・」

「そうよ、シェルダブロウ・・・」

二人が早口に言おうとして、エルドがそれを遮った。


「彼にじゃない。きみら二人に話してるんだ」

エルドは静かに、しかし、ぴしゃりと断言した。


「・・・」

「・・・」


しばし、緊張がその場を支配し、やがてファナメルが口を開いた。


「リーエス。聴くわ。話して」

「リーエス・・・」




「おい、リュミ・・・」

「しぃ・・・。タリアよ。気付かれるから、声を出して会話するのはまずいわ・・・」

タリアは立てた人差し指を口元に持っていった。


「お、おう。リーエス」


(それがまずいと言ってるでしょ!)

(へい。へい。チャンネル変更だ)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(せっかく引いたハイパーラインだ。使わさせてもらうぜ)

(仕方なしよ。仕方なし。勘違いしないでよね)


通常家族、恋人、師弟、親友、ハイパーラインを引く相手は非常に限られていた。


(わかってるって)


惑星シュリオンではトルフォの動きを追っている元SS、タリアとガーグが彼の専属秘書となったリュディス・アンセリアの実家を訪れたトルフォを監視していた。


(ねぇ、エリゼブラ・レミューヤ、時空監視カメラで中の様子を精神波に乗っけて映せるかしら?)

タリアはシュリオン上空の静止軌道に待機するエストロ5級母船に依頼した。


(リーエス、タリア)


ひゅん。

タリアの脳裏にリュディス宅の内部の様子がうっすらと浮かんできた。


(おいおい、きみは母船にそんなことも頼めるのかぁ?)

ガーグが驚いたようにタリアの頭に語りかけてきた。


(当然。あ、ついでにガーグにも情報共有でモニタリングを送ってくれる?)

(リーエス、タリア。ついで了解)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


ひゅん・・・。

今度は、ガーグの脳裏にリュディス宅の様子がうっすら浮かんできた。


(ち・・・。オレはついでかよぉ・・・)

ガーグが文句を言った。


(やっぱり、送んなくていいわ、エリゼブラ・レミューヤ)

(リーエス、タリア)


しゅん。

ガーグの脳裏に浮かんできた映像が一瞬で消えた。


(こら、姉ちゃん、ちょっと待て!)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー




「それで、娘がトルフォ様の専属秘書ということは・・・」

リュディスの父親には確認すべきことがあった。


「うむ。わたしのスケジュール管理、面会者との連絡、エルフィアへの連絡、1日のかなりの時間を割いてもらうことになるが、それも含めての報酬だ。週3日はわたしと同じ日に完全休養日とするが、なにせ、二人ともわたしの宇宙船に部屋を持つことになるので、休養日といえ、顔を合わすことにはなろう」

トルフォはリュディスを眺めながら上機嫌で言った。


「そういうことなの、お父さま」

リュディスは複雑な表情で父親を見つめた。


「なるほど、よくわかりました」

父親は大きく頷いた。


「他になにか質問がおありかな?」

トルフォは彼女の両親に微笑んだ。


「トルフォ様はいつまでシュリオンにご滞在の予定で?」

母親が娘を気遣いながら言った。


「うむ。次の訪問予定まで時間がある。向こうからの日程が固まっているわけではないんでな。まだ、1日2日でシュリオンを経つということはありえんぞ」

トルフォは二人を安心させるように言った。


「では、狭苦しいところではありませが、今晩は我が家でよろしければいかがでしょうか?」

こくん・・・。

そう言うと父親は母親と頷き合った。


「トルフォ様、それではセキュリティが・・・」

トルフォの脇でモルナがささやいた。


「心配はいらん。そのためのSSであろう。それとも、ここにはSSは必要ないのかね?」

トルフォは180センチをゆうに超えるほどの長身で、自らも肉体の強さを自慢していたから、エージェントやコンタクティーを守るA級SSたちを小馬鹿にする癖があった。


「とんでもないです、トルフォ」

「リーエス。SSたちは24時間365日われわれを見守っています」

慌てて、シュリオンのA級エージェントのリンメルトが言い添えた。


(トルフォ・・・。A級SSの彼らを馬鹿にしているが、最高理事直属の超A級SSがどれだけの実力を持っているか、まさか、知らないわけでもあるまい・・・)




シュリオンのリュディスの家あたりは太陽も沈み、夜の帳が下りつつあった。


(だ、そうよ、ガーグ・・・)

SSを馬鹿にされた元超A級SSのタリアは、同じく元超A級SSだったガーグににやりとした。


(ほっとけ。油断してるうちはこっちも仕事がし易いってもんさ)


(で、トルフォ、リュディスの家で一晩明かすつもりだわ)

(リーエス。リュディスの家に泊まり込んで、なにをするつもりだ・・・?じゃあ・・・、やっぱり、ナニか・・・?)


ーーー^_^ わっはっは! ーーー


(じゃあじゃなくて、リュディスのうちの周りにはSSがいて、私たちもひっくるめて見張ってるってことよ、アンポンタン!)


(わかってるって。いちいち説明するなよ、デカ女)

ガーグが文句を言った。


(なんですってぇ?)

きっ!


(SSたちが見張っていると言うことは・・・)

ガーグは誤魔化すように目を閉じて精神を研ぎ澄ました。


(こら、答えなさいよぉ!)

タリアはガーグに噛み付いた。


(しっ!黙ってろ!精神統一中だ・・・)

(あなたが精神統一ですって?ふん!どうせ、リュディスの裸姿でも遠視しようとでもしてるんでしょ?)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(ナナン。SSの様子だよぉ!デカ女!)

(うっさいわねぇ・・・!)


(精神統一。精神統一。おっ・・・!)


ふわん・・・。


(どうしたのよ?)


狭いところでタリアが屈もうとしたので、ガーグの目の前で、彼女のスカートが腰までめくれ上がった。

ちら・・・。


(見えた。意外だな。白だぞ・・・)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(はぁ・・・?そんなこと自分でしなくても、エリゼブラ・レミューヤに尋ねればいいのよ。ねぇ、エリゼブラ・レミューヤ?)


(リーエス)

エストロ5級母船はすぐに返答した。


(オレが言ったのは、おまえのパン・・・)


(白というのは、タリア、あなたのことです。スカートがめくれていますよ)

ガーグがいい終わらぬうちに、エストロ5級母船からタリア警告が発せられた。


(いっ・・・?!パンツですって・・・?こ、このド変態っ!)

ばっしーーーん!


「おわーーーぁ!」

どん、がんがら、がっしゃーーーんっ!


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「痛ってぇな!だったら、見せるな!デカ女!」

「だったら、見るな!」

二人は声を張り上げた。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


ささっ。

慌ててタリアはスカートを直した。




どんがらがぁーーーん。


「なんでしょうか?」

「なんだか、外が騒がしいぞ」

タリアたちが立てた音と怒声にトルフォがリュディスから視線を外らせた。


「わたしが見てまいります」

父親が言った。


「ナナン、父上殿。SSたちに任せておけばよろしいですぞ。どうせ、野良猫でも騒いだのであろうから」

トルフォは笑顔で自分の度量の大きさと寛容を父親に示そうとした。


「リーエス。でも、お父上のおっしゃるとおり、一応外の様子を確認しませんと・・・」

今度はリンメルトが言った。


「捨ておけ。人であるなら、SSたちがその旨すぐに言ってくるだろう」

トルフォがSSたちを見たが、二人とも首を振った。


「それ、見たことか」

にこ。

トルフォは自信たっぷりに微笑んだ。


「それより、お父上殿、今宵はご厄介になっても構いませんかね?」

トルフォは父親の申し出に喜んでいたので、すぐさまリュディスの家に宿泊することにした。


「トルフォ、本気ですか・・・?」

半ば呆れて、エージェントのリンメルトがモルナに目配せした。


「リーエス。滅多にないせっかくの機会だ。エルフィアへの要望も色々とあるだろう。ここは理事として現地の人々としっかり交流すべきと思わんかね?」

トルフォはなにを言うかと言うようにリンメルトを見た。


「ですが・・・」

「モルナ、大使館への連絡は頼んだぞ。わたしは今晩は大使館には泊まらぬ」

トルフォは軽く言い渡すと、母親の方に向き直った。


「母上殿、ありがたく甘えさせていただきます」

「はい。もったいないお言葉。そうと決まったら、これ、リュディス、トルフォ様をお部屋にご案内差し上げて」

「はい。お母様」




「しぃ!」

「しーーーっ!」

大音を立ててしまったタリアとガーグは互いに人差し指を口元で立てた。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「・・・」

「・・・」


そして、二人は精神波が漏れ出さないよう慎重にシールドし、身動き一つしないで1分近く待った。


(もういいだろう。ハイパーラインで話せよ、タリア)

(そうしてるわよぉ。SSたちに感づかれたくないわ)

二人は利害一致したところで、タリアからガーグにハイパーラインを引くよう提案したのだった。


(はっ。ここのSS、きみの教え子だったりしてな)

にた。


タリアは長らくSSたちの教官をしていた。


(なにが言いたいのよ?わたしだって、口説き方くらいは十分させられたわよ)


(ほう。真面目だったんだな?)

(今もよ。ところで、だれも出てきそうにないわね・・・)


(ああ。音の立て方が良かったんだな・・・)

(なによ、それ?)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(女の子の悲鳴なら、4、5人はすぐに出てきたんじゃないか?)

(わたしは悲鳴なんてあげないわ)

(オレは女の子って言ったんだ。デカ女って言ったんじゃないぞぉ)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(バカ!)

ぷいっ!


(エリゼブラ・レミューヤ、こいつを一度徹底的にぶちのめしてくれない?)

(リーエス。本当によろしいいのですか?)

(遠慮はいらないわよぉ)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(よせ、美人のお嬢ちゃん!いや、実に美しいお嬢さんだ。また、大音を立てるつもりじゃないだろうな。頼むぜ、エリゼブラ・レミューヤ)

(賢明なご意見です、ガーグ)


(はっ!ガーグ、あなたに彼女へのアクセス権はないはずよぉ!)

(へ、そうかい?こんな美女に語りかけないのは男じゃないぜ)


(もう!エリゼブラ・レミューヤ、あなた、ガーグの言うことを聞くつもり?)

(一応、美人、美女と呼ばれた身としましては、なんらかの返事はしませんと失礼にあたりますので・・・)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(あなたねぇ、あれがガーグのお世辞だってことわからないの?おべんちゃらで簡単に買収されちゃって、随分と安っぽいじゃない、エリゼブラ・レミューヤ・・・?)




「こちらです、トルフォ様」

リュディスはトルフォを連れて2階の客用寝室に連れていった。


「ほう。なかなか立派ではないか」

リュディスの家はいわゆる中流家庭であるが、親子5人が余裕で暮らせるほどの大きさと、程よい調度品が清潔な部屋を飾っていた。


「お荷物はここへ」

「はい」

モルナが後から来た荷物係にトルフォの荷を運び入れるよう指示した。


「SSたちの一人は隣の部屋に。もう一人はラフトに待機」

エージェントが確認した。


「リーエス」

「リーエス」


ささっ・・・。

彼の指示の下、SSたちが持ち場に向かった。


「トルフォ、わたしはこれで一旦リビングに戻ります。ご用は精神波で」

「うむ」


「それと、シュリオン上空に待機するエストロ5級母船、エリゼブラ・レミューヤには常時監視をさせています。怪しい人物とか接近するようでしたら、直ちに警告が発せられますので、ご安心ください」


「うむ。わかった。きみもご苦労だったな」

トルフォは相変わらず上機嫌だった。


「リーエス。では下に降りています」

「うむ」


部屋にはダブルベッドの上に下ろしたての清潔な羽根布団が用意されていた。


「こちらがベッドでして・・・」

父親がトルフォに言った。


「いや、実に清潔な部屋だ」

ちらちら・・・。

リュディスを見ながら、トルフォは感心したように言った。


「それに美しい・・・」


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「お気に召していただけるなら、ありがたき幸せで・・・」

両親とリュディスは頭を下げた。


「いや、急に頼んで申し訳なかったな。感謝するぞ。正直、毎日、毎晩、宇宙船と大使館じゃ、殺風景でな。ちょうどいい機会であったし、気分転換にもなろう・・・。うむ。父上殿、誠にけっこう」

トルフォは一人大きく頷くと父親をねぎらった。


「いや、トルフォ様から父上殿とはもったいない。お頼みしたのはわたくしどもの方でして・・・。なぁ、おまえ・・・」

父親は照れ隠しで妻に視線を移した。


「そうですわね。で、リュディス、あなたは・・・」

「いつものとおり、自分の部屋で休みますわ。おほほほ」


「そ、そうか。そうであった。そうであった!わははは」

「あははは・・・」

「おほほほ・・・」


トルフォと両親は頬がひきつりそうな笑いを浮かべていた。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー




(タリア、トルフォのおやっさん、宇宙船は殺風景だとよ)

(あら。あなたがいるからじゃない、ガーグ?)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(ほう・・・。そういやぁ、きみもいるしな・・・)

(うるさい!)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(しっかし、トルフォのヤツ、やること早過ぎるんじゃないかぁ?リュディスを専属秘書にしたと思ったら、今度はしっかり彼女の実家にお泊まりかよぉ・・・)


(リーエス。ユティスのことなど頭から完全に蒸発しちゃってるわね)

しゅうぅぅ・・・。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(だな・・・。およ。ご両親は娘が玉の輿に乗れるんじゃないかと期待を寄せてるようだぜ。リュディスの部屋のすぐ隣にトルフォの部屋を用意している・・・)

にたにた・・・。


(けど、リュディスにはその気はないようよ)

しらぁ・・・。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(一同、リビングに集まるみたいだぞ。これからささやかなる晩餐会か・・・)

(らしいわね)

(リュディスが飾り付けられてトルフォの皿に乗らなきゃいいが・・・)


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


(バカなこと言わないで。あの娘がトルフォの餌食になってたまりますか)

(ほう。えらく自信あるようだな?)


(SSやエリゼブラ・レミューヤが見張ってるのよ。いくら理事とはいえ、現地秘書にそんな勝手な真似が許されるわけないわ)


(どっこい、相手はウラン235、トルフォだぜ。一旦、火がついたら臨界点まであっというまだぞ)

(そうはさせないわ。エリゼブラ・レミューヤ、トルフォが皆を下げてリュディスを強制的に一人にさせるようなら、すぐにSSたちを介入させて)


(リーエス、タリア。明らかに委員会規定に抵触です)

(あ、そうそう。最高理事勅命コード『XXXX』を発します。わたしたちのことは、彼らには絶対に内緒よ)


(リーエス。コード『XXXX』を確認、タリア)

(おい。おい。最高理事勅命コードだとぉ?すっげぇじゃないか・・・。きみはどんだけエルドに信頼されてるんだぁ?)




「さて、リュミエラから折り入って頼まれたことというのは・・・、他でもない、きみたちの今後の処遇に関してのことだ」

エルドは机に両肘をついて目の前で手を合わせ、二人に静かに切り出した。


「どういうこと?」

早速、ファナメルが今の言葉に強く反応した。


「わたしに協力してもらえるなら、裁判その他、きみたちの処遇を相殺させるに足る十二分な条件を用意してると言ったら?」

エルドはニコリともせずにファナメルを見つめた。


「信じられない。わたしはエルフィアを裏切ったことになってるのよ。協力と言っても、再び裏切らないと信用してくれるのかしら?」

ファナメルもエルドを見つめ返した。


「担保はリュミエラだ」

エルドはリュミエラの頼みを思い返した。


「はっ、リュミエラが言葉一つでわたしたちを保証するってぇ?一体全体どういうこと?それとも、リュミエラはあなたの条件とやらの下、既に自由の身だってことぉ?」

ファナメルはエルドを見つめ返した。


「今の問題は彼女ではなく、きみたちだ」

ファナメルを見つめるエルドは瞬き一つしなかった。


「なるほど、リュミエラだけ、いいご身分ね」

ファナメルはそっぽを向くと眉をひそめた。


「彼女まで裏切るというのなら、話は御仕舞いだ。シェルダブロウ、残念だったね。無駄足だったよ」

エルドは両手を机から離すと立ち上がろうとした。


「リーエス、エルド」

すくっ。

シェルダブロウが椅子から腰を上げようとした。


「だめ!」

エルドが席を立とうとして、ゾーレが慌ててそれを制した。


がたっ!


「ちょっと待ってよ!具体的なことなんて、なんにも話してないじゃない。それに、わたしには一言も聞いてくれてない。不公平だわ!」

ゾーレはエルドを非難した。


「すると、きみは無条件でわたしの話を聴くつもりがあるというのかね?」

立ち上がったまま、エルドはゾーレを振り向いた。


「リーエス。さっさと話せば、条件とやらを!」

ゾーレはエルドを刺すように見つめた。


にやっ。

「では、ファナメル、きみだけは・・・」


「待ちなさいよ!わたしは聴かないなんて一言も言ってないわ!

きっ!

ファナメルはエルドを睨みつけた。


「よろしい。肯定的な質問には答えよう。それ以外は受け付けんよ」

にやり。

エルドは口端をあげるとゆっくりと返答した。


「わかったわ・・・」

「リーエス・・・」

二人はひとまず矛先を引っ込めた。


「メローズ、まずは、きみから概要を話してくれたまえ」

「リーエス、エルド」


ぴっ。

メローズがみんなの前の空中に立体スクリーンを出すと、ファナメル、ゾーレ、シェルダブロウの3人はそれに注目した。


「それでは説明させてもらいます」

「リーエス」


「イラージュ取り込み作戦、フェーズ0・・・?」

「イラージュ、フェーズ0・・・?」

映し出された怪しげなタイトルをファナメルとゾーレは思わず口にした。


「リーエス。イラージュという言葉を聞いたことがあるかしら?特にブレストから・・・」

タイトルだけ映し出しながら、メローズが女性たちにきいた。


「ブレスト?ナナン。聞いたことはないわ」

「わたしも・・・」

二人は不安そうに答えた。


「シェルダブロウ、あなたは知ってるわよね?」

「リーエス、メローズ。約200年前にブレストの立ち上げた文明支援世界とその組織です」

シェルダブロウの言葉に二人は凍りついたようになった。


「ブレストが立ち上げた文明支援世界とその組織ですって・・・?」

「200年も前・・・?どうして、今まで、みんな気付かなかったの・・・?」


「それって、完全な委員会規定違反じゃない・・・」

「ユティス拉致どころの騒ぎじゃ済まないわよ・・・」

ファナメルとゾーレはそれが意味するところをたちどころに理解した。


「その様子じゃ、ブレストはあなたたちにはなにも話してなさそうね」

メローズが二人の様子から判断した。


「話すも何も・・・」

「ブレストは一体なにを考えてるの・・・?」


「それが結論よ。ブレストが一体なにを画策しているのか。あなたたちにはイラージュの取り込みにつき、現地情報を集めてもらうわ。エルフィアがイラージュと交渉するためにね。場合によっては、こちらからイラージュを支援をしなくてはならないかもしれない」

メローズがエルドの言う条件を口にした。


「・・・」

「・・・」


たちまち、二人は沈黙した。


「それじゃ、まず、こちらから説明をさせてもらうわ」


ぴっ。

メローズはスクリーンにイラージュの簡単な情報を映し出した。




合衆国大統領官邸では、イラージュの中型宇宙船が大統領官邸を飛び去ってまもなく、騒がしい報道陣やヘリコプターの他、そこは宇宙船訪問の余韻に包まれていた。


「ミスター・プレジデント、結局、イラージュの大統領とはお話しできませんでしたね」

合衆国大統領はシークレットサービスのジョバンニと頷き合った。


「いや、それで良いのかもしれん・・・」

大統領は顎に手をやってイラージュの宇宙船が消えていった空の遠くを見つめた。


「全世界がこの中継を見ている・・・」

大統領はだれに言うとはなくぽつりと言った。


「さて、各国首脳はどう出ることやらです」

ジョバンニはスキンヘッドから黒眼鏡を掛け直した。


「いや、わたしは彼らだけを念頭に置いているのではない」

大統領は空からジョバンニに視線を移した。


「ええ?では、一体だれを?ミスター・プレジデント・・・」

ジョバンニは黒眼鏡越しに大統領を見た。


「実は、これはエルフィア向けでもあるんだ・・・」

にやり。

大統領は笑った。


「クリステアのマムたちですか?」


「うむ。それにアンデフロル・デュメーラに最高理事のエルド。これだけ派手に電波を飛ばしているんだぞ。地球上で空待機中の彼女が見逃すと思うかね、ジョバンニ?」

大統領は彼の黒眼鏡の奥に潜む目を射抜くように、ジョバンニを見つめた。


「うっ・・・。例の空飛ぶお船、アンデフロル・デュメーラ。エルフィアへの大統領のメッセージというわけですか。さすがに、そこまでは・・・」


ぷるぷる。

ジョバンニは首を横に振った。


「彼女は漏れなく速やかに伝えてくれただろうな」

にやり。


「彼女って、ありゃ、イメージだけの擬似精神体ですよ、大統領」

ジョバンニは彼女がもう擬似精神体などではなく、ちゃんとした肉体を持った有機体アンドロイドであることをまだ知らなかった。


「いいや。ジョバンニ、これからは意識を変えねばならんようだな。人工的機械とはいえ、ちゃんとした自律プログラムの下、人間と少しも変わらん意識を持っているぞ。それも女性としてのな・・・」


大統領も彼女が有機体アンドロイドになったことは知らなかったが、ジョバンニへの言葉は彼自身の考えから出てきた当然の帰結だった。


「そういうもんですかね・・・」


「それに、エルフィアには、包み隠さず、すべてをモニターしてもらっていた方が都合がいいんだ。正直な話、わたしが地球代表としてイラージュ大統領と面会したとすると、地球としての後がなくなる。他のだれかがイラージュと会談するのなら、方便でも、わたしがそれをひっくり返そうとすることはできない相談でもあるまい。国家元首たるもの、オプションなしで行動するわけにはいくまい」


「イエッサー」

さっ。

ジョバンニはそれを理解して大統領に敬礼した。


「うむ。そう言うことだ。今頃は、もうエルフィア本星にも、私の意思は伝えられているに違いない。合衆国はイラージュに中心的に文明支援を頼むつもりはない」


「イエッサー」

「ところで、ジョバンニ、コーネロ大学のサンダース博士を知っとるかね?」


にやり。

大統領は一転して悪戯っぽく笑った。


「イエッサー」

「彼は実に面白い考えをしているようだ。わたしから日本の高根沢博士のところに彼をやった」


「日本へ派遣?では・・・?」

「うむ。時空に関するカテゴリー3への理論検証をさせるつもりだ。わが国になくてはならんテクノロジーの基礎理論だな。きみは時空と聞いてピンと来るかね?」


「アインシュタインの相対論ですかね?」

「うむ。確かに彼だ。だが、時空がなんであるかの答えは出してない。サンダース博士はそれに答えを出すだろう」


「重要なことのようですが・・・?」

「うむ。宇宙船の推進原理に直結していると言ったら?」


「大儲けができます」

「わっはっは!さすが合衆国市民だな、きみも!」

大統領は愉快そうに笑った。


ーーー ^_^ わっはっは! ーーー


「だがな、セレアムの宇宙船もイラージュの宇宙船も超光速移動、と言っても時空を瞬時にジャンプするわけだ。つまりワープするわけだが、そんな高速移動を瞬時にやってみろ、中の人間はぺしゃんこどころの騒ぎではないぞ」

「確かに」


「でも実際はそうなってない。どういうことかわかるかね?]

「さぁ・・・」

ジョバンニには想像もできなかった。


「宇宙船が我々と同じ時空にいないということかもしれんな。サンダース博士に言わせると・・・」

「でも乗り込みましたよ、国務長官たち・・・」


「だな・・・。こちらから見えていても、飛行中だけ、宇宙船は別の時空に移っているのかもしれん。いや、別の時空を宇宙船が作り出しているのかもしれん・・・」

大統領は遠くを見つめた。


「よくわかりませんが・・・」

「いいんだよ、今はね・・・。わたしも科学者ではない。ただ、もし、それに踏み込んでいったなら・・・」


「踏み込んでいったなら?」

「エルフィアがどう出るかだ・・・」

大統領は勝負師の顔になった。

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