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380 武道

「アンニフィルドです。ついにブレストが地球の文明支援を始めたようね。まずは、科学者たちを集めての討論会よ。いったいなにを話すつもりなのかしら。ちょっと心配だわ。地球は微妙なパワーバランスの上にあるというのに、合衆国に肩入れしちゃって大丈夫なのかしらねぇ・・・」

■武道■




首相官邸の地下会議室では、藤岡首相の他、数人の閣僚と内閣特別顧問の大田原太郎に緊急招集がかかり、既に主要な協議を終えているような感じだった。


「待っていたぞ、真紀、俊介」

「ごきげんよう、おじいさま」


ぎゅ。

ぎゅ。

真紀は大田原と抱擁し合った。


「大きくなったな、俊介」

「よせやい、じいさん、毎回毎回。オレは小学生じゃないぞ」


「真紀も美人になったなぁ」

「おじいさま・・・?」

「うん?」


「以前は美人じゃなかったって言わんばかりね」

真紀もやれやれという表情になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ほっほっほ。まずは、席についいてくれ」

大田原は二人を席に着けた。


「真紀さん、俊介くん、きみらを呼んだのは他でもない。合衆国に亡命した例のエルフィア人のブレストが大統領に独自の文明支援を申し出たからなんだ。ことがことだけに、これが世に出たら世界は大いに混乱するだろう。ぜひとも、きみたちからユティス大使に伝えてくれんか」


にこにこ。

早速、藤岡首相がにこやかな中にも不安を抱えたような顔で二人を迎えた。


「大統領から通知があったのですか?」

俊介が藤岡を見つめた。


「うむ。驚いたよ。ブレストはエルフィアとしてではなく、イラージュとかいう世界の文明支援組織の長として地球の文明支援を大統領に申し出たんだ。それだけでも驚きなのに、イラージュとはカテゴリー3の世界で、なんとこの天の川銀河内にあるんだそうだ。はぁ・・・」

一転、藤岡はため息交じりに言った。


「ブレストが地球の支援に消極的だった本当の理由というわけですね?」

真紀が確認した。


「うむ。真紀さんの言うとうりだ。もう一息で自分の組織が完成するところだったわけだ。それまでは、エルドにはどうあっても隠し通したかった」

「わかります・・・」


「しかも、困ったことにエルフィアは文明支援の予備調査段階だというのに、イラージュはすぐにでもテクノロジー支援をする用意があると言ってきている。恒星間移動を可能とするブレークスルー・テクノロジーをだぞ?」

藤岡は苦り切った顔をした。


「カテゴリー3のテクノロジーね」

「ああ。姉貴、イラージュはカテゴリー3だ」

真紀に俊介は頷いた。


「喉から手が出るくらいの超ハイテクだ。断る理由がどこにある?」

「確かに・・・」


「もし、大統領がそれを飲んだら、合衆国はとんでもなく世界をリードしてしまう。EUですら気を悪くするだろうし、技術、経済、軍事のすべてでパワーバランスがあっという間に崩れ去り、妬みから世界のあちらこちらで新たなテロを引き起こす契機になるやもしれん」

藤岡は不安を二人に吐露した。


「考えられますね」

「それをエルドは知らないのですか、首相?」

真紀が言った。


「それがわからん。だからこそ、地球はエルドのエルフィアこそ付き合う相手だと、エルドに明言せねばならん。つまり、ユティス大使にだ。それも直ちにだ。二人とも、わかるな?」


「ええ」

「もちろん」


こっくり。

二人は頷いた。


「で、大統領はどう言ってきたので?」

「それだよ、俊介くん。なんと、大統領はブレストの提案はうっちゃっておくと言ってきたんだ」


「ええ・・・?あの合衆国の大統領が?本当に?合衆国にとって悪くない取引だと思いますが・・・」

俊介は首を傾げた。


「確かに。だが、大統領は基本ブレストの提案は飲むつもりはない。2か月は回答を保留すると言ったんだ」


「どういうことかしら・・・?」

「うむ。目の前のコーラより夕食のバーボンの方がいいということかもしれん」


「はい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「姉貴、エルフィアはカテゴリー4だ。手に入れるとしたら、カテゴリー3より上ではないのか?」

「そういうことね・・・」


「なにかわかったんだな、真紀さん、俊介くん?」


「ええ。孫たちにはわかったようですぞ」

藤岡の言葉に大田原がにやりとした。


「ああ。大統領は確かにコーラよりバーボン好きらしいですね」

「ほう。また、どうして?」


「コーラはイラージュです。そして、バーボンがエルフィアです」

「ふっふ。わたしと同じ見解だな、俊介」

大田原が面白そうに言った。


「酔うならエルフィアの酒がいいと?」

藤岡が目を白黒させた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「首相、それは比喩ですぞ」

大田原は苦笑いした。


「比喩だと?」


「ええ。首相、お言葉ですが、大統領はイラージュを選んでカテゴリー3のテクノロジーを手に入れたところで、ゆくゆく、エルフィアからもたらされるカテゴリー4のテクノロジーを考えれば、そんなものどうだっていいということではないのですか?」

真紀が真相を指摘した。


「カテゴリー4?」

「超銀河間移動のテクノロジーです」

大田原が藤岡に静かに言った。


「合衆国は一気にそんなものを手に入れようとしているのかね・・・?」

「まぁ、欲の深さでは政治家の右に出るものはいませんから・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「俊介。言葉が過ぎるぞ」

大田原が口をはさんだ。


「これは失礼!」


「わっはっは。よい、よい。実に正直で的を得た見解だ。ただし、わたしは例外にしてくれよ」

藤岡は一向に気にしている様子ではなかった。


「ええ。この場ではそういうことに・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「かなり手厳しいなぁ。わっはっは!」


「首相はエルフィアの文明支援になにを期待されているんですか?」

「そりゃ、あの3人のような美女が秘書兼ナニとして・・・、いや・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もちろん日本の明るい未来に決まっとる。世界に冠たる技術立国だ!」

ばん!


「それで、他のみなさんのご意見は?」

真紀が閣僚たちを見渡した。


「総理の言葉どおりです。ブレストの合衆国へのアプローチと大統領の意思、そして、わが国の意思をお伝えください」

「はい。意義ありません」


「それは地球としての意思決定と考えていいのね?」

真紀が閣僚たちを見回した。


「うむ。エルフィア/セレアムのジョイント支援以外は考えられん。よろしく頼むよ」


「セレアムにはわたしから伝える」

大田原が言った。


「おじいさま・・・」


「例のものは持って来ておるんのだろう?」

大田原は姉弟を見つめにやりとした。


「ええ。俊介、出してあげて」

「ああ。これだな」

俊介がバッグからなにやら取り出した。


がさごそ・・・。


「こ、これは・・・」

藤岡は期待を込めてそれを手に取った。


「首相ご依頼のユティスさんたちのサイン入り額縁写真です」


藤岡さんへ、エルフィアから愛を込めて・・・。

にたにた・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「して、この×××マークは・・・?」

大田原は不安そうに尋ねた。


「キッスを添えてという意味です。欧米では普通ですけど」

「キッス・・・。おお!なんと礼を言えば・・・!」


--- ^_^ わっはっは! ---


藤岡はすっかりユティスたちの個人的ファンになっていたのだ。


「ついでにこれ」


ささっ。


さらに出てきたものは、いつぞや株式会社セレアムが作った石橋可憐デザインのユティスたちの3頭身デフォルメ・フィギュアだった。


「おお!これにもちゃんとサインが!これは絶対に末代まで家宝にせんと!」

藤岡は嬉しそうに小さく叫んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「当然ですわ」

「シリアルナバーも見てくれますか?」

俊介の依頼で、藤岡はその3つのフィギュアを確かめた。


「おおおっ!シリアル・ナンバー02だ!」

「ええ。限定200個のナンバー2です」


「して、栄光のナンバー1は?」

「エルドの机に飾ってありますよ」


「それはいたしかたないな。おお?ちゃんとメイド・イン・ジャパンか・・・。日本に来た3人のメイドです、なぁんてな!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「よくわかりましたね、首相」

「ええ?本気なのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もちろん。これは特別あつらえの着せ替え用メイド服です」

真紀が差し出すと藤岡は今にもよだれを垂らさんばかりににやけた。


「着せ替え式だとぉ・・・」

にたらぁ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ということは、その服の下の下は・・・。わは・・・」

藤岡はなにやら期待した。


「なんにもないですわよ。デフォルメですから、つるんつるんの丸太ん棒です。エッチな改造はしないでいただけます?彼女たちからの条件ですから」


「うん!うん!言うとおりにするぞ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「他にはやってはおらんだろうな?」

藤岡は政治家仲間のことを気にした。


「申しわけございません。EUのベルナール大統領から注文がありまして、シリアルナンバー189番を・・・」


さ・・・。

真紀が藤岡に頭を下げた。


「そうか、189番とな・・・。それは仕方がない。あれで、あやつはデッサン・アニメ・ジャポネ(日本アニメ)のファンで、学生時代から相当のオタクだからなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「首相はどこでベルナール大統領と?」

「ははは。わしも一応留学経験があってな。本当だぞ。どこぞの政治家のように履歴に偽りはない!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「VIPにはいくつかご注文いただきましたが・・・」

「まさか、合衆国大統領まで・・・?」

藤岡は自分の優位さを確認したがった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それはありません。合衆国では3頭身フィギュアは流行りませんので」

「そうか・・・。では、ばぁーーーんと出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、ジェニーさんのように、8頭身のスーパーリアルの方がよいと言うんだな?」


「そう言うことです」


--- ^_^ わっはっは! ---


さっ。

突然、藤岡は大田原を振り向いた。


「大田原さん、あなたのお孫さんは実に素晴らしい!」


くくく・・・。

藤岡は涙を拭くジェスチャーをした。


「当然です」


--- ^_^ わっはっは! ---




夜も9時を過ぎ、世界カラテ連盟正真会館足利道場では、例によってビジネスマン・クラスの稽古が終わろうとしていた。


「神前に礼!」


ぺこ。


「師範に礼!」


ぺこ。


「互いに礼!」


ぺこ。


最後の礼が終わり、指導員の西方3段が道場生にいつものように通知を行っていた。


「今日は特別参加のクリステアさん、アンニフィルドさん、ありがとうございました」


「おす!」

「おす!」


白帯を締めた二人のSSたちは道場生たちに向かい合うと十字を切った。


「えーー、お二人はみなさん知ってのとおりの正真正銘エルフィア人のプロのセキュリティ・サービスです。実戦で何年も実績を積れまた方たちです」


「あら、何十年もだわよぉ」

「ええ・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド、ここは地球ですわ」


エルフィア人たちはカテゴリー4の世界の住人であり、地球人の十倍以上の寿命と若さを保つ秘訣があった。


「そ、そうだったわね。あは・・・」


「とにかくその実力は男子といえども、いや、男子だからこそ、その美貌に・・・、いや、もとい、その実力に・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「西方ぁ、間違えとるぞぉ!」

後ろから足利師範の声が飛んだ。


くすくす・・・。

道場に忍び笑いが巻き起こった。


「その色に騙されて・・・」

「色?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いや、失礼、言葉足らずで・・・。その帯の色に惑わされて、えらいことになった道場生もいるでしょう」


確かに、何人かはSSたちとスパーリングであわやのところで寸止めにされ、大いに冷や汗をかいていた。


「しかし、実戦においては隙を見せたら終わりです。そういうことで、お二人はわれわれが並ぶべくもない方たちで、その技は普段の鍛錬の賜物。お二人に習い、われわれも毎日稽古に励みましょう」


「おす!」

「おす!」


道場生の声を聞きながら西方は続けた。


「今現在は、お二人はわが正真会館所属でもここの道場生でもありませんが、足利師範と二宮初段のご尽力により、機会あれば、本道場にて稽古に参加していただけるとのことで、嬉しい限りです」


これは、足利師範の特別処置だった。


「今日でも入門OKですぞ」

師範はアンニフィルドとクリステアに言った。


「おす」

「おす」


「また、いつでもいらしてください」


ぺこ。


足利道場には世界クラスの黒帯が数人いたが、中でも西方は世界大会で準優勝をしたこともある道場きっての強者だった。


「おす。どうも」

「おす」


ぴっ。

ぴっ。


二人は西方に十字を切った後、道場生たちに向かってもう一度十字を切った。


「ありがとうございました」


何か月も前の話になるが、真紀がユティスたちエルフィア人を連れて二宮の道場に見学に来た。そこで、試しにと、前年日本女子の準決勝進出のイザベル相手に組み手をしたところ、圧倒的なスピードでイザベルはまったく相手にされなかったのだ。


「それではみなさん解散です。いつものように清掃をお願いします」

「おす!」

「おす!」


その時に、師範の足利は二人に惚れ込み、いつでも道場に来て稽古に参加はもちろん、道場特待生として即内弟子にならないかとか、黒帯を進呈するとかまで言ったのだ。


「二宮、喜連川、お二人をよろしくな!」

「おす!」

「おす!」


すっすっす・・・。

二宮はイザベルとともにSSたちのところにやってきた。


「お二人は女子更衣室でお着換えしていてください」

イザベルが言うとクリステアは首を横に振った。


「とんでもない。わたしたちもお掃除をするわ」

「そうね」


「それは道場生の・・・」

「いいから、それ、貸して」


にこ。

さっ。


イザベルが言い終わらぬうちに、アンニフィルドが一人の道場生から箒を受け取った。


「お、おす・・・」


かきん!

とんでもない美人ににっこり微笑まれて、会社員道場生は緊張して答えた。

す。


さっさっ・・・。

クリステアとアンニフィルドは箒を手にしてさっさと畳を掃き始めた。


「お二人ともステキでしたわ」

道場の後ろで和人と一緒に見学していたユティスが和人に耳打ちした。


「まさか、最後までするとは思わなかったよ・・・」

和人は二人を見て、自分たちもなにか手伝わないとと思った。


「わたくしたちは、お二人が掃かれた後お雑巾で畳を拭きましょうね」


にこ。

ユティスは和人に微笑んだ。


「リーエス」

二宮とイザベルも用具の手入れを始めていた。


「今日はビジネスマン・クラスで良かったです」


にこ。

イザベルが二宮に微笑んだ。


「おす。自分も良かったっす。イザベルちゃん・・・、いや、喜連川さんと一緒で・・・」


「わたしはクリステアさんたちの稽古参加のことを言ったんですけど・・・」


しらぁ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーーー、そうっだったっすよねぇ。あはは。そっちはどうでもいいっすけど・・・」


「なんか言った、二宮ぁ?」

「おす!なんでもないっす!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はぁ・・・。お二人本当にすごいですよね?」

イザベルは称賛の眼差しでSSたちを見た。


「おす。見つめられるだけでドキドキして、戦意喪失するって先輩たちが言ってたっす」

「はい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いやぁ、誤解しないでくださいっすよぉ。自分は喜連川さんだけっすから。わは・・・」

「ばか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「彼女たちは別格だけど、ユティス、本当はきみの腕もすごんだよね・・・?」

そんな二宮を横目で見ながら和人がユティスの側で言った。


「ナナン。そんなことないですわ」

ユティスはSSの二人ほどではなかったが運動神経は抜群だった。


「小川瀬令奈さんとのテニスの時もびっくりしたけど・・・」


和人は瀬令奈に売られた喧嘩をエルフィア娘たちがきっぱりケリをつけた時のことを思い出した。


「きみが本気を出したら、オレなんかあっと言う間にのされちゃいそうだよ」


しゅん・・・。

和人は自分には武道の心得がなにもないのに少し寂しい気がしていた。


「そんなことないですわ。和人さんをのすなんてできません・・・」


にこ。

ユティスが恥じらうように和人に微笑んだ。


さささ・・・。


「えっ?ユティス、今、和人をのすって言ったぁ?」


それを聞きつけたアンニフィルドが箒を片手に寄って来るとユティスににやりとした。


「はい?」

「やっとその気になったってわけね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんのことでしょうか?」

「和人、この幸せ者がぁ。しっかり、のされなさい。あは」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぽん。

アンニフィルドは周りに聞こえないように言うとそっと和人の肩を叩いた。


「こ、こらぁ。アンニフィルド・・・」

かくして和人は道場生の羨望の眼差しを受けることになった。


「愛は神聖じゃないって言うのぉ?」

「なんでも愛で片づけるなよぉ」


「あいよ。二宮風なぁーんちゃってぇ。あは」


--- ^_^ わっはっは! ---


「寒ぅ・・・」

「うるさい!」


「こら、二人とも、掃除終わんないじゃない!」


さっ、さっ、さっ・・・。


「じゃま!」

クリステアが畳を掃きながら和人とアンニフィルドの間に割って入った。


「うっす」

「リーエス」


そうこうしているうちに、掃除もほとんど終わった頃だった。


「お二人は、今日、なぜ道場に来られたんでしょうか?」

アンニフィルドを見ると、用具を手入れしながらイザベルが二宮にきいた。


「そうっすねぇ・・・。要は暇なんすよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だれが、暇だってぇ?」


ぴかっ!

アンニフィルドの眼が光子砲のように二宮に照準を合わせた。


ぎょ!


「地獄耳のアンニフィルド・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。耳がいいって言うのなら、当たってるわよ、二宮。あなたが考えた瞬間聞こえるんだからね、二宮の3センチ先だろうが、どこだろうが」

「3センチ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


きょとん。

「あら、3光年だったかしら?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、考えたことがわかるって本当らしいっすけどねぇ・・・?」


「疑ってるわね?」

「営業でオレの役立ってくれなきゃ、意味ないっすよぉ」


「試してみれば?」


にたぁ。

アンニフィルドが二宮を挑発した。


「よぉし、じゃあ、これはどうだ?」


にや。

二宮は頭の中でアンニフィルドのことを考えた。


(今日、一日中、ユティスはもちろん和人と一緒だし、オレはイザベルちゃんと一緒だだけど・・・、常務が真紀さんとさっさとシャデルに出かけて夕方になっても戻って来ないんで、今、一人なのはこの暴力女だけかぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「うん、うん・・・」


こっくり。

二宮は目を閉じて一人頷いた。


ばっしーーーんっ!

たちまちアンニフィルドの平手が飛んできた。


「痛っい。なにするんだよう!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぶたれて当然だわ」

クリステアが二宮に冷たく言い放った。


「くっそう、本当のことを言ったまでなのに・・・。クリステア、どこがいけないって言うんすかぁ?」


二宮は左の頬を押さえてアンニフィルドに文句を言った後、クリステアの見解を待った。


「黒帯のくせして、相手に目を閉じるなんて致命的ね。女性の必殺技、平手打ちの受けがまったくできてない」


--- ^_^ わっはっは! ---


クリステアがアンニフィルドの脇からコメントを入れた。


「なるほどぉ・・・。お、お見それしましたっす。さすが目利きのクリステア。なるほど、そういうことか!」


ぽん!


「アルダリーム(ありがとう)、二宮。わかればいいのよ。アンニフィルドの平手打ちには初期動作があって、この場合はね・・・」


にこ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うす!」


ぴっ。

二宮は両手で十字を切った。


「あなたたちねぇ、わたしをおちょくってない?二宮、もう一度よけるチャンスをあげようっかぁ・・・?」


ぴきぴき・・・。

アンニフィルドが指を鳴らせた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談よ、アンニフィルド」

「そう、そう。冗談っす。考えていることがわかるってことが十分にわかったっすよぉ」




またまた、合衆国空軍基地では・・・。


「それには、まず段階を追って説明が必要です」

ブレストは一同を見回すとサンダース博士に視点を合わせた。


「時空中の移動にはいくつか方法がありますが、文明カテゴリーが進むにつれて、推進力というか移動方法は宇宙の根源的なエネルギーへと移っていきます。カテゴリー1では時空というものの理解がほとんどありませんので、『時空から派生したもの』を利用するだけです。『もの』を進行方向の反対側に押し出して推力を得るわけです」


こっくり。

全員がそれに頷いた。


「高熱の燃焼ガスを噴出することで反発力を得る地球人のジェットエンジンは代表例でしょうね。したがって、時空が持つエネルギーのほんのわずかな量でしか推力を得られません。しかも、ご存知のとおり、光速度に近づくにつれ必要な推進力は莫大になります。そのような莫大なエネルギーを得るには、移動体中の運べる質量、つまり地球人の言うペイロードは限られており、燃料たるものを詰め込むには無理があります」


「燃料と酸化剤。それが時空から派生したものと言うのですか?」

「リーエス。時空から派生したものです」

ブレストは頷いた。


「ものが時空から派生したとは?」

「例の量子論と相対論の融合理論ですよ」


「ディラックの方程式から導き出るものですな?」

「イエス。そのディラックですな」

科学者たちは互いにそれを確認し合った。


「いい質問です。ものとは結局素粒子に還元されます。量子、極めて小さなスケールで見ますと、そう、プランクサイズでは、素粒子は時空から生まれ時空に戻る揺らぎの中にあります。これが理解できるのがカテゴリー2からですが、カテゴリー2の代表的推進力、例えばロケット推進です・・・」


ブレストはゆっくりと会議室を見回した。


「ジェットエンジンなどカテゴリー1と比べれば確かに推力は劇的に大きくなりますが、依然として、推力に酸素と水素の原子化学反応によるガスの噴出力、ガスという『時空から派生したもの』を利用しているに過ぎません。恒星系内移動にも何年もかかり、恒星間移動に利用するには向いていません」


一同はブレストに釘付けになっていた。


「では、化学反応ではなく、さらに根源的なエネルギー、核エネルギーエンジンなら?」

核物理学者が意見を出した。


「ふふふ。素粒子を利用するというわけでしょうが、宇宙における移動体の推進力に核エネルギー使用することは非常に危険ですね。核分裂にしろ核融合にしろ、炉からの熱と放射線から搭乗者をどう守るのか?その防護システムを移動体に組み込むとしただけでも、とても重厚になりませんか?」


「うーむ・・・」

「問題はさらにあります」

ブレストは続けた。

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