319 焼鳥
「はい、アンニフィルドよぉ。和人との恋に未練はあるもの、小柄で可愛い石橋は、エルフィアの男性には人気あるみたい。彼女をめぐって、トレムディンとキャムリエルのバトルは地球人並みに面白くなってきたわぁ。あは!」
■焼鳥■
ふぅ・・・。
石橋可憐はユティスたちエルフィア人を見つめて溜息をついた。
「なんか、人生観が完全に引っくり返っちゃいました・・・」
ぼう・・・。
石橋が囁いた。
「そんなに変かい、ボクたち?」
キャムリエルが石橋に呟いた。
「変なんかじゃないです。ただ・・・」
「地球人の言う鬼に見えるのかしら?」
ドクター・エスチェルがにやりとした。
「ドクターは般若にはよくなるけどね」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぺろ。
キャムリエルが舌を出した。
「言ったわねぇ、キャムリエル。次の任地が決まったら、対病原菌・ウィルスワクチン、地球風に処方してあげることにするわ」
「地球風・・・?」
「注射ですよ、特大の・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
ぴっ・・・。
トレムディンは両手で注射を打つ仕草をした。
「じ、冗談じゃない。絶対に断るね、トレムディン」
キャムリエルは慌てて否定した。
「そんなんじゃなくて・・・。ついこの前まで宇宙人や異星人なんてぜんぜん係わりなかったのに、今じゃエルフィア、セレアム、そのた無数の惑星に生命があって・・・。ううん、それどころか、あなたたちは何千万光年と離れたところにいるエルフィア人だというのに、わたしとちっとも変わらない。そればかりじゃない、そんな人間が宇宙の隅々までいるなんて・・・」
石橋はエルフィア人たちを見つめた。
「うふふ。石橋さんもすっかりカテゴリー2になっていますわ」
ユティスは石橋に微笑んだ。
「カテゴリー2って言われても・・・。ユティスさん・・・」
石橋は未だ和人に思いを寄せていたが、和人の気持ちとユティスの本当の人柄に触れ、真紀の後押しもあったもの、一時のような熱情ではなく、少しずつ和人に対して気持ちが冷静になってきているのを感じていた。
(わたしじゃ、和人さんのお相手にはならないってことは、もうわかっているつもり。でも、完全に吹っ切るなんて無理・・・)
「わたし、とてもカテゴリー2なんかじゃありません。自分勝手なことばかり考え、そうしてるんですから・・・」
石橋はユティスを見つめた後、目を伏せた。
「そういうことを気づいて、自分を認めていらっしゃいます。それが、カテゴリー2ですわ」
にっこり。
「でも、ユティスさんは違う・・・」
「ナナン。わたくしもけっこう自分勝手ですわよ。うふふ」
ぱち。
ユティスは悪戯っぽく石橋にウィンクした。
「そんなことないです・・・」
石橋は慌てて否定した。
「でも、嬉しいです。石橋さんのような方が一人でも増えていただけているんですもの。予備調査とは言え、エージェントとしてここに来た甲斐があります」
「本当に・・・?わたしはカテゴリー2ですか・・・」
「リーエス。カテゴリーというのは文明の段階を表す指標ですが、その方たちの考え方の段階でもありますわ。気持ちの持ち方、感じ方・・・」
「感じ方ですか?」
「リーエス。地球人はロケットで宇宙に出て、自らの星を見つめることができ、カテゴリー2に入りました。けれど、カテゴリー1的感じ方の人も、カテゴリー2的感じ方の人も、そして、カテゴリー3的な感じ方の人もいらっしゃいます。大抵の世界において、感じ方や考え方が複数のカテゴリーにまたがっているのは普通ですわ。ですから、石橋さんがカテゴリー2の感じ方や考え方をされていても、なんの不思議もありません」
ユティスは石橋を気遣い、慎重に言葉を選んでいる様子だった。
「じゃ、わたしは、カテゴリー1じゃないんですね?」
「リーエス。石橋さんは、カテゴリー2です。ひょっとすると、カテゴリー3にも入られていらっしゃるかもしれませんわ」
すすす・・・。
「ちょっといいかな?」
「リーエス、トレムディン」
こくっ。
ユティスが頷くと、トレムディンが楽しそうに笑った。
にんまり・・・。
「可憐、そういうことですから、わたしとお食事をしていただけますか?」
ドクターの脇で、トレムディンが石橋を誘った。
「はい・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「あのぉ、それとカテゴリー2となんの関係が・・・?」
石橋が困ったように言った。
「まぁ、言うなれば無関係という関係ね」
エスチェルが言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「随分と数学的じゃない?」
「一応、わたしもカテゴリー1は卒業しましたんで」
ぱち。
トレムディンがドクター・エスチェルに片目をつむった。
「そうそう、今晩はヤキトリバーに行くんだったわよね?」
エスチェルが期待するような口調で、ユティスと和人を振り向いて言った。
「リーエス」
「ええ、ご案内させていただきます」
「アルダリーム(ありがとう)」
エスチェルは二人に礼を言った。
「では、ドクターはお二人と。可憐、あなたはわたしと同じ席で・・・」
「ええ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
ばさ。
「ずるいぞ、トレムディン。ボクだって彼女を誘う予定だったんだからね」
キャムリエルがトレムディンに近づいた。
「予定は変更する可能性があるから予定なんですよ、キャムリエル」
トレムディンは落ち着いていた。
「ああ、そうかい。予定のない人間には変更する以前の問題だね。可憐の予定はボクだけ。彼女はボクと一緒に行くんだからね。そうだよね、可憐?」
「ええ・・・?」
--- ^_^ わっはっは! ---
にんまり・・・。
「見ものだわ、この二人。可憐を巡っての熾烈なオス同士の戦いよぉ。あは」
アンニフィルドが面白そうに、エスチェルに囁いた。
「うわぉ、リーエス。エルフィアじゃ滅多に見れないわね」
エスチェルが同意した。
「ここは地球だから、彼らにもカテゴリー1的オスの本能が目覚めたのかしら?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「露骨な言い方だわ、アンニフィルドもドクターも」
クリステアが二人をたしなめた。
「あら、自分を巡って互いに争う男たち。女性ってこういうの悪い気しないんじゃない?ねぇ、アンニフィルド?」
「リーエス、ドクター。『どっちも勝ってぇ!』て、感じかなぁ」
「欲深いわねぇ、アンニフィルド・・・」
クリステアがあきれ顔になった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だってぇ・・・」
「だってぇ?」
「どっちか一人ってのは可哀想じゃない?」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドがトレムディンとキャムリエルを見つめた。
「はい、はい・・・」
クリステアはそれ以上続けるのを止めた。
「石橋だって内心嬉しいはずよ」
エスチェルが言った。
「でも、石橋は迷惑がってるって感じだけど・・・?」
クリステアがその3人を観察した。
「そりゃ、石橋も今は戸惑ってるけど、ああいうのがいなくなると、急に寂しくなるものよ」
エスチェルはクリステアに反論した。
「ふむ。さすがにベテラン経験者の言葉は説得力あるわぁ・・・」
アンニフィルドがドクターに言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「それ、ぜんぜん褒め言葉になってないわよ、アンニフィルド」
「そう?」
アンニフィルドは空とぼけた。
--- ^_^ わっはっは! ---
そして、ドクター・エスチェル待望の夕方がやってきた。
「これで、お二人のご希望どおりですわね。うふふ」
にっこり。
ユティスがトレムディンとキャムリエルに微笑んだ。
「希望ったってぇ・・・」
「そうですよぉ・・・」
ヤキトリバーの席には、石橋可憐の両脇にクレムディンとキャムリエルが陣取っていた。
「で、どうして、こうなるわけだい?」
トレムディンが石橋の右でキャムリエルを見て不満げに言った。
--- ^_^ わっはっは! ---
くるっ。
「あの、そうおっしゃられても・・・」
ぎゅぅ・・・。
石橋は右を向いて両腕を前に絞り小さくなった。
「そうだよ、可憐、きみの隣にボクだけいるから意味があるんじゃないか」
キャムリエルは石橋の左でトレムディンを見てさらに不満そうだった。
「つべこべうるさいわよ、二人とも。石橋もあなたたちの隣に座ることをOKしたんだし、あなたちの希望が叶ってるじゃない?」
アンニフィルドが言った。
「はい、生どうぞぉ!」
でーーーん。
でーーーん。
その時、2人の店員が生ビールを一同の目の前に並べた。
「うはぁ・・・。これが世に言う宇宙一の飲み物ってビールね?」
エスチェルが嬉しそうに目の前に並んだジョッキを見つめた。
--- ^_^ わっはっは! ---
「今日は、ドクターのために二宮さんがお席を用意したんですからね。たんとお飲みください」
石橋がにこやかに言った。
「わたしのために?」
「もっちっすよぉ。乾杯の音頭の後、それを一気に飲むんっす」
イザベルと並んで座った二宮が言った。
「乾杯の音頭は、だれに頼もうっかなぁ・・・」
二宮は一同を見渡した。
「・・・」
それを聞いて、エスチェルは急に黙りこくった。
「どうしたんすか、ドクター?」
二宮が心配そうに尋ねた。
「無、無理。さすが宇宙一だけあるわね・・・」
エスチェルが二宮を見つめ返した。
「へっ?」
「なんでです?」
「飲んでもないうちに?」
「だって、このテーブルの上の全部を一気飲めるわけないもの・・・」
「はい?」
--- ^_^ わっはっは! ---
二宮やアンニフィルドたちは一斉に目を点にした。
「あっはっは。なぁに言ってるの、ドクター。ジョッキは各人一つだけだったら。いくらビール好きの俊介だって、これだけ全部飲めやしないわぁ」
アンニフィルドが吹き出した。
「そうっすよぉ。さすがのオレもびっくりしました。あははは」
二宮が笑った。
「わたしは飲まないわよ。ウーロン・チャイにする」
クリステアが言った。
「わたしも今回は遠慮しておくわ」
アンニフィルドも同調した。
「せっかくドクターもいるのに、二人とも、なんでだい?」
キャムリエルが二人を見つめて不満そうに言った。
「そりゃ、SSだもの。エージェントとコンタクティーを守る人間が酔っ払っていたんじゃ、なにかあった時なんにもできないじゃない?」
「リーエス・・・。それも、そうだね・・・」
「さすがは超A級SSだ・・・」
キャムリエルもトレムディンも、アンニフィルドの言葉に感心した。
「あ、それ、いつぞや、わたしがあなたに言った台詞」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは、いつかクリステアに言われた台詞を今度はキャムリエルに言った。
「覚えてたのクリステア?」
「当然。SSの使命でしょ?」
クリステアはクールに答えた。
「へえ・・・。アンニフィルド、クリステアの受け売りなんすかぁ・・・」
にたにた・・・。
二宮がアンニフィルドに仕返しした。
「うるさいわねぇ。そんなことどうだっていいでしょ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンニフィルドは苦虫を潰したように顔をしかめた。
「じゃ、ボクたちSSはビールを一滴も飲んじゃいけないのかい、クリステア?」
しゅん・・・。
キャムリエルはいかにも残念そうな顔になった。
--- ^_^ わっはっは! ---
「お飲みになっても大丈夫ですわ、キャムリエル」
にこ。
ユティスがキャムリエルに微笑み、助け舟を出した。
「リーエス。ユティスの言うとおりね。あなたは別に酔っ払うほど飲んだって構わないわ。潰れたって、アンデフロル・デュメーラがいるもの。瞬時に転送してくれるわ」
「リーエス、そのとおりです。。ご心配いりません、SS・キャムリエル」
--- ^_^ わっはっは! ---
アンデフロル・デュメーラの声が響いた。
「ほら、言ったとおりでしょ」
「え、可憐の介抱は・・・?」
「ない。ない」
ひらひら・・・。
トレムディンは手を小さく横に振った。
--- ^_^ わっはっは! ---
「つ、冷たい・・・。そうなんですか、可憐?」
キャムリエルが不安そうに石橋にきいた。
「そ、そんなことありません!」
石橋はすぐに否定した。
「じゃあ、もし、ボクが・・・」
「お酒弱いんですか、キャムリエルさん?」
--- ^_^ わっはっは! ---
キャムリエルが言いかけている途中で、石橋が心配そうに尋ねた。
「ナナン。たぶん二宮くらいはイケると思う。でも、正直わからないな・・・」
「おお、それ楽しみっすねぇ!」
二宮が嬉しそうに言った。
「ダメですよ、二宮さん。飲み過ぎちゃ。わたし、ユティスさんみたく膝枕で恋人の介抱なんかしませんから・・・」
イザベルがすぐに二宮に釘を刺した。
「膝枕で恋人の介抱?イザベルちゃんがぁ・・・」
でれぇ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「だから、しません!ちゃんと最後まで聞いていてください、二宮さん」
「ちゃんと最後まで・・・してください?」
にまぁ・・・。
--- ^_^ わっはっは! ---
「もう、二宮さんのエッチ!しませんと言ったら、しません!」
イザベルはもう一度強調した。
「あなたは、トレムディンさん?」
くる。
石橋は今度は左を向いて、トレムディンにきいた。
「介抱が必要になるほど飲んだら教えますよ、あなただけに、そっと・・・」
「ええ?」
--- ^_^ わっはっは! ---
「聞こえてるよ、トレムディン。それは、きみとて同じさ。アンデフロル・デュメーラが送ってくれるさ。心配せずにビールでもなんでも飲むといいよ」
キャムリエルがトレムディンに言った。
「可憐、わたしと、キャムリエル・・・、もし、どちらか選べといったら?」
トレムディンがキャムリエルを無視して、石橋に王手をかけた。
「もう、口にされてます・・・」
--- ^_^ わっはっは! ---
「で、どっちと言ったら・・・?」
「どっちもボツね」
「クリステア!」
--- ^_^ わっはっは! ---




