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299 着陸

■着陸■




合衆国大統領と国務長官を乗せたジェットヘリは、宿泊ホテルから空軍基地までの十数キロをあっと言う間に飛んでいった。


「みんな腰を抜かしますよ」

大統領につきそう補佐官が言った。


「それは困るな。選挙会場に行けなくなるではないか」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ははは。さすが、大統領、ご冗談がうまい」

補佐官はすぐに持ち上げた。


「いやいや、どうして、ベスのジョークも最高だぞぉ」

「お褒めに預かり光栄です、大統領。でも、ジョークは時と場所をわきまええたものでないと、はた迷惑になります」

国務長官は冷静に言った。


「わたしのジョークはつまらんかね?」

「ええ。つまらないですわ。先が読めますから・・・」


「はっは、ベス、さすがだなぁ。まいった。まいった」

「エルフィアのユティスがわたしのように先読みが上手くなければいいんですけど・・・」

国務長官は大統領を見つめた。


「なんだ、なんだぁ?トゲのある言い方だなぁ・・・」

「わたくしもホワイトハウスでは薔薇ですから」


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく薔薇にはトゲがあるもんだからな。わははは」

「美しい薔薇には、ですよ、大統領・・・」

急いで補佐官が大統領に耳打ちした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「いやぁ、確かに美しいですなぁ、薔薇というもんは・・・。わたしは特にオールド・ローズが好きですぞ。質素にも係わらず、美しい」

「質素はよしとしても、国務長官の前でオールド・ローズはまずいですよ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぴくぴく・・・。

補佐官の顔には青筋が立っていた。


「あーーー。あの一面黄色く咲くやつです」

「ホワイトハウスを彩る赤い薔薇が寝室におありなんですね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「プランターですよ。プランター。ほれ、庭とか・・・」

「隠し部屋で、お育てなんですか、赤い薔薇を?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな部屋はない。フィル・フリンセンから聞いている」

「前大統領は、不倫はしてないですからね・・・」

「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「とにかく薔薇はいいな。贈るのも贈られるのも。薔薇の束はいつだって最高だ」


「あの、大統領、国務長官のおっしゃっているのは薔薇の束ではなく、一輪の艶やかな赤い薔薇のことです・・・。大輪の赤い薔薇・・・」

「そ、そうだったなぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




ぱらぱら・・・。

空軍基地に大統領機が到着した。


ぐぉーーーん。

ぱらぱら・・・。

ひゅぅーーーん。

ジェットエンジンに燃料がカットされ、ローターのスピードが落ちた。


「危険だから下がって!」


MPたちが、ジェットヘリの着地地点から半径50メートル以内はだれも近づかないように、2、3メートル間隔でしっかり固めていた。




「さぁ、到着です」


かぱぁ。

すぐにジェットヘリのドアが開き、中からシークレット・サービス、国務長官、大統領の順で降りてきた。


とん。

とんとん・・・。


ふわん!

「んっまぁ!」


エンジンがカットされたにも係わらず、慣性で回っているローターの風圧が強いので、国務長官はスカートを押さえ、背を屈めるようにして前を急いだ。


たったった・・・。


「やぁ、諸君、ご苦労!」

大統領は手を振りながらヘリから進んできた。


ばらばら・・・。


すぐに大統領の周りにサングラスの屈強なダークスーツの男たちが取り囲んだ。




「大統領だぁ・・・」

「うぁーーー!」

「きゃああああ!」

「大統領ぉ!」

「うぉおおお!」


「諸君、出迎えありがとう!」

大統領は両手を上げてそれに応えると、群集はこのサプライズに大歓声を上げた。


ぎゅっ。

ぎゅ、ぎゅ・・・。

基地の司令官と大統領が握手し、国務長官がそれに続いた。


「大統領、よくお越しになられました」

「うむ。いきなりだったが、大事な日だ。よろしく頼むぞ」

「イエッサー!」


ぱっ。

ぱっ。

司令官が敬礼をすると、基地の全員がそれに続いて敬礼した。


「大統領、こちらへ・・・」

「うむ」


司令官は吹奏隊の前に大統領と国務長官を連れて行くと、そこで再度敬礼し、大統領と国務長官もそれに応えた。


「国家吹奏、並びに国旗掲揚!」

司令官が声を出すと、基地司令塔に国旗がするすると昇り始めた。


じゃ、じゃ、じゃんじゃぁーじゃぁーじゃーーーん。


国歌に合わせ、群衆も帽子を取ると、右手を胸に当て、国旗の掲揚を見守った。




そんな中、ブレストとシェルダブロウを乗せた超音速機も基地にあと10分のところまで来ていた。


「エアスピード、毎時380キロ。フラップ、ダウン、45度」


洋上から内陸に入り、既に超音速飛行から亜音速飛行へ、そして、今はもう着陸スピードを少し上まる程度で飛行していた。


「エアスピード、380。フラップ、45」

機長の声がコクピットに響き、副操縦士が復唱した。


ぴっ。


「エルジー・7259、ユージング・ランウェイ05L(エルジー・7259、滑走路05Lを使用せよ)」

基地の管制塔から最終支指示がきた。


「ラジャー、エルジー・7259。ランディング、ランウェイ05L(エルジー・7159、了解。滑走路05Lで着陸)」




「ブレスト大使、もう基地の敷地内に差し掛かります」

士官がブレストに窓から外を確認するよううながした。


「荒れたところだな・・・」


ブレストが見たのは、一面岩石と砂に覆われた砂漠地帯で、まばらに草木が

生えているだけだった。

「容易に人が入って来れないので、軍事的には大いに助かっています」

士官が答えた。


ぴんぽーん。


「シートベルトをご確認ください」


かちゃ。

かちゃ。

士官はブレストとシェルダブロウのシートベルトを確認した。


ぐぉーーー。

ぐぐ・・・。

フラップが45度の最大角度まで下がり、身が前に飛び出さんばかりに、機は一気にスピードダウンした。


「着陸5分前、全員着席の上、シートベルトを締めよ」

機内に機長の指示が飛んだ。




「大統領、見えました」


空軍基地の指令官が、超音速機が真っ直ぐに滑走路05Lを目指して近づくのを認めた。


「どこだ?」

「どこよ?」


大統領も国務長官も、司令官の指差す方向を見たが、雲ひとつない空になにも認めることができなかった。


「そんな高いところではありません。着陸進入中です。機はもっと低いところにいます」

司令官がもっと下を探すように言った。


「あ、あれよぉ!」

国務長官はやっとそれを見つけた。


「おお!あれだな?」

空にぽつんと浮かぶ点が超音速機だった。


「小さいなぁ・・・」

大統領は司令官の方を向いて言った。


「イエッサー、ジャンボジェットと比べる小さいです。しかし、あれで40メートルはありますから、近くで見られればその大きさを感じられるでしょう」


「なるほど、そうか・・・」

大統領は目の上に右手をかざし、目が痛くなるほど、それを見つめた。


「あれで超音速出てるの?えらく遅いわ・・・」

国務長官が言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「イエス、マム。いくら超音速機とはいえ、離着陸は通常のジェット機と同じです。超音速飛行をするのは、高度40000フィート以上、洋上に出てからです」

司令官は、国務長官に説明した。


--- ^_^ わっはっは! ---




(アンデフロル・デュメーラ、答えてくれ・・・)


着陸間際の超音速機の中で、シェルダブロウが精神波を使って、エストロ5級母船に呼びかけた。


(リーエス。なにかご用ですか、SS・シェルダブロウ?)

すぐにアンンデフロル・デゥメーラが応えてきた。


(ユティスは・・・、ユティスは、ここにもう来ないのか・・・?)

(エージェント・ユティスがそう言ったのですか?)


(リーエス。彼女は来ないと言った・・・)

(では、そういうことでしょう。それで?)

アンデフロル・デュメーラは、シェルダブロウの言葉を待った。


(わたしは・・・、わたしは、合衆国に亡命したいわけではない・・・。エルフィアにそんな風に思われると・・・、わたしはたまらない・・・。わたしは・・・)

シェルダブロウはブレストを見た。


ブレストはじっと前方を見つめたまま、なにを考えているのかわからなかった。


(それで、わたしはなにをサポートすればよろしいのですか?)

アンデフロル・デュメーラが質問してきた。


(だから・・・。もし、大統領がそれを宣言すれば、わたしは二度と地球から出られなくなるのかもしれない。それが約束、契約となる・・・。そう、この書類に書かれている)

シェルダブロウは宣誓書をもう一度見つめた。




彼らの前では、士官が、その宣誓書を受け取るのを、今か今かと待ち構えていた。


「宣誓書へのサインは済みましたか?」

士官がシェルダブロウを見つめた。




(アンデフロル・デュメーラ、わたしは、サインなどしていないんだ・・・)

(リーエス。SS・シェルダブロウは、『以上、無期限に保留することに同意する』とお書きになっていますね?)


(リーエス。それに、この宣誓書に書いてあるのは、『合衆国憲法に従うことを宣誓する』ということだね?)

(リーエス。その前には、『エルフィアの憲法他いかなる法をも破棄し』とあります)


(そうか・・・)

シェルダブロウは大いに迷っていた。


(アンデフロル・デュメーラ、わたしとブレストが大統領と会見する時、ユティスを呼んで欲しい。わたしは、ユティスに謝罪する。生物的にはもちろん、アソシエーション的にもエルフィア人を捨てることはできない・・・)


(委員会の処罰は恐くないのですか?)

(リーエス。正直不安だ。しかし、どういう判決が出ようが、例え、カテゴリー1の世界で一生送る羽目になろうが、エルフィア人の誇りまで捨て去ることはできない・・・)


(リーエス。わかりました。エージェント・ユティスにお伝えします)

(アルダリーム(ありがとう)・・・)

(パジューレ(どういたしまして)、SS・シェルダブロウ)




空軍基地の中央管制室前のエプロンでは、無事に大統領歓迎式が終わり、次はブレストたちを迎えるだけとなっていた。


しゅぉーーーん、しゅぉーーーん。

超音速機は既に滑走路05Lに着陸した後、用意された歓迎場所までタキシングをしていた。


「終に、来たな・・・」

大統領は司令官に言った。


「イエッサー」


「ドアを開けたら、エルフィア人はいなかった、なんてことにはならないでしょうね?」

国務長官は心配そうに皮肉を言った。


「それは不可能です。だれも飛び降りたとは報告されておりません、マム」


--- ^_^ わっはっは! ---


司令官はあっさりとそれを受け流した。


しゅぉーーーん、しゅぉーーーん。

超音速機は誘導路上で、エプロンへと方向転換した。


「さぁ、きたぞぉ!」


しゅぉーーーん、しゅぉーーーん。

ぴた。

マーシャラーが両手を高く上げ、頭上でそれを交差させた。


しゅぉーーーん。

しゅーーーん。

しゅん・・・。

超音速機は所定の位置に着くと、すぐにエンジンが切られた。


ぶろろろ・・・。

タラップ車が機体につくと、軽やかな足取りで、隊員が超音速機のドアの前に着いた。


かぱん・・・。

すぅーーーっ。

やがて、ドアが開き、中から士官が頭上を気をつけながら出てきた。


すた・・・。


そして、向き直ると、士官は頭上に注意するようサポートしながら、ブレストとシャルダブロウが出てくるのを見守った。


たん。


ブレストはタラップの上で立ち止まると、眩い太陽の光に思わず左手をかざし、何千人という人間が自分に注目しているのを見つめた。




「うわぉーーー!」

「おおおーーー!」

エプロンのいたるところで歓声が上がった。




「まいりましょう、ブレスト大使」

士官が言うと、ブレストとシェルダブロウはタラップを一段一段降りていった。




「エージェント・ユティス、わたくしです」

「まぁ、アンデフロル・デュメーラ。どうしました?」


「シェルダブロウが、あなたを必要としています。ぜひ、お会いしたいと」

「まぁ。どういうことですの?」

アンデフロル・デュメーラの言葉に、ユティスはすぐに反応した。


「シェルダブロウは、今後もエルフィア人としてありたいと・・・」

「そうですか・・・」

ユティスはフェリシアスを見つめた。


「リーエス」

フェリシアスはユティスに頷いた。


「わかりました、アンデフロル・デュメーラ。まいりましょう」

ユティスはそう言うと、アンニフィルドたちに向き直った。


「SSのみなさん、同行をお願いいたします。和人さんも、一緒にお願いいたしますわ」

にっこり。


「でも、オレ、合衆国のビザとか持ってないよぉ・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


和人が言った。


「大丈夫ですわ。大統領の許可があるまで、和人さんは地面に足を着けないようにすればよろしいんです」

にっこり。

ユティスは和人に微笑んだ。


「ええ?」


「わたしとアンニフィルドが、あなたの両脇を抱えてあげるのよ。あは。足は地面に着いてないでしょ?」

クリステアが笑いながら言った。


「リーエス。入国前の飛行中というわけ。わかったぁ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな冗談が通じるもんか。きみたちが地面に足を着けてれば、オレだって間接的に足を着けてるってことじゃないのかぁ?」

和人はすぐに言い返した。


「じゃ、わたしたちも空中に浮いてればいいんでしょ。ね、クリステア?」

「リーエス。お易い御用よ。4、5センチ浮くことにするわ。あは」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あのねぇ・・・」

和人は返す言葉がなかった。

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