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364 早朝

「はぁい、アンニフィルドです。エルフィアじゃわたしたちを迎える準備で忙しいようだけど、こっちは梅雨に入っちゃって毎日雨ってのはホント嫌だわぁ。なにかぱぁーーーっと心が晴れるようなことってないのかしらね?え?そんなものは自分で探してこいだってぇ・・・?なるほどぉ・・・。それもそうねぇ。えーっと、今、朝の5時過ぎかぁ・・・。よし、早朝ニュースでも見て地球のお勉強よぉ!」

■早朝■




そうこうしているうちに日本は梅雨に入っていった。


「本日の天気は雨のち曇り。ところによっては集中的な豪雨が予想されますので、警戒が必要です。梅雨前線が活発なため今週はあまり日が差さないでしょう」


アンニフィルドは早朝ニュースを一通り見るとテレビのコントロ-ラに手を伸ばした。


「あーーーあ、つまんない」


ぴっ。

アンニフィルドはテレビを消した。


「うーーー、なぁに、この毎日鬱陶しい天気・・・」


アンニフィルドはエルフィア大使館こと株式会社セレアムの社員寮で、リビングのソファに座ったまま背伸びをした。


「梅雨ですわ。アンニフィルド。日本のこの季節は南北の高気圧がせめぎ合って、ちょうど停滞全線が日本の真上に来るんですよ」


とんとん・・・。

すでに起きて着替えを済ませたユティスが二階から降りてきた。


「へぇー、詳しいわね、ユティス」

アンニフィルドは感心したように言った。


「リーエス。気候や季節は人々の心や精神に大きな影響を与えます。予備調査では必須項目ですわ」

「そうなの・・・。で、この梅雨は和人たちの心にどんな影響を与えてるのかしら?」


「リーエス。それはご本人に聞くのが一番ですわ。うふふ」

「ちっとも調べてないじゃない、ユティス」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ。わたくしは科学的に調査してますわ。地元の方のご意見を聞くことは立派に科学的です」

「そういうもんですかねぇ・・・」


すたすた・・・。

そこへ和人がやってきた。


「どうしたんだい、アンニフィルド、こんな早朝から憂鬱そうな顔で?」

「だって梅雨って鬱陶しいばかりだもの。外に出るのも億劫になるわ」


「そうだね。会社にも行きたくなくなるよ」

和人は苦笑いして両手を広げた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「でしょ、でしょ?」


がばっ。

アンニフィルドはソファから身を起こすと和人とユティスを交互に見つめた。


「そういうことで今日は雨天時、梅雨の地球人の過ごし方、立派な調査項目だわ」

「で、なにが言いたいんだい、アンニフィルド?」


「わからない・・・?」

「わからない・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はぁ・・・。やっぱり、そういうところ地球人ねぇ、和人」


「言っていただかなければ、だれもわからないと思いますわ」

ユティスが和人を援護した。


「だから・・・、今日は地球人の梅雨の過ごし方の調査で、セレアムの仕事はパス」

「はぁ・・・?」


「もう、二人とも、こんな雨の中で営業仕事したいの?」

「したくはないけど、しなくちゃいけない」

和人が言った。


「リーエス。地球はカテゴリー2ですから、お金を稼がないとスーパーでお買い物ができなくなりますよ、アンニフィルド」

和人とユティスがアンニフィルドにやんわりと反論した。


「ん、もう。それなら日本政府が有り余るほど提供してくれるじゃないの。それなのに仕事するなんて、それこそ無駄なことじゃない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「仕事は日常の糧を得るためだけにするんじゃないんだ」


「わかってるわよ。エルフィア人だって決して怠け者じゃないわよぉ。仕事は純粋に本人の意思でするわ。別に金品をもらうためにはしない。自分から望んでするのよ」

アンニフィルドは余裕を見せて和人に答えた。


「わかったから、きみはその調査とやら、どうしたいって言うんだい?」

「それはね・・・。あは・・・」


「アンニフィルド、もったいぶらないで」

ユティスも先を聞きたがった。


「雨の日はだれだって外に出たくないでしょ?」

「リーエス」


「でも、外に出なければ誰とも会えない・・・」

「それで?」


「恋人たちはこの矛盾、どう解決してるのかなぁって、興味わかない?」

にこっ。


「わかない」

「さぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もう、なんで、あなたたちはそうなの?」


「そうおっしゃられても、わたくし、和人さんといつも一緒ですから・・・」

「別に不便は感じないけど・・・?」


ぴとぉ・・・。

にっこり・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ねぇ、ユティス!」

「リーエス、和人さん!」


にこにこ・・・。

いちゃいちゃ・・・。


「あなたたちに聞いたのが間違いだったわ・・・」

ふっ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルド?」

「いい。わたしだけで調査に出かける」


「出かけるってどこに?」

「俊介のところよ!」


「なぁーるほどぉ・・・」

「でも、アンニフィルド、まだ6時前ですけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だからよぉ・・・。あは」


しゅん。

アンニフィルドは意味ありげな一言を残すと、一瞬で空中にかき消すように消えていった。


しゅん。

そしてあっという間に戻ってきた。


「ありゃ、どうしたんだい?」

「忘れ物よ」

アンニフィルドは急いで答えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「忘れ物ですか?」

「リーエス。勝負ネグリジェよ。ダーリン、まだ夢の中なの」


--- ^_^ わっはっは! ---


たったった・・・。

アンニフィルドは自分の部屋へと駆け上がっていった。




きん、こん、かぁん・・・。

優しいオルゴールの音色が部屋に響いた。


「SS訓練生・シュンスケ、お時間です」

国分寺俊介の耳元で冷静なアルトが囁いた。


「う、うん・・・?」

「朝です、俊介」


「ふ、ふぁーーー」


ずず・・・。

俊介は毛布を引くと身体を丸めた。


「今日からSSの訓練です。初日から遅刻するつもりですか?」

アルトの響きが若干強くなった。


「もう少し寝かせろよぉ。昨夜も仕事で遅かったんだからなぁ・・・」


ずる・・・。

俊介はさらに頭まで毛布を引っ張り上げた。


「仕方ありません。強制収用します」


アルトの響きはいっそう強くなり、俊介は毛布をあっという間に引き剥がされた。

ばっ!


「おわっ!なにするんだよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


がばっ!

そこにはパンツ一枚の俊介がいた。


「アンディー!なんだって、こんな時間に起こされなきゃならないんだよぉ・・・」


のそぉ・・・。

俊介は相手がだれか確認すると渋々ベッドに身を起こした。


「SSアンニフィルドからうかがっています。あなたは・・・」


ゆらぁーーー・・・。


そこで、部屋の中の空気が揺らぎ、アンデフロル・デュメーラの擬似精神体は話しを中断するのを余儀なくされた。


「うん・・・?」


ぽわぁーーーん。

しゅん。


「だぁーりん、お待たせ・・・」


にこ。

現れたのは黒のネグリジェを着ただけの最高に色っぽいアンニフィルドだった。


「げ・・・、アンニフィルド・・・」


「きゃあ!な、なによぉ、その格好!」

パンツ一丁の俊介にアンニフィルドは思わず叫んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「きみこそ、なんだその格好・・・」

俊介は驚くでもなくアンニフィルドを見つめた。


「きゃあ、エッチ、スケベ、ど変体!」


がばっ。

アンニフィルドは慌てて俊介の毛布で身を隠した。


「まったく、どっちがスケベなんだよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「う、うるさいわねぇ・・・。で、なに?なんでこんな時簡に起きてるのよぉ?」

アンニフィルドは俊介に言った。


「そりゃ、きみがステキなスケジュールを組んでくれたからじゃないか」


くい・・・。

俊介は顎でアンデフロル・デュメーラを指した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「え・・・?」


くるっ。


アンニフィルドがその方を見ると、いつもと変わらぬ冷静なエストロ5級母船のCPU擬似精神体が眉を上げて話しだした。


「委員会の許可が昨晩下りまして、本日からSS・アンニフィルドの依頼に基づく、国分寺俊介のSS訓練を始めさせてもらいます」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まずは・・・」


「ちょっと待ちなさい、アンデフロル・デュメーラ。そんなこと聞いてないわよ」

「わたしもお話するのは初めてです」


かーーーん!


--- ^_^ わっはっは! ---


「いったいどういうことよぉ?せっかくわたしが暖かく優しくダァーリンを夢心地のままゆっくり目覚めさせてあげようと思っていたのにぃ!」


きっ。

アンニフィルドはアンデフロル・デュメーラを睨むと思いっきり抗議した。


「しかし、そうおっしゃられても、委員会の承認後可及的速やかにというご依頼でしたので、わたしはあなたのご意向に添ったまでですが・・・」

アンデフロル・デュメーラは困惑気味に言った。


(わたしの、おバカさん・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「そりゃ、そう言ったかもしれないけど、なんで今朝なのよぉ?」

アンニフィルドの気分は収まりそうになかった。


「深夜の方が良かったでしょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そいつは勘弁だな」

俊介が即答した。


「ん、もう。せっかくのチャンスが台無しだわ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぶつぶつ・・・。

アンニフィルドは毛布に包まって呟いた。


「なんのチャンスでしょうか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うるさいわよ、アンデフロル・デュメーラ!」


くっくっく・・・。

俊介が一人笑いを堪えた


--- ^_^ わっはっは! ---


「で、歯磨き顔洗い、朝飯くらいはする時間はあるのかい?」

にた。


「もちろん、それを考慮しての6時起床です。毎日、出社前の1時間はこれに当てていただきます」

アンデフロル・デュメーラは静かに答えた。


「だとよ、アンニフィルド。一旦、目を覚まされちまったしなぁ・・・。起きるしかなさそうだ」


ぐいっ。

俊介はベッドに腰掛けると、毛布に包まったアンニフィルドを見上げた。


「な、なによぉ?」

「王女さまは、眠れる森のイケメンに、キッスしてくれるんじゃなかったのかい?」


「は、はぁ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「黒のネグリジェ姿、ステキだぜぇ、アンニフィルド・・・」

にたり・・・。


「バ、バカ!ムードをぶち壊しといて、なによぉ!アンデフロル・デュメーラ、あなたもだからね!」

アンニフィルドはすっかり気分を害していた。


「ナナン。わたしなら、キッスは必要ありませんよ、SS・アンニフィルド」


--- ^_^ わっはっは! ---


擬似精神体はこともなげに答えた。


むっかぁ・・・。


「あ、そう!あなたたちがそう言うんなら、そうしなさいよ。ふん、わたしは帰るから」


ばん!

その時ドアを開けて真紀がパジャマ姿で俊介の部屋に入ってきた。


「うるさいわねぇ!いい加減にしなさい!朝っぱからなに怒鳴り合ってるのよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


そして、真紀はパンツ一丁の双子の弟と毛布に包まってなんにも着てなさそうなアンニフィルドを認めた。


「・・・」


「姉貴ぃ・・・」

「真紀さん・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


すとん・・・。


驚いて目を見開いたアンニフィルドの手が緩み、あっという間に毛布が床に落ちて黒いセクシーなネグリジェ姿が露になった。


「あ・・・」

「な・・・、なにしてたの、あなたたち・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---




エルフィア大使館では、7時半にいつもどおりの平和な朝食が始まっていた。


くっくっく・・・。

クリステアがそれを聞いて笑いを堪えるのに精一杯だった。


「もう、朝から、さんざんだったんだからねぇ!」


「はい、はい。それで、俊介のSS訓練、今日からなんだ?」

クリステアが楽しそうに言った。


「リーエス。アンデフロル・デュメーラったら、するにことかいて、朝一番なんだから、もう・・・」


ぱくっ。

そう言ってアンニフィルドは蜂蜜をぬったクロワッサンを千切ると口に放り込んだ。


「彼女はきみたちにはとことん忠実だからね」

和人はそれに頷いた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「しっかし、ホント絶妙のタイミングだったんだから・・・。真紀さんに思いっきりしかられちゃったわ・・・。あは・・・」

アンニフィルドはユティスに苦笑いした。


「うふふ。それで真紀さんから出入り禁止をいただいたんですね?」

ユティスがクリステアと目配せしながら優しく言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「さすがあなたね・・・」

「失礼ね、クリステア。全面禁止じゃないわよぉ。ネグリジェ姿とかランジェリー姿とかで俊介の部屋に入るのはってことよぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


アンニフィルドは不本意そうに言った。


くっくっく・・・。


「それなら、次からなんにも着けなきゃいいじゃない?」

クリステアが煽った。


「な、なんにも着けない?」


ごくっ・・・。

和人が思わず息を飲み込んだ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「すっぽんぽんは禁止されてないんでしょ?」

「ホント、今度からそうするわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「くっくっく・・・」


アンニフィルドは残りのクロワッサンを半分に千切ると、考えることなくクリステアに返事した。


「え?ちょっと待ってよ。すっぽんぽんって?」

アンニフィルドは自分の言ったことがわからないようだった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ご存知ないのですか。アンニフィルド?」


にこ。

ユティスがきいた。


「すっぽんぽんって・・・、そのぉ・・・」

アンニフィルドは口に放り込みかけたクロワッサンを降ろすと、ユティスを見つめた。


「なんにも身に着けず、清らかな生まれたままの姿のことですわ」

にこ。

ユティスが清らかに答えた。


「清らかな生まれたままの姿ぁ・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス」

「ダメ!ダメ!朝からそんなはしたないことできますか!前言取り消し。取り消しだからね!」


--- ^_^ わっはっは! ---




雨の中、日本中の給与所得者たちは自分たちの会社に出社し、仕事に精を出すのだった。


「あれ、常務はまだ来てないんすか?」

俊介の担当するマーケティング部では、二宮が俊介のデスクを見ながら真紀に尋ねた。


「あ、それね。俊介はアンニフィルドの推薦でエルフィアのプログラムに組み込まれてさ、今日から朝の一時間はSS補佐の訓練をすることになったのよ」

真紀は勝手にしろと言わんばかりにそっけなく言った。


「SSって、クリステアやアンニフィルドのあのSSのことっすかぁ?」

「そうそう。あ、そういや、一応みんなにアナウンスしとかなきゃいけなかったわ」

そう言うと真紀は手を叩いて社員の注目を引いた。


「みんな知ってるように、うちはエルフィアのエージェントやSSが集う場所になってるんだけど、そのエルフィアの最高理事エルドから俊介をアンニフィルドやクリステアたちSSの補佐に推薦されたの。それで、毎日朝一番1時間くらいその訓練に時間を割くことになったんで、言っとくわ。だから、朝礼はわたしがするから、よろしくね」


「はぁーい」

「了解」

「リーエス」


社員たちから不協和音を伴った返事が真紀に返ってきた。




俊介は一瞬でアンデフロル・デュメーラのある広い一室に転送されていた。


「よく来た。シュンスケ」

そこにはSS教官のフェリシアスが両腕を胸の前に組み静かに立っていた。


「あんたが教官か?」

「リーエス」


俊介はフェリシアスの微動だにしない立ち姿に畏敬にもにた感じを持った。


「きみとはちょくちょく会ったことがあるが、あらためて自己紹介しておこう。わたしはエルフィア文明促進推進支援委員会の最高理事エルド直下のSS、フェリシアスだ」


すく・・・。

フェリシアスは184センチある俊介よりさらに数センチは背が高かった。


「ただの地球人の国分寺だ」

俊介は平然と答えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふふ。面白い男だな、きみは・・・」

フェリシアスは珍しく俊介の言葉を面白がった。


「で、SS補助ってのは、どういうご身分なのかな?」

「SSがコンタクティーに十分目が届かない場合、視線先の現地の人間をその代わりになって、コンタクティーの保護を補助的に支える存在だ」


「それは重大な役目だが、それなら、ここにも警察ってものもいるが・・・?」

俊介はことの重大さについては本気でそう感じた。


「あの仰々しい連中のことか?」

「ああ。それでは不十分なのか?」


「リーエス。いざという時、エージェントと強く結びついたコンタクティーには、もっと身近で頼りになる存在が必要だ。冷静で、賢くて、勇気があって、抜け目のない人間だ」


「それにオレが該当してるとは有り難い」

俊介はフェリシアスを見つめた。


「きみはセレアム人の血を引き、アメリカンフットボールという実に頭と身体と精神を使うスポーツでリーダー的役割をしてきている。素質は十分と見た」


「よく知ってるな。オレがセレアム人のクォーターで、アメフトのクォーターバックやっていたなんで?」


「きみがアンニフィルドに話したのではないかね?」

「そういうことか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「結論を言うと、SS補佐にはだれでもなれるというわけではない」

「オレは書類選考に残ったというわけだ」


にやり。

俊介はフェリシアスの笑いを誘ったが効果は見えなかった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ナナン。きみはすでに面接にも受かっている」


「面接?」

「リーエス。しょっちゅうアンニフィルドと会っていたではないか?」


「へ・・・。あれがSSへの面接だっていうのかぁ・・・?」

「リーエス。アンニフィルドが支援先の現地の人間にキッスすることは滅多にない」


「へっ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それが合格証だって言うのか?わは・・・」

俊介は大いに面白がった。


「蹴りの方が良かったかね?」

「それが不合格か・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談はともかく、まずは、きみの知識判断動作を試させてくれ」


「ふっふ・・・。ところよ。なんなりと始めてくれ」

俊介はそう言うとさっと身構えた。


しゅん。

その瞬間、目の前のフェリシアスは消え、俊介の背中側に現れた。


「くそっ、どこに行った?」

秀介はあまりのことに思わず悪態をついた。


ぽん。

背中を軽く叩かれて、俊介は後ろを振り返った。


「目や耳だけに頼るな。生命体は必ず生体エネルギー場を持っている。空気の振動、心の響き、身体全身でそれを感じるんだ」


「うう・・・」

俊介はさらに精神を研ぎ澄ますべく先進を統一した。


「はっ!」


しゅん。

くるっ。


ぽん。

フェリシアスにまたしても肩を叩かれた。


「ちくしょう・・・」

しかし、2回目は俊介は顔だけは半分フェリシアスの方を向いていた。


「いいぞ、俊介。その調子だ」


にたっ。

フェリシアスが笑った。


「次だ」


しゅん。

フェリシアスが3度目の移動をした。


すかっ、

フェリシアスが俊介の肩を叩く瞬間、一瞬早く俊介が身をよじらせ、フェリシアスの手は空を切った。


「・・・」


にたぁ・・・。


「オレはQBクォーターバックだって言っただろう?ブリッツをしかけてくるラインバッカーを避けるのはお手のものさ」


--- ^_^ わっはっは! ---




「真紀、例のシャデルの3D試着サイトの件だけどさぁ・・・」


株式会社セレアムの事務所では、開発部の岡本が困ったように真紀の机に向かっていた。


「苦戦してるようね・・・?」

「面目ない・・・」


がっくり・・・。

岡本は肩を落とした。


「しょうがないわよぉ。こんなのコンペチタに先駆けて初めてするんだし、やってくるといろんなことが出てくるものよ」

真紀は岡本を慰めた。


「で、シャデルに納期交渉しろってこと?」

「面目ない・・・」


岡本はさらにしょげた。


「仕方ないわよ。あなたはイザベルの教育もあるし」

「それは計算済みだったの。ただね、こうまでデータが揃わないと検証すらできないのよ」


「データがないとはどういうこと?」

岡本の言葉に真紀はすぐに聞き返した。


「だから、シャデルの新作よぉ。ファッション業界は最低でも半年先のモデルを発表するんだけど、こっちには一つも落ちてこないのよね。企業秘密とかしら・・・」

岡本は具体的に説明し始めた。


「そりゃあ、最新モードを事前に見せてくれることはありえないわ。デザイナーたちが魚の目鷹の目でアンテナ張ってるわけだから・・・。でも、それって、最新作を発表後でも十分じゃないの?」

真紀はこれが岡本たち開発部の責任ではないことがわかってきた。


「それだと、逆にモードが半年遅れになっちゃうと思う・・・」

岡本は納期にはとても敏感な性格で、今まで滅多なことで納期を遅らせたことはなかった。


「でも、それはシャデル側にも責任があるんじゃないの?最新作のデータがただの2D写真じゃ、3Dデータが取れないのは当然じゃない」

真紀は納期のネックがシャデル側にあることを見抜いた。


「発表会の後でもモデルたちを3Dスキャナでスキャンさせてくれないの?」


「それが、モデルたちは複数の洋服を次々に着替えちゃうから、着たと思ったらすぐにステージでしょ。それで戻ってきたら、もう次の洋服に着替えちゃうのよ・・・」

岡本は両手を広げた。


「そういうことね・・・。シャデル側としても時間が取れないってことか・・・」

真紀は腕を組んだ。


「ちょっと交渉がタフになりそうね・・・」

しかも、ショーで使用する洋服はそれを着るモデルにぴったり合わせている。


「ショー前のマネキンに着けている時はどうなの?あるいは、ショー後にするとか・・・」

真紀は代替案を考えようとした。


「とにかく時間がないの・・・。一つの洋服の3Dスキャンは数分で済むんだけど、それすらもらえそうにないのよ・・・」


「モデルたちにもう一度着てもらうってのは?」

「シャデルがモデルたちにさらにボーナスを弾むことはしないと思うのよ」

岡本は首を横に振った。


「彼女たちの契約外の仕事になるってわけね・・・?」


「ええ。スーパーモデルに何着も着せ替えてスキャンさせるわけだから、十数人を場合によったら2日間は借りることになると思うの。いったい、それにシャデル日本がいくら支払うことになるか、想像するだけで寒気がするわ。ワールドワイド級のスーパーモデルよ。そんな話は聞いてないぞってことになりかねない・・・」


がっくり・・・。

岡本は弱りきった顔になった。


「シャデルのグローバル本社は出してくれないの?」

「この件はシャデル日本の企画だからねぇ・・・。無理だと思う・・・」


「とにかく3Dデータさえあれば予定どおりのシステム検証はできるのね?」

「そうなんだけど・・・、洋服が写真だけじゃ、身体につけてないから、3Dになった時どう展開していくのかわからないのよ」


すり・・・。

岡本は頼み込むように少し真紀に近づいた。


「つまり、3Dデータ展開するためにはモデルが必要ってことでしょ?」

「ぶっちゃけた話、そういうこと」


ちらり・・・。

そして、岡本はユティスたちを見やった。


「それを快く承諾モデルがすぐにいるわけないしなぁ・・」

ちらちら・・・。


「彼女たち、うちの仕事があるし、第一着せ替え人形じゃないわよぉ」

真紀は反論した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「わかってるわよぉ。でも、必要なの。一度シャデルのプロモーションビデオ撮ったことあるじゃない。彼女たちなら大丈夫だって。背丈だって十分だし・・・」


「でも、ショーのモデルたちはきっと彼女たちよりスリムよ。洋服が合わないってことは十分考えられるわよ。それに、あそこでユティスは拉致されたんだし・・・」

真紀はエルフィア娘たちをまたシャデルに行かせることに不安を感じた。


「シャデルだって、こっちでモデルを出せば、衣装を貸すくらいは無償でOKしてくれると思うんだけど・・・?ねぇ、真紀・・・、3Dデータを取らせてよぉ。ね・・・?」


すりすり・・・。

岡本は両手を胸の前で合わせ祈る格好をした。


「・・・」

「真紀・・・」


「・・・」

岡本の目が真紀をじっと見つめた。


「いいわ。シャデルに交渉してみる」

「うわっは!さすが真紀!」


がばっ!

岡本は飛び上がらんばかりに喜んだ。


「で、いつからすればいいの?」

「今日の午後からでも。いつでもスタンバイOKよ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「今日の午後?」

「ええ。アンニフィルドたちは乗り気十分よぉ!」


ぽん!

岡本は手を打った。


「アンニフィルドって・・・、あなた3人に話してたの?」

「ええ。根回ししちゃいけなかったかしら・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それなら、そうと最初からいいなさい。時間が無駄になっちゃったわ」

「ごめん・・・」


(やったあ!)


--- ^_^ わっはっは! ---

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