340 応答
「アンニフィルドです。ユティスの講演も一段落し、質疑応答にはいったわよ。まぁ、いろんな質問がでてくるんでしょうけど、あんまり時間もないのよねぇ。一人、2、3分でやってくれなきゃ、時間をオーバーしちゃいそうだわ・・・」
■■
エルドは壇上で左右の端から端までゆっくりと歩みはじめた。
「今日、こうして精神体で恐縮ではありますが、わたしはみなさんにお会いできて大変感動しています。また、一つ友人を得ました・・・。ユティスも申しあげましたが、学びには時間がかかります。地球では、『学問に王道なし』という諺があるようです・・・。蓋し、名言です。わたしも同意見です・・・」
エルドは端まで行くと踵を返した。
「みなさん・・・、決して焦らないでください。もし、エルフィアの本格支援プログラムが適用されても、すぐに日常生活が便利になったり精神が変わったりするなど、期待してはいけません。変化はカップに注ぐ水のように、ある一定の期間が来るまで溢れ出たり現れたりすることはありません。それでも学び続けるなら、時が来て、突然、劇的に変化が訪れます・・・。しかし、いつそうなるかは、だれにもわかりません・・・」
そして、エルドはまた壇上の中央で立ち止まった。
「これは、みなさんの惑星内時空移動手段の航空機が地上から飛び上がるのに似ています。いくら頑張って滑走路上を加速しても、離陸速度に達しなければ、航空機が揚力を得て滑走路から浮かび上がることは決してありません。それでも、パイロットはスロットルを開いたままにします。航空機がじきに離陸速度まで達し、飛び上がるとわかっているからです・・・。離陸速度はパイロットが決めるのではなく、航空機の重量、揚力、空気抵抗力、そういったもので決まるわけです・・・」
エルドは地球人にわかり易い例えを利用した。
「これと同じように、学び成長するというものは内側は変わっていても、表面上の違いは急には現れません。だんだん変わっていくのとは違うのです。どうか、みなさん・・・、辛抱強く学んでください。エルフィアは待ちます・・・」
聴衆はエルドが精神だということをすっかり失念するくらい、エル
ドの精神体は存在感を持っていた。
「わたしが、みなさんにお伝えしたいことはすべて申しあげました。そろそろ、優秀なエージェント、ユティスにバトンタッチしたいと思います。ユティス、こちらへ・・・」
エルドはそう言うと、やや後方に下がっていたユティスを再び前に出させた。
「優秀だなんて、恥ずかしいですわ・・・」
もじもじ・・・。
ユティスははにかんだ。
「ナナン。ユティス、きみは自分の過ちを素直に認めることができ、真摯に対応を取ることができる。そういう人間は間違いなく優秀だよ・・・」
「まぁ・・・」
壇上の二人の会話に聴衆は大きく頷いた。
「みなさん、これで、わたくしの講演を締めさせていただきます。わたくしたちは遠くないない過去に一つの世界が滅んでいくのを目の当たりにしました。エルドもわたくしも、何一つ救えませんでした。とても悲しく、胸が張り裂けそうな思いをしました。これは理屈ではありません。わたくしたち、エルフィアは地球を自分のことのようにとても大切に思っています・・・」
ぺこぉ・・・。
そして、二人は壇上でゆっくりと深く礼をした。
「申し遅れましたが、その前に、みなさまにご紹介したい方が2名いらっしゃいます。エルフィアと地球の交信を裏で支えていただいた大切なお友達で、セレアムの社長さんと常務さんです。お二人はここT大の卒業生でもありますわ」
ぽわぁーーー・・・・。
ユティスがそう言うと、壇上の2箇所に黄色みを帯びた白い光の塊が現われた。
ぽわぁーーーん。
ぱ!
すぅ・・・。
そして、一瞬強く輝いたかと思うと、その光は両方とも空中に溶け込むように消えた。
「おお!」
「あ!」
聴衆は突然そこに現われた人物にまたしても仰天した。
どん!
ぎゅぅ!
「おかえりなさい、俊介!」
ちゅ・・・。
にこ。
予定どおりに、アンニフィルドの膝の上に乗っかり、頬にキッスをもらった国分寺俊介はしっかり彼女に抱き締められた状態だった。
ぽよぉーーーん。
アンニフィルドの豊かな胸の感触が俊介の腕に伝わった。
「ありゃ?」
「あーーーん。うふん!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あははは!」
「わははは!」
「うふふふ!」
なにがどうなったかわからなくて戸惑っている俊介に2000人の聴衆がどっとわいた。
「げげ、アンニフィルド!な、なんだぁ、こりゃぁ!」
じたばた・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「おかえりなさぁーーーい、ダァリィーーーン!」
ぎゅう・・・。
超A級SSのアンニフィルドは184センチ90キロ以上もある俊介でも簡単に扱った。
「だ、ダーリンって・・・。アンニフィルド、こ、こら、下ろせってば!」
どたばた・・・。
「恋人に下ろせって・・・。ひどいわぁ、あなた・・・」
くす・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「あ、あなたぁ・・・?下ろす・・・?バカ、みんなが誤解するだろ!」
じたばた・・・。
俊介はアンニフィルドの膝の上でもがいた。
「そんなの冗談にもならん。第一、恥ずかしいだろうが!」
俊介の声は完全にひっくり返っていた。
「俊介のヤツ、現われるにことかいて、いきなりこれぇ・・・?」
「聴衆の前でよくやるわ・・・」
「アンニフィルドの力じゃ、振り解けやしないわよぉ・・・」
「あはは。言えてる。そろそろ俊介も観念するしかないんじゃない?」
最前列のセアムの岡本と茂木が笑いながら見合った。
一方、真紀はユティスの側に現われていた。
「ユティス!お久しぶり!」
「真紀さん、お元気そうですね!」
「リーエス!」
ぎゅぅ・・・。
真紀はユティスを抱き締めた。
「帰ってきたわよぉ!みんな、どうしてる?」
「お席の最前列ですわ!」
ユティスは最前列に招待されたセレアムの面々を教えた。
「真紀ぃ!」
「お帰りなさい、真紀さん!」
「うわぉ!」
「元気?」
「あーーー、イザベル、あなたも来てくれたのねぇ!」
「はい!」
「お、二宮もちゃんとペアらしくしてぇ・・・」
「うーーーす!」
「ひー、ふー、みー、よー・・・、きゃあ、みんな、ちゃんと来てくれてたのね!」
真紀は社員の人数を数えると歓喜した。
「当たっり前よぉ!」
「嬉しいぃーーーっ!」
手を振るセレアムの社員たちに、真紀は普段は見せないはしゃぎようだった。
「わははは!」
「あははは!」
それを見て聴衆は一緒に笑い、それからはお祭りのようになった。
(あ、あれ、ジョバンニじゃない?)
アンニフィルドがクリステアに囁いた。
(リーエス。確かブレストもここに参加してるはずだから、その警護じゃないかしら)
クリステアが答えた。
(ちょっと、コンタクトしてみるわ)
(パジューレ(どうぞ)、お好きなように)
アンニフィルドの会話をすぐに切り上げると、クリステアはジョバンニに精神を集中させた。
(ジョバンニ、そこにいたの?)
クリステアは、サングラスの下でその様子を表情一つ動かさず会場を見守っていた合衆国国務省外交保安部のシークレット・サービスに、精神波で話しかけた。
(イエス、マム。Z国のエージェントが複数参加していますので、テロに備えています)
(リッキーとジェニーならエルドが招待したんだけどぉ?)
(ノー、マム。彼らじゃありません)
(あ、そう。でも、アンデフロル・デュメーラの中でなら心配ないわ。重火器の類は無力化されているから)
(イエス、マム。念のためです)
(それはご苦労さま。ジョーンズはブレストと一緒なんでしょ、どこにいるの?)
(オレの反対側に就いています)
クリステアがジョバンニとは反対の方に同じくブレストとダークスーツの大男を見つけて頷いた。
(リーエス。了解よ。ブレストはあなたたちに任せたわ。あなたの隣にいるのはガールフレンド?)
むんむん・・・。
そこには同じくサングラスを掛けた大柄な色気たっぷりの女性がいた。
(ノー、マム。彼女はキャサリンです)
キャサリン・グリーンは女性格闘家で、女子異種格闘技世界大会『レジーナ』で決勝をクリスティス・ニジンスカヤと争い優勝したのだった。
(キャサリン・グリーン?)
しかし、その実、クリスティナは試合直前に負傷し、クリスティナと瓜二つのクリステアがこっそり替え玉で出場したのであった。
(ふふふ。リーエス、了解よ・・・)
それを見破ったキャサリン。事実を知っている人間は僅かしかいない。
(イエス、マム)
いくらクリスティナの事務所の倒産危機を救ったとはいえ、オフィシャルにばれたら大変なことになった。
(彼女はこの講演に特別任務に就いているんです)
(手当てを弾まれたということね・・・?)
(3万ドルで、領収書はもちろんなしです)
--- ^_^ わっはっは! ---
レジーナのファイトマネーも優勝者は5万ドル程度だった。
(さすが合衆国だわ。税金の還元方法がいろいろあるようね・・・)
--- ^_^ わっはっは! ---
ということは、この数日の任務で3万ドルの報酬なら破格だ。
セレアムから戻った真紀と俊介も壇上の特別席に着いて、感動の再会は終った。
「では、エルフィア大使、ユティス・アマリア・エルド・アンティリア・ベネルディン様の特別講演、質問コーナーに移りたいと思います。まずは壇上のご招待席の方々よりお願い申しあげます。多くのご質問にお答えしたいのですが、時間にも限りがありますので、ご質問はお一人一つ、5名様までお受けさせていただきます。予め、ご了解をお願いいたします」
ホスト役の女学生が特別招待席を見ながらアナウンスした。
「えー、では、わたしから」
「はい。高根沢教授、どうぞ」
すく・・・。
ぺこり。
高根沢はユティスに向いて一礼した。
「ユティス大使、まずは超新星のエネルギー放射から地球をお守りいただきまして、誠にありがとうございます。それに、今回の文明ご支援、心より感謝いたします」
教授はまずは礼を言った。
「あら、それは当然のことですわ」
にこ。
「えーーー、わたしは地球では宇宙物理学の権威とか言われておりますが、エルフィアを知ることになって、それも返上せねばならないと考えております。学長も同意見と思いますが・・・」
「左様、承知しておりますよ、高根沢教授」
にま・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
ぷらぷら・・・。
学長の太田が手を振った。
「わははは」
「あははは」
「そこで、なにも知らない学生に戻った気持ちで質問ですが、どうやってあなた方は奪い合う世界への決別、カテゴリー2への完全移行を達成されたのか、その方法とは言いませんが、心構えとかありましたら、是非、お伺いたいものと・・・」
ぺこ・・・。
「リーエス。お答えするのは簡単ですが、実践し続けるはそう容易なものではありません。なぜなら、継続的な実践は感情的な納得が必須だからです。理屈ではわかっていても継続的な実践ができないということは、感情的な納得がないからです。人間は言われているほど理性的な行動は取れません・・・」
にこ・・・。
ユティスは優しく微笑んだ。
「それで、博士への回答ですが、まずは、衣食住でだれも困らない環境になることが必要ですわ。貧困は身体的なものだけでなく精神をも追い込み、あらゆる災いの火種になりますもの。もし、これを放置するなら、カテゴリー1的奪い合いの文明に逆戻りすることになりかねません。最低限、地球の一部先進地域にて実現されている安全安心の衣食住がそこそこ満たされている状況が、地球規模で達成されることが必要でしょう。これはとても逆説的ですが、産業が興り経済システムのような発達していないと、成しえないことも確かですわ。後は、個人の自由と良識が尊重され、政治や経済を牛耳るアソシエーションが力を持ちすぎないことも前提になります」
「つまり・・・、資本主義は必要と・・・?」
「ナナン。いつまでも財を社会の基盤とすることは宇宙の普遍的解決策ではありませんわ。地球において、こうなってしまったからには、まず現状を把握し、矛盾のあるところに気づき、それを少しずつみなさん自身が修正を加えていくしかないかと思います・・・」
「しょうがなしということですな・・・?」
「リーエス。それに、何度強調しても、し足りないことはありませんが、くれぐれもことを急ぎ過ぎないことです。進む方向性に注意できていらっしゃればそれでよいのです。そして、もう一つ挙げるなら、人々の信頼です。衣食住が概ね達成され、犯罪や義務的労働から解放され、人を疑い身構える必要がなくならないと、人々は元々善なる存在だと信じるようにはならないでしょう。それに、性善説に基づく次なるステップ、つまりカテゴリー3にも進めないでしょう」
「なるほど・・・。しかし、そんな風になると、だれも働かなくなるということになりませんか?」
「では、教授のおっしゃる働くとはなんのためですか?また、だれのためですか?」
「そりゃ、もちろん食べていくためで・・・」
「カテゴリー3を前にして、食べていくですかぁ・・・?うふふ・・・」
ユティスは微笑んだ。
「カテゴリー3と言えば・・・、ありゃあ・・・。ここでは食べていくことはできるようになったんですよね・・・?」
「リーエス。うふふ・・・」
「えーーー、それでしたら・・・、えーーー、そのぉ・・・、仕事のやりがい・・・。そうです!やりがいですよ!心身満ち足りると、人生、目標となるものが失くなるんじゃありませんか?そうなるとデカダンスに世界はどっぷり浸かってしまいますぞ」
「あら、そうでしょうか?うふふふ・・・。それに、わたくしたち、エルフィア人は物質的にも精神的にも満たされているとお映りですか?」
「違うんでしょうか・・・?」
「地球の方が見ると、エルフィアは満ち足りているかもしれません。でも、完全な満足などありえません。わたくしたち、エルフィア人にも人生の目標はありますし、それを見失ってはいませんわ」
「なんと・・・。それは、なんなんでしょうか・・・?」
「愛することを学び幸せになることです・・・」
「愛することを学び幸せになることですか・・・?それがエルフィア人の人生目標だとおっしゃるんですか・・・?」
高根沢教授はあんぐり口を開けて呆けたようになった。
「リーエス・・・。唯一にして最高の目標ですわ・・・。わたくしはとってもすばらしい目標だと思います。そして、わたくしたちの信ずる『すべてを愛でる善なるもの』の意志は、大宇宙を愛で満たすことです。一つの世界でも実現するには本当に大変ですわ。でも、楽しくもあります。一つ終ればまた次に一つ。永久に楽しめますわ・・・。教授も宇宙のいろんなことを解明することがお仕事で、それは人生を充実させる目標であると思います。もし、それが実現したとして、どうお感じになると思いますか・・・?」
「どう感じるって・・・、その謎の一つでも解明できれば、そりゃ飛び上がるくらい嬉しいでしょうなぁ・・・」
「ほら!嬉しいことを求めていらっしゃる。それは幸せになることではなくて?」
「まぁ、幸せでしょうが・・・、なんか違う気もします」
「うふふ。では不幸ですかぁ・・・?」
「い、いや、断じて、ナナンです!」
「まぁ、エルフィア語ですね。嬉しいです。程度の差こそあれ、人はみな、幸せになりたいと願うのではないでしょうか?エルフィアでは、みなさんの語る人生のいろんな目標は幸せになるための手段だと考えています。そういうことで、カテゴリー2への完全移行には、大前提である精神が育つ環境作りをすることが先決です。テクノロジーだけが先行するのはとてもアンバランスで危険な状態と言えます」
「いあやぁ、なるほどですなぁ・・・。頭が下がります・・・」
ぺこ。
高根沢教授は一礼をした。
するり。
ぽと。
高根沢の胸ポケットから万年筆が滑り落ちて、クリステアの方に転がっていった。
ころころ・・・。
「まぁ、ペンが落っこちましたわ、教授!」
--- ^_^ わっはっは! ---
くすくす・・・。
「あはははは」
会場に笑いが巻き起こった。
「大丈夫よ」
ひょい。
ふわん。
ぷす。
その時クリステアが右手を掲げると万年筆は宙に浮きすぐに教授の胸元に収まった。
「ありゃりゃ・・・。どうも・・・」
ぺこ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「もう、お礼は結構ですわ。また、ペンが落ちてしまいます。うふふ」
ユティスは教授が礼をしそうになったの制した。
「そ、そうですな・・・。あははは・・・」
「どうも、クリステアさん、それに、ユティス大使、ありがとうございました」
「パジューレ(どういたしまして)、高根沢教授」
「パジューレ(どういたしまして)」
「では、次の質問をお受けいたします。どなたか・・・」
ささっ。
さっ。
いたるところで手が上がった。
「はい、そこの女性!」
司会の女学生がマイク係りに合図した。
「はい、ユティス大使。わたしはT大の文学部にいる学生です。初めて宇宙人を・・・、御免なさい。そういう差別的な意味でなく、地球人ではないということですが・・・」
「リーエス。いいですわ。わたくし、まったく気にしてませんわよ」
「はい。どうも・・・」
ユティスの言葉に女学生は大いに恐縮した。
「わたしが疑問に思うのが、どうして、エルフィア人はわたしたち地球人と同じなんですか?見たところ、ぜんぜん違うように思えないのですけど・・・」
にっこり。
ユティスは優しく微笑んだ。
「うふふ。それは、わたくしたちにしてみれば、どうして地球の方がエルフィア人と同じなんでしょう!ということなんですけど・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「わははは!」
「あははは!」
明らかに会場の聴衆はユティスの答えが気に入っていた。
「ええ・・・?」
女子学生は明らかにうろたえていた。
「わははは」
「きゃははは」
「うふふ。なんでも、ご自分中心で考えることは真実から遠ざかりますわ。でも、この問題にはわたくしたちも自信を持って答えることができません・・・。可能性は二つです」
「それはなんでしょうか・・・?」
「一つは、偶然・・・。でも、偶然というのはある条件ができるチャンスのことです。もし、その条件ができる環境が宇宙のどこにでもありうるとしたら・・・、また、進化の過程で生命体が限られてくるとしたら・・・、最終的に人類のような姿になるとしたら・・・、それは偶然ではなくなります。条件さえ整えば必然に変わるのですから・・・。世の中の事象を偶然で説明し、探求するのを止めると言うならば、それば科学的怠慢とでも言うべきものですわ」
「では必然なんですか・・・?」
「それはどうでしょう・・・。うふふ」
「二つ目はなんなんですか・・・?」
「二つ目はその必然です。でも、先程の必然とはニュアンスが少し違います」
「どういうことですか?」
「人類はデザインされたものということです」
「え・・・?」
「なるべくしてそうなったとうことです。わたくしたちは極めて高度な知的生命体の設計図に基づき作られたとするものです」
「神さまはいるというんでしょうか・・・?」
「神さまかどうかはわかりません・・・。しかし、超高文明世界の人々が突然その科学力を見せれば、多くの世界などで神さま扱いされるかもしれません。わたくしたち、エルフィア人は『すべてを愛でる善なるもの』を信じていますが、それは人間的な姿をしている神さまではありません。宇宙を支配している基本法則そのものだと考えています。いずれにせよ、なにものか超先進文明の存在に、人類はある時点で遺伝子操作を加えられ、今のような姿になったとするものです」
「そんなことがありうるんでしょうか?」
「さぁ・・・、直接的な証拠はありません。けれど、霊長類の進化のある過程で現世人類は、不自然に、まるでジャンプしたようにポンと出現しています。それは地球の科学者も認めるところです。間違ってますでしょうか・・・?」
くるり。
ユティスは高根沢博士の方を向いた。
「いいえ。いわゆるミッシングリングですな?」
高根沢博士は即答した。
くる・・・。
そしてユティスは再び女子学生に向き直った。
「リーエス。これを説明するにはその世界の生物分析による進化論だけでは、不足しているのです・・・。しかし、早合点はいけませんわよ。慎重に、慎重に・・・。うふふ」
「では、やはり・・・?」
「ナナン・・・。エルフィアにも答えは見い出せていません・・・。事実は大宇宙のいたるところに人類が棲んでいるということです。答えを見つけるのは、みなさん、地球人かもしれませんわ」
「わかりました。どうもありがとうございます、大使」
「パジューレ(どういたしまして)」
「それでは、3人目の方の質問をお受けいたします」
「はいっ!」
すっ!
「はいっ!」
すっ!
いたるところで手が上がった。




