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404 訪問

「アンニフィルドです。社員研修2日目、早々に真紀さんに失態を目撃されて、落ち込んでないかって?それはないわね。でも、俊介ったら、どうしてあんなにミリエルに気を遣うのかしら?こっちは恋人同士なんだからね。さっさと宣言して、あのネンネに引導を渡してしまえばいいのよ!見知らぬ惑星で俊介と二人になった途端、わたし、気持ちが溢れ出てきちゃって・・・。あ、なに言ってるのかしら、わたし・・・」

■訪問■




ここは、エルフィア文明促進推進支援委員会の理事トルフォが訪問中の、惑星シュリオンのとある小さな街だった。


「あ、あの、トルフォ、シュリオン大統領の歓迎のレセプションもそこそこに、リュディスの家に赴かれるなど、いったいどういうことで・・・?」

在シュリオンのエルフィア大使こと、A級エージェントのリンメルトは気が気でなかった。


「心配はいらん、リンメルト。言ったとおりではないか。わたしは気分が優れないので切り上げると」

「えええ???」


「むさい男と同じテーブルに着いて、無駄話を何時間も聞くはうんざりするわ」

最後はトルフォの独り言に近かった。


--- ^_^ わっはっは! ---

「しかし、シュリオンの大統領の立場と言うものが・・・」

リンメルトは冷や冷やだった。


「一応、公式の場には出席したのだから、わたしの義務は果たしたはずぞ。あればだが、その後のクレーム対応はおまえたちに任す」

「そんな、無茶苦茶なぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ひらひら・・・。

トルフォは面倒くさいとばかりに手を振った。


「任すとおっしゃられても、大統領は・・・」

なおも、リンメルトはトルフォに言った。


「言ったはずだ。気分がすぐれないので、ちょっと外に出たいと」

トルフォは顔をしかめた。


「しかし、ちょっとにしては、ここは既に首都から相当離れております」

リンメルトは大統領への言い訳をどうしたらよいか思案しなければならなかった。


「はは。よいではないか。となりの銀河に比べれば素粒子程度の距離もない」

「そんなものと比べるなんて現実性にかけます」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それより、モルナ、リュディスの家はもう近いのか?」

トルフォはリンメルトを無視するとエルフィア大使館の人事部長に声を掛けた。


「リーエス。リュディスの家は、その通りの路地を入ったあたりでございます」

そこは普通の人間が行くような商店の立ち並ぶ一角だった。


「うむ。なかなか面白そうな街並みだ。して、モルナよ、ここからは歩いていく方がよいと思うぞ」

「リーエス。ご随意に、トルフォさま。ラフトを止めましょう」


ぴ・・・。

最低限速度でゆっくりと地上数十センチを浮遊前進していたラフトが止まった。


「わたしのリュディス一家への手土産を持ってくれんか?」

トルフォはラフトを降りるとモルナに目配せした。


「リーエス」

モルナはその包みを手にするとラフトを降りた。




「さて、本日の研修内容はなんですか?」

石橋が真紀に尋ねた。


「グループ行動ね。船長、ご説明を」

真紀は船長に任せた。


「では、わたしから今日の研修を説明させていただきます。この宇宙船から半径1キロ付近にシールドを張ってあります。体長50センチ以上の巨大肉食生物を一旦追い出してのことですので、朝食を終えたみなさんが、今度は朝食になるような心配はありません」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わはは、面白いジョークだぞ、船長」

俊介は笑った。


「笑えないわ、わたし・・・」

「わたしもです」

石橋とイザベルが頷き合った。


「つまり、みなさんには今日も外に出てグループ行動を取っていただきます。時間は午前に2時間。ちょうど昼食前までです。午後にも2時間です。午後3時には必ず船まで戻っていただきます。やっていただきたいことは、草花、虫に至る、この惑星の動植物をスマホのカメラで撮影していただくことです。撮影するだけで、採集は絶対に控えてください。われわれ自身の微生物からの汚染を防ぐとともに、逆に、われわれが足を踏み入れるだけで惑星の生態系を壊すことへの予防のためです。惑星生態系へは敬意を払って行動願います」


船長は一同を見回した。


「それで、必ず、一人ないし二人は周囲の監視に交替して就いてください。大きな危険はないかと思いますが、小動物でも危険はあります。水辺は要注意です。また、足元が不安定なところもあるでしょう。こういった危険を感じたら、頭にセットしたインカムで至急グループ全員に警告を発してください。この監視役は1時間交代で行ってもらいます」


「二宮、聞いてる?」

「うす」


「また、宇宙船をセンターとして使用します。センターには、わたしとミリエルが待機して、みなさんのインカムの会話と足取りをモニターしています。センターから退避の指示があった場合は、大至急船まで帰還してください。緊急事態と判断される場合は、船より超時空転送をかけ対象者を緊急回収します。また、なにか質問があれば常時受け付けます。その他の不足事態が発生した場合も同様です」


「えーーー、わたし、待機なのぉ?」

ミリエルが不満そうに言った。




地球では、音もなくイラージュの中型宇宙船が合衆国大統領官邸の数十メートル上空に突然現れていた。


「な、なんだ、あれは!?」

「UFOだぁ!」

「大統領官邸に出たぞぉ!」


わいわい!

がやがや!


「きゃあ!」

「地球侵略だぁ!」

「け、警察を呼べ!」

「なに言ってるんだ!軍隊だ。軍隊を呼べ!」


そして、それは官邸の広場までゆっくりと移動すると、軍の吹奏楽隊がいる一でなにかを待つようにして止まった。


「写真だ!写真を!」

ぱしゃ、ぱしゃ!


「いいえ、動画よ。動画!」

「どおちでもいいから、消えないうちに撮るんだ」


ざわざわ!

大統領官邸周辺は観光で訪れる一般人や野次馬であっという間にごった返した。


「イージー!イージー!テイキティージー!(落ち着いて!落ち着いて!落ち着くんだ!)」

「バック!バック!(もっと後ろにさがって!)」


群集の周りには、いつもの警官の数倍の警官と機関銃を持った軍の兵士たちが、官邸を取り囲むようにして彼らに落ち着くように叫んでいた。


「落ち着いていられっかよぉ、ありゃ、なんだ?空飛ぶパンケーキだっていうのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「こちら首都アントニーズ空域基地管制室。大統領官邸上空にボギー(UFO)確認。総員配置につけ」

「ラジャー!」


首都を預かるアントニーズ空軍基地ではレーダーにイラージュの中型宇宙船を捕えると、すぐさま予定の行動に出ていた。


「F27戦闘機2機スクランブル確認」

「ラジャー。F27大統領官邸の警備続行中!」

レーダーモニタ上で機影をチェックする管制員の鋭い声が管制室に響いた。


「大統領ヘリ機を上空300フィートで維持させ、有視界飛行にて官邸広場に降りるよう指示せよ!」

管制室で司官が声を張り上げた。


「イエッサー!」

管制員はモニタで他の軍用機や民間機を確認しながら、大型ヘリを注意深く誘導し始めた。


「エアフォースワン、ヘディング040。メインテイン300。チェンジ、ビジブルフライト」

「ラジャー、エアフォースワン。ヘディング040。メインテイン300。テェンジ、ビジブルフライト」


管制員の指示に従い、今や大統領搭乗機としてのコールサイン「エアフォースワン」を与えられた大型ヘリが護衛機2機を従え真っ直ぐに大統領官邸を目指していった。




株式会社セレアムの社員研修第2日目のグループ行動は社長の真紀の判断で、一つのグループ5人、数グループに別れての実施となっていた。


「わたくしは、和人さん、クリステア、アンニフィルド、常務さんですね。うふふ」

「リーエス。まぁ、こうなるとは予想してたけどね。あはは」

ユティスの言葉を受けて和人は笑った。


「なんで、シュンスケがアンニフィルドと一緒になるんですの!?」

きっ。

不満たらたらでミリエルがアンニフィルドを睨んだ。


「しょうがないでしょ、社長裁定なんだから。こうしなきゃ、いろいろと問題が起きるのよ」

ぷるぷる・・・。

クリステアがミリエルを横目で見ながら、右手を左右に振った。


「これこそ問題ですわ!」

ミリエルは振り返りざまクリステアを睨んだ。


「どうせ、あなたは同時にマルチタスクができないんだから、しっかりみんなをモニターで見て、みんなの安全を守ることだけに専念してなさい。あは」

長身のアンニフィルドがミリエルを見下ろした。


「な、なんですってぇーーー!」

きぃーーー!


ぷよぉーん・・・。

アンニフィルドはこれ見よがしに俊介にすがりついた。


「お子様は見ちゃダメよぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「こ、こら、止せよ、朝っぱから・・・」

俊介は社員一同の暖かな視線を受けて狼狽した。


「な、なに押し付けてるのよぉ、このエロエロオババ!」

ミリエルが本気で怒りはじめた。


「あらあら、品がないわねぇ。可哀想に。わたし、ない者のひがみなんて、気にしないわよぉ、ネンネちゃぁーん。わたし宇宙一大らかだから。あは」

(どこがだよぉ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ぴっとぉ・・・。


「きぃーーーっ!俊介、離れなさいったら、離れなさいよぉ!」

だんだん・・・!

ミリエルは地団太を踏んだ。


「さぁ、みんな支度ができたら出発するわよぉ!」

牧野威勢のいい声が飛んで二人の日常イベントは取り合えず幕となった。


「アンニフィルドのオバサン、絶対に肉食動物の前に誘導してやるんだから!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぎりぎり・・・。

ミリエルは歯軋りしながら、アンニフィルドたちの足取りを空中スクリーンでモニターした。


「おいおい、ミリエル、スポッターがそんなことしちゃいかんぞ。アンニフィルドたちが片っ端から始末してしまうじゃないか?」

「はいっ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「捕食動物もある程度いなきゃ、自然のサイクルは回らないと思うが・・・」

心配そうに船長がミリエルを嗜めた。


「なるほど、そんなに大喰らいってことよね!」

「はい・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


今度は船長が目を点にした。




「あれ、だれよ?アンニフィルドの悪口言ってるのは?」

真紀がインカムで全員に告げ、全員がそれに答えた。


「わたしじゃないわよ、真紀」

「違いますわ」

「オレじゃないっす」


「そうね。二宮があんな可愛い声してたら、即卒倒してるわ」

茂木が頷いた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、内容は相当えげつないわよ」

「それも、そうね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わかるけど、研修中なんだから集中しなさい!怪我するわよ!」

真紀の怒声が飛んだ。


「なにがわかるけどよぉ・・・?」

ぶつぶつ・・・。

アンニフィルドが言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あの、ミリエルのネンネったら、社員全員に聞こえてるじゃないの!」




ミリエルは船長との会話の通信スイッチを切っていなかった。


「ミリエル、きみの話し声、みんなのインカムに全部丸聞こえになってるぞ」

ぴっ。

船長が気付いてスイッチを切った。


「オバさんに聞かせてやってるのよ。マルチタスクが得意らしいから!」

「うん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぴっ!

ミリエルは再びスイッチをオンにした。


「ミリエルのネンネ・・・」

当然、アンニフィルドはそうなった。


「と言いながら、ミリエルに真っ向から相手するなんて、あなたこそ、まったく同じ土俵に乗っかってるんじゃないのぉ?」

クリステアがしょうがないというように天を仰いだ。


「わたしだって、一応、生娘だもん!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はっ、アンニフィルド、きみが生娘だってぇ?へそが茶を沸かすぜ。あっはっは!」

「あーーー、バカにしたぁ!もう、許さないんだから!」


ぎゅうっ!

アンニフィルドは俊介の背中に両腕を回すと相撲技の鯖折のように彼を抱え上げた。


「あたたたーーー!」

「あーーー、しっかり抱き締めちゃってぇ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ばん!

ミリエルがイスを叩くと血相を変えて叫んだ。


「違う!締め上げられてるんだってば!」

ぐぇ・・・!


--- ^_^ わっはっは! ---


「お、堕ちる。目の前が暗くなってきた・・・・」

がくん・・・。


「え?俊介ぇ・・・?」


する・・・。

俊介があがくのを止めたので、アンニフィルドは両腕を緩めて彼を降ろした。


すとん・・・。

くたぁ・・・。


「・・・」

「あなたぁーーーっ!」


がばっ!

「だれが、あなただ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、生きてたのね!よかったわぁ!」

しくしく・・・。


「おまえが殺そうとしたんだろうが!おまえが!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、酷い、妻に向かって・・・」


「だ、だれが妻ですってぇ!」

ミリエルが血相を変えて叫んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「きぃーーー!」


ばんばんばん!

ミリエルの怒声と、彼女が机を思いっきり叩く音が、インカムを通じて全員に聞こえた。


「ミリエル、船内の設備をむやみに叩かないでください。みなさんに危険が及びます」

宇宙船のCPUが警告を発した。


「ええ?なんですってぇ?」

ミリエルは矛先を宇宙船に向けた。


「あなたは黙ってなさい!」

「仕方ありません。危険回避緊急行動を取らさせていただきます」


「え?なに・・・?」


ざっばぁーーーっ!

そのミリエルの上からバケツ一杯分の冷や水が掛けられた。


「きゃあ、冷たい!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なに、するのよぉ、もう!」


「お手伝いありがとうございます、船長」

「どういたしまして。頭を冷やしなさい、ミリエル・・・」


じろり・・・。

そこには空のバケツを持った船長が彼女を睨んでいた。


「全員の安全確保が最優先だ。よもや、セレアム出発時のエメリアの言葉を忘れてはいないだろうね、ミリエル?」


「わたし・・・」

さすがのミリエルも冷水を掛けられたとあって正気に戻った。


「シャワーでも浴びて出直して来なさい」

ぴしり!




一方、宇宙船の外では、俊介がアンニフィルドの手を引っ張っていた。


ぐい・・・。

「アンニフィルド、ちょっと来い!」


「な、なによぉ!」

「姉貴、ちとばかしグループを離れて単独行動を申請するぞ。いいんだろう?」


「ええ。許可するわ」

一部始終を聞いていた真紀は、弟がロマンチックなことを期待しているのではないことを知っていたが、その結果までは予想がつかなかった。


ぴっ。


「アンニフィルド、きみもスイッチを切るんだ」

俊介はインカムのスイッチを切った。


「リーエス。わかったわ。で、どこに行くの?」

「いいから、ついて来い!」


ぐいぐい・・・。

俊介はアンニフィルドを引っ張って林の方に足早に向かった。


「二人っきりで温泉にでもいくの?」

にこ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「いい加減にしろ!ここはエデンの園じゃないんだぞ。ここそこに、そう都合よく温泉が湧き出てたまるか。オレたちはここには研修で来たんだ。カテゴリー4のエルフィア人には退屈かもしれんが、オレたちカテゴリー2に成り立ての地球人に取っては、大切な学びの場なんだ。それを、きみとミリエルで台無しにして、オレだけでなく、みんなからその機会を奪うんじゃない!」


びしぃーーーっ!

俊介はいつになく真顔になってそこら中に声を響かせると、アンニフィルドに対峙した。


きりっ。


「・・・」


(どうだ。決めてやったぞ!)


「はぁ、はぁ・・・」

俊介は大きく息をついた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ステキ・・・」

とろぉーーーん・・・。


「はぁ・・・?」


「今まで一番ステキ・・・」

ぽ・・・。

うっとり・・・。


「あのなぁ・・・」

がっくり・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介はすっかり毒気を抜かれて急にトーンダウンした。


「アンニフィルド、オレの言ってることがわかってるのかぁ?」

「リーエス・・・」

アンニフィルドは静かに頷いた。


「だから・・・、一回でいいから本気でキッスして。もう、馬鹿なことしないから・・・」

アンニフィルドはしおらしくうつむいた。


ぽっ。

もじもじ・・・。


「ホントだな?」

「リーエス・・・」


きゅ・・・。

アンニフィルドは両手を胸の上でたたむと、上向き加減になって目を閉じた。


ぶぅーーーん・・・。


「おっ・・・?」


そこに虫が飛んできてアンニフィルドの鼻先に止まった。

ちょん!


「へっ、くしょんっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どわぁっ!なにするんだよう!」

びっくり仰天して、俊介は目を開けた。


「ん、もう!虫までがじゃまするんだから!あっち行きなさいったら!」

ぶん、ぶんっ、ぶんっ!

アンニフィルドはおっかなびっくりで逃げ出した虫を手で追い払った。


「おーお。随分ともてるな、きみも。そいつも、きっとオスなんだよ。追い払うなんて可哀想に・・・」

「はい?」


--- ^_^ わっはっは! ---




二宮とイザベルはというと、こちらも真紀の計らいで同じグループになっていた。


「さて、イザベルちゃん、早速ぱちぱち撮ってるっすけど、なんかいいのが撮れたんすか?」

二宮はまだスマホのカメラを起動していなかった。


「なにかと言っても、そこら中に、この星の命が溢れているじゃないですか?植物だって・・・。ほら、そのお花もステキですよ」


にこ。

イザベルは黄色い小さな花が群生して咲いているのを指差した。


「そおっすよね。植物も生き物っすよね」

にこ。


「二宮さんこそ、まだ一回もシャッターを切っていませんよね?」

「写真のメモリがいっぱいになるといけないんで、イザベルちゃんとのショット以外はセーブしてるっすよぉ」


「わ、わたしのショットですか?」

「うす。地球の1400キロ先まで来ていながら、イザベルちゃんとのツーショットの一つもないなんてもったいないっすよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「記念撮影に来たんじゃないんですよ。この星の生物を撮れって真紀さんが言ってましたよね?」

「記念写真は撮るなとも言われてないっす・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そりゃそうですけど、常識的に考えればわかりそうなものです。それに、なぜ、今朝のうちPCにセーブしておかなかったんですか?」

イザベルはむっとしたように言った。


「地球のPC?セレアムの宇宙船にあったんすかねぇ?」

二宮は首を傾げた。


「地球のPCデータセーブ用のインターフェイスはちゃんと用意してあるんですよ。真紀社長が昨日説明していたんですけど、祐樹さん、ひょっとして聞いてなかったんですか?」


「おす。自分は聞いてないっす」

二宮は自信たっぷりに答えた。


「それは聞き逃したっていうんです。もう・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


イザベルはまたかという表情になった。


「あれあれ・・・。二宮、またやらかしてんのぉ?」

二宮と同じグループの茂木がシャーターを切り終えると立ち上がって、二宮をからかった。


「そういう茂木さんこそ、なにか撮ったんすか?」

「もっち!見てみる?」

にこ。


「わたしも見たいです」

イザベルと二宮は茂木のところにやってきた。


「ほれ、ご覧なさい。いろんなのがあったわよぉ」


ぱらぱら・・・。

茂木はスマホの写真ホルダーを空けてそれを見せた。


「・・・」

「・・・」


イザベルと二宮は黙ってお互いを見合った。


「えーと・・・」

「ははは・・・」


「なによぉ?菌類のどこが悪いっていうの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「さ、行きましょう、二宮さん!」

「お、おす・・・」


「あんたたち、なに、良からぬ妄想してんのよぉ!」

「し、してません!」

「おす・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




そして、石橋は岡本とキャムリエルと一緒だった。


「けっこう、動物って撮るの難しいわね、石橋?」

「はい。みんなすぐに逃げちゃうんで・・・」


ぱたぱた・・・。

キャムリエルの数メートル前で小鳥が逃げて飛び去っていった。


「ボクのせいじゃないよ」


そこには小鳥を撮ろうとして逃し、仁王立ちになったキャムリエルが惜しそうにそれを目で追っていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「キャムリー、いえ、わたしはそういう意味で言ったんじゃ・・・」

慌てて石橋が弁解した。


「遠くから撮ろうとすると画質が悪くなるしね」

キャムリエルが残念そうに飛び去っていった小鳥を目で追った。


「スマホの望遠は解像度とのトレードオフだもんね」

岡本も相槌を打った。


「あれ?」

岡本は石橋が突然なにか様子が変わったように感じた。


「どうしたんです?」

石橋は不思議そうに岡本を見た。


「石橋、今、なんて言った?」

「『わたしはそういう意味で言ったんじゃ・・・』、ですか?」


「違う。その前」

岡本は首を振った。


「はい。『みんなすぐ逃げちゃうんで』、でしょうか・・・?」

「違う。その後ろ。そして、さっきの前」


「えーと・・・」

石橋は思い出そうとした。


「たぶん、ボクのことを呼んだ時だよ」

にっこり。

キャムリエルが微笑んだ。


「え・・・?『キャムリー』ですか・・・?」

石橋は自身なさそうに言った。


「そう。それ。それ。いつから、そう言う風に呼ぶようになったわけ?」


にたにた・・・。

岡本は確信した。


「昨晩からだよね、可憐?」

「は、はい・・・」


ぽっ・・・。

石橋は恥ずかしそうに答え、岡本はいよいよかと頷いた。


「うん。うん」

にまぁ・・・。


「可憐?キャムリー?てっかぁ・・・?}


--- ^_^ わっはっは! ---


岡本は石橋とキャムリエルを交互に眺めた。


「な、なんでしょうか、岡本さん・・・?」

石橋は岡本が突っ込んできたらどうしようかと思った。


「ううん。いいのよ。いいのよ。そういうことであれば・・・」

しかし、岡本は部下をそういう風にいじることはしなかった。


「キャムリー?」

「・・・」

その代わりに、キャムリエルを呼んでみた。


「キャムリー?」

「・・・」


「キャムリー!」

「・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


にたにた・・・。

キャムリエルは岡本に呼応しなかった。


「なによ。にやけてるだけで、答えなさいったら。それとも、わたしがそう呼ぶの嫌なわけ?」

「ナナン。岡本さんが嫌ということじゃなくて、可憐にしか、そう呼んでいいと許可してないだけです。そう呼ばれても、可憐以外のだれにも答えないということでして」

にたにた・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふぅーーーん。石橋にしか権利なしかぁ・・・」


岡本は屈み込んで座って写真を撮っている二人を見つめた。

じぃ・・・。


「リーエス。可憐の特権です」

にっこり。


--- ^_^ わっはっは! ---


「無理矢理そう呼ばさせているんじゃないでしょうね?」


ぎろり。

岡本は眉をひそめてキャムリエルを睨んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ち、違います。わたしなんです。わたしからです。最初はわたしがそう呼んだ・・・、らしんです・・・」

「らしい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お酒で酔っ払った後のことで・・・」

かぁ・・・。


「あ、そう・・・。そういうことなら・・・」

ぱしゃ!


「あ!」

「きゃ!」


「二人のツーショット撮ってあげたわよ。写メしてあげるね。地球にもどってからだけど」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほれ、石橋の恥らったような赤面、可愛いというか、なんか妙に色っぽいわぁ・・・」

岡本は石橋がキャムリエルと並んで、可愛く恥らいながらしゃがんでいるところをアップを撮っていた。


「すっごくよく撮れているよぉ」

「きゃあ、ダメです!返してください!」


「やぁーよ。10年後、宝物になるんだから」




「常務たち、またやってるなぁ・・・」

インカムからアンニフィルドと俊介の声が消えたのを確認して、和人は苦笑いした。


「リーエス。でも、アンニフィルドも可哀想ですわ」

ユティスが少し同情したように言った。


「どうしてさ?会社の研修中だよ。あんまり人前でいちゃつくのは感心しないと思うけど」

「言えてるわね。あれは行き過ぎ」

クリステアが和人に相槌を打った。


「まぁ、クリステアはそう思わないんですか?」

ユティスは意外という顔をした。


「ナナン。ぜんぜん思わない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ。お二人ともご存知ないのですね。アンニフィルドはとっても我慢してたんですのよ。常務さんをあんなに愛してるのに、ちっともかまっていただいてないんですもの」


「そうかい?」

和人は疑わしげに言った。


「そうですとも。シャデルのプライベート・ファッションショー以来、キッスの一つもしていただいてないんですよ」

ユティスはアンニフィルドの弁護に懸命になった。


「みんなの前ではね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


クリステアが言った。


「あはは。それって、二人っきりの時にはちゃんとしてるってことかい?」

和人が言葉尻を捕まえた。


「たぶん・・・」

クリステアが惚けたように言った。


「たぶん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなことないですわ。アンニフィルドからちゃんと聞いているんですから」

ユティスが二人に反論した。


「はい。はい」

クリステアがやれやれという表情になった。


「和人さんはとっても優しいので、わたくしが頼めばすぐにしていただけますけど・・・」

ちらり・・・。


「あ・・・。そうなの、和人?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス!」

「常務さんはとっても恥ずかしがりやさんですから。きっと、アンニフィルドは寂しいんです。ミリエルさんも同じですわ」


「ミリエルも・・・?」

クリステアが呆れ顔になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ねぇ、ユティス、あなた、いったいどっちの見方なの?」

「もちろん、女性ですわ。うふ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「女性?とにかく俊介ではないのね?」

「そういうことになるのでしょうか・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルドのお気持ち察しいたしますわ・・・」

「ですって・・・」

クリステアは意見を求めるように和人を振り返った。


「で、あの二人が戻ってくるまで、ここで林の方を眺めているのかい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ここは未知の世界です。ちゃんと、お二人の安否確認はしませんと・・・」

「リーエス。二人を待ちましょう」

クリステアがユティスに同意した。


「常務、SSの訓練を受けてるって聞いたけど、アンニフィルドにのされてなきゃいいけど・・・」

和人が心配していたのは俊介の方だった。


--- ^_^ わっはっは! ---




「みんな、ちゃんとやってる?しっかり撮ってよぉ。撮った写真は地球に戻って世界中の科学者に配布するんだからね。それから、くれぐれも採集はしないように。この世界の環境に配慮よ。毒性のあるものかもしれないし、安易に触るのもダメ。もし、かぶれたり、虫に刺されたりしたら、インカムで救難を求めること。どんなに些細なことであっても、絶対に申告漏れのないように。ウォッチ役の人は、しっかりみんなを監視してね。ちょっとでも危ないと思ったら、本人に警告してよぉ。それから、リーダーさん、今言ったことを理解したら、返答してね」


ぴっ。

真紀がインカムで社員たちに指示をすると、安否確認の応答を求めた。


「はぁーい。やってまぁーす」

「ちゃんとやってるよ、真紀」

「こっちも。OKだよ」

「へーい。大丈夫でぇーーーす」

「こちらも、真面目にやってます」


一斉にグループリーダーたちから応答があった。


「あら、これだけ?」

「俊介のグループ、未応答だわよ」

真紀のインカムに岡本の声がした。


「そっか・・・。俊介、応答しなさい。俊介?」

「・・・」

俊介からの応答はなかった。


「俊介ってば。あなた、返事がないわよ」

「・・・」

真紀がしばらく待っても俊介からの応答は来なかった。


「応答してないじゃない。大丈夫かなぁ・・・」

真紀はなにかがおかしいと思った。


「あ、真紀さん、常務さんは、今、よんどころない事情で、インカムのスイッチを切ってまぁす」

真紀に応答したのはユティスだった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「はぁ?」

真紀は思わず聞き返した。


「スイッチを切ってるって、いったいどういうことぉ、ユティス?」

俊介が自らの意思でスイッチを切ったということで、真紀は徐々に不安から怒りに変わっていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ですから、アンニフィルドとお二人で林の中に・・・」

「は、林の中ですって!」

真紀は素っ頓狂な声で叫んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。他人には見られちゃいけない理由がおありだとか」

「呆っれた・・・」


(今朝のは見間違いじゃなかったのね・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「なにやってるのよぉ、まったく!白中堂々研修サボリね!」

真紀の憤懣やるかたなしという気持ちがインカムから伝わってきた。


「それが、わたくしにもさっぱり・・・」

ユティスの面食らったような声がした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「真紀さん、船長たちもウォッチしてるから、大丈夫じゃない?」

クリステアが言った。


「もういいわ。船長!俊介とアンニフィルドのモニターはでできてる?」

「はい。しっかりモニタリングしています」

船長がすぐに答えた。


「大丈夫なの、あの二人?」

「二人の身の安全は確保しています」


「じゃ、なにか確保できてないものでもあるの?」

「わたしから、それを言うわけには・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まったく。また、いちゃついいてるのね!」

「それについても、わたしから言うわけには・・・」


「言ってるのと同じじゃないの!」


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀の会話はインカムを通じてすべて社員たちにダダ漏れだった。




「こちら、大統領官邸です。今、まさにイラージュの宇宙船が舞い降りんと、広場上空数百フィート上空で空中にホバリングしています」

大手テレビネットワークのニュースキャスターたちも大慌てで集まって一斉に報道し始めた。


「ありゃあ、いったいなんなの?」

女性がニュースキャスターにきいた。


「事前情報だと宇宙船らしいです!」

「合衆国のではないですよね?」


「ええ、もちろん。でも、イラージュから今日引き渡しに来たんじゃないんでしょうか?」

「そりゃ、すごいわ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いくらしたんでしょう?」

「100ドルじゃ無理ですね!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「すごっく大きいわぁ!いったい、どのくらいの大きさが・・・」

「ちょっと待って、マダム!」

ニュースキャスターはその女性を制した。


「わたしは報道を続けねばなりません!ええーーー、このように一般市民も仰天の様子です。大統領官邸から発表があったのはつい1時間前のことです。他の局に先んじて、CNNMが映像をリアルタイムでお届けしています!」


「そこ、どいて!」

「はい、これ以上前に行ってはだめだ!」


ずかずか。

警官たちが報道陣を下げようと慌てて寄ってきた。


「あ、出てきたぞぉ!」


ダークスーツに身を包んだSSたちに囲まれ、大統領、国務長官、ブレスト、さらに、十数人が官邸から現れて、吹奏楽隊の待機する宇宙機の待つ広場へと足を進めていった。


ぴかぁ・・・。

ちょうど、彼らが宇宙船の下に来た時、太い光の丸い柱が注いできた。


すぅ・・・。

そこに一人の人影が浮かんだと思うと、光はすぅーと消えていった。


「だれだ・・・?」

そして、彼らは初めてイラージュ人と向き合った。


「はじめまして。わたしはジュノン。イラージュ大統領より特命を受けてあなた方をお迎えに参りました。ブレストよりことの次第は存じあげております」


にっこり。

その人物は微笑を湛えて彼らに挨拶をした。


「ハロー・・・」

「ハロー、大統領。ジュノンです」


ぎゅ。

ぎゅ。

大統領とジュノンは地球式に固い握手をした。


「ハロー・・・?」

「国務長官兼副大統領のエリザベスです・・・」

国務長官はジュノンと名乗った長身のイラージュ人男性に魅入られていた。


「なんと、お美しい・・・」

ぽかぁ・・・。

エリザベスは溜息混じりに言った。


「ありがとうございます。ブレストよりうかがっております。あなたが国務長官のエリザベス様ですね?」

にっこり。


「イエス。わたしです・・・。ようこそ、地球へ・・・」


つつつ・・・。

ちゅ。

ジュノンはエリザベスに近づくと、彼女と頬を触れ合わせ親愛のキッスを彼女の頬にした。


「どうも。ブレストさま、地球代表とのご交渉ありがとうございます」

「ああ。遠いところを、きみもメンバーもご苦労っだったな、ジュノン」

ブレストはジュノンたちの労をねぎらった。


「そちらこそ、ブレスト」

今度はブレストが彼と抱き締め合った。




そして、惑星シュリオンではトルフォがリュディス家にまさに訪問せんとするところだった。


そろり、そろり・・・。

リュディスの家までタリアとガーグの二人は密かに後をつけていた。


「タリア、ちょっとそのでかい身体を避けろよ。トルフォたちが見えないじゃないか」


リュディスの家は小さな街の路地を入ったところだったので、トルフォたちに見つからないよう、二人は路地に積まれたコンテナの隙間こっそりと忍び込んで、彼らの様子を探っていた。


とん。

とん。

トルフォたちがラフトから降りていた。


「屈めったら。デカ女!」

タリアの身長は180センチを超えている。


ぐいっ。

ガーグはタリアの頭を軽く押さえた。


「なんですってぇ?あなたがやたらとでかいだけじゃない!」

ガーグはさらに背が高く190センチは優に超えていた。


「うるせい・・・。お、リュディスと家族のお出ましだ・・・」

ガーグがリュディス一家を見ようと、もう少し前に出ようとした。


ぐいっ。

ちょん。


「あんりゃ・・・?」

ガーグはタリアの見事な身体に自分の身体が当たったのを感じた。


「きゃあ!ど、どこ当てんのよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


ガーグが身を隠そうとした瞬間、彼の腰がタリアの臀部に当たり、タリアは小さく悲鳴をあげた。


「不可抗力だ。ぎゃあ、ぎゃあ、今さら小娘みたいに騒ぐな。当たってるのが嫌なら、オレの後ろに回れってんだ。へん!」

ガーグはしかめっ面になった。


「えらそうに言わないでよ、ドスケベ!」

タリアはガーグに応戦した。


「やばい。こっちの方を見てるぞ。タリア、もっと屈めったら・・・」


ぐいっ。

ガーグは開き直ってさらにタリアにくっ付くようにして腰を屈めた。


「な、なにしてんのよぉ、このド変体!」

ごん!


「痛ぇな!」

タリアは頭を上に上げてガーグの顎をしたたか突いた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「もっと姿勢を低くしろったら、デカ女。トルフォに見つかっちまうじゃないか」

「悪かったわね、スーパーモデル体型で!」


ぐいっ。

タリアは腰を引いて少し身体を上げた。


「こ、こら!嫌なら、オレの後ろに回れって言ってんだろ?」

「こんな狭いところで身体を入れ替えるなんてできないわよぉ!」


「とは言ってもな、今トルフォに見つかんのは誠にマズイわけで・・・」


もぞもぞ・・・。

つん!


「きゃ!動かないでってば、変体!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うるせい。じゃ、黙ってろ!」

「あなたもね!」


ごそごそ。

さわっ。


「バカ!ド変体!」

きっ。

タリアはやっとのことで頭をガーグの方に向けると彼を睨んだ。


「食えない女だぜ、まったく・・・」

「しっ!聞こえてきたわ・・・」


ささっ・・・。

タリアは左手をこころもち上げて、ガーグに動かないように合図をした。


「オレにも聞こえるぞ・・・」


二人とも超A級SSだったのだ。母船の支援がなくても、他人の精神波を捉えることもさることながら、数十メートルやそこらの距離での人間の会話くらいなら、なんなく聞き取れる能力があった。


「エリゼブラ・レミューヤ、聞こえるわね。わたしの精神波モニターから、トルフォたちの会話を録音開始よ」


「リーエス、タリア」

タリアがシュリオン常駐のエストロ5級母船に依頼すると、それはすぐに答えた。


「ひょえ・・・。タリア、きみはここのエストロ5級母船とのアクセス権限を持ってるのかぁ・・・」

「悪い?」


通常、現役SSは、任務遂行上、派遣先の最寄の母船にアクセスできる権限がもれなく与えられていたが、とうの昔にSSを更迭されたガーグことレミット・グレイザムには、もちろん、そのアクセス権限は消滅していた。


「こいつは、おったまげた・・・。SSを首になったきみが、なおも母船とコンタクトを継続してるなんてな・・・」

ガーグはにやりと笑った。


「うるさいわねぇ。首を強調しないでくれる?あなたも同じ立場でしょうが?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「けどよぉ・・・」

「SSは首でも、エルドの任務は遂行中なんだからね。母船にアクセスできないでどうして任務が達成できるのよ?」


「とにかく、おったまげだぜぇ」

「少しは静かにできないの?」


「元超A級SSか・・・。ふむ。ふむ。なるほどね。きみへのエルドの信頼は相当厚いようだな・・・」

ガーグの最後は独り言になっていた。

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