365 プロ
「はぁい、アンニフィルドです。ん、もう、今回のお話はなによぉ!人がちょっと日本語の慣用句に通じてないのをいいことに、わたしをみんなでからかっちゃって!ホント、頭にきてるんだからね・・・!ということで、シャデルのモデルをまたする羽目になったんだけど・・・、やっぱり裏がありそうだわ。俊介、覚えてらっしゃい!」
■プロ■
「ってことで、シャデルに交渉してきてくんない、俊介?」
俊介が朝のSS訓練から戻ると、早速真紀は双子の弟に相談を持ちかけた。
「ふむ・・・。そういうことか・・・」
俊介は目を閉じると眉間に皺を寄せた。
「大丈夫、俊介・・・?こっちも最大協力するわけだから、しっかり交渉してよ、営業マネージャー」
俊介の渋い表情に真紀は社長としての威厳を示そうとした。
「へいへい。姉貴は一緒に来ないのかい?」
「社長が始めから出たんじゃ、その先がなくなるわよぉ・・・」
(黒磯さんに引き合わそうったって、そう簡単に引っかかりませんよぉだ!)
--- ^_^ わっはっは! ---
にまぁ・・・。
真紀が目を細めて意味ありげに笑った。
「まぁ、いいかぁ・・・」
(こっちには奥の手があるし、黒磯さんを落とすのは簡単だな・・・)
にまぁ・・・。
俊介も同じように真紀に笑った。
「な、なによぉ、その気持ちの悪い薄笑いは・・・?」
真紀は気味悪がって一歩引いた。
「いや、なにも・・・。じゃ、支度するか。おーーーい、和人ぉ!」
ぷるぷる!
俊介は手を振って和人を呼んだ。
「あ、はい、常務!」
和人は俊介に呼ばれるとすぐに来た。
「かくかくしかじかでな、シャデルに行くことになったんで、すぐに黒磯さんにアポ入れしてくれ」
「あ、はい。でも、この件、二宮先輩がメインで担当することになってたんじゃぁ・・・」
和人は二宮に目をやると、二宮は一見真剣そうに書類に目を通していた。
「今日は、あいつは滅茶苦茶忙しいらしいぞ」
「たかだか書類のチェックがですか?」
「だからじゃないか・・・」
「そうでした・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮はとにかく書類が苦手だった。
「黒磯さん、セレアムの宇都宮さんからです」
「お願いするよ」
ぴっ。
秘書がシャデル日本の総支配人に電話を繋いだ。
「セレアムの宇都宮と申します。いつもお世話になります」
「黒磯です。ああ、セレアムの・・・。いえ、こちらこそ」
「それで、例の3Dのバーチャル試着サイトの検証の件ですが、どうしても実際の洋服を着たところの3Dデータが必要なんです。つきましては、それについてご相談がありますので、黒磯様に弊社の国分寺とお伺いしたいんですが・・・」
「ま、真紀さんですか?!」
黒磯の声が高くなり、もう少しで引っくり返りそうになった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「え・・・?いえ、常務の方です」
「ああ・・・、そうですか・・・」
がく・・・。
黒磯の声が低くなった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「誠にお忙しい中恐縮ではございますが、黒磯様は本日のご都合はつきますでしょうか?」
和人は一気に用件を伝えると俊介に目配せした。
「今日ですか?」
黒磯は明らかに迷惑そうな声になった。
「はい。大変申し訳ございません、納期も迫っておりますので、できるだけ早くお願いできればと思いまして・・・」
「少しお待ちください。確認いたします」
ぴっ。
和人は黒磯が確認し始めたのを電話向こうで感じた。
「きみ、本日の予定を・・・?」
「午前中は会議で、夕方にはグローバル本社とのインターネット会議が・・・」
「午後だけか・・・」
「はい。お昼過ぎしかなさそうですね?」
黒磯の秘書が言った。
「うん。このプロジェクトはグローバル本社も注目している。。うちが成功したら、グローバル展開するつもりなんだ」
「稼動開始日の延期も含めて失敗は許されませんね・・・」
こく。
黒磯は秘書に頷くと和人との電話を再開した。
「わかった。会うことにしよう」
ぴっ。
「宇都宮さん、本日14時から15時ではいかがですか?」
「はい。14時から1時間ですね。ありがとうございます。その時間にお伺いいたしますので、よろしくお願いいたします」
ぺこ。
和人は電話をしながら深く一礼していた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい。お待ちしております、宇都宮さん」
「至急、会議室を押さえてくれ」
「はい」
「へぇ。ここよね、ユティスがいなくなったとこ・・・」
俊介の運転するワゴンから降りるとアンニフィルドはシャデルのビルをしげしげと眺めた。
「わたくしはいなくなったのではなくて、虜になっていたのですわ」
「虜、だれの・・・?」
アンニフィルドがクリステアと見合わせた。
「さぁ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そういう地球語に明るくないアンニフィルドがうんと誤解を招く言い方はよした方がいいぞ、ユティス」
にこにこ・・・。
俊介が可笑しそうに言った
「では、まいりますか」
和人が先導してシャデルの裏口からビルに入っていった。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
そこには黒磯の秘書がいて、5人をエレベータに案内した。
しゅう・・・。
エレベータが閉まり、再び開いたところはシャデルの最上階のレストランだった。
「どうも、お久しぶりです」
黒磯は俊介に握手を求めてきた。
ぎゅ・・・。
「ええ。ロイ・ルデレール以来ですね、黒磯さん・・・」
ぱちっ。
俊介は握手しながら黒磯にウィンクをした。
--- ^_^ わっはっは! ---
(バレたんでしょうか?)
(即バレでした・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
そんな二人のアイコンタクトを、アンニフィルドは子供が母親に悪戯がバレたようだと感じた。
「今日は来社いただくのが5人とうかがいまして、会議室が開いてませんので、急遽ここに特別席を用意させました」
「それは、それは、どうも・・・」
さっ。
俊介は愛想よく頭を下げた。
「ということは、シャデルの秋冬用の最新オートクチュールの全部を3Dデータ化したいちうことで・・・?」
黒磯はそれがえらく大変なことのように思えた。
「毎回、数十着以上あるんですけど・・・」
広報担当マネージャーは不安げに言った。
「ちゃんとしたモデルに着せて取らないと、それぞれのドレスのデータに信憑性がなくなってしまいます。フェーズ1は写真で2Dですから大したデータは要らなかったんですが、フェーズ2ではどうしても必要です」
俊介は黒磯と社内広報担当マネージャーたちシャデル側のスッタフの説得にかかった。
「マネキンを利用できないんですか?」
広報担当マネージャーが俊介の顔色を伺った。
「ダメですね・・・」
俊介はゆっくりと、しかし、断定的に答えた。
「ダメなんですか?」
「それではドレスが死んでしまいます。それぞれのドレスにはアピールできるポーズが必要なはずです。他社とのアドバンテージはこのポーズを取った時の3Dデータなんですよぉ・・・。ただ、のっぺりとしたマネキンのポーズでサイト訪問者を惹きつけることができますかな?」
「とおっしゃっても、イメージが・・・」
広報担当マネージャーは困惑している様子だった。
「女性は少し上体を捻るとか、足を交差させるとか、そういったちょっとしたポーズを大切にします。憧れのシャデルのドレスでそうしたい。そう思ってるんですよ。フェーズ2ではシャデルのヴァーチャル店舗でそれを着た自分を楽しむことができるんですがね。それには3Dデータを取っておかないと・・・。そうでしょ、黒磯さん?」
俊介は黒磯に確認させた。
「うーーーん、そうなんですが、今はまだフェーズ1が稼動したばかりですから・・・」
「どう思うかね、きみ・・・?」
黒磯は広報担当マネージャーを見つめた。
「グローバル本社とのインターネット会議の議題の一つは、本システムのフェーズ1稼動後の状況ですが、かなり突っ込んだ質問がきそうかと・・・」
「この件も触れられるかな・・・?」
「それは・・・」
広報担当マネージャーは言葉を濁した。
「で、フェーズ1の状況はこちらでもモニタしていますが、その後はどのような反応ですかな?」
俊介は大凡把握していたので余裕でそれを黒磯たちにきけた。
「いや、そりゃ、もう大反響でして!ハンドルネーム登録者は稼動後2万人を越えました。『あれはどうやるの?』だとか問い合わせも急激に増えてまして、コンサル登録者は50人に・・・」
にこにこ・・・。
一転、広報担当マネージャーは笑顔で即答した。
「狙い通りですな?」
にた・・・。
俊介は黒磯に微笑んだ。
「しかし、スーパーモデルを使うには・・・」
「要はモデルの費用の捻出でしょう?それは以前のビデオクリップの時、たんまりいただきましたから、今度はお返しします」
「な、アンニフィルド?」
にっ。
俊介はアンニフィルドに同意を求めた。
「いつから始めましょうか?」
ぱち。
アンニフィルドが黒磯たちにウィンクした。
「無償でしていただけるんですか?」
黒磯が念を押した。
「ええ。彼女たちにはギャラは不要です」
「・・・」
「で、国分寺さんのお考えは?」
「モデルはこちらの3人でどうでしょうか?」
「どうも」
にこ。
「どうも」
にこ。
「どうも」
にこにこ・・・。
3人のエルフィア娘たちは最高の笑顔で黒磯を見た。
「あ・・・!」
どきっ!
--- ^_^ わっはっは! ---
黒磯はエルフィア娘たちが天使のように思えた。
「よろしくお願いします!」
--- ^_^ わっはっは! ---
黒磯の動きは電光石火だった。それで次の週、ついにシャデルビルで、3人のエルフィア娘たちの秋冬もの3Dデータ取りが始まろうとしていた。
わいわい・・・。
がやがや・・・。
シャデルビルの6階の社内プライベートショー用ステージ前では、エルフィア娘たちを取り囲んでシャデル側のスタッフ、そしてセレアム側のスタッフでごった返していた。
「なんだかわくわくするわね。あは!」
アンニフィルドはビデオ撮りした時の抑揚が押し寄せてくるのに身を任せていた。
どかっ。
「きゃ!」
ステージの横の置くでは到着したばかりの秋冬オートクチュールの最新ドレスが専用ケースに山積みになっていた。
「おーーーい。パリ本部からの荷だぞ。慎重に開封しろよぉ!」
「はぁーーーい!」
シャデルの広報スタッフたちが、せわしなく動いている社員に指示を飛ばしていた。
「で、3Dデータを取る装置ってどれですか?」
広報担当マネージャーが俊介にきいた。
「それは気にしなくていいんですよ。うちには優秀なのがいましてね」
「どこに?」
ステージ上には取り分けなにか特別な計測機械はなにもなかった。
「おい、アンディー、用意はいいかい?」
俊介はステージのだれもいない空間に向けて手を振った。
「リーエス。パジューレ(どうぞ)、SS見習い・シュンスケ。いつでも、準備できています」
そして、どこからともなく声がして、そこに4人目のエルフィア美女が現れた。
ぽわん!
「きゃあ!」
「どわっ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
そして、それをまたかという顔で真紀が見つめていた。
「彼女は、アンディーだ。名前が長いから全部言ってたら夜になってしまうよ」
俊介はびっくりしているシャデルのスタッフたちに言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
そして、ここに真紀がいることで、にこにこ顔の黒磯に付け加えた。
「アンディーに任せれば、この上なく正確に素早く3Dデータ化してくれますよ」
「なるほど、あなたたちにはそういう味方が着いていたわけですね?」
「いかにも。で・・・」
くるっ。
俊介は首を曲げて黒磯に背中を見せてる姉を見やった。
「国分寺さんのご指示どおりです。『シャデルが贈る株式会社セレアム様向け社内特別ファッションショー。秋冬コレクション』と銘打って、御社の社員さんだけ、全員に招待状を差し上げました」
こっくり。
黒磯は静かに頷いた。
「本当に全員来るとは思いませんでした・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いやぁ。国分寺さんはピンポイント。マーケティングの天才ですね」
「そうでもないですよ。今日は、うちは開店休業です。あははは・・・」
俊介は笑った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「うちは3階以上は閉店全員出社です。わははは・・・」
黒磯も笑った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「計測は何時からできますかねぇ?」
俊介がきいた。
「まだ開梱の段階ですから、準備に半日以上かかりますよぉ・・・」
黒磯は申し訳なさそうに言った。、
「一応、招待状には計測が午後5時としたんですが、まだ、10時ですよぉ。お疲れになるんではと・・・」
「いや。みんな興味津々でして。はじめから見学したいって・・・」
俊介は、女性社員たちがシャデルのスタッフたちの作業を遠巻きにして見ているのを、じっと眺めた。
「で、あのフランス人たちは・・・?」
俊介が後ろでなにやらひそひそ話しをしている数人のフランス人スタッフを気にした。
「主任デザイナーとファッション・コーディネーターですよ。ジャン・ジャックが今日のために付けてよこしたんです。昨日、到着したばかりです」
「すると、パリのグローバル本社からの・・・?」
「はい。このプロジェクト、滅茶苦茶期待されています・・・」
黒磯はそっと俊介に告げた。
ぶるっ。
俊介は、アメフト時代のあの試合前のなんともいえない高潮感と緊張感がみなぎり、思わず身震いした。
「覚えてらっしゃい、俊介のバカ・・・」
真紀はシャデルのスタッフの作業を見つめながら一人呟いた。
「え?なんだって?」
真紀の側で茂木が聞き返した。
「まさか、社員全員に送ってくるとはね・・・」
「ああ、ここの招待状?」
「そうよ。社員一同様って20枚入ってたのよぉ・・・」
「今日一日限りのセレアム様向け特別プライベートショーか・・・」
「世界のファッションに冠たるシャデルのよぉ」
「わかってる。でもさぁ・・・」
真紀は手の込んだやり口が黒磯だけの計画だとはとても思えなかった。
「しょうがないじゃない。わたしたちには滅多に拝むことができないトップブランドのファッションショーよ。しかも、うちだけに特別に開催してくれるのよぉ。一生かかっても、こんなチャンス絶対に来ないわね。保証する」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかってる・・・」
「行かなきゃ失礼だし、今後のビジネスにとっても大打撃間違いなしだわ」
「わかってる・・・」
「3Dデータ計測が主目的だから、開発部の岡本たちは全員参加するし、マーケ兼任の石橋やら、イザベルやらもみんな来ちゃった・・・」
真紀は溜息をついた。
「あなたもね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「社員全員が行くのに社長がすっぽかせると思う?」
「無理ね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「これが、俊介のシナリオだってことはお見通しなのよぉ・・・」
「そんなに怒んなくてもいいじゃない?」
岡本は真紀を宥めようとした。
「だって、あいつの主目的はわたしと黒磯さんを引き合わせることよ?」
「やっぱり・・・。くふふふ・・・」
岡本は笑いを押し殺した。
「だからよぉ!わたしをジネスの出汁に使って・・・」
「そりゃ変じゃない?いつも言ってるでしょ、真紀、『わたしを使いなさいって』・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「使い方が気に入らないのよぉ!もう!」
だん・・・。
真紀は、今回は一枚上手の俊介に、憤懣やる方なしというように地団太を踏んだ。
「真紀が黒磯さんに気がないのは知ってるけどさぁ、ここは振りだけでもしないといけないんじゃない?」
「セクハラよ、それ!」
「わたしじゃないもん」
--- ^_^ わっはっは! ---
「茂木ぃ!」
「きゃあ!わははは、ごめん、ごめん」
すべての衣装の開梱が終わり、ステージ裏ではそれぞれが丁寧にハンガーに掛ずらりとけられていた。
「モデルは3人か・・・」
「180センチ近い長身が2人、とはいえ、もひとりも172センチはあるねぇ・・・」
「スタイルは3人とも文句なしに合格だ」
フランス人たちは予め入手していたエルフィア娘たち写真とプロポーションから、今回の衣装をどうコーディネートするか原案を用意していた。
「さて、秋冬もの60着のうち、一番合う組み合わせはと・・・」
主任デザイナーとファッション・コーディネーターはドレスと3人のエルフィア娘たちを見比べながら、だれにどれを着せようかと最終意見をまとめていた。
「コマン(どうかね)?予定どおり、これはそっちの女の子で?」
「ボン(いいねぇ)。で、こっちはそのドレスと対をなしてるから、長身の二人にしよう」
「ウイ。ダコール(了解だ)」
「一人はアルビノか・・・。これは変更だ。やっぱり、白っぽいのは止めた方がいいな。黒っぽい方が返って際立っていいんじゃないかな?」
一人がアンニフィルドとドレスを見比べながら片手を横に振った。
「ボン(ああ)。おーーーい、それこっちに回してくれ」
「メドモアゼル(ちょっと、きみたち)?」
「ウイ(はぁい)」
3人は愛想よく返事をした。
「すまないが、それぞれの衣装の前に立ってくれないかね?」
「ダコール(了解よ)」
そして、さらにあれこれ3人娘たちに注文がきて、それぞれの衣装が決まったのは大分経ってだった。
「メドモワゼル、メルシー・ボク(きみたち、ありがとう)。食事はこれからかい?」
彼の腕時計は昼を大幅に回っていて既に2時を指していた。
「ウイ。少しだけ取ることにするわ。だって、あんまりお腹に入れちゃうとドレスが合わなくなっちゃうでしょ?」
にこ。
アンニフィルドが茶目っ気たっぷりに言った。
「ア、ウイ、ビヤン・シュール(もちろんだとも)。アタンシオン・シル・ヴ・プレ!(注意してくれよ。きみたち)。わははは」
実際には3D計測2時間以上あるのだったが、3人は黒磯から注意を受けていたので、実際はオレンジジュースとサラダをほんの少し口にした程度だった。
シャデルの6階ステージは3D計測のため壁には飾り付けはほとんどなく、壁にはシャデルのロゴだけが質素にあるだけだった。
「では、3人とも集まってくれる?」
岡本がエルフィア娘たちをカーテンですっかり仕切ったステージ裏に呼び寄せた。
「いよいよこれからなんだけど、ドレスを着て3D計測する前に、予めあなたたちの生の3Dデータを取っておく必要があるの」
「生のデータですか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
きょとん・・・?
ユティスがなんのことかわからないように首を傾げた。
「そう。着ているものを全部取って」
にこ。
「はい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと、ここで素っ裸になれっていうのぉ?!」
アンニフィルドがすっとんきょうな声を上げた。
「さっさとする。データが取れないじゃない」
「データって、そんなプライベートなもの取られてたまりますか!」
「あのね、銀河中にあなたのサイズをばら撒くわけじゃないのよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、当ったりまえだわ!」
「3Dモデルを作る上でのデータよ。サイトであなたたちのバーチャルドレスと作る上で必要なだけ。だれもそのデータは見れないわ。データ管理は極秘扱いで、わたしと石橋だけしか見れないようにするつもりよ」
「するつもり?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「することになってるの!」
「うそでしょ?」
「わたしは俊介じゃない」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ますますもって怪しいわぁ・・・」
「ここはカーテンで仕切ってるし、男性スタッフはステージ裏はこの時間出入り禁止したわ。計測エリアの外からの立会いも、わたしと石橋だけよ」
すく。
岡本の後ろでは石橋が静かに立っていた。
「そんなこと言ったって・・・、じ、冗談じゃないわよぉ!」
アンニフィルドが悲鳴を上げた。
「プロのモデルなんでしょ?」
岡本は動じなかった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「プロじゃないわよぉ」
「今日だけプロ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「今日もプロじゃない!だいたい、そんなこと一つも事前に話さなかったじゃない?」
アンニフィルドはがんとして承諾しなかった。
「システムを請け負ってるセレアムにはシャデルに義務があるの。そして、あなたたちはセレアムの社員。『セレアムの社員はプロたれ!』って、真紀が作った社訓だけど知ってる?」
「知らない!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、そう。じゃあ、石橋、アンニフィルドを手伝ってあげて」
「はい、岡本さん」
すすす・・・。
石橋がアンニフィルドに近寄るとアンニフィルドはパニックになった。
「ち、近寄らないでよ、石橋!だれにもわたしを手を掛けさせないわよぉ!」
「俊介でも・・・?」
くす。
アンニフィルドの後ろでクリステアが囁いた。
「俊介ぇ?」
はっ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドが一瞬怯んだ。
「呼んであげようか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ダ、ダメ!絶対にダメ!」
「うるさいなぁ。なにしてるんだぁ?」
ひょい。
その時、アンニフィルドの悲鳴で、カーテンを捲った俊介が顔を出した。
「お、なぁーんだ、まだ着てるじゃないか?アンニフィルドの素っ裸が見れるって聞いたんだが・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「バ、バカ!」
ばしーーーんっ!
アンニフィルドの精神波が俊介の頬を強烈に打った。
「痛っえーーー!」
--- ^_^ わっはっは! ---
俊介はすぐに出ていった。
「言ってる先からこうじゃない!油断も隙もあったもんじゃないわ!」
はぁ、はぁ・・・。
アンニフィルドは肩で息をした。
「うふふ。心配ありません、アンニフィルド。その辺はちゃんとアンデフロル・デュメーラにお願いしてありますわ」
にこ。
ユティスはアンニフィルドに微笑みかけると、アンデフロル・デュメーラの精神体にウィンクした。
「リーエス。エージェント・ユティス。わたしがすべて用意していますので、お三方ともご安心ください」
「ホントにホントでしょうねぇ・・・?」
アンニフィルドはアンデフロル・デユメーラを探るように見つめた。
「全部取られるんでしょ?こことか、そことか、あそことか、全部のデータ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「SS・アンニフィルド、数値の集合体がそんなに心配ですか?」
アンデフロル・デユメーラがさらに確認した。
「心配だわよぉ。データから3Dを再構成するわけだから・・・。どこのだれだかわかんない輩に見られるなんて、恥ずかしいに決まってるじゃない!」
「3Dデータから、あなたの『お美しい清らかなすっぽんぽん』姿だけを再構成するわけではありませんよ。アンニフィルド」
アンデフロル・デュメーラが冷静に言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「みんなが目にするのはドレスを着たあなたよ。それに、体型保持のためエルフィアの超軽量ボディスーツを着けて計測するから、石橋や岡本が入ってきても心配ないわ」
クリステアが静かに言った。
「エルフィアのボディスーツって本当ね?」
「リーエス。3人分用意してあります」
アンデフロル・デュメーラが答えた。
「わかったぁ、アンニフィルド?」
クリステアはアンニフィルドをじっと見つめた。
「でも、それをどうやって着るのよ?」
「そりゃ、一度は今の洋服を全部取っちゃうしかないじゃない?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「取るんじゃない、やっぱり!」
「お風呂に入ると思いましょう、アンニフィルド」
にっこり。
ユティスが笑顔で言った。
結局、ユティスとクリステアがアンニフィルドを宥め、予定どおりにアンデフロル・デュメーラがステージ裏のカーテン内をさらに3人娘のエリアを確保した上で、不透明時空処理をして姿形はおろか音さえ周りから聞こえなくした。
「こうならこうと最初から言ってよぉ・・・」
ぶつぶつ・・・。
セキュリティ確保のため、アンニフィルド、ユティス、クリステアの順で、準備をすることになった。




