400 抗議
「アンニフィルドです。今回のお話はこの前の続きでぇーす。大好きな恋人同士がお酒が入っちゃったんだから、どういう展開になるかというとぉ・・・。当然、ああだったり、こうだったり、だなんてぇーーー!いやいや、これは一般向けお話ですから、あんまり期待されちゃっても・・・。あは!いろんなキャラたちが、いろんな立場でいろいろ抗議してるんで、こういうサブタイトルになっちゃたんだけど・・・。まぁ、コメディだもんね、許してよぉ!あは!」
■抗議■
「アンデフロル・デュメーラ、聞こえて?」
ジニーは精神統一をして地球に戻っていった彼女を呼び出そうとしていた。
「リーエス。ジニーですね?」
「リーエス。ジニーよ」
何億光年離れているのかもわからなかったが、二人の有機体アンドロイド娘はハイパー通信を使って互いに会話した。
「あなたに、一つ頼まれごとがあるの。大切な用件だわ」
「リーエス」
ジニーの声はいつになく真剣で、アンデフロル・デュメーラは夜の繁華街での逆ナンパを中止することにした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと待っていただけます、ジニー?」
アンデフロル・デュメーラはジニーに待ったをかけた。
「リーエス。そっちの用事を片付けてからでもいいわ。一秒二秒を争うことではないから。あなたも忙しいんでしょ?」
「特に、そういう訳でもないですけど・・・」
また、サラリーマン風の酔っ払いが横丁でなにやらやり始めた。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンデフロル・デュメーラは二人にそろそろと近寄った。
すぅ・・・。
「あのぉ、わたくしと恋をしてみませんかぁ・・・」
「へ・・・?」
「うらめしやぁ・・・」
路上で二人の男たちが用を足し終えてチャックを上げようとしていたが、アンデフロル・デュメーラに気付くと大慌てでズボンのチャックを閉めた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「出、出たぁ!」
「助けてくれぇーーー!」
「もう、しませーーーん!」
どたどた・・・!
男たち路上での粗相を早々に引き上げて逃げて言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「どうしたの、アンデフロル・デュメーラ?お取り込み中?」
ジニーはアンデフロル・デュメーラの口調に微妙な躊躇があるのを感じ取った。
「なんでもありません。ここでは落ち着いてお話できそうにありませんので、一旦、母船に戻りたいです。それから、お話を再開していただけますか?」
アンデフロル・デュメーラは、ここでこのままジニーと会話するのは、無理だと判断した。
「リーエス。わかったわ。今度は、あなたから連絡して。ハイパーラインは開けとくから」
ジニーは即座に了解した。
「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)、ジニー」
(仕方ありませんわ。一度、母船に戻りましょう。少しの時間で検証はできていないけど、結果はまったく芳しくなかったわ。リッキーさんに、どこに原因があるのかもお聞きしなくてはいけないし。直すところがあるのなら、早めにしておくべきだわ・・・)
アンデフロル・デュメーラはとても真面目な性格だった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「二人だけじゃなかったんですか・・・?」
「どうやら、先客がいるようっすねぇ・・・」
ばしゃ、ばしゃ・・・。
二宮は湯を掻き分け和人たちの方に進んでいった。
「そこにいるのはわかってるぞ、和人!」
大浴場で二宮の声が響いた。
(バレちゃいましたわ、和人さん・・・)
(ま、まずい・・・。このままだと、イザベルさんの立場が・・・)
「こら、観念して出て来いよ。ユティスもいるんだろ?」
(ユティス、仕方ないよ。出て行くしかないぞ・・・)
(わたくしがイザベルさんと同じ状況だったら、フェアになりませんか?)
(ええええーーー!きみもトップレスになるってことぉ・・・?)
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人、出てこないなら、こっちから行くぞ」
二宮の声が大浴場にこだました。
(だって、問題はそういうことですよね?イザベルさんがお湯から出られないのはそういうことじゃないんですか?)
(それだったら、バスタオルを渡してあげればいい話じゃないのかい?きみが、イザベルさんのマネしなくていいよ)
(そうでしょうか?)
(リーエス。きみがトップレスになったところで、イザベルさんの不利な状況は変わらないよぉ?)
(不利って、どうしてですか?)
(そりゃ、オレは男で、イザベルさんはいるし・・・。きみがそうなったところで、二宮先輩が得するだけじゃないか・・・)
(うふふ。和人さんは二宮さんにわたくしのそういう姿を見せたくないんですね?)
ユティスは満足そうに言った。
(リーエス!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「そこだな、和人!」
ばしゃ、ばしゃ・・・。
二宮は和人たちが隠れている岩陰に迫った。
「ユティス、オレ、出るよ」
そう言うと、和人は近づいてくる二宮の前でいきなりその行く手を遮った。
ざっばぁーーー!
「先輩!」
「うぉーーーっ!」
ばっしゃーーーんっ!
二宮はびっくり仰天して見事に湯船の中でひっくり返った。
--- ^_^ わっはっは! ---
どたばた!
つるんっ!
ごぼごぼ・・・!
二宮は溺れまいとして、逆に頭まで湯の中に浸かってしまった。
「大丈夫ですか、先輩?!」
和人は二宮を助け起こそうと急いで手を差し伸べた。
ぐいっ。
「こ、この野郎!」
二宮の力任せの引っ張りで和人も同じく湯船の中に頭から突っ込んだ。
どっぼーーーんっ!
--- ^_^ わっはっは! ---
「げほっ、げほっ!」
和人は咳き込みながら二宮と対峙した。
「こら、和人!驚かせやがってぇ!海坊主が出たのかと思ったぜ」
二宮は本当にびっくりした様子だった。
「風呂で海坊主?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それはこっちです。いきなり、先輩とイザベルさんが入ってくるんですから」
「当たり前だ。ここは風呂だ。カップルで入るのは常識だろ!」
「常識?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「常識だぁ!オレだってカップルだぞぉ。はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
「きゃあーーー!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人・・・」
ぶるっ!
二宮は鳥肌だったように身体を震わせた。
「それで、おまえ、イザベルちゃんのなにを見た?」
二宮は鬼の形相で和人を睨んだ。
「言っても、いいんですかぁ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「和人さんのエッチぃ!」
イザベルは湯船に顎まで浸かったままだった。
「まさか、あれとかこれとかじゃないだろうなぁ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたくし、イザベルさんにバスタオルを取ってきますわ」
ユティスが和人の後ろで言った。
「頼むよ、ユティス」
「リーエス。少し待ってくださいね、イザベルさん」
ばしゃ、ばしゃ・・・。
ユティスはそう言うと、バスタオルを取りに大浴場の湯船から上がっていった。
「おまえ、本当にユティスと混浴してたのか・・・?」
ぽかぁーーーん・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮はあんぐりと口を開けて、ユティスのひもブラひもパンのビキニ姿を目で追った。
じぃ・・・。
(イザベルちゃんもノーブラでドッキリもんだけど、ユティスもごっくん生唾もん・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「なに口を全開にして見つめてるんですか!」
和人が文句を言った。
「ちらっと見るべきものを、じっくり見てるだけだ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「残念でした。ユティスはちゃんと水着を着てますったら。日本古来のじゃなくてね!」
「おっ、フンドシを馬鹿にしたなぁ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「もともと、大浴場で深夜の混浴てのは、先輩が言い出したことでしょうが」
和人が言い返した。
「だって、おまえこそ、ぜんぜんその気がなかったじゃないか」
「嫌らしい目つきで先輩が言ったからですよ。ユティスの美しい裸身が先輩に見られるなんて、考えるだけでもおぞましいです!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「な、なんだとぉ?おまえにだって、イザベルちゃんの神々しい裸身が晒されて堪るもんか!」
きっ!
--- ^_^ わっはっは! ---
「裸身、裸身て、こっちを見て繰り返して言わないでください!もう!」
きっ!
イザベルが叫んだ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「この野郎、オレのイザベルちゃんをじっくり見つめやがって!」
「先輩こそ、後から入ってきたくせに好き勝手言ってくれちゃって!」
じゃば、じゃば・・・。
「イザベルさん、これです」
急いでユティスがバスタオルも持って帰ると、すぐにイザベルがそれを身体に巻いた。
「ありがとうございます。ユティスさん」
「はい。これで大丈夫ですわ」
「そぉっすかなぁ・・・?」
二宮はイザベルとユティスを見比べた。
にやにや・・・。
「やっぱ、ご両人とも最高っすよぉ・・・」
「なんでユティスもバスタオルを巻くの?」
和人が不審に思った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「イザベルさんと同じでないとフェアじゃありませんわ」
にこ。
「フェア・・・?なんだ、それ・・・?」
「先輩に見られ過ぎってことです!」
和人が言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「そ、それはないだろう?不可抗力だって!だいたい、オレたちに、おまえらがここにいるなどわかるわけないだろうが!」
二宮は猛烈に抗議した。
ちら・・・。
「先輩、また、ユティスを視姦しましたね・・・」
「うっさい。見えただけだ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「二宮さん?」
「なんだい、ユティス?」
にこ。
「和人さんはわたくしの恋人で、一度全部見られちゃってますので仕方がないとは思いますが、イザベルさんもいらっしゃることですし、二宮さんにはこれ以上サービスしてはいけないかと思います」
ぽっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「えええ?全部見られちゃってるって、どういうことだ?」
和人を羨ましそうに見つめた二宮の突っ込みが始まった。
「文字通り全部ですわ・・・。頭のてっぺんから足のつま先に至る全部です。とっても恥ずかしかったんですよ、和人さん・・・」
ぽっ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「なん、なに言ってるんだよ、ユティス!そん時、きみは湯当たりして、湯船で気絶してたんじゃないか」
「あら、女性は気絶中だって恥ずかしいものは恥ずかしいんですのよ。ね、イザベルさん?」
「え、気絶中だったんですか・・・?まぁ、そうかも・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「要は、おまえはユティスの生まれたままの姿をすっかり見たんだじゃねぇか・・・」
二宮は落ち込んだ。
「不可抗力ですって・・・」
和人は強調した。
「で、どうだった?感想を聞かせろ、この野郎!」
二宮の立ち直りは異常に早かった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「先輩はイザベルさんに頼めば・・・」
和人は小声で囁いた。
「今日はダメだ。おまえらがいる・・・」
二宮も小声で返した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「祐樹さん、温まるだけなんですよね?」
イザベルがきいた。
「あ、そうっすけどぉ・・・」
「さっさと温まったらあがりましょ。ね、ユティスさんたちも」
「リーエス。もう、1時をとっくに過ぎてますし」
「じゃ、そういうことで。ユティス、先輩から離れたところで温まろう?」
「リーエス・・・」
ぷっちゃん・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「イザベルちゃん、自分ら和人から離れたところで温まるっすよぉ」
「あ、はい・・・」
ばしゃ・・・。
こうして、大浴場の一件は落着した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「今、戻りました」
地球上空32000キロに待機しているエルフィアのエストロ5級母船、アンデフロル・デュメーラの中に、リアルタイムで結ばれている分身の有機体アンドロイド、アンデフロル・デュメーラが夜の逆ナンパから戻ってきた。
「目だった成果はなにもありませんでした」
--- ^_^ わっはっは! ---
「・・・」
アンデフロル・デュメーラの姿を見たドクターたちは、目と口を大きく開けて彼女を見つめた。
「なぁに、その格好・・・?」
「そんなにステキですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「冗談でしょ・・・?」
エスチェルが目を丸くした。
「アンデフロル・デュメーラ、そのドレスは、経帷子と言って、日本では死んだ人に着せるものだよ・・・。死装束・・・」
非常に気を使いながら、トレムディンが優しく教えた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「死装束・・・?」
「リーエス・・・」
さぁ・・・。
アンデフロル・デュメーラは血の気が引いて、それこそ本当の死人のように真っ青になった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「それに、そのポーズ・・・」
エスチェルがアンデフロル・デュメーラの両手の格好に言及した。
「こちらに攻撃の意図がないという、両手首を胸の前に垂らすポーズですか・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。それは死んでも現世に未練を残した幽霊のポーズだわよ・・・」
「幽霊・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「では、この挨拶言葉はどうでしょう?」
「聞かなくても想像できるけど、一応念のため、拝聴しようっか・・・」
エスチェルは言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「では、まいります。うらめしやぁ・・・」
「現世に未練を残して『恨めしい』と訴える、極めて情のこもった言葉だわね・・・」
エスチェルは頭を横に振った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「つまり、わたくしは・・・」
「完璧に幽霊を演じていた。というわけ・・・」
トレムディンが結論した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「それで、すべての男性がわたくしから一目散に遠ざかって・・・」
「きみに取り殺されると思い込んだんだろうねぇ・・・」
トレムディンが苦笑いした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「さぞかし、肝を潰したと思うわ。あなた、美人だし、髪も長くて、妙に似合ってるというか、日本の怪談にでてくる悲劇のヒロインそのものよ・・・。ぷふ・・・。ごめん」
--- ^_^ わっはっは! ---
くっくっく・・・。
エスチェルはだんだん可笑しくなってきた。
「悲劇のヒロインですか・・・?」
「あなた殺されたわけでしょ?」
「・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「顔に刀傷をつけなかったのが、リッキーのせめてもの思いやりってとこかな・・・。ぷっ・・・」
トレムディンも噴出しそうになった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ・・・。わたくしがなにも知らないと思って、リッキーさんったら、本当に酷いですわ・・・。断固、抗議します」
アンデフロル・デュメーラは目を閉じた。
「リッキーを呼ぶかい?」
トレムディンが気を利かせた。
「ナナン!わたくしから直接リッキーさんにお礼のご挨拶をいたします!」
アンデフロル・デュメーラは決意したように目を開けると、すぐにそれを断った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。わかった。うんと、脅かしてやるといいよ」
「そのつもりです。では、行って参ります」
ぽわぁ・・・。
アンデフロル・デュメーラの姿が淡く白い光に包まれた。
「いってらっしゃぁーーーい」
エスチェルとトレムディンはコーラスして彼女を見送った。
--- ^_^ わっはっは! ---
しゅわぁーーーん。
アンデフロル・デュメーラは歩かずに超近距離転送を自分でかけた。
「・・・」
「・・・」
「あっはっは!」
「あはははは!」
その後二人は互いに見合うと、突然、大笑いし始めた。
「あれなら、夜の繁華街でも確かに大丈夫よね?ふっふっふ!」
「リーエス。完璧です。保証します、ドクター!あははは!」
--- ^_^ わっはっは! ---
がたがた・・・っ。
突然、母船内のリッキーの部屋が揺れた。
「地震か・・・?の、訳ないな。ここはエルフィアの宇宙船だ・・・」
リッキーは自分を説得するように言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
すぅ・・・。
そして、室内の明かりが一瞬落ちた。
「うん?停電か・・・?の、訳ないな。ここはエルフィアの宇宙船だ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぱぁ・・・、すぅ・・・。
明かりは点いたり消えたりを数回繰り返した。
「電球が切れ掛かってるのか・・・?の、訳ないな。ここはエルフィアの宇宙船だ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
しゅん。
そして、部屋は真っ暗になった。
「ふむ。ピンク映画の上映サービス時間か・・・?の、訳ないな。ここはエルフィアの宇宙船だ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ゆらぁーーー。
リッキーは奇妙な空気の揺れを感じた。
「なにか現れるぞ・・・」
さっ。
たちまち、リッキーは神経を研ぎ澄まし、周囲を警戒する態勢に入った。
ぽわあ・・・っ。
リッキーの3、4メートル手前に青白い光が淡く現れた。
「なんだ、人魂か。幽霊でも出るのか・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぽっ。
まさしく、その時、空中から白装束に身を包み、長い髪の美女が両手を胸の前で甲を返して垂らし、ゆっくりと空中を滑るように近づいてきた。
「わたくしと恋をしませんかぁ・・・。うらめしやぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぱちぱちぱち・・・。
しかし、リッキーは動じる気配もなく手を叩いた。
「うむ。言ったとおりにちゃんとできてるじゃないか、アンデフロル・デュメーラ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「酷いですわ、リッキーさん・・・」
しゅん・・・。
出鼻をくじかれ、アンデフロル・デュメーラはすっかり毒気を抜かれていた。
「お疲れ様だな。明かりを点けてくれないか。電気代は気にしなくてもいいんだろ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス・・・」
ぱっ。
その瞬間、リッキーの部屋は元に戻った。
「どうして、死人とか幽霊の格好をさせたのですか?わたくし、納得がいきません!」
きっ!
--- ^_^ わっはっは! ---
「ドクターが言ったじゃないか。若くて美しい娘が薄着一枚で夜の繁華街を一人うろつくなんて、正気の沙汰じゃない。襲ってくれって言ってるようなもんだと」
「しかし、大人の恋は、薄着、夜、お酒、一人がキーだともおっしゃったではありませんか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「確かにそうかもしれんが、ドクターは一にも二にも身の安全を確保しろとも言ったぞ。危ないナンパ野郎にからまれないようにとね・・・。これはその処置だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。しかし、これでは男性どころか、だれも寄り付きません。データでは16人中16人全員、わたくしを見て逃げ出しましたわ」
「完璧だな」
--- ^_^ わっはっは! ---
「結果オーライで、どこが不満なんだ?」
「全部です!今日はもう余りに遅いですから、わたくしも引き上げますが、明日はちゃんと実行しますからね。それと・・・」
「それと?」
「もう、二度とリッキーさんのアドバイスには従いません!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「おーお、嫌われたもんだ」
「当然です!ジゴロ自得って言葉がありますよね!」
ぷんぷん!
「ジゴロは得する・・・?いい言葉じゃないかぁ?」
「はい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「因みに訂正しておくが、自業自得ってんだ、そいつは」
リッキーはにたにた笑いながら言った。
「じゃ、それです!これはお返ししますわ!」
アンデフロル・デュメーラは白装束に手を掛けた。
「ストップ!ちょっと待ってくれ。ここで脱がれたんじゃ、妙な誤解を受ける・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうですか。とにかく、失礼!」
ふん!
からん、からん・・・。
宇宙船の幽霊は足音高くリッキーの部屋を後にした。
しゅん。
「直径2キロのエルフィアの最新鋭宇宙母船が完璧に感情を持っちまった・・・。しかも、女心まで・・・。間違いが起きなきゃいいが・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
リッキーはアンデフロル・デュメーラの後姿を見つめて独り言を言った。
「男よりましか・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そういうことで解散だ。じゃあな」
「おやすみなさい、先輩」
さてさて、深夜の大浴場騒動も、ユティス、イザベル、二宮、和人の4人が身体を温め直ったことで、取り敢えずは終了し、それぞれの部屋に戻っていった。
「わたくしたちも解散ですか?」
タオルを頭に巻いたユティスは、イザベルと二宮が戻っていくのを見ながら和人にきいた。
「リーエス。もう2時になるところだよ」
「ホントですね。もう、7時間後には明日の研修が始まっちゃいますわ」
「そういうこと。じゃあ、ユティスも・・・」
「リーエス。それでは・・・。ふぁ・・・。一緒にお布団に戻りましょ・・・?」
「一緒にって・・・?」
「いつかの出張旅行のように・・・。ふぁ・・・。和人さんと同じお布団の中で眠らせてください・・・。ふあ・・・」
とん・・・。
ユティスは何度か小さなあくびをしながら眠そうに言うと、和人に寄りかかった。
「ユ、ユティス。だめだよ。こんなところで眠るんじゃないったら・・・」
「だめですぅ・・・。わたくし、急に・・・」
ずるっ。
どすん。
和人の身体に身を預けると、ユティスは一気に力が抜けていった。
「うぁっとぉ!」
がしっ。
危うく倒れそうになったユティスを両腕で抱えた和人は、辺りを見回した。
きょろきょろ・・・。
(だれにも見られてないよな・・・)
きょろきょろ・・・。
(よし・・・)
そこから和人の部屋まで距離があった。
(こうなったら、抱えていくしかないぞ・・・)
「よいしょ・・・」
すっ、すっ・・・。
和人は、幸せそうな寝顔をしたユティスをお姫様抱っこすると、ゆっくりと歩き始めた。
(思ったほど重くないや・・・。いや、いや、こんなところ真紀さんにでも見られたら、またまた、一騒動起きちまうぞ・・・)
そうぉ・・・と・・・。
和人は忍び足で部屋まで戻っていった。
二宮とイザベルはくっついたり離れたりしながら並んで歩いていた
「祐樹さん・・・」
「なんすか、イザベルちゃん?」
「一緒のお布団で眠りたいなんて考えてないでしょうね?」
「うす。それが?」
「やっぱり・・・」
「なんすか?」
二宮は当然だとばかりに二宮はイザベルを見た。
「正直言って、わたしも祐樹さんと一緒にいたいですが・・・」
「なら、問題ないっす。なにがあろうと、自分がイザベルちゃんを守るっすよ」
「ですから、二人っきりで、祐樹さんはだれからわたしをお守りするんです?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そりゃ、もちろん、自分以外のっすね・・・。ありゃ・・」
「ぷふっ。祐樹さん、相変わらずですね」
「うっす。一晩ご厄介させていただけるっすか?」
「なんですか、それ?ふふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「とにかくっすねぇ・・・」
二宮は言い難いことをもっと言い難いことにすることがあった。
「いいですよ。でも、お互い添い寝以上はだぁーーーめ」
そんな二宮の心理を女性ならだれでも感ずくわけだった。
「お風呂で大サービスしたんですから、それで満足してください」
ぱち。
イザベルはウィンクをした。
「そうっすよねぇ・・・」
しかし、二宮は不満そうだった。
「もう、しょうがないです・・・。恋人ならまだしも、『まだ、お嫁さんにはなりたくないです』って、わたし、お花見会で言いましたよね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どう違うんっすか?」
「いっぱい違うんです」
--- ^_^ わっはっは! ---
「例えば?」
「それをわたしに言わせるんですか?」
ぷくう・・・っ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。祐樹さんのお部屋に着きましたよ」
「うっす。自分の部屋でいいんすか?」
「ええ。わたしの部屋だと、わたしに祐樹さんが夜這いに来たと思われますよ」
「そうっすねぇ。それは、ちとまずいかも・・・」
二宮はイザベルに同意した。
「祐樹さんのお部屋なら、ただ無理矢理わたしを連れ込んだと思われるだけですから。ふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ええ?どっちもよくないじゃないっすかぁ・・・」
ぷくぅ・・・。
今度は二宮が脹れっ面になった。
「さぁ、祐樹さんには選択の権利があります。どっちですか?」
「どっちと言われても・・・」
二宮は真剣に悩んだ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから・・・、祐樹さんにご迷惑にならないように、『喜連川イザベル、わたしが自分の意思で祐樹さんのお部屋で眠ります』とドアの表に書いて貼っておくのは・・・。これで、どうですか・・・?」
「うす。ご配慮感謝するっす」
にこ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ぷふ。しませんよ。そんなことしたら、余計にバレバレじゃないですか」
イザベルは可笑しそうに言った。
「どうでもいいっすけど、添い寝だけはよろしくお願いするっすよぉ・・・」
仕事以外なら、二宮は要点だけは押さえる男だ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい、祐樹さん・・・。それで、言い忘れてましたけど、わたし、上段蹴りの他にも膝蹴りとか、肘鉄とか、たくさん必殺技持っていますから」
イザベルは空手初段、一昨年の女子日本空手道大会の準決勝進出者だ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「うっす。キッス以外の必殺技は欲しくないっす」
「はいっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
次の朝は酔いも醒めたセレアムの面々が、朝食を取りに船内ビュッフェに集まっていた。
「おはよう。8時か・・・」
「おはよよう。頭痛ぁ・・・」
茂木はしかめ面で岡本と朝の挨拶を交わした。
「そりゃあ、痛いでしょうよ。飲み過ぎ」
しらぁ・・・。
真紀が横目で二人を見やった。
「随分騒いだけど、あんまし覚えてないんだよねぇ・・・」
「わたしも・・・。だれかにキッスされたような、したような・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ん、ん!」
真紀が茂木を睨んだ。
「わたし、なにかした?」
「ええ。しましたよ。しました。大いにね」
「まさか、イザベルとか石橋にからんで潰しちゃったとか・・・?」
茂木は岡本と見合った。
「わ、わたし知らないわよぉ・・・」
「いいから、さっさと朝食を取りなさい」
真紀は二人を急かした。
「へーい。ところで、俊介は?」
岡本は俊介をはじめビュッフェにまだ数人は来てないことに気付いた。
「そうよね。俊介が起きてこないなんて珍しいわ」
茂木も辺りを見回した。大学時代の俊介はアメフト部の中でもタフガイで有名だった。
「岡本、あなたが潰したんじゃない?」
「まさか。俊介が少々のお酒で潰れるもんですか。部屋で株式のオンライン取引でもしてるんじゃないの?」
「この星で、インターネット繋がっているの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかった。わたしが起こしてくる。昨日の晩はやりたい放題だったからね」
「いってらっしゃぁーい」
「よろしくね、真紀」
その頃、二宮はイザベルと一緒に目覚めていた。
「イザベルちゃん・・・」
にこ。
「祐樹さん・・・」
にこ。
にこにこ・・・。
二人は微笑み合った。
「ありがとう。ちゃんと約束守ってくれたんですね?」
「おす。武士に二言はないっすよぉ。嫁さんにするのは2年後っす」
「もう、恥ずかしいこと言わないでください」
「言ったのはイザベルちゃんっす」
「ほら、8時です。みんな朝食を取り始めてますよ」
「そおっすね。支度したら一緒に行くっすかぁ?」
「朝から二人一緒のところを、だれかに見られてもいいんですか?」
「あ、それもそうっす。でも、自分はかまわないっすけど・・・」
「わたしも・・・。祐樹さんが何回もみんなの前で口にされてますから・・・」
「イザベルちゃん、今晩も添い寝し合うってのはどうっすか・・・?」
「いいですよ。祐樹さんが意外に紳士だってわかりましたから・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「お風呂はどうっすかね?」
「それも、いいです。ちゃんとだれもいないことを確かめてくださいよ・・・」
「うっす。まかしてくださいっす」
一方、和人とユティスはというと、仲良く手を握り合って、まだ毛布にくるまっていた。
ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴぴ・・・!
「あ・・・、もう、朝だ・・・」
「うぅん・・・。朝なんですか・・・?」
「リーエス。起きようよ。支度しなくちゃ・・・」
「リーエス。和人さんのキッスで目覚めさせてくださいな・・・」
「しょうがないなぁ・・・」
ちゅ。
「ええーーー?たった、これだけですか?」
ぷくぅ・・・。
「それじゃ・・・」
ちゅう・・・。
「うふ・・・」
ちゅう・・・。
「もう、いいだろ?」
「うふ。もう一回だけ。今日も一日幸せない日でありますように・・・」
ちゅう・・・。
「あ・・・」
「どうしたの?」
「わたくし、昨晩、水着でしたのに、今はちゃんと着替えてますよね・・・?」
「そ、そうだったかな・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「・・・」
「・・・」
「また、見られちゃいましたわ・・・」
「しょうがないじゃないか!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「こういう時、和人さんはとっても優しい方ですわ・・・」
「どういう意味だよぉ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ぐごごごぉ・・・」
「うるさいわねぇ・・・」
「ぐごごごぉ・・・」
「だぁれ・・・、いびきかいてるのは?」
ごろっ。
「うるせいなぁ・・・。ふあ・・・」
「ええ?」
「なに・・・?」
がばっ!
どったん・・・。
「お、重てぇ・・・。なんだ、こりゃ・・・?」
「痛い・・・。わたしの足・・・。だれよぉ・・・?」
「ア、アンニフィルドぉ・・・?」
「だめぇ、シュンスケ、こっちぃ・・・」
ぐいっ。
「い・・・。ミリエル・・・?」
がば・・・。
どて。
「お、おまえら、なんでここにいる・・・?」
俊介の横には、彼を挟んでアンニフィルドとミリエルがぴったり身を寄せて眠っていた。
(くっそう、二人とも無邪気で可愛い寝顔しやがって・・・)
「一緒に寝たいと言ったのだれよぉ・・・?」
アンニフィルドが目を閉じたままだるそうな声で言った。
「オ、オレが・・・・?」
「そうよぉ・・・」
「ミ、ミリエルまで・・・」
さぁ・・・。
ぷよん。
「おおおおおお!!!!」
「ん、もう、触るんなら、もっと優しくしてってば・・・。あ、そこぉ。うっふん・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ぎゃあああ!アンニフィルドだぁ!」
「うるさいなぁ・・・」
ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴ・・・!
目覚ましが8時を告げた。
「お、起きろ、おまえら!8時。8時だぞぉ!」
がばぁーーーっ。
「眠いのぉ!」
ぐいっ。
「うっふん。もう少しこのままでいましょうよぉ・・・」
「だ、だめだったら!起きろ!」
ぶんっ!
ぶんっ!
がばっ。
「あわわわ・・・。なんで、こいつらと一緒に寝てんだぁ・・・。いや、それより、8時だ。顔洗って、歯磨きして、髭を手入れして、髪を整えて、コロンをちっとスプレーして。ビュッフェに行かんと・・・。こんなところ、姉貴に叩き起こされようものなら・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「服、服・・・。ひぇーーー!こいつら・・・!」
アンニフィルドとミリエルは浴衣をすっかりはだけており、二人とも下にはなんにもつけていないではないか。
「オ、オレは・・・、ちゃんと穿いてる・・・」
ほっ・・・。
俊介は自分を確かめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「やばいことになってるぞ・・・。姉貴に本当に見つかったら・・・」
ぞぞぞぉ・・・・。
(とりあえず、こいつらには毛布をかぶせておこう・・)
ばさっ。
「オレ、こいつらになにかされなかったよな・・・。ていうか・・・、なにかしたかもしれんぞぉ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
俊介は混浴風呂以降は、ほとんど思い出せなかった。
「記憶に・・・、ない・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
あたふた・・・。
俊介はとりあえずシャツとズボンを探した。
「どこだ、オレのズボンとシャツは・・・。やばい。やばい。本当にやばいぞぉ・・・」
こんこんこん。
「俊介、まだ寝てるのぉ?」
(おおおおーーー!姉貴だ・・・!)
こんこんこん。
「俊介ぇ・・・?」
(どうする?どうする・・・?)
おろおろ・・・。
「ちょっと待ってくれ、今、着替え中だ!」
どたばた。
(げげげ、一瞬遅かったらアウトだったぞぉ・・・)
「あら、鍵閉めてなかったのぉ?じゃ、入るわね」
すっ・・・。
(ウソだぁ・・・。鍵掛け忘れかぁ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから、ズボン穿いてる最中だから・・・」
(冗談じゃねぇ・・・。こいつらを見られたら、言い逃れなんて一切できないぞ・・・)
ぞぞぞぉ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「わたしはあなたの裸なんて見慣れてるわよ」
かちゃ。
「じゃあ、公平にいこう。姉貴がパンツ一丁なら入っていいぜ」
(よし、これなら大丈夫だ。わは)
--- ^_^ わっはっは! ---
「俊介ったら、冗談ばっかり・・・。うふふふ」
真紀はそれを軽く受け流した。
「本当に入りやがった・・・」
「あら、あんな熱烈なキッスを実の姉にしときながら、今さらそれはないでしょ?」
かちゃ。
真紀はドアを閉めた。
(や、やばい。閉じ込められたかぁ・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、あれはゲームの成り行きだって説明しただろ?」
「電気くらいつけなさいよぉ」
ぱち。
真紀は俊介の言葉を無視して部屋の明かりを点けた。
(やばい・・・。ばれる・・・!)
--- ^_^ わっはっは! ---
ずんずん・・・。
真紀は俊介の方に近づいた。
(見つかる・・・)
しかし、真紀はベッドなど目もくれず弟をじっと見つめた。
「やっぱり、おじいさま似だわ、俊介・・・」
「だから、なんだよぉ?今、ズボン穿いてるんだからな。ちっとくらい待ったって罰は当たんないだろう?」
ごそり・・・。
ベッドの上で毛布が動いた。
(や、やばい!アンニフィルドめ・・・)
(あら?だれか来たのかしら・・・?)
もぞっ。
(こら、動くな、アンニフィルド!姉貴が入ってきたんだ。ミリエルと二人で素っ裸を見つかると、えらいことになるぞ!)
(ええ?素っ裸ぁ・・・?どういうことぉ?)
--- ^_^ わっはっは! ---
(おまえら、二人ともだ!)
(きゃ!浴衣の下にはなんにもつけてない。なんでよぉ・・・?)
(知るか!自分たちで勝手に脱いだんだろう?オレが聞きたいよぉ!とにかく説明は後だ。絶対に動くな!)
(リーエス。わかったわ。努力してみる・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
もぞもぞ・・・。
(こら、ミリエルじっとしてなさい!)
(なによぉ、うるさいわねぇ!)
もぞ・・・。
(だから、動いたらだめ!真紀さんか部屋に入って来たんだってば!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「こうして、じっと見るのは何年ぶりかな・・・」
俊介を見つめる真紀はなんとなく嬉しそうだった。
(姉貴、妙に機嫌いいじゃないか・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「はぁ?いつも見てるじゃないかぁ・・・」
「うふ。俊介、あなた、けっこうステキよ。昨日は、なんか真剣に見つめられちゃったから、弟ながら一瞬ドキっとしたわ・・・」
にこ。
「ちょっと、姉貴ぃ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
(マ、マジに言うなよ・・・)
(俊介、今のはなぁに・・・?)
(姉貴だ。今は、黙ってじっとしてろ)
(わかったわよぉ・・・。この、シスコン・・・!)
--- ^_^ わっはっは! ---
(え?なにか言ったかぁ?)
(ナナン。なんにも)
「はい。はい。起きたんなら、さっさと食事に来てよね。みんな、あらぬ想像するわよ」
真紀はすぐにいつもの真紀の顔に戻った。
「あらぬ想像だとぉ・・・?」
「アンニフィルドと寝てるとか、ミリエルと寝てるとか、でなきゃ、二人ともを連れ込んで寝てるとか・・・。なんにも着けないで・・・」
どっきん!
--- ^_^ わっはっは! ---
(図星じゃないか・・・。ひょっとして、バレてる・・・?)
「わははは。バカ言うなよ姉貴」
じんわり・・・。
俊介は冷や汗をかいた。
「なぁに、ベッドの上ちらかして・・・」
真紀はベッドの上のこんもり盛り上がった毛布を見やった。
(しまった!アンニフィルド、動くなよぉ・・・!)
(わたしは動いてないわよぉ)
--- ^_^ わっはっは! ---
(ミリエルのやつもだ!)
(そんなの知らないわよぉ)
(動くなと言ったら、動くな!)
--- ^_^ わっはっは! ---
「い、いいんだよぉ。姉貴もさっさとビュッフェに行けよ」
「はい。はい・・・。すぐに戻らないと、茂木たちがあらぬ誤解するからね」
「あらぬ誤解?」
「あなたがわたしにキッスした翌日よ。みんなに興味深々で見られてんだから・・・」
「それを言うなってば!」
--- ^_^ わっはっは! ---
かちゃ。
そして真紀は出て行った。
ほっ・・・。
「よし、毛布から出てきていいぞ」
俊介はドアを開けて真紀が去ったのを再度確認して後ろを振り向いた。
くるり・・・。
「きゃ!エッチ!」
「見ないでぇ!」
ばさばさ!
慌てて、アンニフィルドとミリエルがはだけた浴衣を直した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「自分から脱いでおきながら、オレが悪者かい・・・?」
「あなたが脱がせたんじゃないの?」
にんまり・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「違う。絶対に違う!」
「どうしてよぉ?証拠はあるの?」
「脱がせたという証拠もないだろう?疑わしきは罰せず。それが日本の司法の基本的立場だ。わかったか?」
「調子いいんだから・・・」
「まったく、朝一から冷や汗が出たぜ・・・」
(おり、こんなのあったっけ?ま、いいか・・・)
俊介は吹き出た冷や汗を拭こうとしてベッドの上にあった黒いレース編みのハンカチを手にした。
「どうでもいいけど、それ、返してよ・・・」
さっ・・・。
アンニフィルドが右手を差し出した。
--- ^_^ わっはっは! ---
「へ・・・?」
俊介は手にしたものを見た。
ちらり・・・。
どっきん!
「それ、ハンカチじゃないわよ・・・。大切にしてくれるなら、あなただけには特別にあげてもいいけど・・・」
かぁ・・・。
アンニフィルドが頬を赤く染め尻すぼみに言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「いいいいい・・・、いらん!」
ぷるぷる・・・。
俊介は真っ青になり、パニックになった。
「ああーーー、ずるい!わたしのはもらってくれないの?」
ひらひら・・・。
ミリエルは穿きかけた白いパンツを片手で振った。
「い、いらん!いらんと言ったら、いらん!早く穿けったら!」
--- ^_^ わっはっは! ---
かちゃ。
そこに真紀が入ってきた。
「あの、俊介、言い忘れてたんだけど、今日の研修・・・」
そして、真紀は目を点にしたまま声を失った。
「・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「俊介・・・?」
「なんだ、姉貴・・・?」
ズボンは穿いただけの俊介は呆けたように言った。
「ここに来たのが、わたしでよかったわ・・・。見なかったことにしてあげるから、みんなですぐにビュッフェに来なさい。わかった・・・?それから、あなたたち、ちゃんと下着は付けるように・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス・・・」
「はい・・・」
そして、真紀は再び出ていった。
「あは・・・。既成事実、作っちゃったみたい・・・」
にこ。
--- ^_^ わっはっは! ---
「責任取ってよね、俊介」
にこ。
「お、おまえら・・・!」
--- ^_^ わっはっは! ---