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036 帰宅

■帰宅■



マンションに戻るワゴン車の中で、真紀と俊介は和人のことを話題にしていた。


「俊介、わかったでしょ?」


「なにが?」

「和人がエルフィア人のユティスとコンタクトを取り続けていること。しかも、彼女のことをゾッコン好きになっているってこと」


「好都合じゃないか」

「どうしてよ?」

真紀は複雑な表情になった。


「姉貴の言わんとすることはわかるけど、石橋と和人を無理矢理やりくっつけようなんて横暴だぜ・・・」


「無理矢理だなんて。わたしは、石橋の気持ちが一途だけに、もし可能性があるならと思って・・・」

「ふーむ。男と女の間だからなぁ・・・」


「それに気づいた?」

「ああ。和人の横にユティスがいたってことだろ?」


「ええ。姿が見えなくて、声も聞こえてもいなかったけれど、わたしは感じてたわ」

「オレもだ・・・」


「彼女、確かに和人の隣にいたわ」

「姉貴も食えないやつだな。それを知ってて、あんなことを言ったのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「大事なことだもの。もし、和人が地球代表として選ばれたのなら、ユティスに好かれる方が地球にとってプラスになるでしょ?」


「ほぇーーー。姉貴からそんな打算的な言葉が出るとは思わなかったぜ」

「打算的だなんて。わたしは石橋のことを思うと心が痛むのよ。どうすればいいのか迷ってるの・・・」


「だから、止めとけって。なるようにしかならんてば。本人たちに任せろよ」


「ふぅ・・・」

真紀は大きく息をついた。


「なんだよ、そのため息は?」

「あなたはやっぱり男ね。ぜんぜん女心がわかってない・・・」


「悪かったな。あいにくオレは女になる気はない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それより、どうすんだ?」

「和人?石橋?」


「両方だ。とりあえず和人」

「とりあえず・・・ね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティスとのコンタクトは、ちゃんと続けてもらわないと困るわね」

「そうだな。ユティスは今は『精神』だけで和人のところに訪れている」

俊介は精神というところを強調した。


「姉貴はこの精神体の状態がずっと続くと思うか?」

「いいえ。いずれ遠からず実体で現われるでしょうね。和人の目の前に・・・」

「ああ・・・」


こっくん。

俊介は同意した。


「てことは、オレたちの目の前にってことでもある」

「そうよ。そして、彼女が地球に実体で現われるってことは・・・」


「みんなが知ることになる。たちまち大パニックだな・・・」

「ええ・・・」


真紀は中を見た。


「どうすれば切り抜けられると思う?」

「そうさな、政府の中途半端な連中に知れることは避けたいな・・・」


「政治利用ね?」

真紀は俊介に確認した。


「ああ。とんでもない超最先端テクノロジーを独占できるかもしれないと知ったら、みんななにをやらかしてくるか、わかったもんじゃない。政府もそうだけど、産業スパイ、外国勢力、考えたら限がない・・・」

俊介はあれやこれやと気を揉んでいた。


「おじいさまにも相談してるけど、あっちはどうなのかしら?」

「藤岡さんのホットラインだからな、悪いようにはせんだろう・・・」


「ホント・・・?」


「ああ。ただ、心配なのは官庁の連中さ。法務省、外務省、防衛省、文科省、経産省、それに警視庁もな。権力を振りかざして、なにをしてくるかわからん。法律をタテにされたら、手も足も出なくなる」


「そうねぇ。少なくとも、日本の中でのユティスの奪い合いだけは避けなければ・・・」

真紀は腕を組んだ。


「あんまし時間はないかもしれんぞ」

「ええ。あの和人の様子じゃ、明日来たっておかしくないわ」


「そりゃ、ちと早過ぎじゃないか?」

「そうかしら・・・」


「ああ。エルフィアは地球の宇宙座標を手に入れてない・・・」

「え?」


「地球が宇宙のどこにあるのか、エルフィアは知らないってことだ」


「は。地球人だって同じじゃない」

「違うね」


「どこが?」

「地球人はエルフィアの宇宙座標はもちろん知らない。加えて、自分たちの宇宙座標も知らない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なぁんも、知らん・・・」

「まるで自慢してるみたいよ、俊介・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




和人は自分の部屋でなかなか寝付けずにいた。


(ちゅ、か。ユティスが本当にオレのこと。信じていいのかなぁ・・・)


どきどきどきどき・・・。


一人残された和人は胸の高鳴りを抑えることができなかった。


(あんな会話した後にどんな顔して会えばいいんだ?もう真紀さんも常務も、ユティスが側にいたことなんか、ぜんぜんわかってないんだから・・・。顔から火がでるくらい恥ずかしかった・・・)


あまりに目が冴えているので、和人はPCと取り出した。


(ちょっと待て、どう書くんだ、今日のつぶやき・・・?)


和人は、毎日ほとんど欠かさずやっている『良いことだけ日記』のことを考えた。


(楽しんで読んでいますわ)

和人はユティスの言葉を、思い出した。


(よし、思ったまま書こう・・・)


「ユティス。今日は来てくれて、ありがとう。真紀さんも常務も本心を聞かせてくれて、ありがとう。オレの周りにステキな人がたくさんいる。オレも努力する気はあるからね。なによりもきみに感謝するよ。ユティス、ありがとう」


ぽん。




「ユティス?」

「リ、リーエス?」


さっ・・・。

アンニフィルドがユティスの控え室に入ってきた。


「オレも努力してみる・・・、か・・・」

「アンニフィルド・・・」

「は、はぁーーーん。和人といつもの内緒の交信ね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ち、違います。内緒ではありません。いつもの『良いことだけ日記』ですわ」

「ふぅーーーん。で、努力ってなんのことぉ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドは興味津々で空中スクリーンを見つめた。


「わたくしたちの活動のことです・・・」


ぽっ。

ユティスは頬を染めた。


「地球の文明促進支援?」

「リーエス。エージェントとコンタクティーは力を合わせて・・・」

「幸せな家庭を築く・・・、よね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ア、アンニフィルド・・・」


ぱちっ。

アンニフィルドは片目をつむった。


「あははは。冗談、冗談。まだ、早かったわよねぇ。で、和人は元気そうだった?」

「リーエス。それは、もう・・・」

「どうしたの?」


アンニフィルドはユティスの少し悲しげな様子が気になった。


「・・・」


「ユティス?」

「リーエス。大丈夫です。あの、早く・・・」


「早く、予備調査のスケジュールが決まるといいわね」

アンニフィルドは自分のスケジュールになるかもしれない予備調査について、関心があった。


「あ。リーエス。わたくしもそう思っています」

「しょうがない。わたしも突っつくか・・・」


「なにをですか?」

「エルドとその仲間たち」


「まぁ・・・」




その日、『いいことだけ日記』を読んだユティスは和人がまだ起きている事を知り、再度和人に呼びかけることにした。


「和人さん、アステラム・ベネル・ナディア。今、よろしいですか?」


ユティスがコンタクトを取ると和人は頭の中でユティスの声を聞いた。


「リーエス」


ぽわぁん。

和人が答えるとユティスが目の前に現れた。


(あれ・・・、いつもと違うぞ・・・)

しかしこれは精神体であって、実際に体が実在するわけではなかった。


「和人さん・・・。こんにちわ・・・」

ユティスは少し切なげだった。


肉体こそそこにはないが、意識は存在したから、ユティスは和人と一緒にいて同じものを見聞きしているのだった。


「う、うん・・・」

「和人さん、お願いがあります・・・」


「リーエス、なんだい?」


「あのぉ、ハイパーラインですが、わたくしたち二人だけで利用できる専用のプライベートラインに変更したいんです。ご協力お願いできますか?」

ユティスは少し小声になった。


「プライベートライン?」

思わず和人は聞き返した。


「リーエス、和人さんとわたくしだけの・・・」


「なにか聞かれちゃ困ることでも・・・?」

「いえ、そういうわけでは・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「こちらの方がより回線が強力なんです・・・」

「リーエス、わかったよ。でも、どうすればいいの?」

和人は承諾した。


「これから、和人さんに専用のアプリをお送りいたします」

「わかった。最初の時のようにだね?」

「リーエス」


「届きましたら、頭の中のファイルをお開けになって・・・」

「リーエス」


しゅん。

ユティスからファイルが届き、和人の頭の中にファイルのイメージが一つ浮かんだ。


「さぁ、お開けになって・・・」

「リーエス」


和人はファイルを開けるイメージを描いた。


ささーーーっ。


「ああっ・・・」


あっと言う間に、和人の頭脳の中でアプリが展開され、プライベートハイパーラインに必要なニューロンのネットワークができあがっていた。


「はい、おしまいです」


にこっ。

ユティスの柔らかな優しい声がした。


「ありがとう・・・」


この専用アプリにおかげで、和人は全宇宙のだれかれに聞かれる心配なしに、ユティスと会話できるようになったのだ。


「ありがとうございます。これで、わたくしたちの会話はだれにも聞かれることなく、お互いにできるようになりますわ」


「ホントに?すごい・・・」

和人はユティスと二人だけの秘密を持てたことで、気分が踊っていた。


(これって、二人だけの秘密のホットラインだよね。なんか、無茶苦茶嬉しい・・・)

和人は嬉しくなった。


「うふふ。和人さんとわたくしだけの秘密のホットラインですわ」




「はぁ・・・」

石橋の今夜は辛いものになった。


(おいてけぼりね・・・)

和人は真紀と俊介とレストランで食事に行ってしまった。しかし、石橋は誘われなかったのだ。


(真紀さん、『わたしに任せて』と言ってたけど、本当にそうなのかなぁ・・・。あのお二人で和人さんになにを話すつもりなんだろう)


石橋はパジャマのまま机の写真を見つめた。それは去年の春の会社のハイキングでみんなで撮った写真だった。和人と石橋は隣り合わせでくっついて座り笑っていた。


(わたしったら、この時までぜんぜん気づいていなかったんだわ。お昼が終わって下山途中の事故・・・。和人さんの背中におんぶされて・・・。大きくて広くて、がっしりしてて・・・)


「はぁ・・・。わたしじゃ、だめなのかなぁ・・・?」


ぽた・・・。

石橋の目から一滴の涙がこぼれ落ちた


かちゃ。


「可憐?」


がばっ。


慌てて石橋は腕で涙を拭い、ドアの方を振り向いた。


「お母さん・・・」

「気分でも良くないの?」

母親が心配そうに、石橋を覗いていた。


「ううん・・・」


母親は石橋のはれぼったい目を見てピンときた。


「うまくいってないの、和人さんと・・・?」

「・・・」


「可憐?」

「うん・・・」


「どうしたの?」

「うん・・・」

それ以上、母親は聞いてこなかったが、石橋が言った。


「あのね、お母さん・・・」

「はい・・・」


「好きな人が別の女の人を好きな場合、どうすればいいの?」

「・・・」


ぎゅっ。

母親は一テンポ置いて優しく娘の肩を抱きしめた。


「待つの・・・。ひたすら待つの。大好きな人のことを信じて待つの・・・」

「でも・・・」


「待つのよ。その人のいいところを思い描きながら・・・。相手の女の人の不幸を願っちゃダメよ。絶対にそれだけはしてはいけないわ。大好きな人を不幸にしてしまうから・・・」


「でも、振り向いてくれなければ・・・」

「それでも待つの。大好きな人がこっちの気持ちに気づいてくれるまで・・・」


「でも、気づいてくれなければ・・・」

「お婆ちゃんになっちゃうわね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お母さん!」

「大丈夫よ、可憐。好きな人が気づかなくても、あなたが気づくから」


「え・・・?わたしが気づくの?」

「ええ、そうよ・・・」


「なにに?」

「別の人を好きになってること・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「お母さんてば!」


「今はとにかく、和人さんのことを想いなさい。そして待つの。あなたの今の歳じゃないと経験できない貴重な時間よ。人生の宝物だもの。わたしもね、母に、あなたのお婆ちゃんだけど、そう言って慰めてもっらたの」


「お母さん・・・」


「だから心配しないで、自分の恋を信じなさい」

「うん・・・。ありがとう・・・」


ぎゅぅ。

石橋の母親の手を握った。


ちゅ。


「可憐、あなた自分で想ってるよりずっとキレイで可愛いの知ってる?」


「ホント?」

「ええ。本当は、お見合い話たくさん来てるのよ・・・」


「要らない・・・」

「わかったわ、そう伝えるわ、20人ほど」


「ええ、そんなに・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「で、お母さん?」

「なぁに?」


「そういう風に、お婆ちゃんから聞いたの幾つの時だった?」

「8歳だったかなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「早熟・・・」

「初恋の相手よ。元気で運動ができて、面白くてすっごく人気者でね。勉強はぜんぜんだったけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今はどうしてるのかしらねぇ・・・」

母親は遠い目をした。


「ふうーーーん、そうだったんだ・・・」


ぽんっ。

母親は急に手を打った。


「そうそう、その人、大会社の役員だったんだけど、去年辞めちゃったらいしのよ。で、子会社の顧問になったんですって。思い出したわ・・・」


「お母さん、それって・・・」

「あなたのお父さんよ、言わなかった?」


--- ^_^ わっはっは! ---

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