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298 署名

■署名■




合衆国の内陸にあるこの基地は、地元住民への基地開放デーでもあり、お祭り騒ぎであった。


「おい、知ってるか、今日、特別機が2機来るんだぜ」

二人組みの軍用機ファンがカメラを片手に、航空談義に花を咲かせていた。


「ほう。こんなにいっぱいすごい機体が並んでるというのに、まだ来るのかい?」

「そうさ。なんでも大統領機だってな・・・」


「ええ?エアフォースワンはWDCにいるぞ」

「いや、ジャンボで来るんじゃないんだ。どうやら専用の高速ジェットヘリらしい。昨日ここからホテルに飛んでいったのを目撃したヤツがいる」


「ほんとか?」

「ああ。大統領はすでにWDCなんかにはいないんだよ」


「ウソこけぇ・・・」

「デマなんかじゃないぞ」


「信頼できる情報ソースか?」

「ああ、オレの知り合いの極秘情報だ。町のホテルがものものしい警備で、そこに国務長官があらわれたんだとさ。それでだな、テレビ局も大勢そのホテルに泊まったらしい」


「まさかぁ・・・」

「ほれ、見てみな・・・。制服じゃないサングラスのスーツが大勢いるだろ?」

男はあたりをぐるりと見回した。


「ああ。オレもそれには気づいていた・・・」

「ヤツらはシークレットサービス、SSさ」


「本当か?」

「間違いない・・・。基地の人間なら制服だし、町の人間ならジーンズにTシャツだ」


「オレたちみたく?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そういうこと」


「こんな町外れの空軍基地にスーツにサングラス姿で現われるなんて、SSじゃなきゃ、ファミリーの人間ぐらいだぜ」

「ファミリー?おまえの家族、SSなのか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「バカ野郎、ファミリーって言ったら、マフィアに決まってるだろ?」


「そうかぁ?」

「そうだよ」


「何時だ?」

「そろそろ、、10時だな」


「何時着だろう?」

「さぁな、大概昼前だから、そろそろじゃないか?」


「ビールでも飲もうぜ。ここは暑くてやってられないぜ」

「そうだな・・・」


すた・・・、すた・・・。

二人は軍の露店に向かってゆっくりと歩き始めた。


ぴた!

突然一人が立ち止まった。


「待て!本当に、入ったぞ・・・」


「エアフォースワン。クリア・ランディング。ユージング・ランウェイ05L(大統領機、着陸を許可します。滑走路05Lを使用してください)」

「ラジャー・エアフォースワン」

一人の聞いているエアバンド・ラジオが、大統領機のコールサインを拾った。


「げ・・・」

二人はお互いを見合った。


「こうしちゃいられない。エプロンに行こうぜ!さっさとビール買って撮影位置確保だぁ!」

「了解!」

だっだっだ・・・。




ぴーーーっ。

空軍基地では場内放送が始まった。


「ハロー、エブリバディ。ウェルカム・トゥー・ジ・エアベース(こんにちわ。空軍基地にようこそ)。市民のみなさまにおかれましては、本日は当空軍基地のオープンハウスにお越しいただき、誠にありがとうございます。駐機スポットには、展示機も豊富に50機以上ご用意しております。機には専属の隊員が付き添っておりますので、極秘事項以外はなんなりとご質問いただいてけっこうです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

「あっはっは!」

場内アナウンスのジョークに会場は盛り上がっていった。


「空軍アクロバット・チームよる展示飛行、その他、空軍機による展示飛行も計画しております。カメラファンのみなさんは、軍の女性隊員ばかりおっかけてないで、ちゃんと展示機も撮ってください。徹夜で準備した男性隊員が悲しみます」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは!」

「バッカみたい!」


「基地内売店のPXを開放しております。どうぞ、食料品、日用品などのお買い物をお楽しみ下さい。空軍特別価格での提供、並びに消費税は免除いたします」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あっはっは!」

「おもっしれぇーーー!」

「きゃははは!」

会場は爆笑の渦となった。


「露店やステージ、その他隊員とのコミュニケーション・プログラムと、催し物も多数ございますので、ぜひ、今日一日語存分にお楽しみください。午後より、今話題の地元ロックグループ、『ヨッコラショ』の演奏があります」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なんだい、『ヨッコラショ』って?」

「知らねえのか?なんでも、メンバーの一人が日本旅行で教えてもらった言葉で、パワーが湧き出てくる有名な呪文らしい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「パワーか・・・。ロックに最高ってわけだな?」

「そうだぜ。ヨッコラショ!」

彼は「ヨッコラショ」の意味を誤解していたが、使うタイミングはぴったしだった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「また、本日は特別プログラムとして、合衆国大統領と国務長官の来場が急遽決まっており、そろそろ到着する予定であります。大統領の歓迎式典は15分後からとなっております」


「どっひゃぁ!」

「おおおおおっ!」

「大統領だとぉ?」

「国務長官もだ!」

会場は騒然となったが、サプライズはそれだけではなかった。


「なお、さらにサプライズとして、地球の友人として遥か銀河の彼方からお越しいただいた、ブレスト、エルフィア大使ご一行をお迎えできる運びとなりました、つきましては、大統領を迎えての歓迎セレモニーを中央管制塔前のエプロン執り行いますので、みなさまご参集願います」


「エルフィア人?」

「そうだわ。あの可愛い娘ちゃんよぉ」


「名前、なんて言ったっけぇ?」

「ユティス」

「そう、それ!」


「また、セキュリティ上、立ち入り制限区域を設定しておりますので、くれぐれもその中には立ち入らないようお願いいたします。別にMPの仕事を確保するためではありません。これはジョークではないので、念のため」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは!」

「あはははは!」


だだだだ・・・。

ぴぴぴーーーぃっ!


鋭い笛の音がした。


「こら、きさまらぁ!今アナウンスがあっただろ?この中に入るんじゃない!」


ふざけて走り回っていた子供たちは、自動小銃を持ったMPにたちまちにして追い払われてしまった。




ぶわん。

エルフィア大使館にユティスとフェリシアスが戻ってきた。


「どうだった?」

クリステアがユティスにきいた。


「もう、お二人はあちらの方になられてました。手出し無用というわけですわ」

ユティスが両手を広げた。


「エルフィア人であることを放棄したんだ。彼らに任すしかない」

フェリシアスが後を続けた。


「なんですってぇ・・・?」

アンニフィルドはびっくりして、ドクター・エスチェルと見合った。


「どうなってるのかしら・・・?」

エスチェルも理解ができないようだった。


「エルフィア人を辞めるって、そんなことができるのかい?委員会の役じゃないんですよぉ・・・」

それを聞きつけたキャムリエルが割り込んできた。


「そうですよぉ。エルフィア人が、どこだか知らないけど、他の星の人間になれるわけないじゃないすか?」

「トレムディン、どこだかじゃなくて、地球よ。地球。地球人」

エスチェルが強調した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「合衆国民よ、正確に言うならば」

クリステアが補足した。


「だからさぁ、そんなことできるのかい?」

「地球はアソシエーションの世界だからねぇ。簡単にできるんじゃない?ねぇ」

アンニフィルドがクリステアを見た。


「リーエス。契約すればだけど。生まれた赤ちゃんが家族になるにも、契約と証人が要るそうよ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だれも信用しないんだぁ・・・」

「自分は対象外らしいけどぉ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「後、契約した途端、生涯に亘り高額の納税義務も発生するそうよ」

「払えるのかな、あの二人・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「それで、どうなるの?」

アンニフィルドがユティスを見つめた。


「しばらく静観するしかありませんわ」

にっこり。

ユティスは微笑んだ。


「でも、またきみに危害を加えたりしないのかい?」

和人が心配そうにきいた。


「その時は、わたくしを守って下さいますわよね、和人さん?」

にっこり。

ユティスは和人に微笑んだ。


「ええ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうそう。それは恋人の役目よぉ」

「ク、クリステア・・・」


「わたし、パスだからね」

「アンニフィルドまで・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「冗談はそれくらいにしたまえ!」

フェリシアスがにこりともしないで4人を見つめた。


「あーーーあ、すぐ水差すんだから・・・」

アンニフィルドがつまらなそうな顔になった。


「こういう状況は想定していたが、ユティスの言うとおり、下手にこちらから動く必要はないと思う。ブレストもシェルダブロウも馬鹿ではあるまい。自分たちだけで文明支援プログラムを実行できないことくらいわきまえているはずだ」

フェリシアスはユティスを見た。


「それで、合衆国がユティスに支援をするよう要求してきたら?ふふふ」

側からエスチェルが面白そうに質問した。


「そうですよ」

トレムディンが相槌を打った。


「順番をお待ち下さいかい・・・?」

和人が自信なさげに言った。


「正解よ」

「リーエス」

クリステアとユティスが同時に言った。


「文明とは、どのような方でもあまねく享受できてこそ、その意味があります。特定の方が独占すべきでも、そういう権利を主張すべきものでもありませんわ」


「そういうことよ、アンニフィルド」

「じゃあ、わたしたちがいる日本は特別扱いになってるんじゃないの?」

アンニフィルドが言った。


「ナナン。わたくしがここにいるのは予備調査です。お忘れですか?」

「なるほど、調査は調査で、支援ではないと・・・」

和人の表情が緩んだ。


「リーエス。もし、合衆国がそれを声高におっしゃるなら、それは身勝手というものです」


「リーエス。合衆国はブレストに予備調査を依頼すればいいじゃないか」

キャムリエルが言った。


「それで、ユティス、あなたは合衆国に対して本当になにもしないつもり?」

エスチェルは楽しんでる様子だった。


「ナナン。その間は和人さんと一緒に調査活動に励みます。ね?」

にっこり。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええっ?」

和人はうろたえた。


「要するにデートってわけね?」

ぱち。


--- ^_^ わっはっは! ---


エスチェルが和人にウィンクした。


「リーエス」

クリステアが微笑んだ。

にっこり。


「な、なに言ってるんだよ。仕事、仕事。仕事に決まってるじゃないか!」

ぷるぷる・・・。

和人は慌てふためいて、両手を振って、必死で打ち消そうとした。


「リーエス。お仕事ですわ、和人さん。ちゅ」

にこ。

ユティスは微笑むと和人にキッスする真似をした。


「あははは。キッスつきの仕事だなんて、すごいじゃない。羨ましいわぁ!」

アンニフィルドが笑い出した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふふ」

「わははは」

「くすっ」

「わはは・・・」

フェリシアスまで笑った。


「こら、みんな、笑うんじゃない!」


「あなたたち、信じる?」

エスチェルがトレムディンたちを振り返った。


ぷるぷる・・・。

トレムディンとキャムリエルは首を横に振った。


「絶対にデートだよ、それ」


--- ^_^ わっはっは! ---



「んんっ!」

フェリシアスが大きく咳払いすると、みんなが彼を注目した。


「大統領は、空軍基地でブレストたちの亡命と合衆国市民権の獲得について、なんらかの声明を他の国々に対して出すはずだ」


「エルフィアに対しては?」

エスチェルが面白そうに言った。


「その事実しか言わないだろうな。向こうも百戦錬磨。正直に手の内を見せることなど考えていない」


「ユティス、あなたのご意見は?」


「リーエス。こうなったからには、見守ろうと思います。それに、わたくしには、ブレスト参事とシェルダブロウがこのまま合衆国に留まれるとは思えません。いずれ、研究所に押し込められて、エルフィアの科学を授けるよう圧力がかけられるような気がします」


「でも、それは亡命の条件になっているんじゃないの?」

クリステアが言った。


「リーエス。ですから、お二人がそのような等価交換的な条件を交わすなど、とても思えないのです。エルフィアの文明支援は無償のボランティアです」

「どうして、そう思うの?」

和人がきいた。


「あの誓約書に、実は、まだ正確なサインはされてませんでしたわ」

ユティスの言葉に一同、思わず叫んだ。


「ええ?」

「どういうことぉ?」

「なんだい、それ?」

「ホントかい、ユティス?」


「サインはありましたか、フェリシアス?」

ユティスはにっこり微笑むと、説明を続けた。


「ナナン。わたしが見せられた誓約書にあったのは・・・」

「あったのは・・・?」


「以上、無期限に保留することに同意する・・・だ。少なくとも、彼の書いた文書には、ブレストという名前はどこにもなかったように思う・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あははは!」

まず、アン二フィルドが大笑いすると、みんな、それに倣った。


「わははは」

「うふふふ」


「じゃ、まだ正式にサインしてないんだ?」

キャムリエルが嬉しそうに言った。


「エルフィア語で書いてあったんだね?そういうことなら、彼らには読めなかったはずだ」

トレムディンがユティスとフェリシアスを見た。


「で、バレちゃったら、どうなるのかしら?」

エスチェルがフェリシアスを見た。


「大丈夫よ。そう簡単にサインなんてしないことを、ユティスから学んでるはずだわ」

クリステアが言った。


「じゃ、そんなこと承知の上ってことぉ?」

キャムリエルがきいた。


「すぐにエルフィア語に堪能な人間に見せるはずだ。われわれが地球に来てもう何ヶ月にもなる。合衆国にそのくらいの人間は何人かいるはずだ」


「恐らくは・・・」

フェリシアスは言いかけて止めた。

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