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034 姉弟

■姉弟■




ブッブーッ。

軽いクラクションが聞こえて和人はアパートを出た。


「遅くなって、ごめん」

ばたん。

真紀がワゴンの助手席から降りてきた。


「いえ、たかだか5分くらいです」


「それより、あなたなにが食べたい?」

「なにって、なんでもかまいませんが」


「じゃ、シーフードはどう?」

「それで、けっこうです」


「よぉし!乗って」

「はい」


ばたむ。


「よぉ」

運転席には俊介がいた。


「どうも、常務。ご馳走になります」

「おう。しかし、毎日は勘弁してくれ」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人の隣にはユティスが座っていた。


(お二人には、わたくしはお見えになってないようですが・・・)

(とぼけてるのかも。よく、それでびっくりさせられるんだから・・・)


(うふふ。それは面白そうですわ)

(そうだね。きみはけっこう悪戯好きだって知ってるよ)


(リーエス。うふふ)

(あはは)


俊介は、ルームミラーに映ったにやけ顔の和人を、ちらちら見ていた。


「姉貴。和人は、なんだってあんなにニタニタしてるか、知ってるのか?」

「なんのこと?」


「後ろ見なよ」

「はぁ?」


和人は確かに薄笑いを浮かべて、自分の右席を見つめているようだった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「なに、独りでうなずいているのかしら?」

「だろ?」


「まるで、隣にだれかいるような感じだけど」

「二宮曰く、女の幽霊・・・」


ぞくっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「止めてよ、俊介」

真紀は身を震わせた。


「はっはは。幽霊を信じてるのか?」

「信じてなんかないわよ。ただ、気持ち悪いでしょ、そんなの」


「やっぱり、信じてるんじゃないか」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違うったら。さっさと、やんなさい」

「はいよ」


ぶろろろ・・・。




和人たちはレストランに着いた。


(ユティス、もし、そういうことになったら、すぐに現れてくれる?)

(リーエス。お二人の頭脳波がつかめればって条件ですけれど)


(それで十分だよ)


ごっくん・・・。


「ぷふぁあ・・・」

俊介は和人を真っ直ぐみながら、ジョッキを傾けた。


「和人、メモリー内のファイル、見たか?」

「はい・・・」


「おまえの日記はともかく、あの翻訳文、単なる文字化けなんかじゃないことはオレにもわかる。明らかに地球人の文字じゃないな。何語か知ってるな?」

俊介は面白そうに笑った。


「あなたはわかってるんでしょう?」

にこっ。

真紀が和人に微笑んだ。


「その、なんと言っていいか・・・」


がたっ。


「それでだ・・・」

俊介がビールジョッキを置いて言った。


「あれのおかげで、おまえにコンタクトした人間がいるだろう?」


「コンタクトですか?」

「ええ、そうよ。特別に会った人間。例えばすてきな女性・・・」


(やはり、この二人、きみのことを感づいているよ、ユティス)

(リーエス)


「・・・」

和人は黙っていた。


「いい、いい。別におまえを問い詰めて、どうこうしようって気はない。オレたちはもう同じ立場だって、そろそろ認め合ってもいいかなぁ、と思っていたんだ」


「同じ立場ですか・・・?」

「ええ。あなたも、わたしたちも・・・」


「どういうことですか・・・?」


にた・・・。

俊介は面白そうに笑みを浮かべた。


「まぁ、食事しながらといこう。マジになったところで事実が変わるわけじゃないし、だったら楽しくやろうじゃないか」

「そうね」


「じゃ、あらためて、乾杯」

「乾杯」


ちーん。


和人は右手を上げた。

「はい、ご用を承ります」


すぐにボーイが飛んできた。


「すいません。ビール、ジョッキおかわり」

「オレも」

「わたしは、トスカーナ、白」


「かしこまりました」




「あの翻訳は、極めて正しい地球外言語だ・・・、としたら?」


--- ^_^ わっはっは! ---


(ふふ。常務さん、なんて表現でしょう)

(おかしいかい?)


(リーエス。ご存じない言葉を極めて正しいだなんて、どうすればわかるんですの?うふふふ)


--- ^_^ わっはっは! ---


(あはは。確かにね)


「あ、常務、どうして、そう思うんですか?」

「なぁに、ハイパートランスポンダーなんて代物を利用できる人間は、地球人じゃないってことさ」


(お持ちになってる方もですわ)


--- ^_^ わっはっは! ---


「はは。なにを言い出すんですか、常務?」


俊介はにやりと笑った。


「和人、おまえに教えてやろう。セレアムってのはな、オレたちのじいさんの故郷の名前なんだ。こっからずぅっと遠くのな」


(セレアムというところが、この方たちの故郷なんでしょうか?)

(故郷?)


(リーエス。まずはお聞きしてみましょう)

(リーエス)


「会社の名前はそっから取ったの」

真紀が付け加えた。


「そうですか・・・。それが、なにか・・・」

「でだ。それがどのくらい日本から遠いかが問題なんだな」


「ヨーロッパですか?」

「もうちっと遠いな。光の早さでもっても・・・」


「何年もかかるって・・・、言うんじゃないでしょうね・・・」

和人はかまをかけた。


「それも違うな。まだまだ近すぎる。ン千万年ってとこだ。とても、盆正月に帰れる距離じゃない」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人は頭が混乱してきた。


(和人さん、セレアムは天の川銀河にはないということです)

(リーエス。オレにもよくわかるよ)


「それ・・・、ひょっとして・・・、その・・・」

和人はユティスの助けもあって、突然理解した。


(社長と常務は、地球人じゃない。そういうことなんだよね・・・?)

(リーエス。少なくとも、お二方のご祖父にあたる方はそうだと思います)


「スターチャイルドよ。わたしたち・・・」

その時、真紀がゆっくりと告白し、微笑んだ。


(ほら、当たりですわ)


「う、うそだ・・・。そんな、ばかな・・・」

和人は信じられないという顔をした。


「あなただけ特別ってわけじゃないわ」


ふっ。

真紀は和人の目の前で右手を一振りした。その途端、和人の頭に映像が浮かんでできた。


(和人さん、それは・・・)


(きみにも見えたの?)

(リーエス)


「こ、これ・・・」

「わたし・・・、セレアムの正装よ・・・」


「オレは、こういうの・・・」

俊介の正装イメージも和人に伝わった。


「あのな、じいさんはセレアム人で、地球で遭難して、日本人女性と結婚した。生まれた娘も成人して日本人男性と結婚した」


「そこで生まれたのが、わたしたち双子の姉弟ってわけ・・・。わかった?」

「だから、オレたちはクォーターのセレアム人」


俊介はにんまりするとビールを傾けた。

ぷふぁ!


「ビールは宇宙に誇れる地球の特産品だなぁ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談はさておき、イメージの頭脳投影はセレアムの能力の遺伝ね」

「あ・・・」


和人は驚きのあまり声を失った。


(和人さん、お二人のおっしゃっていることはすべて真実ですよ)

(リーエス。でなきゃ、きみとのことも説明できない・・・)


こくん・・・。

和人はゆっくりと頷いた。


「どうやら信じてくれたようね・・・」

真紀はにっこりした。


「じいさんの使命は、文明促進支援のための惑星探査。地球の通信電波を偶然探知し、ここに知的生命体がいることを確認しに来たんだ」


「けれど、事故でおじいさま以外はみんな死んだの。おじいさまも重症を負ったんだけど、日本人女性が助けてあげた。それが、わたしたちのおばあさま・・・」


(まぁ、なんということ・・・)

(超高文明でも事故は起きるんだね?)


(可能性はゼロにはできませんわ)

(どんな事故だったんだろう?)


(いずれお話を聞く機会があるはずですわ)

(そうだね、こっちから深く聞くのは失礼になるよね)


(リーエス。和人さんはお優しいんですね)


にっこり・・・。


(か、可愛い・・・)


どきどき・・・。

ユティスの優しい視線に和人はたじたじになった。


(い、いやぁ・・・)


「会社のシステム室には、じいさんの宇宙機から持ってきたハイパートランスポンダーがある」

「例のマシンですね。仕組みも機能もちっともわかりませんが・・・」


「超銀河間通信機と言えば、わかるか?」


(和人さん、カテゴリー3以上の文明でなければ、それを作り出すことはできませんわ)

(わかるよ)


「ええ。でも、本当にそんなことができるんですか?」


「一応な。それで、じいさんも、もう一度なんとかセレアムとやり取りしようとしたんだ。が、どういうわけか、さっぱり作動しなかった。というか、ぜんぜんセレアムから応答がなかったんだ。それで、じいさんは救助を呼ぶこともできず、ここに留まざるをえなくなったというわけだ」


(おかしなことも、あるんですね?)

(どうして?)


(超時空通信機は、そう、めったなことでは壊れません。ましてや、なにも損傷のないマシンが、どうして・・・)


(なにか、あるのかなぁ?)

(時空の関係でしょうか・・・。わたくしではわかりかねます)


「わたしたちは、おじいさまの意思を受け継いで、地球の文明促進を支援することにしたの。いつかセレアムと連絡が取れる日を信じて・・・」


(辛い決心だったんだろうね・・・)

(リーエス・・・)


「で、本題はこれからだ」

俊介は和人に言った。


「セレアムとて、自分の力だけでここまで文明を高められたわけじゃない。もう、かれこれ1万年以上も前にセレアムの文明促進を支援した世界があったんだ」


「セレアムの文明促進支援をした世界・・・、ですか?」

「そうよ・・・」


「どこか、知ってるんだろ、和人・・・?」


(まさか・・・)

「どこなんでしょうか・・・?」


「エルフィア。それがその名だ・・・」


(まぁ・・・!エルフィアですって?)


ユティスは大きなアメジスト色の目を更にいっぱいに広げ、和人と見つめ合った。


「エ、エルフィア・・・!」

和人は完全に気が動転していた。


「図星ね・・・」

真紀は俊介に目配せした。


「おまえ、エルフィア人とコンタクトしているな・・・?」


(ユティス・・・)

(リーエス。ご存知なんですわ)


「ハイパートランスポンダーの通信ログに、おまえの超銀河間通信のログが残っていた。真紀が渡したUSBのファイルは、運よく解析できた内のその1つってわけだ・・・」


(そうだったのか・・・)


「あれはね、和人。何億光年単位での通信をも可能にする装置なの」

「何億光年・・・?」


「ええ。最大3億光年くらいかしら。いいこと。銀河を超えて遥か彼方の銀河。そことやりとりするためのものよ。セレアムだって、地球から5000万光年以上離れているの。恐らく、エルフィアも最低そのくらいは離れていると考えなきゃ・・・」


(それでは、天の川銀河の位置は、エルフィアから5000万光年以上離れているかもしれない、ということですね?)


天の川銀河の宇宙座標がわかるヒントかもしれない真紀の一言に、ユティスは喜んだ。


(これで、地球に訪れることが本当に実現できるかも知れませんわ)


「5000万光年以上だって・・・、信じられない・・・」

「けど、もう信じちゃってるわよね、和人・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「オレたちが同じ立場というのは、そういうことさ」


「遥かなる2つの世界が地球の文明促進支援を行おうとしている。そのために協力し合うことが必要だ。セレアムはエルフィアより先に地球に来たかもしれない。かといってエルフィアの支援を妨げるつもりは毛頭ない。いや、エルフィアが来たのなら、エルフィアに任そうとすら思っている。そして、その下で地球支援のサポートをする。それが、じいさんの意思だ」


「そして、わたしたち姉弟の・・・」

真紀は遠い目になった。


「和人、おまえにぜひ頼みたいことがある・・・」

「頼みたいことですか?」


「ええ。おじいさまはセレアムがどこにあるか見失ってしまったの。ハイパートランスポンダーもなぜか反応しない。エルフィアに伝えて、セレアムとの連絡を手助けして欲しいの。もう、何十年もセレアムと音信不通よ。彼は無事だと報告したいの・・・」


(リーエス。エルフィアはご協力を惜しみませんわ)

(そう言ってくれると思ってた)

(当然のことですもの・・・)


「ここからのだいたいの距離だけはわかってる。約5000~6000万光年の間だ。そこにセレアムのある銀河がある」

「でも、基点となる地球や天の川銀河がこの大宇宙のいったいどこにあるのか、その座標もわからない。片っ端から銀河をひとつひとつ調べないといけないわ」


「和人、もし、おまえがエルフィア人とコンタクトしているなら、ぜひ伝えて欲しい。オレたちはおまえを頼りにするしかない。決しておまえのことを変人なんかとは思っていない」


そこまで一気に話すと、真紀と俊介は和人の反応を確かめようとた。


「今現在でも、エルフィアとコンタクトしているのね・・・」


(ええ。リアルタイムで、コンタクト中ですよ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうだな・・・?」

「え・・・」


和人は、この姉弟にすべてを打ち明けるべきか、迷っていた。


(お答えください、和人さん。わたくしのことも。お二人は信用なさって大丈夫ですわ)

その時、ユティスが和人に囁いた。


(リーエス)


和人は答えた。


「は、・・・はい・・・」

和人は認めた。


「・・・」

「・・・」

「・・・」


しばらく3人の間に沈黙が支配した。


「ふうっ。やっぱりか。よく話してくれた、和人。おまえはオレたちの命の恩人だ・・・」

俊介が言った。


「命の恩人って、どうゆいうことですか?」

「まぁ、聞け・・・」


「そのエルフィア人は女性よね?」

「はい」


「名前は?」

「ユティスと名乗っています」


「なんだ、あのキーワード、やっぱりそういうことか」

「あ、はい・・・」


「ユティス・・・。柔らかな響きをしたきれいな名前・・・」


(うふ。ありがとうございます。真紀さん)


--- ^_^ わっはっは! ---


「知ってたんですか?」

「ええ・・・」


(和人さん、お二人にわたくしのミッションをお話いただいて結構ですわ)

(わかった)


「エルフィアは、そのユティスは地球をどう思ってるんだろう?」

和人とユティスの会話を聞いてるかのように、俊介が質問した。


「お二人ならご存知と思いますが、地球はカテゴリー2になったばかりで、精神的にはまだまだ未熟です。エルフィアの支援がなければ、道を誤り自滅するか他世界を破滅させるかもしれない、奪い合う文明・・・。あまり明るい未来じゃないと・・・」


「奪い合う文明か。なるほど・・・」

「それで、エルフィアがどうしたいと言ってるの?」


(お友達になれるはずの世界を、これ以上一つでも失いたくありません)


「友人となれるはずの地球が滅ぶのは忍びないと・・・」


「ありがたいことだな・・・」

「ええ・・・」


「それで、エルフィアによる地球支援のため、今まさに予備調査が始まろうとしているんです」


「その担当エージェントがユティスで、コンタクティーが和人。おまえか・・・」

「はい・・・」


「ありがとう。和人、よく話してくれたわ・・・」


じわぁーーー。

真紀の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「真紀さん・・・」

「ごめんなさい。みっともないとこ見られちゃった・・・」


「そんなことないです」


「やっと、光が見えてきたんだ。無理もないさ・・・」

俊介も涙こそ見せなかったが、大いに感動している様子だった。


「わたしたちに、ぜひ手伝わせてね。おじいさまも含めて・・・」

真紀は和人を潤んだ目でじっと見つめた。


「はい。ユティスに伝えます」


(リーエス。しかと、おうかがいいたしましたわ。心から感謝申しあげます)


「ありがとう」


「和人、だれがなんと言おうとエルフィアは実在するわ。ユティスも本当にいるのよ」

「ええ、オレもそう思います」


(わたくし本人が、保証いたしますわ。真紀さん、俊介さん!)


--- ^_^ わっはっは! ---


(お墨付きだね?)

(リーエス)


(二人に、きみの姿が見えるようにはならないの?)

(先ほど、やってみたのですが、どうもお二人の頭脳波が掴みきれませんでした。申し訳ありません、和人さん)


(謝んなくていいさ。気にしないで)

(リーエス。ありがとうございます)


「最後に、もう一つ質問していいかしら?」


にこっ。

真紀がいたずらっぽく微笑んだ。


「はい。なんでしょうか?」

「ふふふ。あなた、ユティスのこと、気に入ってるんでしょう?」


「え・・・っ!」


(ほ、本人の目の前でそんな恥ずかしいことを・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀はいきなり話題を変えた。


(まぁ!)


「気に入るって・・・。まぁ、そうですが・・・」


(なにを言わすんですか、本人がここにいるっていうのに・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「好きってこと?」

「ええっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


(・・・)

(ス、ストレートすぎですよぉ!)


「わかるわ。わたし、女だもの。直感よ。ユティスだって・・・」


(げげげ、どうしよう。ユティスにまる聞こえじゃないか・・・)


「真紀さん・・・」

「わたしは、ユティスの存在も彼女の気持ちもわかるわ・・・」


(あわわわーーー。ユティス・・・?)

和人は思わずユティスを向き直った。


かぁーーーっ。

(和人さん・・・)


ユティスは真っ赤になって眼を伏せたが、それは和人だけにしかわからなかった。


「あ、あの・・・」

「あなたたち、すぐに認め合うようになるわね。もう、びっくりだわ・・・」


(ユティス・・・)

(和人さん、わたくし・・・)


ユティスは顔を赤らめ、和人に確かめるような眼差しを送った。


(和人さんは、わたくしのこと、どうお思い・・・)


和人も自分の左の空中を見つめて、真っ赤になっていた。


(真紀さんのお言葉・・・)

(う、うん・・・。きみだって、カフェでのキッス・・・)


(そ、それはご挨拶です・・・。特別な方への・・・)


かぁーーーっ。


「和人、熱があるの?大丈夫?」


--- ^_^ わっはっは! ---


真紀がそんな和人を心配した。


ぼうーーーっ。


「幽体離脱、なんちゃって、てなことじゃないよな?」


俊介も心ここにあらずの和人を、半分茶化そうとして、止めた。


(和人さん。わたくしは・・・)

(あ、いや、そのぉ・・・)


「和人・・・?おい。和人!」


ぺし、ぺしっ。


「和人!」

俊介が軽く和人の頬を叩いた。


「あ、は、はい!」


「おまえ、本当に、精神をどっかに置いてきたのかと思ったぞ」

「すいません・・・」


和人は意識を国分寺兄弟に戻した。

「さてと、おまえも、オレたちも、双方、お互いがわかったことだし・・・」

「今日は、このくらいにしましょう」


「ああ、明日もあるしな」

「石橋には可愛そうだけど・・・」


「石橋さん?」


さっさっ。

真紀は左手を素早く横に振った。


「あー、なんでもないわ。ユティスにくれぐれも、よろしくね」


(リーエス)


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい。真紀社長・・・」


(きみが、すぐ目の前にいるってことわかんないらしいや)

(そのようですわ・・・)




真紀がレストランの精算を済ませ、3人は俊介の運転するワゴン者に乗り込んだ。


「とにかく、オレたちはおまえを助けたいんだ」

俊介はいつになく真面目な顔で言った。


「そ、そうですか・・・」


「あまり歓迎してそうにないわね」

「そ、そんなこと、ないです・・・」


(問題は隣にユティスがいて、さっき愛だのなんだの言ってくれちゃったことです!ユティスにみんなわかっちゃったじゃないですか!)


--- ^_^ わっはっは! ---


「早く会いたいわね」


(もう、会えてますよぉ!見えないんですかぁ?)


--- ^_^ わっはっは! ---


「ああ。とびっきりの可愛い娘ちゃんなんだろ?」


(ど、どう言えばいいんだよぉ・・・)


「ま、そう思いますけど・・・」


(まぁ!)


ユティスはさらに赤くなった。


「ほれ、頑張れよぉ、和人。二宮みたく討ち死にすんなよ」


俊介がウィンクした。


「あー、二宮先輩、完全にアウトなんですか?」

「どうかな。オレは知らんが、ヤツは知ってるだろ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「さ、着いたわよ。また、明日ね」

「どうも」


ばたん。


「じゃあな」

「失礼します。おやすみなさい」


ぶろろろーーー。


真紀と俊介はマンションへ帰っていった。

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