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307 電車

「こんにちわ。アンニフィルドでぇっす。うー、やっと、ブレストとシェルダブロウの処遇が決められそうだわ。フェリシアスも手こずったわねぇ。でも、宇宙の彼方から見た地球、「ペール・ブルー・ドット(青白き点)」って、地球の有名人が言ってるらしいけど、見上げたもんだわ。だって、それこそカテゴリー2の精神だもの。宇宙から見た地球は、丸くなんかないわよぉ。点よ、点!わかるぅ?」

■電車■




アンデフロル・デュメーラが遅い夕食の私支度をしている間に、フェリシアスはエルドへの報告を行なっていた。


ぽわぁーーーん。


エルフィア大使館のリビングに空中スクリーンが現われ、中央にエルドの柔和な顔が映った。


「やぁ、フェリシアス。ベネル・ナディア(こんばんわ)。ごきげんよう」

「リーエス、エルド」


「シェルダブロウは捕捉、そして、ブレストは追放かね?」

「リーエス。仕方ありません。常にベストを狙っても、現実はベターになったり、グッドになったりします」


「うむ。わたしとしては、十分対応してもらえたと満足しているが・・・」

「反対派ですね?」

「リーエス。賛成派の裏工作だと言う輩がいる」


「トルフォで?」

「ナナン、彼は視察旅行中だ」


「またですか・・・?」

「きみは、彼がいた方がいいのか?」


「それはもっと困ったことになります」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ははは。他の理事たちの多くもそう言っている」


「彼の参謀のブレストが、こういうことをしでかしたからですね?」

「直接要因はね。だが、間接的には、ユティスの一時帰還時にいてもらってはな・・・。父親として、非常に心配だ・・・。ふふ」


「ユティスの一時帰還・・・。いつですか?」


「ドクターたちの帰還後すぐを予定している。そこで、委員会の総会があり、地球の予備調査の報告、中間判定、そのた重要事項が話し合われる」

「では、地球の扱いはそこで最終的に・・・」


「リーエス。心配いらん。ユティスたちのみならず、和人も招待することの意味は、支援計画の続行を確認するということだ」

「なるほど・・・。シェルダブロウは、近々に、エルフィアに召還するんですか?」


「本人の意思は、どうかね?」

「合衆国への帰化宣誓書を自ら返しました。心の準備はできているかと」

「わかった」


「問題はブレストです。彼も宣誓書には正式署名をしておりませんが、合衆国への亡命という形で、エルフィア籍を既に放棄しています」


「ふむ・・・。エルフィアの法には服さんというわけか・・・」

エルドはフェリシアスを見つめた。


「エルドは、どうするおつもりで?」

「きみの判断でよかろう。アンデフロル・デュメーラの封印処理をしたとあらば、一人では大したことはできまい」


「リーエス。しかし、物理的にはそうかもしれませんが、精神的、社会的には、地球に影響力を持っていることになります」

「すべてを黙認するわけにはいかんな」

「リーエス」


「委員会裁判を行い略式判決を言い渡すことにしよう」

「では、地球への追放を認めると?」


「認めるわけではないが、ユティスの支援計画を邪魔立てしようとしない限りな・・・」


「では、そのような通告を直接・・・?」


「ナナン、こちらから通告をすると、それを認めたことになろう。きみから仄めかすだけでいいだろう。きみからブレストに伝えてくれたまえ」

「リーエス」




地球の32000キロ上空のエストロ5級母船では、ゆうに20人は入れそうなダイニングルームに、アンデフロル・デュメーラの用意した食事がテーブルにきれいに並んでいた。


「さぁ、揃いましたよ」

アンデフロル・デュメーラから連絡が来た。


「わぁっ、ほーーーい!食事時間だよぉ!」

キャムリエルがすっとんきょうな声を出した。


「ずいぶんと嬉しそうねぇ、キャムリエル?」

「そりゃそうだよ、クリステア。ボクの生き甲斐だからね、食事はぁ!」


「うふふ。キャムリエルは、どんなお食事でも、好き嫌いなくお召し上がりになりますわね?」

ユティスが微笑んだ。


「リーエス。大概はOKだね。もし、ボクがこれはダメって言ったなら、それは、有機物ですらないんだよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それは、マズイ、マズくないの問題じゃなくて、そもそも食べれないってことじゃない?」

クリステアが言った。


「二酸化珪素。石よ、石。歯ごたえ十分だわ」

アンニフィルドが追い討ちおかけた。


「歯が全部欠けちゃうじゃないかぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「全員お揃いでしょうか?」

アンデフロル・デュメーラが確認してきた。


「リーエス。大丈夫ですわ。シェルダブロウ、あなたもご一緒ですよ」

にこ。


ユティスはシュエルダブロウに念を押した。


「リーエス・・・」

シェルダブロウは表情を変えずに答えた。




その頃、カラテの稽古を終えたニ宮は、イザベルと駅までの20メートルをできるだけ時間をかけて歩いていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「イザベルちゃん、今日も気合入ってましたね?」

「はい。ニ宮さんに負けてられませんから」

イザベルはまだ稽古で紅潮した顔をほころばせた。


「あはは。オレ、イザベルちゃん勝ったことないじゃないっすかぁ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな意味じゃありません!」

「だって本当っす・・・」


「え?」


「イザベルちゃんにはメロメロっすよぉ・・・。プロポーズの返事も聞いてないし、まだ、ちゃんと自分の彼女すって、みんなに紹介できないっす・・・」


「ん、もう、こんなところで、なにを言ってるんですかぁ?」

イザベルは一応顔をしかめた。


「今日のデートは、けっこうきつかったっす」

「デートじゃなくて、稽古です!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それでも、オレ幸せでした。乱取りでイザベルちゃんの前に来た時は、ホント、ラッキーって感じで・・・」

「中段突きを胸に入れてたんですよね、ニ宮さん・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「事故ですよ。事故。大自然が仕組んだ事故・・・」

「あのね、ニ宮さん・・・」


「うっす・・・?」

「絶対に昇段審査、受かって下さいね・・・」

きらっ・・・。

イザベルは頼み込むような目をしていた。


「うっす・・・」

ニ宮は、その言葉の真の意味がただ昇段して黒帯を締める以上のことを言っていることを、なんとなくわかっていた。


「ミルクティーでいいっすかぁ?」

ニ宮はそう言うと、コンビニの中に一緒に入った。


「わたし、自分で買います」

「うっす」


すたすた・・・。

イザベルはコンビニの奥の方に歩いていった。


すたすた・・・。

ニ宮のその後を追いかけるようにして、ドリンクコーナーに向かった。


「オレもミルクティーにしまっすよぉ」

「ええ、甘いの好きなんですか?」

「イザベルちゃんみたく甘くはないっすけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ!」

にこ。

イザベルは一応微笑んだ。




二人は駅にあっという間に着くと、改札を抜け階段を上り、ホームに着いた。


「後5分あるか・・・」

ニ宮は時計を確認した。


「お家、お互いに反対方向ですよね?」

「うっす・・・」


「わたし、電車は後3分です・・・」

「イザベルちゃん・・・」


わいわい・・・。

がやがや・・・。


ホームには後から後から人がやって来て、ニ宮とイザベルはくっ付くようにして、ホームの中心付近に立っていた。


「その電車に乗るんすか?」

「乗って欲しいですか?」

イザベルがニ宮を試すような切り返しをしてきた。


「イザベルちゃんが、そう思うんなら・・・」

「・・・」


「・・・」

「ずるい・・・」


イザベルはニ宮を見つめた。

「ずるいです、ニ宮さん・・・」


「うっす。駆け引きは、事務所でも、客先でも、道場でも必要っすから・・・」

「わたしとでもですか?」


「うっす・・・。でないと、すぐ負けちゃそうっす・・・」

ニ宮は目を伏せた。


「うふっ」

イザベルは微笑んだ。


「ニ宮さん、国分寺さんたち、今、地球にいないんですよねぇ?」

イザベルは話題を変えた。


「うっす。里帰りっすねぇ・・・」

「わたし、いつまでバイトすることになるんですか?」

イザベルは複雑な気持ちでニ宮を見つめた。


「イザベルちゃんが、正社員になるまでっす・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ぷふっ。それじゃ、これからずっと、いなくちゃならないじゃないですかぁ?」


イザベルは吹き出した。

にこ。


「いて欲しいっすよぉ、自分は・・・」

「ホントに?」

「ホントにっす・・・」


「あのね、ニ宮さん・・・。わたし、今日ね・・・」


「1番線に電車がまいりまぁーーーす」


「うす?」

「だから・・・」


ぷわぁーーーん。


「・・・なんです」


駅の案内アナウンスと同時に電車のクラクションが鳴り響き、ニ宮はイザベルの言葉を聞き逃した。


どかどかどか・・・。


電車のドアが開くと同時に人が流れ出てきて、ニ宮は脇に押され、イザベルと離れてしまった。


「きゃあ!」

イザベルも同じく人の流れに押されてニ宮と反対方向に押された。


どかどか・・・。

今度は、電車に乗り込む人が、一斉にドアに殺到した。


「ちょっと、タンマ!オレ乗りません!反対側の電車っすてばぁ!」

ニ宮が叫んでも、乗客に押されると、そのまま車両に積み込まれてしまった。


ぷしゅ、ぷしゅう・・・。


「降りまぁーーーす!」


ぷしゅうっ。


ニ宮は大声を上げもがこうとしたが、身動きもとれずに、ドアは閉まってしまった。


「く、くっそう・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




「さて、召し上がれ!」


アンデフロル・デュメーラのダイニングルームで、キャムリエルがおどけて両手を広げた。


「あなた、ホント、ニ宮そっくりになってきたわよぉ」

クリステアがキャムリエルに言った。


「うふふ。なんかとても陽気ですね、キャムリエル」

ユティスが微笑んだ。


「これは?」

和人がステーキのようなものを指した。


「これは、豆類の蛋白質から作ったステーキです、コンタクティー・カズト」

アンデフロル・デュメーラが答えた。


「やっぱりかぁ。そう思ってたんだ」

「エルフィアでは、ほとんどすべて植物由来の食材を使います」


「召し上がってみてください」

アンデフロル・デュメーラの一言で、和人はそれにぱくついた。


ぱく。

もぐ・・・。

じゅわぁ・・・。


「うん、すごく美味しいよ、アンデフロル・デュメーラ」

にっこり。

和人は微笑んだ。


「やはり肉とは違う感触だけど、適度に柔らかくて、適度に歯ごたえもあって、そっても美味しいよ」

和人は感想を述べた。


「エルフィアでは、食事はすべて天然のもので用意いたします」

アンデフロル・デュメーラは言った。


「こっちのサラダも美味しいですよ」

トレムディンが取って皿に盛ると、和人に回した。


「これはサラダだね?」

「リーエス。ハーブが入っているから、とても身体にいいわよぉ」

ドクター。エスチェルが言った。


「これは?」

グラスには透明で、わずかに黄緑色の液体があった。


しゅわしゅわぁ・・・。


「なんかシャンパンみたいだね?」

和人がユティスを見た。


「リーエス、和人さん。これは、真紀さんからいただいだ、地球産の正真正銘のシャンパンですわ」


「え、ホント?」

「リーエス。お試しになってみてください、和人さん」


にこ。


「うん。それじゃぁ・・・」

和人はそのグラスを右手で持つと、おなじく右手にグラスを構えたユティスに、微笑んだ。


「きみの微笑みに・・・」

「和人さんの・・・」


「平凡さに!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「こら、だれだよぉ?」


ばっ。

和人はアンニフィルドの方を向いた。


「あは。つい出ちゃったぁ」

「いつも、きみは絶妙のタイミングに入ってくるんだから」


「仕方ありませんわ。SSはタイミングを逃すと仕事になりませんもの」

ユティスが、アンニフィルドの弁護をした。


「遅れたら、取り返しがつかないでしょ・・・?」

クリステアが真顔で言った。


「突っ込みもかい?」

「そうそう。これも訓練の一貫よぉ」

アンニフィルドが言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それでは、乾杯の仕切り直しです」

にっこり。


そう言うと、ユティスは自分のグラスを和人のそれに触れさせた。

かちん。

軽く高く清んだ音が鳴った。


「ふうん・・・。これが地球式の乾杯ね?」

ドクター・エスチェルが物珍しそうに言った。


「エルフィア式ってのがあるの?」

和人がエスチェルにきいた。


「リーエス・・・。お祝い用の特別なのがね」

「そうなんだ・・・」


「リーエス。グラスをみんなで少し持ち上げるだけの簡単な乾杯から、もっと複雑なものと、いろんなのがあるけど・・・。お祝い用の特別バージョンをユティスから習ってないのぉ?」

エスチェルは意味ありげに和人を見つめた。


「へぇ?お祝い用の特別なものって・・・?」

和人はユティスを見た。


「そんな特別なのありましったっけぇ・・・?」

キャムリエルがエスチェルにきいた。


「しっ。あなたは黙ってなさい」

たちまち、エスチェルの制されてしまった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あらあら、ユティス、教えてないのねぇ・・・?」

にたにた・・・。

エスチュルは意味ありげに笑って、アンニフィルドを振り向いた。


「ほぉーーーんと、ちゃんと教えるべきだわ、ユティス」

アンニフィルドはエスチェルにウィンクを返した。


「礼儀よ」

エスチェルはダメを押した。


「わたくし、地球式で満足ですわ・・・」

ユティスは、なにかしらの企みを察して、和人を見た。


「きみたち、また担ごうとしてるだろ?」

「そんなことないわよ、ねぇ、エスチェル?」

にこ。


「リーエス、アンニフィルド」

にこ。

二人は見合うと微笑んだ。


「思いっきり怪しい・・・」

和人はエスチェルを見た。


「実践させようたって、そうはいかないからな・・・。ね、ユティス?」

「リ、リーエス」


「ホントにあるの?」

和人はクリステアを見た。


「そうねぇ、お互いにグラスを合わせた後、一口含んでそれを相手に渡すのよ・・・」

「グラスを?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ナナン。口に含んだ一杯を相手に口移しするの」

「ほ・・・、ほ、えええーーーっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だからね・・・」

「リーエス・・・」


「普通、プライベートでしかしないわよぉ・・・」

クリステアがユティスを見た。


「リーエス。プライベートなんです。和人さん」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あーあ、言っちゃったぁ・・・」

エスチェルはつまらなさそうに、アンニフィルドと頷き合った。

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