表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
295/408

295 給油

■給油■




ユティスはベッドに寝たまま和人を抱きしめ、和人はユティスにあまり体重をかけないよにして、二人は甘いキッスの最中だった。


「ん?」

さっ。


和人は、クリステアが思わず手放した、ミネラルウォーターのペットボトルが落ちる鈍い音に気づくと、クリステアの方を向いた。


「あはは・・・」

そこには笑いを引きつらせたクリステアが立っていた。


--- ^_^ わっはっは! ---


がばっ。

たちまち和人はユテイスから離れ、ベッドの上から降りた。


「あ・・・。用を思い出したわ。下に戻るわね・・・」


かちゃ。

たったったった・・・。

クリステアはユティスの部屋から慌てて出て行った。




「和人さん?」

「あ、ユティス・・・」


「クリステアがいらしたのですか?」

「リーエス。キッスしてるところをばっちり見られちゃった・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「まぁ・・・!」


がば・・・。

ユティスも身を起こし、ベッドに腰掛けた格好になった。


かぁ・・・。

和人は真っ赤になった。


「あのぉ・・・」

「なに?」


「わたくしたち、恋人同士ですよね・・・?」

「リーエス・・・」


にっこり。

すく・・・。

ユティスは微笑むとゆっくりとベッドから立ち上がり、和人のそばにそっと立った。


「和人さん、ここはわたくしの部屋です」

「リーエス・・・」


「ご遠慮は不要です。堂々としていらして・・・。クリステアもアンニフィルドも納得していただけますわ、ディユ・アルトゥーユ(わたくしの神さま)。うふ」

ユティスはにっこり微笑むと、またまた禁断の言葉で和人を呼んだ。


『アルトゥーユ』とは地球語でいう『神さま』という言葉で、未来永劫、あの世でも、そして生まれ変わったとしても、文字通り永遠に愛を誓う相手にのみ口にできるものだった。


「ユティス・・・」




どさっ。

「あーーー、びっくりした・・・。ホントにキッスしてたなんて・・・」

クリステアはリビングのソファーで溜息をついた。


「はぁ・・・」

ぽん!

クリステアは手を打った。


「いけない。フェリシアスに連絡しなきゃ!」

クリステアは精神波でフェリシアスを呼び出した。


「フェリシアス?」

「クリステア!」

フェリシアスは即座に答えた。


「あの二人、合衆国に向かってる。あなたの予想通りよ」

「そうか、ジョバンニはすんなり言ってくれたのか・・・」

フェリシアスは安心したような声で言った。


「リーエス。だけど、大統領もメンツがあるらしいの。なんとか穏便に運べないかしら?」

「わかった。エルドに話してみよう。地球の支援を中止させるような対応はしたくない」

フェリシアスははっきりと言った。


「それで、二人が向かうところは、合衆国内の空軍基地よ。行くとしたらジャンプしかないけど、いきなり現われて鉛球の洗礼は受けたくないわねぇ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「よかろう。大統領には事前通告をしよう」


「ユティスを使うの?」

「リーエス。それは彼女の役目だ。それに、エルドも精神体で来てもらう」


「エルドも・・・?」

「リーエス。こういう外交はトップ会談でないと決まらない。地球人は極めて自信家みたいだ。扱いに気をつけなければ、最悪決裂する可能性もある。今晩。そっちに行く。その時、ユティスも交えエルドと会話したい」


「リーエス・・・」

フェリシアスはそう言うと、クリステアとの通信を切った。


「ふぅ・・・。やっぱり、フェリシアスに甘い言葉はなしか・・・。本当にわたしたち、恋人同士なのかしら・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「ふむ。合衆国がな・・・」

エルドはフェリシアスの話を熱心に聴いていた。


「これは、われわれが知っているだけで、トアロ・オータワラーも日本政府も知りません」

「なるほど・・・」


「つまり、問題はその落としどころなんです。大統領のメンツに係わらないように、うまくまとめなければなりません」

フェリシアスは難しい顔をした。


「きみはどう思うんだね、フェリシアス?」

いきなりエルドがフェリシアスに振った。


「わたしですか・・・?大統領との交渉の前に、あの二人を説得することかと・・・」

「うむ。それがベストだな」


「しかし、あの大統領、一旦、振り上げた斧を静かに置くことができるんでしょうか?」

フェリシアスは心配そうにエルドを見た。


「うむ。よし・・・。ここは、ユティスにまかしてみよう。地球との交渉は、彼女の仕事だ」


「エルド!そんなことを言っても、ことがことなんですよ?」

「リーエス。だからだよ。わたしがいればトップ対談とはなろうが、その分、後がなくなる。決裂したら、最後だぞ・・・」


「ユティスはクッションにと言われるんですか?」

「それは副次的なもの。この場はユティスで十分だと思う」


「エルド・・・」

「わたしから、ユティスに伝えよう。クリステアの話しなら、既にブレストたちは洋上で空中給油を受けているところだ」

エルドは目を閉じて、ユティスを呼んだ。




「ユティス、目覚めたかね?」

「リーエス・・・。エルドですか・・・?」

ユティスは和人から視線を外した。


「うむ。わたしだ。体の調子はどうだい?」

「リーエス。おかげさまで、とても快適になりました」

ユティスが答えた。


「ドクター・エスチェルとトレムディンが手当てしてくれたんだよ」

和人が言った。


「そうでしたか、みなさんにはお礼の言いようがありません・・・」

ユティスは申し訳なさそうな顔をした。


「はっは。気にすることはない。それがドクターたちの役目だ」

エルドは笑って言った。


「リーエス。あら・・・、お二人はどこへ?」

ユティスはエスチェルとトレムディンがいないのを不思議に思った。


「アンニフィルドとカフェに行ってるよ」

和人が言った。


「カフェですか?」

「リーエス。地球名物を味わいたいとか・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンニフィルドから聞いたらしんだ」

和人が言った。


「まぁ、ユティスが回復したんだから、あの二人にとってはもう使命を果たしたわけだ」

エルドが続けた。


「リーエス。それに、現地ウィルス感染者に接触したので、最低1週間は観察期間を置かなくてはいけないって言ってました」

和人は、エスチェルたちが言ったことを話した。


「まったく、そういう理由付けだけはちゃっかりしてるんだなぁ・・・」

にやり・・・。

エルドは苦笑いいた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それで、ユティス、病み上がりの上、明日の地球見物の前で申し訳ないが、一仕事してもらわねばならない」

エルドの言葉は、それがとても重要なことであることを暗示していた。


「リーエス。おっしゃってくださいな、エルド」

にこ。

ユティスは嫌がる様子もなく、エルドの精神体に微笑んだ。


「うむ。そう言ってくれると思っていたよ」

エルドもほっとしたように言った。


「ブレストとシェルダブロウの二人が合衆国の庇護下に入った。数時間後には、合衆国本国の空軍基地で、大統領と面会する」

「まぁ・・・。そんなことで、エルフィアの文明支援の優先権を得られるとお考えなんでしょうか?」


「ふふ。恐らくそんなところかもしれん」

エルドは答えた。


「なにが可笑しいのです?」

和人はエルドが笑う理由が理解できなかった。


「和人、きみは、合衆国がブレストとシェルダブロウの二人を手に入れて、それをエルフィアに対する切り札にしようとしていることを、どう思うかね?」

エルドの精神体は、頭脳が活性化している和人には、まるでそこに実在するかのようにはっきり見えた。


「どうといっても・・・、正直、どっちにも捉えられます」

「ほう・・・。どっちにもとな?」

エルドは興味を覚えたようだった。


「一つは、あなたやユティスが話したとおりの、エルフィアの文明支援の独占的最優先権への切り札として・・・」


「で・・・、もう一つの方は?」

じぃ・・・。

エルドは和人を見つめた。


「あなたへのお土産です」


「お土産ですか?」

ユティスが首をかしげた。


「なるほど。深い読みだな・・・」

エルドは感心したように和人を見つめた。


「しかし、わたしに二人を差し出したとして、それをわたしはどうするつもりだと読んでいるのかな?」

にや。

エルドは意地悪そうに笑った。


「受け取った上で、大統領の要求は拒否です」

「なんと!」

エルドは驚いて和人を見つめた。


「和人さん・・・」

ユティスもそれにはびっくりしたようだった。


「して、その理由は?説明してくれたまえ」

エルドは和人に言った。


「横畑基地でのユティスとの最初の会見で、エルフィアと地球は友人であることを確認し合ったはずです。友人としてなら、利害を話しにすること自体、友人ではないと言ってるようなもんです。あなたは、大統領が真の友人としてなのかどうかを、見極めようとしていますね?」

和人はエルドを真っ直ぐに見つめた。


「友人は、お互いに信頼し合うから、友人なのですわ」

にっこり。

ユティスが和人に口添えし、和人に微笑んだ。


「ユティスの言うとおりです。あなたは・・・、いや、ユティスがもう一度言うのでしょう、そのことを、その基地で?」

和人はそういう自信があった。


「ははは。まいったなぁ・・・。ユティスがそう言ったのかい?」

にこにこ・・・。

エルドは嬉しそうに微笑んだ。


「ナナン。オレは聞いてはいません。けど、なんとなく・・・」

「どうして、そこでユティスが登場すると思うのかね?」

にやり。

エルドは笑った。


「地球の男は、若くて美しい女性にからっきし弱いですから・・・」

「まぁ、和人さん!」

「わっはっは!」


---^_^ わっはっは! ---


エルドは大いに笑った。

「後は、フェリシアスを待とう。そうして、この件を片付けることにしよう」

エルドは言った。      

                                  



「合衆国の『超遅く行く機』は、今、どこよ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違う、アンニフィルド。『超音速機』だってば」

アンニフィルドが地球のテクノロジーをバカにしたので、和人は俄然愛国心に燃えた。


「わかってるわよ、和人。名前がちょっと違うだけじゃない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ナナン、超音速だぞ。ちょっとくらいなもんか!」

「どのみち、わたしにとっては、通常の電磁波で十分捕捉可能です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アンデフロル・デュメーラ!」

「リーエス、コンタクティー・カズト?」


そこに、地球の上空32000キロ離れたところで、地球の時点に合わせ周回軌道に待機しているエストロ5級の母船のCPUが答えた。


「いくらなんでも、ひどいじゃないかぁ・・・」


「あーあ。先を進めてくれない、フェリシアス」

クリステアが催促した。


「うむ。ということで、あの二人がいる超音速機は数時間後に合衆国の基地に到着する。まずその前に彼らを説得できるかが鍵だ。わたしは・・・」

フェリシアスはユティスを見た。


「リーエス。ブレスト参事にはわたくしが当たりましょう」


「それは危険よ。彼はトルフォのいない隙を見て、ユティスをわがものにせんとしたのよ」

アンニフィルドが言った。


「待つんだ。わたしが同行しよう。機の中でユティスを見守る」

「わたしも行く」


アンニフィルドが言ったが、クリステアがそれを制した。


「ナナン。地球人の航空機は飛行中に重量が増えると、いきなり速度と高度を落とすことになりかねないわ」


「なによ。わたしが太ってるっていいたいの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違うわよ。早とちりしないで、アンニフィルド」

「あー、そうですか」

アンニフィルドは一応クリステアの弁明を受け入れることにした。


「精神体で行く方がいろんな意味でいいんじゃないのかい?」

和人がSSたちを見た。


「リーエス。地球の航空機の安全は確保しなければなりませんわ」

「そうね。いつぞや、みんなで大型旅客機にジャンプした時のことを覚えている?けっこう揺れたって言ってたわよぉ」

アンニフィルドが言った。


「ふむ・・・。アンデフロル・デュメーラ、超音速飛行中の機の重量制限は?」

フェリシアスが算出を頼んだ。


「200キロが限界です。これ以上だと、揺れや速度、高度といった影響が出てくると思われます」

アンデフロル・デュメーラが答えた。


「決まりだな。説得にはユティスとわたしが赴く。クリステアとアンニフィルドはとりあえず、ここに待機していたまえ。機が基地に着いたところで、われわれが機から降りる。わたしが呼んだら、クリステア、きみがジャンプしたまえ」


「リーエス。わかったわ」


「みんな、よろしいか?」

「リーエス」




ぐぉーーー。


ブレストたちを輸送中の超音速機は空中給油を終え、合衆国の西海岸まであと1時間と少しのところまで来ていた。


「どうでしたか、空中給油の様子は?」

士官がブレストにきいた。


「神業だな・・・。空中給油のためのノズルとかホースとか、特にホース先端のV字翼には驚いた・・・」

「イエッサー。あれで飛行中でもノズルの位置まで給油ホースが安全に伸びていくんです」


「わたしも見ていた」

ブレストは頷いた。


「驚異ですね・・・」

シェルダブロウも感心していた。


「あれだけの技を完成するのに、どれくらいの訓練を積むんだ?」

「さぁ、自分はパイロットではないので知りませんが、かなりの時間と費用はかかっていると思います」


「わかるな」

ブレストは士官を見ると、大きく頷いた。




ぐらり・・・。


「ん?」

超音速機のコックピットで、機長が揺れを感じて副操縦士を見た。


「なんでしょう?」

同時に副操縦士も揺れを感じ、二人は見合った。


「この高高度でタービュランスなど起こらんはずだが・・・?」

機長は高度計を見ると、高度は59000フィートを指していた。


ぴっ。

「大尉、異常ないか?」

機長は機内アナウンス用のマイクを取ってキャビンの状況を確認しようとした。


「あら、ごめんなさい。揺れてしまいましたか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「な、なんだぁ?」

機長と副操縦士はキャビンへの通じる後部ドアを見つめた。


「女の声だ・・・」

機長は副操縦士に言った。


「まさか・・・」

「いや、確かに女の声だった・・・」


かち。

機長は後部ドアをロックし、再びマイクを取った。


「きみは、だれだ?」


こういう場合、状況を確認しないうちに、キャビンに通じるドアを開けてはならない。


「エルフィアのユティスと申します。少しブレスト参事とお話しさせていただきますので、お二人はどうぞそのまま機の操縦にご専念くださいませ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「・・・」

「・・・」

機長は副操縦士を見た。


「エルフィア人だとぉ?」

「例のユティス大使ですよ、機長・・・」


「イエス・・・。なんで、この機だと知っている?」

「自分は、そういう指令は聞いていないので、わかりません」

「わたしもだ、副操縦士・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だが・・・、どうやって、乗り込んだんだ・・・?」

「そういう指令も聞いておりません」

「わたしもだ」


--- ^_^ わっはっは! ---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ