362 進展
「はぁい、アンニフィルドです。エルフィアでは和人がエルドの養子になるんでその準備とかあるけど、ユティスの転送中の安全確保にやっきになってるところね。地球じゃ、お花見会が終わって、セレアムのみんなは通常のお仕事に戻ったわ。わたしの心配をよそに、ユティスと和人も一緒にお客さま回りだし、二宮も・・・、あーーー、彼は一人でお客さま回りね。イザベルはマーケ部門じゃないもんね。可哀想な二宮・・・。あは!
■通常■
さて、お花見会兼イザベル歓迎会も終わり、株式会社セレアムは元のビジネス活動に戻っていた。
「では、行ってまいります」
和人は客先にユティスと出かけていった。
「あなたたち二人は一緒に出かけないの?」
いつも、SSの二人がユティスと和人を守るようにくっついて行動するのにセレアムの社員たちは慣れっこになっていたので、岡本が怪訝そうにアンニフィルドとクリステアに目をやった。
「行くわよ」
「リーエス。すっ飛んで」
「あ、なるほど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
SSたちはある程度の距離の時空を操れ、地球上空32000キロにステルス待機しているエストロ5級母船のパワーを利用して、数キロの距離を簡単にジャンプできた。
「それでさぁ、クリステア、わたしたちも出かけない?えへ・・・」
セレアムの事務所からほど近い駅にあるカフェがスターベックスで、アンニフィルドは挽きたてのブルーマウンテン・コーヒーに目がなかった。
「なぁに、また休憩?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうじゃないわよぉ。ユティスと和人のこと、相談なんだけど・・・」
アンニフィルドは声を低くした。
「あの二人どうかしたの?」
ぐぃ・・・。
クリステアは少し身を乗り出した。
「ぜんぜん進展していないと思わない?」
「なにが?」
「あれよ、あれ・・・」
「あれねぇ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。あれよぉ・・・。だから、相談なんだけど?」
「いいわよ。スターベックスね?」
間髪入れずにクリステアが答えた。
「リーエス。さすがクリステア。察しがいいわ」
「だって、右手でカップ持つ仕草してるじゃない、あなた・・・?」
「あら、そう?あはは・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ささっ。
アンニフィルドは直ぐに右手を下げた。
「あ、真紀さん、わたしたち、ちょっと外で打ち合わせしたいんで」
そして、アンニフィルドは真紀を振り向くとクリステアとの外出を告げた。
「どうぞ。ユティスたちも出かけちゃってるから、ちゃんとウォッチしててよぉ」
「リーエス。了解。了解」
アンニフィルドは真紀に手を振った。
「やれやれ。なにごとも起きなければいいんだが・・・」
そんなSSたちの後姿を見送った後、しばらく経って俊介が真紀の側でぼそりと言った。
「なにか心配ごとでもあるの?」
真紀が俊介を見た。
「ああ・・・」
そう言うと俊介は一段と声を低くした。
「なによぉ・・・?」
「アンニフィルドの話では、近々、例の和人のエルドの養子申請やらなんやらでエルフィア帰還が実行に移されるらしんだ。だが、その際、超銀河間転送システムを利用する。で、その転送アルゴリズムとかOSとか、とにかく、システムに介入してユティス拉致を企む輩がいるらしい・・・」
俊介は姉を見つめた。
「なんですって・・・。Z国やブレストはまだ諦めてないって言うのね?」
真紀と俊介は何ヶ月も前、寸でのところでブレスト一味のユティスの拉致を防いでいた。加えて、Z国大使館でのブレストたちのユティス拉致も政府を巻き込んでの大捕物になっていた。
「いや。そんな生易しいものではないらしい。今度、ユティスをさらうとしたら、その超銀河間転送中に横取りする計画らしい」
「だれが?」
真紀は信じられないという顔で俊介を見つめた。
「ちょっと姉貴、続きはシステム室でしよう・・・」
俊介は社員たちに聞こえないように言うと先にシステム室に消えていった。
すたすた・・・。
「しょうがないわねぇ・・・」
そして、真紀がその後をった。
すすす・・・。
「さぁ、今日は近場のH社。ここだよ、ユティス」
「リーエス、和人チーフさん」
にこ。
「よしてくれよ、そのチーフさんってのは・・・。あは」
和人はそれでも悪い気はしていなかった。
ぴんぽーーーん。
和人が入り口でフォーンのボタンを押した。
「ステキですよ、和人さんのスーツ姿・・・」
じぃ・・・。
うっとり・・・。
ユティスは和人を尊敬の眼差しで見つめた。
「こ、困るよ、お昼前からそんな目で見つめられちゃ・・・」
「うふふ。夕方ならいいでしょうか?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「はい、どちらさまでしょうか?」
フォーンから受付係りの声がした。
「あ、うん!」
和人は咳払いした。
「株式会社セレアムの宇都宮と申します。御社のシステムの件で、システム長の桐生様とお打ち合わせでまいりました」
「あ、はい。宇都宮様ですね。確かに承っております。ご案内いたしますので、少々お待ちくださいませ」
「リーエス(はい)。アルダリーム・ジェ・デール(ありがとうございます)」
「はぁ・・・?」
(いけない。エルフィア語になっちゃってる・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、いえ。どうも、ありがとうございます」
和人は即座に言い直した。
「はい」
フォーンが切れ、和人は受話器を置いた。
「危ない。危ない・・・」
「和人さん、とっても面白いですわ。うふふ」
ユティスは地球のビジネススーツに身を固め、和人に優しく微笑んだ。
「きみもだよ、ユティス。それに・・・」
和人は衣替えしたユティスの夏用のスーツに見とれた。
「いやぁ・・・。やっぱりきみはすっごく可愛いくて、とってもキレイだよ・・・」
「え・・・?嬉しい・・・」
和人が本心でそう言うと、ユティスは頬を赤く染めて和人に寄り添いそうになった。
ふらり・・・。
「和人さん・・・」
「ユティス・・・」
しゅん。
「お待たせしました、宇都宮様」
ドアが開くと受付係りが二人の前に現れた
ささっ!
「あ、はい!」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぺこり。
「・・・?」
受付係りは不思議そうな顔になった。
「宇都宮様、どうぞこちらへ」
「はい!」
株式会社セレアムのシステム室では、社長の真紀と常務の俊介が続きをそっと話していた。
「ユティスをさらうって言っても、誰がよぉ・・・?」
「特定できていないから問題なんだ。だが、Zの御仁ではない。エルフィア人そのものらしい・・・」
「エルフィア人自身・・・?そんな馬鹿なぁ・・・!」
真紀は驚きに声を失った。
「いや、ユティスはエルフィア人ですら羨む可愛い娘ちゃんだ。器量よし、家事もできるし、歌もうまい。そして仕事もできる。素晴らしくできる・・・。うん・・・」
「結局、あなたはユティスを社員としか見てないの?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「聞けよ。まだある。アンニフィルドたちは、トルフォがユティスを諦めることなど絶対にないと言い切っているんだ」
俊介は真紀を見据えた。
「でも、トルフォは超銀間の視察旅行中なんでしょ?どうやってユティスの行動を逐一把握できるというのよ?」
「それだ。エルフィアのエージェント派遣世界には必ずエストロ5級母船が支援のために上空待機している。その超銀河間ネットワークは瞬時にエルフィア本星にも伝えられる・・・」
俊介は双子の姉の反応を待った。
「ということは・・・、アンデフロル・デュメーラも含まれているってことよね・・・?」
「そうだ・・・」
「じゃあ、トルフォはどこにいようとユティスの状況を確認できてるってことぉ・・・?」
「可能性は高い。今、この瞬間にでもユティスの行動は見張られているかもしれん」
俊介はこのの重大さを姉が理解したのを確認して話を続けることにした。
「そして、エルフィアへの転送日程を入手し、転送中にユティスをかっさらう。そういう計画だそうだ・・・」
「じゃ、なんで、アンニフィルドたちは未だになにもしないのよ?」
「してるさ。だから、打ち合わせに行ったんじゃないか」
「そうかしら?」
--- ^_^ わっはっは! ---
で、アンニフィルドとクリステの打ち合わせは、国分寺姉弟の予測を見事に外して、カフェで行われていた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「んーーー!やっぱり、ブルマンよねぇ・・・」
くんくん・・・。
アンニフィルドは出されたブルーマウンテンの香りを楽しむべくカップを鼻の近くに持っていった。
「で、あれのことは?」
クリステアはアンニフィルドが呼び出した用件を片付けようと彼女を突っついた。
「そうなのよぉ。和人ったら、可哀想だと思わない?」
「ユティスじゃなくて?」
クリステアはアンニフィルドに問いただした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス」
「和人の方って・・・?」
「そうよ。お花見会の後、わたしもユティスと和人が自然に一緒になれるよう何回か画策したんだけど、和人もさることながら、ユティスもねぇ・・・」
アンニフィルドは和人よりもユティスにその原因があると言いたげだった。
「ユティスもわかってないのね?」
「リーエス。カテゴリー2の男性が同棲している恋人に対していかに我慢してるかってことわかってないのよ」
「それって身体にとっても毒じゃない?」
「リーエス。コブラ並みに猛毒なの・・・」
「じゃ、もう体中に回ってるわね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それで、あの二人に何度試しても、一緒に布団に包まって眠るのが関の山なの。もっとも眠れてるのはユティスだけだけどね・・・」
「はぁ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それじゃ、和人は・・・?」
クリステアは一応確かめることにした。
「夜中、目がらんらん・・・。腫れ物を触るようにユティス手を繋いでるだけなのよ」
「本当に?」
クリステアはやれやれというように自分のカップを一口すすった。
「本当よ。だから、『3回目以降は絶対に嫌だ!』って、わたしに言うのよ。わたしに!」
「だれに言えばいいっていうの?あなたがけしかけたことでしょ?」
クリステアは当然だと言わんばかりの顔になった。
「だからよぉ。あなたの知恵を借りたいの・・・」
ぎゅ。
アンニフィルドはブルマンのカップをテーブルに置くと、両手でクリステアの両手を握りクリステアを見つめた。
「・・・」
じぃ・・・。
「・・・」
ぎゅ。
アンニフィルドの手にさらに力が込められ、おもむろにクリステアが口を開いた。
「あのね、アンニフィルド。こういうのって周りがとっても誤解すると思うんだけど・・・」
「え?」
ささっ。
ぷいっ。
彼女たちの周りの客たちは一斉に知らん顔をした。
--- ^_^ わっはっは! ---
一方、株式会社セレアムのシステム室では話が深刻になりつつあった。
「いいかい、姉貴。超銀河間転送中にユティスが拉致されてみろ、何十億光年だぞ・・・。どこに連れ去られたかなんて、探し出せる可能性はゼロ以下だ」
俊介は唇をかみ締めた。
「そんなぁ・・・。ユティスたちは自覚してると言うの?」
「もちろん、そうだ。エルフィア中が血眼で計画阻止すべく奔走している。オレたちも協力できることはしたいが、アンニフィルドは大丈夫としか言わん」
俊介は目を閉じた。
「やっぱり、信用されてないか・・・」
真紀が言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「馬鹿言うなよ。オレたちじゃどうしようもならんからだ。こっちでできることはなにもない」
「あるわよ」
にた。
真紀は意味ありげに俊介に微笑んだ。
「その超銀河間転送システムは使わない。アンデフロル・デュメーラで帰還すればいいわ。そうすればいいのよ」
真紀はそれですべてが解決したかのように言った。
「それじゃだめだ。さっきも言ったが、エストロ5級母船にはそれと同じアルゴリズムの超銀河間転送システムが使われている。同じことなんだよ」
俊介は左手を顎にやった。
「違うわよ。わたしが言いたいのは、宇宙機そのものでジャンプするってことよ。大叔母様の宇宙機のように」
真紀は俊介に自分の考えを伝えた。
「姉貴・・・、それで、いったいどれくらいかかると思う?5400万光年先だぞ。エメリア大叔母さんの宇宙機は、エルフィアの支援でセレアムから地球まで1週間の旅程に短縮できたが、それはアルゴリズムが異なるからだ。エルフィアの宇宙機は超銀河間転送システムと同じアルゴリズムで動いている。そのままジャンプしても同じことだ。アルゴリズムの基本をすべて変更するとなると、最低でも数年やそこらはかかるぞ」
「ユティスの予備調査期間を完全にオーバーね・・・」
真紀は困ったように言った。
「だからさ。オレはエルドにユティスの地球永久滞在を要求するつもりだ」
「あなた、本気?」
「ああ。その手続きとやら、政府並みだと困るんだが・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わかった・・・」
にや・・・。
真紀は俊介を見てからかうように笑った。
「アンニフィルドがエルフィア戻るのが嫌なんでしょう?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「アンニフィルド?なんで、彼女がそこで出てくるんだよう?」
「だって、ユティスたちのSSよ。ユティスと和人がエルフィアに帰還するとなれば、一緒に帰るに決まってるでしょ。そうしたら、あなたは置いてけぼり間違いなし」
「決め付けるなよ」
(彼女、オレにべた惚れなんだぜ・・・。でも、ありえるかな、泡沫の恋・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
「やぁ、宇都宮さん、ユティスさん、ようこそ」
H社で二人を出迎えた桐生部長は満面の笑顔だった。
(きみが一緒に来たからだよ、ユティス)
(まぁ!和人さんのお仕事が立派だからですわ)
「それじゃ、早速ですが・・・」
「あ、待ってよ。宇都宮さん、その前に、彼女紹介してくれない?」
その時、システム部長の桐生が慌てて和人を制した。
「ええ?彼女を桐生様にご紹介しませんでしたっけぇ・・・?」
「まだだよぉ・・・」
にこ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
(ユティス、桐生部長は確か2回目だよね?)
(リーエス。でも、この前は和人さんのお供でちらっとお会いしただけです。名刺交換はまだしてませんわ)
(そ、そうだったっけ・・・?)
(リーエス)
「じゃ、そういうことで。ぼくはシステム部長をやってる桐生です」
さっ。
ぺこ。
そう言うと桐生は自分の名刺をユティスに差し出した。
「それはどうも。わたくし、株式会社セレアムのユティスと申します」
さっ。
ぺこ。
桐生とユティスは互いの名刺を差し出すと、一礼し合ってうやうやしく名刺を受け取った。
「ユティスさんかぁ・・・」
にこにこ。
桐生はユティスの名刺をテーブルに丁寧に置くと、もう仕事の話はとうの昔に忘れたような顔になった。
「いいなぁ、宇都宮さん、素敵な新人さんを付けてもらえて」
「いやぁ、一応、教育係だったもんで、そのまま所属も同じく・・・」
「そっかぁ、そっかぁ。いいねぇ。ユティスさん、よろしくね」
にこにこ・・・。
「はい。桐生さま」
にこっ。
どっきん!
ユティスのくったくのない笑顔に桐生はすっかり当てられた。
「あ・・・」
「はい」
にこ。
ユティスは桐生を微笑みながら見つめた。
「あのぉ・・・、それで、なんだったっけぇ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「今日のお仕事ですわ、桐生さま」
「そ、そうだったね。セレアムさんの追加作業の打ち合わせなんだけど、営業のお二人も参加してくれんだよねぇ・・・?」
「はい。もちろんです」
和人がユティスに目配せすると桐生に答えた。
「うほ。やっぱり、そうだよね」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なにか問題ありますでしょうか?」
ユティスが笑顔で桐生の顔をうかがった。
にこ。
「そうだね。作業期間を伸ばして、打ち合わせ回数も増やしていただいても・・・」
桐生はユティスを見つめ楽しそうに言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドはクリステアの手を離すと真面目な顔に戻った。
「とにかく、問題はユティスよ。ユティスにあるの」
「はい、はい・・・。で、わたしにどうしろって?」
すぅ・・・。
クリステアはこういう他人の色恋沙汰に関わり合うのは火傷の元だと考えていた。
「なにか、いいアイデアないかしら?自然に和人とユティスが真の恋人になれる方法って・・・?」
「自然じゃダメなんでしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。それじゃダメだから、わたしが・・・」
「で?真の恋人って、なに、それ?」
にたぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから、ちゃんと二人が身も心も一つに・・・」
「理想ね、それ」
「理想?」
アンニフィルドはクリステアの意外な反論に出合って困惑気味だった。
「リーエス。いいじゃない。身も二つ、心も二つ。家計も二つ。ベッドも二つ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから、それを和人が本当に望んでいると思う?」
クリステアが懐疑的に言った。
「リーエス、もちろんよぉ」
アンニフィルドは自信を持って答えた。
「本人に聞いたの?」
クリステアはまたかという顔になった。
「リーエス。和人の思考波だだ漏れだもの。あは」
にこ。
「ふうん・・・。盗み聞きね・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あは。いいじゃない、そんなこと。わたしはあの二人を放っとけないのよぉ・・・」
ぎゅっ。
アンニフィルドは再びクリステアの手を両手で握った。
「だから、それ、止めてくれない・・・?」
「あ、そうだった。あは・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「いいかしら、アンニフィルド?」
「リーエス?」
クリステアは自分の意見をまとめた。
「和人たちがわたしたちに相談してきたのなら、わたしも考えるわ。でも、今はそんな兆候はまったくなし。周りが変に気を回すとろくなことないわよ。以上、おしまい」
そう言うと、クリステアは自分のカップに関心を戻した。
かたっ。
「冷めちゃうわよ、アンニフィルド」
「あ・・・。リーエス・・・」
ず・・・。
アンニフィルドは不服そうに自分のブルマンに口を付けた。
(絶対にそうに決まってるわぁ・・・)
株式会社セレアムでは新人は自分の教育係を選ぶ権利が保証されていた。
「じゃ、イザベル、今さら表計算とか文書作成とかプレゼンのツールの教育はいいわよね?」
教育係のエンジニア部門のマネージャーの岡本がイザベルに言った。
「はい。もう、アルバイトの時にだいたい習得しましたから」
「わかったわ。今日からはエンジニア部門のWeb作成に入るけど、いい?」
「はい。お願いします」
イザベルは岡本に微笑んだ。
「最初はHTMLから確認していくわ。今までどこまで知っているかな?正直に言ってけっこうよ。背伸びしてもらっても実作業でつまづくだけだから」
岡本は優しくイザベルに説明した。
「はい。XHTMLまではなんとかわかるんですけど、HTML5は、まだよくわかりません」
イザベルは正直に自分のスキルを言った。
「それなら、CSS3もまだぁ?」
「かじった程度です」
イザベルが答えると岡本は頷いた。
「よし、わかった。あなたは当面HTML5とCSS3の習得が急務ね。でも、そんなに心配ないから。基本的な考え方は一緒だし、書き方のルールをちょこっと覚えるだけよ」
岡本はイザベルに微笑むと二宮の視線を感じて振り返った。
ちら・・・。
「仕事中はよそ見しないでね?」
「はい」
「特に、マーケの付近・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
事務所のマーケティング部門では、二宮祐樹だけが残って書類を整理していた。
「ちぇ・・・。イザベルちゃんの入社を決めたのはオレっすよぉ・・・。なんで、教育係が岡本さんなんすかぁ・・・?」
マーケティング部門の主任、二宮祐樹は喜連川イザベルとはついこの前公認の仲になったばかりだったが、イザベルはマーケティング部門の配属ではなくエンジニア部門を希望していた。
「本当なら、オレがイザベルちゃんの教育を手に手を取り合って、朝昼晩と・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
イザベルとは彼女がコンビニのアルバイトや同じ空手道場の稽古などで随分前からいろいろあった。
「あーーーあ、配属部門もマーケじゃないし・・・。でも・・・」
にたにた・・・。
二宮はイザベルをついに落としたのだった。
「ま、いいかぁ。毎日がデートみたいなもんだし。えへ・・・」
にたぁ・・・。
「さてと、オレも客回りに出かけるか。今日はイザベルちゃんと一緒に道場に行こうっと」
がばっ。
二宮は身を起こすとバッグに必要書類を入れた。
さくっ・・・。
「えーと、見積は入れたと。パンフもよしと・・・。行くぞ。よし」
そして、二宮はイザベルの方を見た。
「イザベルちゃん、行ってきまぁーーーす!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「行って・・・」
と、声を出しかけて、事務所の社員たちは口をつぐんだ。
「あ、はい・・。行ってらっしゃい・・・」
そして、イザベルが社員たちの注目を一身に集め、彼女だけが小声で二宮に応えた。
「もう、特定特数に言わないでよ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
通常、セレアムでは出かけていく者には「いってらっしゃい」と、戻ってきたものには「お帰りなさい」と声を掛けることになっていたが、この頃は社員たちは調子が狂っていた。
そして、システム室では国分寺姉弟が、ユティスたちのエルフィア帰還について心配していた。
「俊介、それでアンニフィルドはあなたにどうしろってなにか言ったわけ?」
「そうだな。それは特に・・・。ただ、オレは彼女が本当はものすごく心配しているとわかるんだ・・・」
「あなたがホントに恋人かどうかをでしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なに言ってるんだ、姉貴」
「いいから。先を続けなさい。わたしたちでどうこうできるものじゃないでしょ?」
真紀は先ほどの驚きから我に返り冷静に言った。
「みんな知ってるように、エルドはユティスと和人のために、和人を養子にすることに決めた。そうすれば、和人はエルフィア人となりその権利を得ることになる」
「ええ。細胞寿命の延長処理でしょ?」
「ああ。だから、エルドは和人を早急にエルフィアに呼びたいんだ。そして、和人を養子にすることをエルフィア中に認めさせる」
俊介はそれがいつになるかが問題と思っていた。
「で、アンニフィルドは後数ヶ月以内には転送が実行されると言っているんだ」
「数ヶ月と言えば、夏の終わりから秋にかけてね・・・?」
真紀はユティス拉致計画がなければ準備期間には十分だと考えた。
「うむ。ビールの美味い季節だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あなたねぇ・・・」
「もとい。女の子が薄着になり、男に取っては眼が放せん季節だ」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぴきっ・・・。
「少しは真面目になりなさい、俊介・・・」
「うむ。それでだ。アンニフィルドから提案をもらった」
俊介は姉を見つめた。
「提案?」
「ああ。エルドにオレをSSに推薦したそうだ。今のままじゃ、不十分なんで能力アップの依頼だな」
ぽかぁん・・・。
真紀はびっくりして口を大きく開けた。
「SSって・・・、まさか、俊介、あなた・・・」
「いや、オレがエルフィアに行くわけじゃない。SS用のプログラムをアンデフロル・デュメーラで受けることになったんだ。その後は、アンニフィルドたちと同じような能力を授かることになる。小規模にな」
「小規模?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ああ。人の考えていることがわかったり、ものを動かしたり、消えてどこかに移動したり・・・。ちょこっとな・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「俊介、あなったって人は・・・!」
「なんだよ、怖い顔して・・・?」
俊介は訳がわからず姉を見つめた。
(つまり、女の子の考えを盗み聞きして、スカートをめくって、消えて着替えを覗きに行くってことね・・・?)
--- ^_^ わっはっは! ---
きょとん・・・。
「なんだよぉ?」
「却下!」
ばしっ!
「ええ?なんで?」
「どうしても!許さないわよ!」
--- ^_^ わっはっは! ---




