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370 合傘

「こんにちわ。アンニフィルドよ。しかし、あの二宮がイザベルにプロポーズして、事実上公認カップルになっちゃったでしょぉ。いつの間にか、セレアムの事務所にはカップルだらけになっちゃったのよねぇ・・・。あは。もちろんわたしだって俊介とカップルだしぃ・・・。雨が降れば降ったで楽しいことだらけなのよね、カップルには・・・。あは!」

■合傘■




「地球のエルフィア大使館の和人の部屋なんだが・・・」

フェリシアスは不本意ながら話している感じだった。


「こいつの部屋がなにか?」

俊介が和人を見て首を傾げた。


「地球の予備調査の今後のことを考えると、アンデフロル・デュメーラとの行き来が格段に増えると予想される。ついては、大使館の一室をアンデフロル・デュメーラとの常設出入り口として使うことが決定した。それにきみの部屋が当てられたというこどだ。おほん」


そう言うと、フェリシアスはユティスを申し訳なさそうに見て、また咳払いをした。


「おーお、和人の部屋を取り上げるのかぁ?」

俊介が気の毒そうな顔になった。


「それは、わたしの決定ではないぞ。これは委員会が・・・」

フェリシアスは俊介を見て言い訳がましく言った。


「わかってるさ、オレはな」

ちらり。

俊介が問うように和人を見た。


「オレの部屋がアンデフロル・デュメーラへの出入り口って?」

和人は今ひとつ理解していなかった。


「つまり、アンデフロル・デュメーラの中央制御室のロビーとあなたの部屋が超時空で常時繋がるってことね。あなたの部屋に入ればアンデフロル・デュメーラに即自動的に入ることになるってこと。今までみたく転送とか必要なくなるわけ。わかったぁ?」


ちらちら・・・。

クリステアがユティスと和人を交互に見つめた。


「そいつはしごく便利になるわね。いつでもアンデフロル・デュメーラに逃げ込めるってことだし」


こくん。

クリステアが頷いた。


「そうそう。とにかく、あなたの部屋はなくなるってことよぉ。あは」

アンニフィルドが意味ありげに笑った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「すまない、和人・・・」

フェリシアスは和人に軽く頭を下げた。


がぁーーーん。


「ええ、住む部屋がなくなるだってぇ?じゃあ、オレどうすればいいんだい?」

青天の霹靂にも似た衝撃が和人を襲い、和人は途方に暮れた。


「そういうことで、今晩から和人は2階の他の3部屋のいずれかに住んでもらうしかないが・・・」

フェリシアスはなんとも煮え切らない表情でユティスを見つめた。


「今晩からって、もう、そうなっちゃてるってことぉ・・・?」


ぽかぁーーーん。

和人は口を大きく開けてフェリシアスを見つめた。


「リーエス・・・。大変不便を強いることにはなるが・・・。もちろん、ユティスには最大限の協力をしてもらいたい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あのぉ、最大限の協力とは、今日から和人さんがわたくしのお部屋にご一緒することになるというわけでしょうか・・・?」

ユティスは赤くなりながらも期待するように和人を見つめた。


「いーーー!?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス」


こっくり・・・。

SSたちはゆっくりと首を立てに振った。


「あなたたちがわたしたちの部屋の真ん中に位置するユティスの部屋にいるってことは、まとめて二人をとっても警護し易くなるってことだし、無条件で歓迎するわ」


「わたしも大賛成。あは」


「ええーーー?!」


おろおろ・・・。

加えて、和人はアンニフィルドたちの言動で、世間にあらぬ誤解を言いふらされることを恐れていた。


「わたしたちを信用しないってわけぇ?」

アンニフィルドの表情が硬くなった。


「そういうわけでは・・・」


「とにかくだ。SSの二人がきみとユティスを挟む形でいるわけだから、そのぉ・・・」

フェリシアスは決まり悪そうに語尾を濁した。


「ユティスの部屋にオレが寝泊りする・・・?ちょっと、待ってくれよ、みんな!」


(また、夜悶々として眠れなくなるじゃないか・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は慌てふためいた。


(わたくしは安心して眠れるようになれますわ・・・)

ハイパーラインでユティスの声が和人の頭に響いた。


--- ^_^ わっはっは! ---


(ユティス、きみはそうかもしれないけどね、オレは男だよぉ・・・)

和人の顔が泣きそうなくらい情なくなった。


(リーエス。わたくしをしっかり守ってくださいね、和人さん!)

ユティスは目を閉じてキッスするような格好をした。


--- ^_^ わっはっは! ---


(守るったって、オレ自身がオレ自身からどう守る・・・????)

和人はいよいよ窮地に陥っていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうしたのよぉ?大好きなユティスと一緒の部屋で暮らすことを公に認められたって言うのに」

アンニフィルドが眉をひそめた。


「そんなこと言ったって、真紀さんの作った寮則では男女の寝泊りは禁止だぞぉ!」


(やったぁ、これだ!)

和人は重要な建前を思い出した。


「あー、それなら、オレが姉貴に言って例外規定を設けてやる。要人の警護人はその限りではないとな」


--- ^_^ わっはっは! ---


にたぁ・・・。

俊介がアンニフィルドに目配せし、あっさりとそれを突き崩した。


「第一、オレの荷物はどうするんですかぁ?」

和人は俊介に文句を言った。


「とりあえず、アンデフロル・デュメーラの第1201ブロックの5649番格納庫にきみ専用で退避させてあるので心配はない。例のDVDも忘れてないぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


そこはフェリシアスが自身ありげに言った。

(ちっ、二宮先輩だなぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「アレ、もう、片付けちゃったの?」

残念そうにアンニフィルドが言った。


「宇宙に放り出した方が良かったか、和人?」


--- ^_^ わっはっは! ---


くっくっく・・・。

俊介が笑いを堪えて言った。


「あなたは身一つあればいいのよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「真紀が調達したベッドはクイーンサイズだから、二人で眠るにはいい大きさね。さすが社長、気が利くわぁ」


「そりゃそうだ。姉貴のモットーは『社員をもれなく大事にする』だからな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド、常務、なんてことを言い出すんですか!」


「あは。でも、これってすごいことよ」

「すごいって・・・。そりゃすごいけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だって、和人の部屋に入ればアンデフロル・デュメーラの船体内部に即行けるということだものね」


「そっちか・・・。よかった・・・」

ほ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「待ってくれよ。ちっともよくない!オレの部屋はアンデフロル・デュメーラに直結してるんだろ?それなら、アンデフロル・デュメーラの中にみんなが住んだっていいじゃないか。そうすれば、いくらでも部屋はあるじゃないか。オレの部屋から入れば直系2000メートルのあの超巨大宇宙船に行けるんだからね」


にたり。

今度こそはということで、和人は自身ありげに言った。


「そういう方法もあったわね・・・」

クリステアが囁くように言った。


(ほら、見ろ・・・)


「でも、ボツだ」


--- ^_^ わっはっは! ---


フェリシアスが冷静さを取り戻してクールに言った。


「なんでですか?」

和人は自分のアイデアをフェリシアスに簡単に退けられすぐに抗議した。


「エルフィアの大使館は地上になくてはならん。あくまで地球常駐ということに大使館としての意義がある。大使は地球上のどこかに住まうということだ。アンデフロル・デュメーラのどこかに住むということは、地球上空、つまり宇宙に滞在するということで、それはもはや大使館に常駐するということではない」

フェリシアスは彼らしい理屈で和人に反論した。


「いいわよ、フェリシアス」

「ナイス・フォロー」


--- ^_^ わっはっは! ---


SSたちが頷いた。


「でも、通常の予備調査はエージェントは大抵静止軌道上の宇宙機に待機してるんだろ?」


「通常はそうだが・・・」

「地球の予備調査は通常じゃないのよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どこがだよぉ、クリステア!?」

「あなたよ。あなた。99.99%の相性だってこと忘れたのぉ?」


「それとこれのどこが関係あるんだい?」


「そりゃ、『どうでもいい関係』だろ?わっはっは」

俊介が楽しそうに言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「一応、それなりの関係があるわけですし・・・」

ユティスが目を伏せながら、和人の横で小声になった。

もじもじ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「どこが?!」

「あーら、わたしたちはぜんぜん気にしてないわよ。ユティスだって、ねぇ?」


「リーエス。わたくしでしたら、和人さんを無条件に歓迎しますわ」


にっこり。

ユティスは伏せていた目を上げた。


「オレも社員寮の管理人が宇宙にいたら困るんだがな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今さら管理人ですか?」

和人はむっとして俊介に抗議した。


「わかってくれて感謝する、和人」

俊介が結論した。


「ちっともわかってませんよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「着替えはアンデフロル・デュメーラが用意するので、きみは手ぶらでいいはずだ。帰りはそこのドアから出たまえ。大使館のきみの部屋に戻る。では、みんな、いい夢を」

最後にフェリシアスが本件を締めた。


「ああ、言い忘れたが、元和人の部屋は土足禁止だから、そのつもりで」


「リーエス」

「わかった」


一同は、靴を脱ぐと出口に向かった。




そして、シャデルの件が片付いて数日経ち、大山市は今日も夕方から雨だった


しとしとしとしと・・・。

ぷっちゃん・・・。

ぴちゃ、ぴちゃ・・・。


そさくさ・・・。


「それじゃ、失礼します」

イザベルは傘も持たず雨の中事務所から出て行こうとしていた。


「雨けっこう降ってきたわよぉ。傘持ってるの?」

真紀がイザベルを心配そうに見つめた。


「はい、わたしは大丈夫です。駅まで祐樹さんが・・・」


「ええ、祐樹さん?」

「だれ、それ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


岡本たちも一瞬びっくりした。


「あ、いえ、二宮さんです・・・」

イザベルは慌てて訂正した。


「そういえば、二宮の下の名前が祐樹だってこと、すっかり忘れていたわ」


(祐樹さんだって・・・。どうなってるのかしら・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀がドアの方を見ると、イザベルに一足早く帰ったはずの二宮が、大きな蛇の目傘を抱えて笑顔で、自動ドアを半開きにしてこっちを見ていた。


(二宮のやつ、これ見よがしに相合傘ですって・・・)


にたらにたら・・・。


(駅までか・・・。そして、駅から家まで。そして、その後はどうなるのかしら・・・?)


「イザベルちゃん、大山亭で大盛りニンニク・ラーメンでも腹いっぱい食べるっすかぁ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「女の子にそういうこと言うんですか?」

「ええ?いけないんっすかぁ?」


「もう!今日は久しぶりに真っ直ぐ帰りたいです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それじゃぁ、真紀さん・・・」

「うっす」


「お疲れさまでした」

「お疲れぇ」

事務所の社員一同が一斉に挨拶をした。


ぺこり。

すっすっ・・・。


イザベルは事務所のみんなに再度頭を下げると、ドアの外に出て自分を待っている蛇の目傘の下に納まった。


「うっす!」


ぴっ。

二宮はドアの向こうから事務所に向かい敬礼をした。


「早く消え失せなさい!」


--- ^_^ わっはっは! ---


そして、イザベルと蛇の目の中に入ると、二宮は後ろに向きざま左手を振った。

ぱらぱら・・・。


「あいつ・・・」


はぁ・・・。

真紀は溜息をつくと茂木を振り返った。


「蛇の目なんか持ってなんのつもりかと思ったら・・・」


「当てられっ放しじゃない、わたしたち・・・」

茂木も天上を仰いだ。


「そうね。イザベルを会社に入れるようにと頼んだのはいいけど、まさか、本当に落としちゃうなんて洒落にならないわ・・・」


「二宮がすごいのか、イザベルがもの好きなのか・・・」

真紀が両手を広げた。


「世の中が間違ってるんでしょ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「こうまで熱々だと、からかう気もしないわ・・・。はぁ・・・」

茂木も処置なしという表情で雨の中に消えていくイザベルと二宮の後姿を眺めた。




ぴちゃぴちゃ・・・。


二宮とイザベルは蛇の目の中で歩調を合わせて商店街の道を駅に向かっていった。


「祐樹さん、やり過ぎですよ・・・」


「うす。でも、雨の日は雨の日で、これまた、楽しいっすよね?」

二宮はちっとも聞いていない様子だった。


「はい・・・」


にこ。

ぎゅ・・・。

イザベルは微笑むと右手を二宮の蛇の目を持つ左手に絡ませた。


「毎日、道場までこんな風にして行くっすかぁ・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いいえ。毎日雨は降りません」

にこ。


「相合傘できないっすかぁ・・・」

しょぼ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「その代わり腕組みできますよ、祐樹さん!」


ぐいっ。

ぱち。

イザベルは二宮に腕を絡ませると、優しく二宮にウィンクした。


「こっちもいいっすね!えへ」

けろり。


--- ^_^ わっはっは! ---


「じゃ、家まで送るっすよぉ」


「家ですかぁ・・・。駅まででけっこうです、祐樹さん」

イザベルは少しの間を置いて答えた。


「お姉さん、戻ってるんっすっか?」


イザベルの姉のミレーヌはフランス航空のキャビンクルーで、主に日本とフランスを往復していた。


「はい。今日はオフですから、家でゆっくりしているはずです」


「すごいっすねぇ、お姉さんがスチュワーデスって・・・」

二宮は感心していた。


「そうかもしれません。わたしはラッキーだと思います。姉はよくお土産を買ってきてくれんですよ」


「へぇ・・・。どんなもんっすかぁ?やっぱり、シャデルとかセリーナとか高級ブランド品のバッグとかスカーフとか化粧品とか・・・?」

「ノン、ノン。違いますよ。姉は日用品を買ってきてくれるんです。ちょっとしたお菓子やシャンプーとかも」


「お菓子っすかぁ?」

二宮はそれがとても意外に思えた。


「はい。ショコラ・ベルジュとか、フロマージュとか」

「うす。で、それはなんっすかぁ?自分英語はわかないんすけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ご、ごめんなさい。フランス語で言っちゃいました。ベルギーチョコとチーズなんかです」


にこ。

イザベルは申し訳なさそうに微笑んだ。


「なんだか名前がフランス語というだけで、美味そうな気がするっすよねぇ」

「まぁ・・・。呆れた・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも、ホントにとっても美味しいんですよ。チーズなんかもいろいろと種類があって、それに合わせてワインも変えるんです」


「まるでフランス人みたいな生活っすねぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ!姉もわたしも半分はフランス人です!」


めっ・・・。

イザベルは悪戯っぽく微笑んだ。


「うっす。本当にフランスが半分で良かったっすよぉ・・・」


にこ・・・。

二宮はほっとしたようにイザベルに微笑んだ。


「あら、どうしてですか?」

「全部フランス人だったら、自分、イザベルちゃんの愛の囁きがぜんぜんわからないっす」


「まぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぴた。

イザベルは立ち止まり一瞬黙りこくった。


「うす・・・?」


ぴた。

仕方なく、二宮も蛇の目を差したままイザベルにくっ付いて足を止めた。


ぱさっ。


夕暮れ時の商店街の目立たない路地横に二宮を引き込むと、人目を避けるようにしてイザベルは蛇の目を傾けた。


「そんなことないです・・・」


すぅ・・・。


「これから話すフランス語がわかりますか、祐樹さん・・・?」

「うす・・・?」


イザベルは背伸びをすると、目を半開きにして、ゆっくり囁くようにフランス語を口にした。


「ジュ・テーム。モン・シェリ。モ・ナムール・・・」


この短いフランス語がどういう意味なのか、循環小数のように、二宮は小数点以下200桁までよくわかった。




ばんっ。

事務所で茂木が両手を机に叩きつけた。


「てな展開になってたら、なんかむかつく・・・!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうしたんですか、茂木さん?」

ユティスが経理部門で面白くなさそうに叫んだ茂木に近寄った。


「あーあ、ユティス、あなたも和人がいるからいいわよねぇ。公式に一つ部屋に一緒だってぇ?」


むすっ。

茂木はやってきたユティスに嫌味を言った。


「リーエス。ありがとうございます。おかげさまでとっても幸せです」


ぺこり。

にこにこ・・・。


ユティスは茂木の皮肉を言葉通りに受け取った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あちゃあ、ユティスったら・・・」


ぴっ。

岡本が人差し指を口の前で立て慌ててユティスを制した。


ぴきぴき・・・。


「ユティス、あなたがいくらエルフィア人だからといって、VIPだからといって、モデルばりの可愛くてステキな女の子だからといって・・・」

茂木は噴火レベル5の爆発寸前だった。


「まぁ、恥ずかしいですわ、そんなにお褒めいただくと。茂木さんもステキですよ。特にお揃いのピアスとネックレス」


「どうせ、わたしはアクセサリーの引き立て役ですよぉーだ!」

むすっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ、ごめんなさい。そんなつもりでは・・・。茂木さん、とってもお似合ですって言うつもりだったんですけど・・・」

ユティスは悲しげな表情になった。


「わかったわよぉ。いい。いい。もう、帰りなさい、和人と一緒に!」

「リーエス。ありがとうございます、茂木さん!」


ぺこり。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス、早く帰ろうよ」


ささっ。

和人がユティスの手を取った。


「リーエス、和人さん!」

るんるん・・・。


「それでは。お先に失礼します」

「失礼しまぁす」


ぺこり・・・。

ユティスは、丁寧に茂木に礼をすると、嬉しそうに和人の下に歩み去っていった。


「お疲れさまでーーーす」


--- ^_^ わっはっは! ---


むかむかぁ・・・。


茂木はそんな二人が二宮たちに続いて相合傘で出て行くのを般若よろしく見送った。


ぽん。


「茂木・・・?」

岡本がそんなユティスと和人を見ながら茂木の肩に手を置いた。


「天然か・・・。ユティスにかかったら、あなたの皮肉も空振り三振だわね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なによぉ?もう、みんなして!事務所でいちゃつくのは厳禁にするからね!」

茂木は憤懣やるかたなしというように目を閉じて眉間に皺を寄せた。


「あの二人は夫婦だと思いなさい。それに、社則は社長の真紀が作ったのよ。あなたには改定する権限はないわ」

岡本が冷静に言った。


「そういうあなたのデジタルでエンジニアチックところ、わたしは好きくない!」


ぷいっ。

茂木はそっぽを向いた。


「わかった。わかった。今日はもう切り上げて、久しぶりに3人でディナーに行かない?」


にこ。


「あなたと真紀の驕りならいいわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぽん!

岡本はすぐに手を打った。


「それはグッドアイデアね。実は、とってもいいところがあるの」


「ホント?」

「ええ。駅前の1本80円の焼き鳥屋台で、前の日の残り物はさらに8割引なのよ」


「・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


げっそり・・・。

「お腹壊しそうだわ・・・」


「財布は壊れないわよ」

けろ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「屋台でオヤジたちと一緒になんてごめんだわよぉ」

茂木はなにを言うかという顔になった。


「あら、そう?ユティスたちはお気に入りよ」


ぱち。

岡本は茂木にウィンクした。


「そりゃそうでしょうよ。彼女たちは地球のことならなんでも調査対象なんだから」


「確かにね。エルフィアにはないのよ、ああいうのが」

「飲兵衛のおじやんたち?」


--- ^_^ わっはっは! ---




すたすた・・・。


「真紀、というわけで3人で久しぶり行かない?」

岡本が真紀のところに寄ってきた。


「ええ・・・、でも、今日はちょっとぉ・・・」

真紀の服がいつもと違って、黒を基調とし少しシックでオシャレに決まっていた。


(ありゃ、ピアスにネックレス、いつもと違うわ・・・)


ぴん!


「ひょっとして、デートぉ・・・?」

岡本は直感した。


「いえ、デートじゃないのよ。仕事なの。シャデルにフェーズ2の見積変更の説明を・・・」


「ははぁーーーん、シャデルの最上階でお食事かぁ・・・?」

「だから、仕事だってば。シャデルは9時までお店してるのよ。ご免ね・・・」


ぱち。

真紀は申し訳なさそうに岡本にウィンクした。


「俊介に行かせればよかったじゃない。営業担当役員なんだから」

「そうもいかないのよ。エルフィアのSS支援とかで、アンニフィルドが・・・」


ちらり。

真紀は俊介の方を振り向いた。


「なぁるほどぉ・・・」

こっくり。


「あいつもかぁ・・・」

岡本が静かに頷いた。


「じゃ、わたし急ぐから。茂木には謝っといて」

「リーエス。わかったわ」


「岡本、エルフィア語になってるわよ」

「リーエス・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「ほら、早くぅ。ユティスたち出ちゃったわよぉ」

アンニフィルドは書類をいじっている俊介を急かせた。


もたもた・・・。


「無理言うなよ。そんなに急ぐんならきみだけ先に行ってくれ」

「それは嫌よぉ・・・。俊介のバカぁ・・・」


すりすり・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「SSの職務を全うするつもりはないのか?」

「ん、もう、意地悪!」


つん!

すたすた・・・。


アンニフィルドはユティスと和人を警護すべく二人の後を追った。


「俊介、シャデルに行ってくるわね」

「ああ、黒磯さんにはよろしくな」


そさくさ。

ぱんぱん!

俊介はたまった書類に判を押すことに集中していた。


「あなたまでいちゃつかれたら示しがつかなくなるところだわ・・・」


「え、なにか言ったか、姉貴?」

「なんでもない。じゃ、行くわね・・・」


すす・・・。

そう言うと、真紀はドアに向かって歩き始めた。


「今夜は帰ってこなくてもいいぞ」

にたらぁ・・・。


「うるさい!」


--- ^_^ わっはっは! ---




ぱたん。

ぶぉーーー。


真紀はタクシーを降りると、シャデル日本ビルの前に立った。


「お待ちしておりました国分寺様」

金座のシャデル日本の受付が真紀をエレベータに案内した。


「ありがとうございます」


「レインコート、お預かりしますわ」

「あ、どうも」


ささ・・・。

真紀は自分のレインコートを渡した。


ちん。

エレベータのドアが閉まり、二人はシャデル日本ビルを上っていった。


「途中、雨は大丈夫だったんですか?」

受付は真紀のドレスが少し濡れているのを見逃さなかった。


「少し本降りになってきたんで、タクシーから降りる時に・・・」

「それは、それは」


「それで、今日は黒磯さんとシステム担当マネージャーさんと・・・」

「承知しております。支配人からはお食事でもしながらということで、勝手ながらお席を設けさせていただきました」


「申し訳ございません。ついこの前、みんなしてお世話になったばかりだというのに」

「とんでもありませんわ」


ちん。

エレベータは最上階のレストランで止まった。


「さぁ、着きました。こちらです」

しゃぁ・・・。


「支配人、国分寺様をご案内しました」


「やぁ、きみ、ご苦労さん。国分寺社長、お待ちしておりましたよ」

「うふふ。お久しぶりです」


「一日千秋とはこのことです」

「はい?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「本当に、シャデルさんではいつもいろんなことが起きますわね」

「すみません。ユティスさんの拉致から始まったわけですね・・・」

黒磯は真紀に頭を下げた。


「あれはシャデルさんの責任ではありませんわ」


にっこり。

真紀がゆっくりと微笑んだ。


「どうも、いつもお世話になります」


ぺこ。

シャデルのシステム担当マネージャーが真紀に会釈した。


「こちらこそ」


ぺこ。

真紀も丁寧に頭を下げた。

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