335 開演
はぁーーーい、アンニフィルドです!もう、2ヶ月も連絡取ってなくてごめんなさいね。とっても忙しかったんだから・・・。という言い訳しても始まらないわね。早速、始めるわ。ユティスのT大での特別講演よ。エルドったらいろんなのを招待しちゃって、大丈夫なのかしら・・・。でも、俊介はいないのよねぇ・・・。
■開演■
「招待者は?」
「はい。全員をお席に案内しております」
「うむ」
こく・・・。
学長と高根沢教授の命を受けた講演会の運営委員会のスタッフは頷き合った。
「大講堂の外の入り口に誘導員が数名いますが・・・?」
「わかった。彼らも大使の講演を聞きたがってるだろうから、中に入るよう指示しよう」
「わかりました。外に無線連絡を入れます」
誘導係の腕章をつけた男子学生はトランシーバーで外の誘導係に繋いだ。
「こちら、会場内、入口どうぞ?」
ぴ。
「はい。こちら入口」
ぴ。
「会場内、満員です。外からの入場者はまだいますか?」
ぴ。
「いいえ、大講堂へ向かってくる人間はもういないですねぇ」
ぴ。
「了解。外の案内は警備会社のガードマンさんに任せて、きみたちも中に入ってください」
ぴ。
「了解。こちらは切り上げて、われわれも中に入ります」
ぴ。
「了解」
ぴ。
すっす、すっす・・・。
「じゃ、後、よろしくお願いします!」
ぺこり。
学生誘導員たちは二人のガードマンに礼をした。
「了解。お疲れ様です!」
「行ってらっしゃい!」
さ。
ガードマンたちは学生たちに敬礼をした。
すたすたすた・・・。
「この大扉も閉めておこう」
「了解」
学生たちは大講堂の中に入ると大扉に向き直った。
きぃ・・・。
ぱたん・・・。
外の学生誘導員たちは代行動の中に入っていき、その後ろで大きな扉が閉じられた。
T大の大講堂でのユティスの講演は、学長のユーモアもあり、つつがなく始まっていた
。
「あーーー、お兄ちゃん、すごい・・・」
聴衆の招待席では和人の家族が、内閣特別顧問の大田原太郎の招待で参加していた。
「ホントね、亜矢。お兄ちゃん、ヒローよぉ」
和人の母親だった。
「お母さん、なに言ってるのよ。ただの偶然でしょ、そんなの」
和人の姉が言った。
「しょうがないやつだなぁ、沙羅は・・・」
「そうですよ。お母さんは和人がすっごく誇らしいけど」
「そうだよ、お姉ちゃん。お兄ちゃんとユティスさんと結婚できたらいいのにぃ・・・」
「ふふふ。そうなったら、ユティスさんはウチの義理娘で、沙羅にとっては妹、亜矢にとっては姉さんよ」
「よしてよぉ、まじぃ・・・?」
「わぁーーーい」
「これ、みんな声が大きいぞ・・・」
「はぁーーーい」
(エージェント・ユティス、SS・アンニフィルド、SS・クリステア、会場に全員が揃い、扉が閉められました)
(時間ね?)
クリステアの思念波が4人に届いた。
(リーエス。時間です)
アンデフロル・デュメーラから確認がきた。
(アンデフロル・デュメーラ、聴衆全員の固有振動を把握できたかしら?)
(リーエス、SS/アンニフィルド。いつでもスタンバイできています。カウントダウンに入れますが・・・?)
直径2000メートルを超えるエストロ5級母船のCPUの擬似精神体が時を告げた。
(リーエス。それでは、やってくださいな、アンンデフロル・デュメーラ)
ユティスは心の中で答えた。
(リーエス、エージェント・ユティス)
(アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます))
(パジューレ(どういたしまして)、エージェント・ユティス)
(カウントダウン開始します)
アンデフロル・デュメーラがカウントを開始した。
ぽわぁーーー・・・。
そして、その時大講堂内に不思議な黄色味を帯びた白い光が充満していった。
ほわぁ・・・。
それは次第に会場全体が光に包まれていった。
「なんだぁ・・・?」
「不思議な光・・・」
「単なる演出じゃないかぁ?」
「そうよね」
聴衆は辺りを見回した。
ぱっ。
そして、光は一瞬強く白く輝き一同は目が眩んだ。
「あ・・・!」
ほとんどの聴衆はそれを照明効果だと疑わなかった。
(エージェント・ユティス、転送を完了いたしました)
(リーエス。どうもですわ、アンデフロル・デュメーラ)
(パジューレ(どういたしまして)、エージェント・ユティス)
「うふ。少々光が強かったみたいですわ」
すぅ・・・。
ユティスがそう言うと、照明が落とされて、壇上のユティスが強調された。
「みなさま、宇都宮和人さんは、わたくしが地球のことを知ることになった方です。わたくしにとってもエルフィアにとっても、そして地球にとっても、とても重要な役割を担っていただいております」
ぺこり・・・。
ユティスの紹介に預かり、和人は聴衆に向かって深々と頭を下げた。
ぱぁーーー。
ステージ前の聴衆の特別席では株式会社セレアムの面々がユティスの講演を聞いていた。
「ほほう・・・、上々の出だしじゃない?」
社長代行の岡本が隣の茂木に言った。
「そうね。和人も特に緊張した様子はなさそうよ」
茂木が答えた。
「ユティスさんたち、なんておきれいなんでしょう・・・!」
エルフィアの正装をした3人に、溜息にも似た声で、石橋がつぶやいた。
「石橋、あなたも可愛いわよぉ」
「そ、そんなぁ・・・」
かぁ・・・。
石橋はたちまちはにかんだ。
「同じ衣裳を着てステージに立ったら、エルフィア人もどきには見えるわよぉ」
「わたしはもどきなんですか、岡本さん?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「変に取らないでね。あなたは地球人でしょ?だからよ」
「はぁ・・・」
石橋は答えた茂木にわかったともわからないとも取れる返事をして、視線をステージ上に戻した。
「お三方とも、どうもありがとうございます」
さささ・・・。
ユティスは和人たちに礼をすると、三人も礼をして壇上の後ろに下がっていった。
「さて、それでは本日の講演を始めたいと思います。本日のために、わたくしがご用意したタイトルは、『文明カテゴリーとはなにか?~カテゴリー2における地球の現状と方向性~』です」
にこにこ・・・。
ユティスにはにこやかに会場を見渡した。
ぱちぱちぱち・・・。
会場に拍手が巻き起こった。
すぅ・・・。
ユティスはまず深呼吸を一つした。
「みなさまは、文明という言葉はよくご存知のことと思いますが、文明というものをどうお考えでしょうか?文明とはどのようなものでしょうか?そもそも、そのようなものは必要なのでしょうか?もし、文明というものに発展する可能性があるとしたら、どんな風に発展していくのでしょうか?果たして、宇宙にはどんな文明があって、地球はどんなところに位置しているのでしょうか?みなさん画お知りになりたいテーマですわね・・・?」
ユティスは、のっけから続けざまに聴衆の疑問とするテーマを投げかけていった。
「これは、わたくしがエルフィア人である以上、わたくしたちエルフィア人の共通の世界観や文明観から、お話申しあげるしかありません。それが、みなさま、地球人の世界観と違っているかもしれません。ナナン、違っていて当然でしょう。わたくしには、地球はおろかすべての文明を批判する意図はございません。わたくしたちエルフィアも、カテゴリー1から2、3、そして4へと進んでいったのです。わたくしたちが経験したありのままの事実に基づくだけです。わたくしの言葉の中にそういうところが出てくるかもしれませんが、どうか、そのところはお許しをお願い申しあげます」
ぺこり・・・。
ユティスはまず自分の先入観や価値観があるが、それはけっして批判的な意味を持つわけではことを聴衆にことわった。
ぱちぱちぱち・・・。
聴衆はそれに拍手で応えた。
「わたくしたちエルフィアは何万年もの前に、わたくしたちがまだ宇宙に飛び出して間もないカテゴリー2の時代、カテゴリー4の別の文明世界、カリンダとよばれる世界の文明支援を受けました。わたくしたちエルフィアとて、自力で今の文明を築き上げてきたわけではないのです」
「おお・・・!」
ざわざわ・・・。
ユティスの言葉は聴衆に衝撃を与えていた。
「どういうことだ・・・?」
「エルフィアは文明カテゴリー4じゃなかったのか?」
ざわざわ・・・。
ユティスは少し間を取って話を続けた。
「それに、お話しするのも大変勇気が要りますが、これは正直に申しあげねばなりません」
「・・・」
聴衆はどんな話が始まるのかといぶかった。
「エルフィアの文明支援活動は必ずしも成功してきたわけではありません。何万年もの間にはいろんなことが起こりました。エルフィアを受け入れることができない世界。、支援後にまたもとに戻ってしまった世界・・・。わたくし自身、支援活動で失敗も経験しています・・・。とても辛い経験でした・・・」
ユティスはそこで声を低くし、感情を押し殺すように語った。
「・・・」
そして、ユティスは黙り込んだ。
「・・・」
「こほ、ん、ん!」
不安を覚えたのか、だれかが咳払いした。
「申し訳ございません・・・」
ぺこ・・・。
ユティスは深々と頭を下げ沈黙を謝罪した。
「わたくしが担当した世界の一つでした。その前任エージェントが支援任務を継続することができなくなり、わたくしはそれを引き継ぎました。しかし、たった3日とういう一瞬の時間に、その世界が完全に滅びてゆくのを・・・、静止軌道上の母船から・・・、目の前でただただ見つめるしかなかったのです・・・。わたくしには、それを止めることができませんでした・・・。本当に、なにもできませんでした・・・」
ユティスのいきなりの告白だった。
しーーーん・・・。
大講堂は聴衆のショックで静まり返った。
「核融合エネルギーは一旦連鎖を始めると、一瞬のうちに全エネルギーを開放してしまいます。そうして、かの惑星はたちまち火の玉と化し、人類の文明はおろか、すべての生きとし生けるものが滅びてしまいました。今も放射線レベルが高く、とても人が立ち寄ることすらできない死の星と化したのです。結果、わたくしは精神的なリハビリを受けることを求められ、エージェントのライセンスを何年も停止されていました・・・」
しーーーん。
「それは違うわ・・・」
アンニフィルドが小声で囁いた。
「リーエス。でも、今は黙ってましょう」
しかし、すぐにクリステアがそれを制した。
「・・・?」
しーーーん・・・。
あまりにも意外な内容に聴衆は静まり返った。
「みなさん、地球の方もご存知のはずです。文明がどこに向かうかは、良きも悪きもそれを扱う人々の意思によります。人為的な核分裂や核融合により生み出されるエネルギー、このとてつもないエネルギーは扱い方を間違えると世界を簡単にかつ迅速に滅ぼします。これを生み出し扱う世界の人間は、人類ばかりか、罪もないすべての生き物たちにも、惑星そのものに対しても、その責任を持たねばなりません。これが大宇宙の基本原則です」
どぉーーーん!
出だしとは正反対の展開で、聴衆は重苦しい雰囲気に置かれた。
しーーーん・・・。
「なんだ、説教かよぉ・・・」
突然、学生のだれかが言った。
それは静まり返った大講堂にこだまし響き渡った。
「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)。ごもっともなご意見です。しかし、ナナン、それはあなたのお感じになったことでありますが、みなさん全員のご意見を代表しているかまではわかりませんこと・・・?」
にこ。
ユティスはその学生に向かって優しく言った。
「そうだ。黙って聞いてろ!」
ほかの学生が叫んだ。
「ここで、わたくしが申しあげたいことはただ一つです・・・」
ユティスは会場を見回すと毅然とした雰囲気になった。
「わたくしども、エルフィアは・・・、もう二度とこのような悲劇を見たくありません。幸せになれるはずの世界が滅んでいくのを、二度と経験したくありません。二度と、そのようなことを繰り返したくありません・・・」
しーーーん・・・。
会場は静まり返ったままだった。
「わたくしは悲劇を経験しました・・・。とても、とても辛いことでした。そして、立ち直る過程で、地球人の宇都宮和人さんに出会い、勇気をいただきました・・・」
さぁ・・・。
ユティスはそう言うと、和人を振り返り右手で彼を優雅に指し示した。
「地球のみなさん、事実を包み隠さず申しあげます。エルフィアにも地球の支援を全面的に賛成をしているわけではない人々がいます。精神的な成長が未熟なままの地球はカテゴリー1であり、文明支援は時期尚早だとおっしゃられるのです」
「おお・・・」
これにも会場はどよめいた。
「どういうことなんだ・・・?」
ユティスはどよめいた方を優しく見つめた。
「エルフィアの文明促進推進支援委員会には、守らなくてはならない基本的な規定があります。その第一が、その世界の住民のみなさんの生活に干渉してはならないことです。これはカテゴリー1までの世界には厳格に適用されます。カテゴリー1においては観察以上のことは基本的に行なえません。しかし、カテゴリー2以上は、その世界の文明度に合わせて、住民のみなさんにコンタクトを取ることが可能となります。つまり、文明支援というのは、支援先が文明カテゴリーが2以上に進化していることが必須なのです・・・。残念ながら、カテゴリー1以下の世界で文明推進を直接支援することは固く禁じられているわけです・・・」
「なだってぇ・・・?」
「すべての文明を支援するんではないのか?」
ざわざわ・・・。
会場は不安が満ちていた。
「これについては、今日のお話の中で別途触れさせていただきます。そういうことで、わたくしは文明促進推進支援委員会よりその命を受け、2年間の予備調査で地球に派遣されているわけです。予備調査とは、本格的に文明支援を行なうにあたり、その世界の文明がどのレベルまでいっているのか、また、今後の活動にどういう障害や危険があるのかを、その世界に直接エージェントを派遣させて調査することです。従って、わたくしの予備調査によって、地球を本格的に支援するか否かが検討され、委員会により最終決定がなされます」
ユティスは、自分の意見如何によっては地球支援もどうなるかわからないと匂わせた。
ざわざわ・・・。
たちまち会場が不穏なざわめきに包まれた。
「支援って・・・、決定じゃないのかぁ・・・?」
「大変だぞ、こりゃあ・・・」
「そんなぁ・・・!」
だれかが叫んだ。
「まさか、地球を見捨てるんじゃ・・・」
ユティスのこの言葉は聴衆にとってとても厳しい内容に思えた。
「でも、みなさん、ご安心ください。わたくしはこれまでの滞在中に確信しました。地球はその資格があります。その権利があります。そして、わたくしたちエルフィアには、その使命があります。もし、今、地球がとても危険な状況を迎えているのならば、それこそ支援が必要です。こんなにすばらしいみなさんの地球が滅ぶなど絶対に受け入れることなどできません・・・。なんとなれば、わたくしは、ここ、地球が好きだからです。遠い昔、エルフィアは伝説の超高文明世界、カリンダより支援を受けました・・・。今度は地球の番です・・・。これはエルフィアのカリンダへの恩返しでもあります・・・」
にっこり・・・。
「おお・・・」
ぱちぱちぱち・・・。
「うぉ・・・!」
ぱちぱちぱち・・・!
ごぉーーー。
数人の拍手はたちまち会場を埋め尽くした。
「みなさん、アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)・・・」
ユティスは気持ちがおさまるまでしばらく話すのを控えた。
「ユティーーース!」
だれかがユテイスを励ますように叫んだ。
「リーエス(はい)・・・?」
「愛してるよぉ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ!うふ。アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)」
ぺこり。
ユティスは頭を垂れると再び口を開いた。
「みなさん、わたくしとて人間です。みなさんと変わるところはございません。感情の赴くままとは申しあげませんが、エルフィア人がカテゴリー4だからといって、常に理性的に行動できるわけでもありません。また、理性による合理的な行動が常に正しいのであるならば、最早、人間にできることはありません。すべてを機械にでもお任せすればよいでしょう・・・」
ふぅ・・・。
ユティスは一息入れた。
「みなさんは、もっと人間的なものを大切にしたいと思いませんか?わたくしはそう思います」
「そうだ。そうだ!」
聴衆の中で叫び声がした。
「人間は理性的であると主張する人たちがいます。本当でしょうか?わたくしどもエルフィア人は、人間の理性とはコンピューターのOSに備わっている未使用の機能のようなものと考えています。各人がその機能を欲して自ら設定を変えていかなければならないということです。つまり、人間は理性的になる可能性を内包していますが、生まれつき理性的に考えて行動できるわけではないと思っているのです。本当に自ら望んだ教育を受けることによってのみ、人間は内包した理性を開花さすことができるのです」
このユティスの主張は地球の一部の科学者や哲学者たちには受け容れがたいものだった。
「人はサルだと言うのか?」
ざわざわ・・・。
会場はざわめいた。
「リーエス。そういったご意見ももっともだと思います。しかし、わたくしたちエルフィア人は、理性は人間の一側面であり、それだけでは幸せにならないということを知っています。例えば、美味しいお料理です。今の地球の科学でも十分に作れる一食分の栄養タブレットがありますわね・・・?これは、理性的に考えると栄養的には十分であり、科学的にはお夕食として成立します。でも、一つのタブレットで済むとわかっていても、やはり、良い香りがして暖かくて、ちゃんとお口で味わって、見た目にも美味しそうなお料理をわたくしたちは選びますよね?」
「そうだ!」
「きみの料理ならタブレットでもなんだっていいよぉ!」
「あらあら・・・。うふふ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「どなたか宇宙飛行士の志望の方はいっらしゃいますか?」
「ここにいるぞぉ!」
すっ!
すっ!
二、三人が手を挙げた。
「あなた方は宇宙ステーションで働くことになったとして、いわゆるレトルトの宇宙食しかいただけないとしたら、お食事は限られてきますよね?」
「そうだ!」
彼は頷いた。
「お料理の味や見栄えや香りに感情的なこだわりはありますか?」
ユティスは優しくきいた。
「あるぞぉ!」
「栄養価は申し分なくてですよ?」
「ある。ある。あるよ、大いに!」
「そうだ!そうだ!」
「美人と一緒なら水にタブレットでもいいよぉ!」
隣の友人らしき人物が叫んだ。
「うふふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「口移しで飲ませてくれぇーーー!」
別のところで声がした。
「まぁ!うふふ・・・!」
にこにこ。
ユティスは声の主を向いて声を立てて笑った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「わっはっは!」
「あははは!」
会場は爆笑した。
「うふふ。そうですわね。どなたと一緒に食べるかということも、とても大切ですわ。できればお一人より、ご家族、恋人、ご友人、そういった方たちと一緒の方がよりお食事を楽しめます。科学的には栄養価はタブレットが十分に高いとしてもです」
「だから、今晩、一緒にタブレットのディナーをどう?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あははは!」
「あら、ごめんなさい。先約がございますの、毎日!」
「えーーー!?」
「あははは!」
--- ^_^ わっはっは! ---
会場の爆笑が収まるのを待って、再びユティスは口を開いた。
「では、みなさん、わたくしがこう申しあげたのも、人間は理性と感情のバランスがとても大切だからです。それに、感情は感覚によって大きく左右されます。どちらか一方だけをとらえることは人間を不幸にします。この個々人が尊重され、そのバランスが取れていないと、個々人の集合体である社会、そして、ゆくゆくは文明そのものもやがて滅亡への道を歩むことになります」
ユティスはそこで真顔に戻った。
ざわざわ・・・。
「これから本題の文明カテゴリーについてお話し申しあげたいと思います」
しーーーん。
ユティスの静かななる宣言に会場は落ち着きを取り戻した。




