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296 機内

■機内■




ぽわぁーーーん。


「うわぁっ!」

ぎょ!


超音速機のキャビンに現われた二人のエルフィア人の人影に、合衆国空軍の士官たちは思わず叫んだ。


「だ、だれだぁ?」


ぱぁーーーっ。

人影は瞬く間に現実の人間となった。


「こんにちわ」

にこっ。

ユティスは士官たちに微笑みかけた。


「うっ・・・」


それは長いダークブロンドを頭の後ろでシュシュで束ねた若い娘だった。

「おっと、ここで銃を発砲すると機体が空中分解するぞ」


さっ。

「止めるんだ」

士官は下士官の腕を制した。


にやっ。

「おまえは・・・」


娘の側には、ブロンドの長髪を同じく頭の後ろで束ねた長身の男が立っていた。


「ユティス!」

ブレストは一目でそれがユティスだとわかった。


「フェリシアス!」

シェルダブロウもそれがフェリシアスだとわかった。


「お久しぶりですわ、ブレスト参事」

ユティスはゆっくりと手をあげて、二人が動くのを制した。


「だれだ?」

その時、機内インターホンを通じて機長の声が響いた。




「機長、侵入者です・・・」

下士官はインターホンに答えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「超音速で巡航中の本機にか・・・?」


「イエッサー。いかなる方法でかはわかりませんが、自分の知らない方法で乗り込んできました」


--- ^_^ わっはっは! ---


下士官は大いに動揺していた。


「一人は長身のブロンドの長髪の男です」


「二人いるのか?」

「イエッサー。そして、もう一人は・・・」


にっこり。

ユティスはなんともいえない笑顔になった。


「超・・・、超可愛い娘ちゃんです・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


かぁ・・・。

下士官はユティスに微笑みかけられ、たちまち顔を赤らめた。


「それは、エルフィアのユティス大使だぞ・・・」

インターホンを通じて機長の声がした。


「ユティス大使・・・?」

「そうだ。エルフィアの全権大使、ミス・ユティスだ。もう一人は・・・」


「隣の男は、超A級SS・フェリシアスだ」

ブレストが下士官に代わって、インターホンに答えた。


「SS・・・?」

機長の声は一瞬とだえた。


「シークレット・サービスと同じく要人警護官だ」

またまたブレストが答えた。




「まずいことになったぞ・・・」

機長はインターホンをつけたまま、ボイスレコーダーの動作を確認した。


「ハイジャックですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違う。客人の様子を見てくる」

機長は副操縦士を見つめた。


「自動操縦は解除するな」

「イエッサー」

副操縦士はディスプレイ上の計器の確認をした。


「異常ありません」


「うむ。緊急通信を発信してくれ。コード・001。機内会話を軍管制に聞こえるようラジオを入れろ。チャンネルはHFのSSB暗号通信で」

機長は副操縦士に指示を飛ばした。


「イエッサー」


ぴ。

ぴ。

ぴ。

副操縦士は機長の指示を直ちに実行した。


「わたしはキャビンに向かう。機をみていてくれ」

「イエッサー」

副操縦士は機長に頷いた。


かち。

がさがさ・・・。

すく・・・。

かちゃ。


機長はシートベルトを外すと、狭いコックピットを抜け出し、キャビンに通じるドアのロックを外した。


「大丈夫だ。心配するな」


ぴっ。

機長は右手の一足指と中指を立てて頭にもっていくと、副操縦士に敬礼した。


「イエッサー。ご無事で、いってらっしゃいませ」

「うむ」


--- ^_^ わっはっは! ---


かちゃ。

ぱん。

すたすた・・・。


機長はドアからキャビンに出るとドアを閉めた。




ぴーーーっ。


その頃、合衆国の空軍基地には超音速機のキャビン内の会話が、インターホン経由でコクピットに流されていた。


ぴーーーっ。


そして、それはフライトレコーダーに記録され、なおかつ、HF電波に乗って暗号通信で合衆国空軍の基地の管制へ飛んでいた。


ぴーーーっ。


「おい、鳴ってるぞ!」

空軍基地の管制室で、緊急信号通信を知らせる音に、あたりは騒然となった。


「緊急事態か?」

「ラジオをHF暗号通信に合わせろ」

「イエッサー」


ぴ、ぴ、ぴ・・・。


「機体を確認しろ」

「イエッサー」


ぴぴぴ・・・。


「エルジー・7159。エルフィア大使を乗せている超音速機であります!」


「なにぃ?」

「エルフィア大使機だ・・・」

管制室は一同に緊張が走った。


「現在、アラスカ方面からシアトロに向けて飛行中」


「日本からの超音速機なのか?」

「イエッサー、確認できました。エルジー・7159に間違いありません!」


「暗号通信を音声に変換しろ」

「イエッサー」


ぴぴ・・・。


「わたくしは、エルフィアのユティス。地球担当のエージェントですわ」


そして、超音速機のキャビン内の会話は、すべて空軍基地の管制室に届けられたのであった。




るるるーーーっ。

ぴっ。


「わたしだ」

長身の体格がすこぶるいい紳士がスマホを取った。


「だ、大統領、一大事です!」

「ふぅ・・・。なんだね、ルイス、朝っぱらから、取り乱したりして?」


大統領は空軍基地に飛び立つ寸前で、国防相の慌てふためいた声に溜息をついた。


「エルジー・7159にエルフィア人が現われました」


--- ^_^ わっはっは! ---


「エルジー・7159?」

「ブレスト大使をお連れしている長音速機です」


「あー、あれか?で、なにを騒いでるんだね?」

「エルフィア人が二人現われたんです」


「そりゃ、そうだよ。最初から、二人だぞ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ですから、二人増えたんですよ、大統領!」

国防相は叫んでいた。


「ということは、エルフィア人を4人連れてくるということだな?」

「そうですよ。増えているんです!」


「そりゃ、けっこうなことじゃないか。切り札が多くて困ることはない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なにを呑気な。その二人はユティス大使と警護官ですぞ!」

「ふむ。警護官か・・・」

「そうですよ!」


「アンニフィルドとかいう、あのホワイトブロンドの美女か?」

「フェリシアスとかいう名の男です」


「男・・・?」

「そうですよぉ!」


「すぐに降ろせ」

「え?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「わっはっは、ジョークだ。やはり、嗅ぎつけられたか・・・」

すぐに大統領は真顔に戻った。


「イエス・・・」

「で、どうなっている?」


「ユティス大使はブレスト大使とシェルダブロウと話し込んでいます」

「なんと言っているのだ?」

「それがエルフィア語でして・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そりゃ、そうだな・・・」

大統領は国防相のように驚いてはいなかった。


「あの二人のエルフィア星籍離脱と、合衆国籍取得の念書へのサインは、どうなっている?」

「飛行中に完了しているはずですが、未確認です」


「それはきみにとってか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いえ、とんでもない。わが合衆国としてです」

「では、確認したまえ」

「イエッサー」


ぴつ。

大統領は通話を切ると、別の人間に電話を入れた。




「こんにちわ、機長さん」

にこにこ・・・。

ユティスは機長に振り向いて微笑んだ。


「あのぉ、困りますなぁ。無断で搭乗されては・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


機長は渋い顔をした。


「それは申し訳ございません。こちらのお二人と少しの間お話できれば戻りますわ」


「え?戻ると言っても・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


機長は士官たちと見合わせた。


「エルフィアに戻るのではありませんわ、ご心配なく」


--- ^_^ わっはっは! ---


「しかし、本機でなにをなされようとしてるのですか?」

「少しお話させてください。お二人をこの機から降ろすことなどをお願いするつもりはありませんわ」


「・・・」

機長はユティスの言葉を確かめるように、ユティスを見つめた。


「ここでのお話が、すべてあなたのお国にそのまま通信されていることも、別にかまいません。それを中断するつもりもありませんわ。わたくしたちは、このとおり機長さんのお国の言葉、英語で会話いたします。すべてを通信なさってけっこうですわよ」


にこ。

ユティスはそう言って微笑むと、余裕たっぷりにブレストにウィンクした。

ぱち。


「う・・・」

(すべて承知の上でか・・・)

機長はエルフィア人の能力を痛感していた。


(イエス、キャプテン。ウィ・ノウ・イットゥ)

機長の思考波すぐさまユティスに伝わり、ユティスは精神波で彼に答えた。


「わたしの考えがわかるのか・・・?」

「イエス。とてもよく伝わってきますわ。とっても近くですもの」


--- ^_^ わっはっは! ---


にっこり。

ユティスは機長にまた微笑んだ。


「・・・」


「さ、どうするね、機長?」

少しの間をおいて、長身のフェリシアスが機長を見つめた。


「とりあえず、ハイジャックでないことはわかった。しかし、この二人は、われわれの客人であり、招待に応じてこの機に来ていただいたんだ。機長として、機内でのトラブルには断固対応させていただく・・・」

機長は言い終えると、口を真一文字に結んだ。


「けっこうですわ。あなたはどうされるのがよろしいですか、ブレスト参事?」

ユティスはブレストを見つめた。


「う・・・」

「あなたは、シェルダブロウ?」

ユティスはシェルダブロウに視線を移した。


「・・・」


「わかった、話に応じよう・・・」

ささっ。


「ブレスト!」

シェルダブロウはブレストに思い留まらせようとした。


「ユティス。わたしは既にエルフィア人ではないんだ。わかるかね?」

ぱら・・・。

ブレストは一枚の紙を広げて、にやりと笑った。


「それで?」

ユティスの笑みはまったく変わらなかった。


「驚かないのか・・・?」

「ナナン。ブレスト参事ほどは、びっくりしませんわ」

驚いたのはブレストの方だった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ユティス。わたしはエルフィア人であることを止め、地球人合衆国民として、この機にいるんだぞ。わかってるのか?」


ブレストの手にした紙は、エルフィア人であることの放棄と、地球人合衆国民としてあらたに誓いを立て、合衆国憲法のもと合衆国民になることを承認する内容で、合衆国国務長官のサインがあった。


「それはアソシエーション的解決方法かもしれませんが、事実は変わりませんわ」

「どういうことだ?」


「ブレスト参事は見も心もエルフィアでお育ちになられ、生きてこられたということです。そんなアソシエーション的契約で、その生物学的事実が変わるわけでも、消えるわけでもありません。あなたはエルフィア人であることを一生背負っていますわ」


ユティスは落ち着き払っており、まったく気にもしていない様子だった。


「しかし、わたしは地球人だ。エルフィアの法律、委員会の憲章の支配を受けるものではない。ユティス、きみは合衆国に不法侵入を企て、なおかつ、その市民を脅そうとしている。ここの法を犯しているんだ。わかるかね?」

ブレストはそう言うと、にこりともせずにユティスをじっと見つめた。


「そうおっしゃるのなら、けっこうですわ。シェルダブロウ、あなたもサインなさったの?」


にこにこ・・・。

ユティスは笑みを絶やすことなく、シェルダブロウを見た。


「リーエス・・・」

シェルダブロウは言葉少なに、それを認めた。


「さて、ということだが、どうするつもりかね、ユティス?」

にたり・・・。

ブレストは勝ち誇ったようにユティスを見つめた。


「まず、この機の中が合衆国だとおっしゃるなら、わたくしも合衆国民としての国籍を大統領から直々いただいていますので、まったくの合法です」


ひらひら・・・。

ユティスはパスポートをちらつかせた。


「ブレスト参事、残念ですわね。あなたは、まだ、お持ちでないでしょう?うふ」

にこにこ・・・。


--- ^_^ わっはっは! ---


「なにぃ・・・?」

これにはブレストも泡を食った。


「それに、わたくしが、お国の市民を脅すなどとてもできませんわよ。わたくしは、なにもあなたに依頼も要求もしておりません。そうですわね、キャプテン?」


にこ。

ユティスは機長を向いて、微笑んだ。


「あ、そ、それは・・・」

「わたくしは、あなた方、いえ、わたくしたちのでしたわね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「大統領閣下がZ国大使館の惨事より、ブレスト参事とシェルダブロウをお救いいただいたことに感謝しております。心よりお礼申しあげますわ」


「あ、それは・・・」

機長は士官と見つめあった。


「エルフィアはその友人を信頼しています。そして、ブレスト参事、シェルダブロウ、あなたも方にもです。ご自分でお決めください」

そして、ユティスは機長と士官に言った。


「ご迷惑をおかけしましたわ。申し訳ありません、キャプテン。どうも本当にありがとうございます。お二人にお話ができて幸いです。もう、二度とこのようなことはいたしませんわ、地上においても・・・。さようなら・・・」

ユティスはそう言うと、右手で一振りした。


さぁーーー。

「アンデフロル・デュメーラ、お願いしますわ」


「リーエス、エージェント・ユティス。転送開始します」


ぽわぁーーーん。

ユティスとフェリシアスの身体が白い光に包まれていった。


「ユティス!ま、待ってくれ!」

ブレストが叫んだ。



ぷるるーーー。

「イエス、大統領。エリザベスですわ」


「いやぁ、国務長官。空軍のラジオを聞いているかね?」

「もちろんですわ」

国務長官は冷静な声だった。


「きみの言うとおりになったぞ。満足かね?」

「うふふ。とんでもない。これからが化かし合いの本番です」

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