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288 奇策

■奇策■




石橋の協力で、リッキーの頭脳波のパターンを入手したキャムリエルは、フェリシアスとアンデフロル・デュメーラと一緒になって、ブレストとシェルダブロウの行方がわかりそうな情報を集めていた。



「SS・フェリシアス。リッキー・Jがあの二人を匿っている可能性は少ないですね」

エストロ5級母船のCPUの擬似精神体はじっとフェリシアスを見つめた。


「どういうことだ?」

「リッキー・Jの作戦が失敗したことにより、日本政府のチェックがより厳しくなりました。それ故、もし、あの二人を匿っているとしたら・・・」


「とうの昔にわかってるってことだろ?」

「リーエス、キャムリエル」


「ブレストとシャンブロウの居場所を示すようなものはなかったか?」

、フェリシアスはモニターを見ながら言った。


「Z国大使館はブレストたちの拠点であったことは事実ですが、今はだれもいないようです」


「ということは、Z国大使館は引き払ったということかなぁ?」

キャムリエルが言った。


「いや。やつらは、ブレストがエルフィア大使だと、まだ信じてるんだ。一旦、手に入れかけた人間とその仕掛けを放るようなことはしまい・・・」

「しかし、もう何日も経ってますよ、フェリシアス」


「リッキーはいつかブレストを呼びかけるでしょう。その時こそ、二人の居所を特定するチャンスです」




その頃、ブレストたちは、フェリシアスとのあの一戦をどさくさに紛れて、間一髪、その難を逃れていた。

そして、数日身を潜めていたのだが、それを追跡していた人間がいた。




「オレだ。例の2人をお連れした。コード407だ」

ジョーンズは合衆国大使館の入り口でIDカードを見せた。


「イエッサー。お待ちしておりました。どうぞお通りください」


がががぁ・・・。

門が開いた。


ジョーンズは他の3人と中に入っていった。



「もう、安心していいぜ、旦那」

ジョバンニがブレストに言った。


「ああ。ここは地球だが日本じゃない。日本にあって日本じゃない。治外法権というやつで、あんたたちは今合衆国憲法で守られている」

ジョーンズがにやりと笑った。


「よう、戻ってきたか?」

ジョーンズの仲間らしき人物が声をかけてきた。


「ああ。ワイズマンの執務室に向かう」

「そこの奥だ。大統領補佐官との電話が終ったら、あと5分もすりゃ戻ってくるぜ」


「了解。サンクス」

ジョーンズは右手を少し上げて答えた。




シェルダブロウとブレストは在日合衆国大使のワイズマンの執務室にいた。


「もう少し、待ってもらおう」

ジョーンズの声で、エルフィアの二人は合衆国SSと向かい合った。


「よく来てくれた。うまく逃げてきたようだな、旦那・・・」

ジョバンニはにやりと笑った。


「して、われわれをどうしようとするつもりだ・・・?」

緊張した面持ちでブレストはジョバンニとジョーンズを見つめた。


「あんたを追ってきた連中に、このまま引き渡してもよかったんだが、それじゃ、オレたち合衆国が得るものがなにもない・・・」


にやり・・・。

ぽーーーん。

ジョーンズは手帳のようなものを二つ、彼らに放り投げた。


「ほれ、受け取れ」


ぱさ。

ぱさ。

シェルダブロウがそれを受け取った。


「なんだ、これは?」

ブレストはそこに自分の顔写真とともに、なにやら書かれてるのを、見つめた。


「パスポートさ。あんたたちは、今から合衆国市民となったんだ。おめでとう」

にや。

ジョーンズは笑うと、さらに続けた。


「オレたちは、合衆国の外において合衆国市民を守る義務ある」

「どういうことだ?」

「なぁに、保険さ」


にや。

ジョバンニがブレストをさも面白そうに眺めた。


「保険・・・?」

シェルダブロウが首をかしげた。


「そうさ。エルフィア大使はユティスのままだ。そして、彼女は日本にいる。大統領との会見ではああは言ったもの、われわれ合衆国に大使がどれくらい優先度を置いているのかは不明だ。文書による条約締結はされなかったからな。われわれ合衆国は地球のリーディング国家としてのプライドがある。同盟国とはいえ、東洋人のちっぽけな国が、エルフィアの文明を独占するなど、とてもできん相談だ」

ジョーンズがにやりと笑った。


(どういうつもりだ、こいつら・・・?ユティスを早期送還させようとしたわれわれを歓迎するだとぉ・・・?)


「それで・・・?」

ブレストは素早く頭を働かせた。


「それに、あんたたちは一度Z国へアプローチして、失敗した。ま、予想通りと言っちゃ悪いが、そうなるようになってったんだな」


「さっさと要点を言え」

「ふむ。われわれはエルフィアのテクノロジーが欲しい・・・」

ジョーンズはズバリ言った。


「われわれを、ユティスとの交渉に使うつもりだな・・・?」

察しのいいブレストは大体のことが読めてきた。


「さすが、エルフィアの大使を名乗るだけのことはあるな。察しがいいぞ」

「おまえはだれだ?」

シェルダブロウが静かに言った。


「おっと、こいつは失礼した。オレは合衆国国務省外交保安部のセキュリティ・サービス、通称SSのジョーンズ。そして、コイツはオレの相棒」


「ジョバンニだ。よろしく」

二人はブレストたちにゆっくり近寄ると手を差し出した。


「なにをするつもりだ?」

シェルダブロウはさっと身構えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「おっと。危ない。危ない。落ち着けよ。こいつは握手と言って、両手に武器は持っていない、お互い仲良くやろうぜって意味だ」

ジョバンニが説明した。


「われわれがおまえたちとか・・・?」

ブレストはジョバンニを見つめた。


「あんたを追ってきたフェリシアスとの交渉を、オレたち合衆国が引き受けてやるぜ・・・」

ジョバンニは目を細めた。


「なんだと?おまえたちごときが、なにができるというのだ?」

シェルダブロウはジョバンニを見つめて、静かに言った。


「あんたたちはフェリシアスに掴まりたくない。フェリシアスはユティスを拉致しようとしたお前たちを捕まえてエルフィアに送還したい。おれたちはエルフィアのテクノロジーが欲しい。そして、おれたちにはあんたらエルフィア人のあんたたちがいる。悪いようにはせん。裁判のやり方なら、オレたち合衆国の人間は宇宙一得意だぜ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな小細工が委員会に通用すると思ってるのか?」

シェルダブロウが言った。


「小細工なんかじゃないさ。本音だよ。本音・・・」

ジョバンニはジョーンズに目配せした。


「二人とも、オレたちの横畑基地から合衆国に来てもらう。そこで国賓待遇を進ぜよう。今、すぐにだ。特別機を待たせてある。質問はなしだ・・・」

ジョーンズがブレストをじっと見つめた。


(ブレスト、罠です)

シェルダブロウは精神波でブレストと会話した。


「おっと、ジャンプして逃げても無駄だぜ。逆にフェリシアスに掴まる確率が高くなるだけだ。悪い申し出とは思わんがな。どうだい、考えてくれちゃぁ?」

ブレストはシェルダブロウを見た。


(わかっている。だが、ここは地球だ。ここから一歩だって逃げられはせん・・・)

(まさか・・・)

(乗ってみよう。このまま、エルフィアに戻されたら、われわれは終わりだ)


(トルフォがいますよ)

(トルフォか・・・。わたしなら、そんな男の名前は口に出さんぞ)

ブレストは覚悟を決めた。




「くぅ・・・。セレアムにもまんまと出し抜かれおって・・・」

マイクは本国より沙汰があることをひどく恐れていた。


しかし、リッキーは、ユティスを手に入れられなかったことの方が、ショックが大きかった。


「マイク、エルフィアの新大使、ブレストはいったいどこに行った?」


リッキー・Jは、あの日、Z国大使館内での戦闘から忽然と姿を消したブレストとシェルダブロウがどこに行ったのかを知らなかった。


「なんでわたしが知っている?」

マイクは憮然として言った。


「本当に知らないのか?」

「当たり前だ!それより、今回の失敗。どう責任を取るつもりだ?きさまが強引に計画を進めた結果がこれだ。わたしまで、とばっちりを受けてしまったではないか」

外商部長のマイクはリッキーに腹を立てていた。


「はっ、都合が悪くなればすぐにこれだ」

「なんだとぉ?」


「少し黙っててくれないか、マイク。オレは、今考え中なんだ」

リッキーはそう言うと、目をつむった。


「なにが考え中だ。どうせ、失敗の言い訳でも考えてるんだろう?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そう思いたければ、そう思え・・・」

リッキーは目を閉じたまま答えた。


「リッキー!きさまぁ・・・」

「マイク!」

突然、リッキーは目を開けると叫んだ。


「そう言えば、ジェニーは・・・、ジェニーはどこだ?」

「ジェニーだとぉ?」

マイクはその時はじめて、ジェニーをここ数日見てないことに気が付いた。


「そうだ。あれ以来ジェニーの姿も見えなくなった」

「また秘密裏に、左遷されたんだろ。総務の連中に聞けばわかるさ。はっきりとは言わんが、ほのめかすぐらいのことは言ってくれるぞ」


「はっ。PCのキーを叩いて居場所がわかるもんか。どうせ帰ってくる答えは、行方不明ってことだけさ」


「それはわからんぞ。大使館に戻ろう。ここにいてもなにも解決しはせん」

「わかった。言うとおりにしよう・・・」




和人はエルフィア大使館に戻り、ユティスの看病を続けていた。


「次に意識が戻ったら、もう完璧だと思うわ」

ドクター・エスチェルがユティスを診終えて、和人に微笑んだ。


「アルダリーム・ジェ・デール(ありがとうございます)、ドクター・エスチェル・・・」

和人はエスチェルに深々と頭を下げた。


「いいですよ、そんなにしなくて。あなたの気持ちは伝わってますから」

ドクターの代わりに、助手のトレムディンが言った。


「そうね。あなたもやるべきことはやってるわけだし、なにもそんなに謙る必要はないわ。わたしはワクチンを打っただけじゃない?」

エスチェルはにこやかに言った。


「それよりさ、明日が楽しみだわぁ・・・」

「リーエス。ドクターは地球を見物するの初めてだもんねぇ」

アンニフィルドが言った。


「どこから、見にいきますか、ドクター?」

トレムディンが期待に胸を膨らませていた。


「そのヤキトリ屋ってのは、夕方以降ね」

クリステアが、エスチェルに釘を刺した。


「わかってるわよ、クリステア。そうそう、アンニフィルドぉ。あなたの言ってたコーヒーって飲み物にも興味あるわ。すっごく香りが高くて、刺激的なんだってぇ?」


エスチェルは、アンニフィルドがはまっていたブルマンについて、聞きたがった。


「リーエス。そうなのよぉ!あのブルマン、地球にこんなに香りが高くて、刺激的な飲み物があるなんて。こんなのは久しぶりだったわぁ」


「そんなに?カフェインがたっぷりって聞いたけどぉ?」

「ええ。ホットでブラックで飲むのがオススメね。だけど、あんまり飲みすぎるとお腹が痛くなっちゃうわ、ドクター」


アンニフィルドは楽しそうに言った。



「さぁ、大使、こちらです」

ジョーンズは、ワイズマンにブレストとシェルダブロウを紹介した。


「おお、ようこそ、わが合衆国へ」

ワイズマンはにこやかに握手を求め、さっき握手に慣らされた二人は、まだ不器用に握手に答えた。


「われわれを、歓迎いただき感謝いたします」

ブレストはワイズマンに頭を下げた。


「いや、頭をお挙げ下さい大使。われわれはもう他人ではないんですから」

「他人じゃない?」

ブレストが疑問に思っているとジョーンズが答えた。


「大使、あなたはもう合衆国市民なんですよ」

「そうでしたな・・・。なるほど・・・」

ブレストは頷いた。


「わが国はエルフィアのテクノロジーに感服しております」

もう、他国の干渉を気にしないで済むので、ワイズマンは本音をズバリ言ってきた。


「ぜひとも、わが国でエルフィアのテクノロジーをお授け願いたく・・・」

「ええ。もちろんですとも」


にこ。

ブレストにやっと笑みがこぼれた。


(とりあえず、最悪の事態より、こちの方がベターのようだな・・・)

ブレストは功利的に考え、ここはワイズマンの話しに乗っかる方が得策と感じた。


「お国では、自星の衛星に初めて人類をお送りになられたとか・・・」

「ご存知でしたか!これはなんという光栄なことで!」

ワイズマンは喜んでいた。


「地球で一番最初に、カテゴリーの2への扉をお開けになられたのが合衆国だと、前任大使よりうかがっております」

ブレストは丁寧に返した。


「これは、これは、恐縮ですな。いかにも、合衆国は地球の最先端を入っております」

ワイズマンは自慢げに言った。


「それで、合衆国はわたしどもをどうするお考えで?」

「ここは地球です。地球で起こったことは地球で裁かれるべきであり、あなた方も地球の法律により裁かれるべきであります。いくらエルフィアといえども、それを犯すことはできません。われわれの法律を遵守するとユティスは言いました。だから、われわれに従ってもらいます」


「われわれを委員会には引き渡さないと?」


にた。

答える代わりに、ワイズマンは笑った。


(こやつら、エルフィアに対して自治権を協調するつもりだな・・・)

ブレストにも合衆国の言い分がようやくわかってきた。


「どういうことだ?」

横からシェルダブロウが口を挟んだが、ブレストはをそれをゆっくりと抑えた。


「エルドの要求にどうこたえるのだ?」

ブレストはワイズマンにきいた。


「エルフィアがすべてを愛でる善なるものを信ずるなら、すべてを水に流すことを要求する。そして、ブレスト、シェルダブロウ、あなたたちは合衆国の国民として、今後ずっと住まっていただくことになります。もちろん、先ほど言いましたように、待遇は国賓です」


ブレストとシェルダブロウは見合った。


「しかし、エルドは絶対にわれわれに罪の償いを要求するぞ・・・」

シェルダブロウは苦々しく思った。


「その償いは、わが合衆国で行なっていただきたい」

「なんと・・・」


ブレストは、ワイズマンがとてつもなく大きなことを抱いていることを、はじめて理解した。


「文明支援といっても、ステップを踏まねばならんし、第一、ここの文明レベルは数百メートルごとに異なっている・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「心配ございません」

ワイズマンが言った。


「あまりおしゃべりしている時間はありません。フェリシアスの手を逃れるには、わが横畑にまず来てもらうことが肝要です」

そう言うと、ワイズマンは二人をエレベータ案内した。


「エプロンにはスーパーソニック輸送機を待機させています。すぐに、ご搭乗を」

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