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324 養子

「アンニフィルドです。さぁ、お話も急展開していくわよぉ。エルドも地球に精神体でわざわざ現れたんだから、なにか重要なことを伝えたいのよねぇ・・・。トルフォがユティスを諦めてないのはわかってるし、ユティスと和人を守るために、どう実力行使するのかしら。SSも忙しくなりそうだわ」

■養子■



「さて、タリア?」

「なぁに、メローズ?」

「エルドから聞いてるだろうけど、秘密任務の件、早速取り掛かるわね」


ぴっ。

メローズは空中スクリーンをつけた。


ぱぁーーー。

すらすら・・・。

ぱっ。


「トルフォの公式訪問予定世界ね?」

「リーエス。でも、これ以外に彼のプライベート訪問地もあるの」

「それはここに載ってないわけね・・・」


すぅ・・・。

タリアは無意識に黒に近い濃い茶色のショ-トヘアに手をやった。


「大丈夫。よく似合ってるわよ」

すぐにメローズが言った。


「ええ?」

「まるで別人だけど、こういうのもステキね」

メローズは目を細めてタリアの頭を見つめた。


「ふぅーーーん・・・」

タリアは口元をかすかに上げた。


「そこに座りなさいよ。今度は、わたしがあなたにしてあげるわ」

にたにた・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


タリアはゆっくりと両手を揉むようにした。


「ん、ん。結構です。説明に戻ります」


ぱさっ。

メローズは自分の髪を押さえた。


「くっくっく・・・」

タリアは可笑しさを堪えるように下を向いた。


「で、どこから始めるの?」

「わたしの髪はこれ以上短くするつもりはありません!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違うわよぉ・・・。わたしの仕事よぉ!」

「そうでした。えー、まず、トルフォの公式訪問先からプライベート訪問地に至る転送ルートを探って欲しいわ」


「ここじゃわからないってことは・・・?」


「リーエス。実際に行ってもらうことになります。公式訪問先はすべてカテゴリー2よ。銀河間移動はおろか恒星間の転送すら確立していないわ・・・」


「トルフォがそこを発つ時、どうやってもエルフィアの転送システムかカテゴリー3以上の宇宙機を利用するしかないということ?」

「ご名答。まずは転送システムから当たってください」


「ふむ・・・」

タリアはよく考えながら聞いていた。


「どこのだれの転送システムを利用したのか、それを探り出して追跡をして欲しいの」

メローズは簡単に言った。


「あのさぁ、あなたは簡単に言うけど、支援先にはエストロ5級母船がもれなく上空待機してるわけでしょ?なぜ、こっちで転送リストをチェックできないわけ?」


「リーエス。もっともな質問ですね。説明します。最初の支援先から次の訪問地まではエストロ5級母船の転送システムに頼らざるをえないでしょう。その後は、トルフォが利用していなかったとしたら?」


「しかし・・・」

「そこからはカテゴリー3の世界が係わってるかもしれません・・・。てのはどうでしょうか?」


「カテゴリー3の世界ですって?なんでそのようなところが絡んでくるのよ?」

「さぁ・・・。それは可能性の一つです。それを明らかにするのが、タリア、あなたの今回のミッションです」

メローズは静かに言った。


「ふぅーーーん・・・」

タリアはピンときた。


[可能性は多分にあります」

「そこにトルフォのお知り合いっていう変人がいるかもしれないってわけね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もし、そうだったら、トルフォは転送システムではなく、そこの宇宙機を利用しているかもしれまんせん」

メローズはタリアのトルフォへの辛口批評を静かにやり過ごした。


「チャーター宇宙機ってわけね・・・?」


「エルフィアの公式宇宙機でないとしたら、可能性は大いにあります。そして、次の公式訪問地へはエストロ5級母船には現われずに、そのチャーター宇宙機で現地に進入します。用を終えればエストロ5級母船に連絡します」


「なるほど。そしてまた、エストロ5級母船の転送システムね・・・」

「リーエス。そういう風にすると、途中どこにどうやってよるか、こちらで直接把握することはかなり困難です」


「トルフォが転送システム以外の方法で支援先世界に現われたのがどこか、ということすら把握できないの?」

「リーエス。宇宙機に限らず、支援先現地の大気圏内発着機についても、管制システムからモニタするようにエストロ5級母船に指示をしています」


「だけど、どんな船だってなにかしらの乗客名簿があるんじゃない?どの船にトルフォが乗るかまでは、把握できないの?」

「それは一理あります。でも、偽名を使われたら難しいですね」


「偽名・・・?トルファとか、トルフォナとか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


くっくっく・・・。

タリアは自分で言っておいて笑い出した。


「彼はドラッグクイーンではありません。絶対に女性風の名前は使わないでしょう」


「よく使いそうな名前は?」

「不明です」


「関連ありそうな名前をリストアップしてくれる?」

「リーエス。すぐにとりかかりましょう」


「アルダリーム(ありがとう)。乗客名簿の件はどうするつもり?」

「キャムリエルが、アンデフロル・デュメーラの支援で、すべてのストロ5級母船にキューを投げかけています」


「プライベート・シップの搭乗者もわかるのね?」

「リーエス。支援先の政府に担当エージェントを通じて依頼中です。ですから、いつ、どこの、どの船がだれの輸送に係わったかはすぐにわかります」


「名前さえわかれば、そっちは大丈夫ってことか・・・」

「そういうことです」


「非開示ってことはないでしょうね?」

「可能性はあります」


「開示の拒否にあったら?」

「別の手を・・・」


「別の手?」

「あなたですよ、タリア」


--- ^_^ わっはっは! ---


「・・・」

タリアは一瞬黙った。


「手段は選ばないでいいんなら・・・、そうするわ」

「怪我人や死人は困るんですが・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな野蛮なことするわけないわ。もっとスマートにするのよ」

にま・・・。

タリアは明らかにわくわくしてる様子で言った。


「リーエス。それは、あなたにお任せします、タリア」


「で?」

「あなたは、支援先で出会うすべてのエストロ5級母船との問い合わせに対し、優先的に情報提供を受けられるよう通知してあります」


「エストロ5級母船のCPUへのアクセスのコードネームは?」

「赤頭巾ちゃん」

「アッカ・ズキンチャン・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「リーエス。地球を代表する女の子の名前です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あ、そう・・・」

「なにか?」

「ナナン。変な名前だけど、我慢するわ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あなたの頭脳波もセキュリティーシステムに登録してあります。超時空通信も使えますので、緊急時は母船にアクセスしてください」


「リーエス。それで、肝心のキャムリエルは大丈夫なの?」

「恐らく・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「随分とあやふやねぇ・・・」

「あなたの元部下ですよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わたしの育て方に落ち度があったって言いたいの?」

「ナナン。事実を述べたままです」

「まぁ、いいわ」




エルフィア大使館ではエルドがキャムリエルの懸念に対して、極めて重要な説明を終えようとしていた。


「それで、和人のことだが・・・」


「オレが地球人だから、寿命も老化もエルフィア人の10倍早いってことですよね?」

和人は覚悟しているように言った。


「和人さん・・・」

すぅ・・・。

ユティスは和人に寄り添い心配そうな表情になった。


「これは、わたしが委員会の最高理事としてではなく、ユティスの父として是非とも和人にお願いしたいんだが・・・」


「オレにですか・・・?」

「リーエス」

エルドは優しく和人を見つめた。


「あれからいろいろ考えてみた。だが、他に方法はない・・・」

「じゃ、やはり・・・」


こくん。

ユティスはエルドを見つめて小さく頷いた。


「和人、きみには、わたしの養子になってもらおう・・・」

エルドの発言は爆弾並みだった。


ど、どぉーーーん!


「オレがあなたの養子に・・・?」


ぞくぞくぅ・・・。

和人は全身の毛が逆立ったように感じた。


「リーエス。きみの承認はもちろん、なるべく早い段階できみの両親の了解を取りたい」


「オレの両親に会うと言うんですか?」

和人はびっくりした。


「リーエス。まずは、きみに、いろいろと説明しなくてはならんな」

エルドは周りの人間を見回した。


「まぁ、結局そういうことね・・・」

クリステアがアンニフィルドに目配せした。


「エルドも人の親ということよ」


にこ。

アンニフィルドは和人に微笑んだ。


「ど、どういうことで・・・?」

和人はいきなりのことに面食らっていた。


「きみの寿命をエルフィア人並みに伸ばすことは・・・、実は、エルフィアの医科学にとって不可能ではないんだ」


「ええ?」

和人は寄り添っているユティスを急いで振り返った。


「リーエス。わたくしがエルドに頼み込みました・・・」

ユティスは和人に申し訳なさそうに言った。


「あの、さっぱり理解してないんですけど・・・」

和人は再びエルドを見つめた。


「きみの寿命をエルフィア人並みにすることは不可能ではないということだ」

「でも、ユティス、きみがオレたち地球人の寿命のことを知った時には・・・」

和人は説明を求めるようにユティスを見つめた。


「リーエス。わたくし、意識を失うくらいショックでしたわ・・・」

「カテゴリー2でも、地球人は特別に寿命が短かいからね」

トレムディンが言った。


「その時には、まさかと思ったからね・・・」

「それで、オレに施すってことは、いろいろ問題が山積みになってきそうなんですが、大丈夫なんですか?」


「リーエス。ただ、厳しい条件がある・・・」

「条件・・・?」

和人は一言も聞き逃すまいとエルドを見入った。


「うむ。それを適用できるのはカテゴリー3以上の世界の人間に限るということだ」


「リーエス。カテゴリー2以下の世界には、自分をコントロールできない独占欲の強い人間がまだまだ大勢いるのよ。だから、そこでそれを行なうことは、寿命延長処置を巡って奪い合いや争いを誘発しかねないの。その世界を混乱に陥れかねないわ」

エスチェルは慎重に言った。


「それでは、カテゴリー2のオレには適用されないはずでは・・・?」

「そうね・・・。たとえ、ユティスと連れ合いになるとしても、あなたは地球人のまま」


かぁ・・・。

「連れ合いだなんて・・・」

ユティスの側で、和人は真っ赤になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


くすくす・・・。

「今さら、恥ずかしがることもないでしょうに」

クリステアが笑った。


くるっ。

エスチェルが踵を返してエルドを見つめた。


「リーエス、ドクター・エスチェル。きみの言うことは正しい。このまま、もし、和人がユティスと一緒になるとしてもだ・・・、それでは、和人はわたしの単に義理の息子になるというだけのことだからな・・・。エルフィアの規定では、和人、きみは地球人のままだ。わかるかね?」

そして、エルドは和人をじっと見つめた。


「リーエス。オレは地球人です」


「そういうわけだから、委員会規定では、カテゴリー2の世界、支援先の現地の人間になんらかの寿命延命処置、細胞活性化処置を施すことは禁止されている。つまり、きみが地球人である限りそれは適用されるということだ」

「リーエス・・・」

和人はなんだか変な感じがした。


「ダメじゃないですか、それじゃあ・・・」

キャムリエルが言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「だから、まずは、きみにエルフィア人になってもらうんだ」


にこ。

エルドはこともなげに言った。


「そういうことね」

クリステアも微笑んだ。


「わたしの養子なら、わたしの息子だ。義理の息子とは訳が違う」

「なるほど・・・」

アンニフィルドは大きく頷いた。


「エルフィア人としての権利が発生するわけね」

「義務もよ、アンニフィルド」


「どんな義務ですか?」

和人がクリステアを見た。


「そうね・・・。ユティスを守ることかしら?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わはは。是非そう願いたいね。和人、わたしも人の父親だ。娘の幸せを望む気持ちに、エルフィア人も地球人もない。わかってくれるな?」


にっこり。

エルドは優しく微笑んだ。


「あの、それ・・・」

和人は大きく口を開けてユティスを呆けたように見つめた。


「それなら、和人はエルフィア人だ。医学的な処置を施すことは不可能ではない。そうだね、ドクター?」


にこっ。

「リーエス」


ぱち。

エルドは大きく微笑むと、ユティスに片目をつむった。


「リーエス。うふふ」

「でも、オレがあなたの養子になるということは、ユティスときょうだいになるということで、そのぉ・・・」


「言いたいことはわかるよ。連れ合いになれるかどうかは、遺伝子的に3親等以内の近親者でなければ問題はない。地球の法律でもそうだと、ユティスから報告を受けているよ」


「リーエス。和人さんと本当の家族になれるなんて・・・」

「ユティス・・・」


ぴとぉ・・・。

ユティスは和人にぴったりくっついた。


「これで、トルフォはもうなにもできなくなったわ」

「わたしたちも、ますますもって責任出てきたわ。あは」

アンニフィルドがクリステアに微笑んだ。


「ということで、わたしは戻るが、和人・・・」

「リーエス」


「わたしには娘しかいない。きみが長男だ・・・」

「リーエス・・・」


すうっ・・・。

エルドの精神体は手を振ると、素早く空中に溶けるように消えていった。


ぎゅぅ。

ユティスが和人の腕につかまった。


「お父さま・・・」

「エルド・・・」

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