325 墓穴
「はぁーーーい、アンニフィルドです。エルドの使命を受けたリュミエラは・・・。あ、いっけないタリアって名を使わなきゃね。バレないように変装しちゃったのよね。この時点ではわたしもそのこと知らなかったのよぉ。ホントだってば。で、和人たちも最後のまったりってとこかなぁ・・・。これ以上は次回にかかわるんで、その時にね!」
■墓穴■
タリアこと、元超A級SSのリュミエラは、空中スクリーンに浮かび上がった地球支援反対派の理事のドンたるトルフォの支援先世界の訪問リストを眺めた。
「レダリア、バロナ、クルセディオン、ビュリーゼ、ダラム。これがトルフォの公式訪問先ね・・・」
「どれもエルフィア銀河ではありませんよ」
メローズが確認を要求した。
「リーエス。一番遠い銀河は?」
「ビュリーゼです。ここから2億光年先のミラ第7銀河です。トルフォはレダリアとバロナは訪問済みのはずです」
「確か?」
「リーエス。委員会に訪問報告が届いています」
「信用するってわけ?」
「疑っているのですか?」
「こういう状況で、トルフォの言葉を無条件に信用するのはどうかと思うわね」
タリアはじっとリストを見つめた。
「この訪問先すべての情報をもらえる?」
「リーエス。それぞれの世界の上空で待機しているエストロ5級母船の学習室で現地の言葉、及び習慣、必要な情報をフィードバックできます」
「リーエス。最優先情報アクセスコードは、地球女性の標準名の『アカズキンチャン』っだたわね?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス」
「わかった。こちらでの準備にどれくらい用意しているの?」
「今日を入れて4日です。必要な事前知識と情報は準備期間中に提供いたします。現在、キャムリエルが地球に派遣中のエストロ5級母船アンデフロル・デュメーラにてシステムログ解析中です。また、エルフィア大教会でもログの解析を進行中です」
「転送システムのログ?」
「リーエス。人的繋がりも解析中です」
「なるほど。なにかわかるの?」
「リーエス。キャムリエルの情報は貴重になるかもしれません」
「で、作戦の骨子はどうなってるの?」
「それですが、作戦についてはあなたにすべてお任せします。必要なものがあれば提供しますので、わたしかエルドに直接連絡をしてください」
「リーエス。準備としては十分ね。それでトルフォの公式訪問先以外が判明したとして、そこに行くための支援はあるんでしょうね?」
「宇宙機ですか?」
「転送でもかまわないけど、その先から次のところまで移動するのに、わたしの美貌以外なんにも手立てがないってのは願い下げなんだけど」
にやり・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
言葉とは裏腹に、タリアはそれも面白そうだと言わんばかりに口元に笑みを浮かべた。
「現地においては・・・、美貌はもちろんですが・・・。ご安心ください。あなたには座標追跡用の超時空チェッカー・プログラムを頭脳にセットさせてもらいます」
「チェックするのは宇宙座標だけ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。プライベートなものをモニタするつもりはありません」
「信用していいの?」
「あなたに選択権はあまりないと思いますが・・・」
「ふむ・・・。けっこうよ。それで?」
「あなたの座標精度はその惑星上の自転軸を基本とした緯度経度で、プラスマイナス0.1秒です」
「バスルームかどこかまではわからないってことね・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ん、ん!」
メローズは咳払いをした。
「あなたの行き先を超時空モニタで宇宙座標をこちらで常時チェックしています。宇宙座標はその都度アンカーされていますので、もし、宇宙機が必要ならエルフィアからスクランブルさせます」
メローズは少しも動揺した様子はなかった。
「それから、緊急時のハイパーラインは、エルドとわたしが受け持ちます」
「パスワード設定が必要なのね」
「リーエス」
「じゃ、『メローズのバカ』を活かして」
むっ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「エルドに対してもですか?」
「彼には、名前の後は『親バカ』に変更しといて」
--- ^_^ わっはっは! ---
「それは、エルドに直接申請してください」
「あ、そう」
「では、ハイパーラーニングにさっそく入ってください」
ぱたん。
「リーエス。そのよう頼むわ」
すたすた・・・。
タリアは部屋を出て行った。
「ねぇ、ユティス、このこと知っていたのかい?」
和人は自分を養子にしたいと申し出たエルドの言葉を確かめた。
「リーエス。でも、わたくしからは・・・」
「黙ってろって言われたんだね?」
「リーエス。エルドがご自分で話されると・・・」
にっこり。
ユティスは申し訳なさそうに、しかし、幸せそうに言った。
「けど、オレ、両親や姉妹にどう話せばいいんだろう・・・?」
和人は大いに動揺していた。
「エルドの息子ってことは、オレはエルフィア人になるわけで・・・、そうなると、オレが地球人だってことは・・・」
「和人が地球人だってことに変わりはないわ」
クリステアが真面目な顔で言った。
「でも、日本じゃ二重国籍みたいな扱いになるんじゃぁ・・・」
「大丈夫ですわ。エルフィアでは、エルフィア人として扱われます」
「リーエス、ユティスの言うとおりね。何度か言ったけど、国籍なんて地球人だけが内輪で気にするアソシエーション的な契約よ」
「そうそう。エルフィア人はそんなものは気にしないし、和人が地球の日本人だという国籍を失うわけじゃないわ」
アンニフィルドが付け加えた。
「それにエルフィアは住民税や所得税を取ったりはしないわよ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「クリステア、そうじゃなくて、問題は地球なんだ。日本なんだよ・・・」
「どういうことですの?」
ユティスがクリステアと顔を見合わせた。
「日本じゃ、両親のどちらかが外国籍だと、二十歳までは日本以外の国籍をようやく認めるようになったんだけど、二十歳の誕生日前までに、両親のどちらの国籍にするか決めなくちゃならないんだ」
「基本、二重国籍は認めないという方針ね?」
クリステアはあきれ顔になった。
「二十歳ってことは、成人した後に本人の所得税や住民税だとか外国に取られないように、どうせお金がらみのそんなところかなぁ・・・」
「確実に市民から税金を搾り取るシステムのようねぇ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「そうすると、和人さんは・・・」
ぎゅぅ・・・。
ユティスが和人の手を握った。
「酒は飲むし、成人ビデオは見るわで、立派な成人よ。日本政府の見解からすると、和人の二重国籍は認められないってことになるわね」
アンニフィルドが陽気に言った。
「成人ねぇ・・・」
和人も考え顔になった。
「あ、忘れてた。一応、所得税納められるだけ稼いでるらしいわ」
「素晴らしいですわ、和人さん」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ユティスの言うとおりよ。模範的市民じゃない。誇りに思いなさい、和人」
「クリステアにそんなことを褒めてもらってもねぇ・・・」
「とにかく、あなたの国では、成人は日本国籍か外国籍かの選択を迫られるというわけね」
クリステアが結論付けた。
「リーエス」
こくん。
和人は頷いた。
「それは困りましたわ・・・」
ユティスも困り顔になった。
「どうするんだい・・・?」
「大丈夫じゃない。エルフィアにとってだけの話だから、地球のだれかに報告する義務はないわよ」
アンニフィルドが言った。
「そうですわ、和人さん!わざわざ市役所とかいう集会所に申告する必要はありませんわ」
「集会所?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「ちょっと違いけど、ま、いいかぁ・・・」
カフェでは、石橋と二宮とイザベルが依然として話を続けていた。
「だけど、石橋、おまえもエルフィア人に随分もててるじゃないか?」
二宮が石橋に目配せした。
「そんなぁ・・・。別にもててるわけじゃないです」
「キャムリエルってアンニフィルドの子分、おまえにお熱じゃないのかぁ?」
「そ、そんなこと言われても・・・」
「キャムリエルさんって、とても愉快な方ですね?」
イザベルが言った。
「はい。それに正直な方です」
「そうですよね、石橋さん」
「ユティスさんもそうですが、エルフィアの方は基本的に偽りはおっしゃいません」
こくん。
石橋は自分で深く頷いて言った。
「アンニフィルドは例外っすよぉ。アイツは口が悪い」
二宮が言った。
「くしゅん!」
「どうしました、アンニフィルド?」
トレムディンがドクターらしい反応を示した。
「だれかが、わたしの良い噂をしてるようなの・・・。あは」
--- ^_^ わっはっは! ---
「地球の噂ってのは、大抵良くないもんじゃなかったの?」
クリステアが呆れたように言った。
「きっと二宮よ。わたしのいないところで宣伝してるんだわ、わたしの美貌を」
さらり・・・。
アンニフィルドはプラチナブロンドを揺らした。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ってな具合で、今頃、アンニフィルドは大くしゃみしてるってば」
「ふふふ。アンニフィルドさんと二宮さんは仲がよろしいですから」
「なに言ってるんだよぉ、石橋。自分はいつも苛められ役なんすから。ねぇ、イザベルちゃん?」
「いえ。けっこう健気に効果的な反撃をなさってると思います。うふふふ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「イザベルちゃん!」
「うふふふ。なんか自分でも信じられないです。5000万光年以上も遠くから来られた異星人のお友達が回りにいるなんて・・・」
イザベルが二宮に笑いかけた。
「自分はイザベルちゃんがいるだけでいいっすよぉ」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ、二宮さん、石橋さんがいるところで!」
「いいじゃないすかぁ。自分たち二人はもう恋人なんすから」
「わ、わたしなら気にしてないです」
慌てて石橋がイザベルに気を遣った。
「ほれ、イザベルちゃん、石橋もああ言ってるじゃないっすかぁ」
なんにも気を遣わない二宮が言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「ダメです。露骨ですよ、二宮さん」
「ふふふ。いいなぁ、二人とも・・・」
にこ。
石橋は微笑むと、羨ましそうに言った。
「ってな調子で、二宮のヤツ、イザベルの気を惹こうとやっきだわよぉ」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドが自分のくしゃみの解説をした。
「さてと・・・」
和人が時計を見つめて言いかけた時だった。
くるり。
その時、ユティスがアンニフィルドを振り向いた。
「どうしたのユティス?」
「ところで、先ほどのお話にあった成人ビデオってなんですの、アンニフィルド?」
「へっ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
ユティスは答えたアンニフィルドにきいた。
「なに言ってるんだい、ユティス!」
慌てて和人がユティスに言った。
ぽん!
アンニフィルドは手を打った。
「よくぞ聞いてくれたわ、ユティス。実はその質問が来ないかなぁって、さっきから待ってたのよねぇ」
「アンニフィルド!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「なんですの?」
「それ、子供を作ったり、作らないようにしたりする時の地球人の男性用教則ビデオよ。あは!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「テーマにそって、いろんな種類があるのよ」
「こ、こら!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「まぁ・・・!」
かぁ・・・。
ぱっ。
さささ・・・。
ユティスは真っ赤になって、和人の手を離して、一歩退いた。
「ユティス、そんなんじゃないったら!」
--- ^_^ わっはっは! ---
和人が弁解を始めた。
「アンニフィルド、説明するにことかいて、ユティスにどういう説明をしてるんだよぉ?」
ぶつぶつ・・・。
和人はアンニフィルドに文句を言った。
「あら、違ってる?」
「部分的には合ってるけど、ほとんど誤解される言い方だ!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「よぉーーーし、今度、みんなでオールナイトシネマに確認しに行ってみない?あは」
「賛成!」
「リーエス!」
エスチェルたちが賛成した。
「こ、こらぁ、アンニフィルド、そんなことどこで覚えたんだぁ?」
和人がパニックを起こした。
「に・の・み・や!」
クリステアが言った。
「二宮先輩?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「リーエス。当ったりぃ!ニ宮って、よく知ってるのよ、そういうことぉ」
「うわぉ、面白そう!どんな準備をすればいいかしら?」
「そんなもの見るのに準備だってぇ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
にたぁ・・・。
クリステアがハンカチーフを振った。
「コレ、コレ」
ひらひら・・・。
「あら、あらかじめ地球人の家族計画の方法を知っておくことはエージェントにとっても必須事項じゃない?ねぇ、ユティス?」
ぱち。
クリステアがウィンクをした。
「リ、リーエス・・・?」
かぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
ユティスは真っ赤になって答えた。
ぱんぱん!
「お、終わり。終わり!もう遅いんだから、みんな寝た方がいいんじゃないか?」
和人はこれ以上みんなから突かれないように手を打って言ったが、これが墓穴となってしまった。
「寝るぅ・・・?」
「だれと一緒に?」
アンニフィルドとクリステアは全員を見回した。
---^_^ わっはっは! ---
「ええ?」
「寝室は4つしかないのよ。しかも各部屋ベッドは一つ。と、いうことはと・・・。ひー、ふう、みー・・・」
アンニフィルドは全員の人数を数え始めた」
--- ^_^ わっはっは! ---
「グッドアイデアだわ」
「きゃあ!」
「これじゃあ、全部の部屋を二人部屋にするしかないわねぇ」
「羨ましいわぁ、和人!」
「ええ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だって、相手が決まってるのはあなたたちだけでしょぉ?」
「ば、ばか、そんな意味じゃないったら!」
「そうじゃないんですか・・・?」
「ユ、ユティスぅ・・!」
--- ^_^ わっはっは! ---
「だって、この人数だと、大使館のベッドは共用するしかありませんわ」
にこ。
ぽわんっ。
「コンタクティー・カズト。ご心配はいりません。船内にいくらでもお部屋はありますので、ドクターたちにはそちらをご案内いたします」
擬似精神体で表れたアンデフロル・デュメーラが静かに答えた。
ほっ・・・。
「アンデフロル・デュメーラ、助かったよぉ・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
にこ。
和人はエストロ5級母船のCPU、擬似精神体に微笑んだ。
「パジューレ(どういたしまして)、コンタクティー・カズト」
「なんてタイミングで出てくるのよぉ、アンデフロル・デュメーラ!」
「もう、ぜんぜん、からかい足らないわぁ・・・」
がっくり。
アンニフィルドとクリステアは顔を見合わせた。
 




