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287 不意

■不意■




「それよ、それ・・・。真紀と俊介の二人が抜けた穴を、わたしたちも入れて、どうするかでもめていたのよぉ」

茂木が岡本を見た。


「うん。重役二人が抜けるんだからねぇ。当然といえば当然ね」

「そうだったんですか・・・」

イザベルもだんだんと裏事情がわかったきた。


「真紀が真剣に心配してるっていうのに、俊介ったら、言い出しっぺのくせに、ちっとも真面目に考えないだから」

岡本は茂木に同意を求めた。


「言えてる。そして、真紀が業を煮やしたのよ」




「俊介、10日間とは言え、どうするの、この山積みの仕事?」

真紀は俊介に迫った。


「仕方ないじゃないか、アルバイトに応募してきたのがだれもいなんだから?」

俊介は両手で大きな円を作った。


「うっそぉ・・・。ホントにゼロなの?」

真紀はとても信じられなかった。


「オレの知る限りな」

「わかったわ。わたし確かめる」


すくっ。

真紀はそう言って立ち上がると、岡本の方に歩いていった。

すたすた・・・。


「岡本、Web広告の方は?」

「ダメよ。アクセス多数。でも、一人も応募なし」

「うっそでしょう・・・?」

「なしよ。なし・・・」

岡本も実際信じられなかったが、事実は事実だった。


「コンバージョン数、ゼロか。インターネット・マーケティングのコンサル会社が、アルバイト募集で、こんな結果に終っていいのかぁ・・・?」

それを聞いた俊介が毒舌した。


ぴきっ。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うるさいわね、俊介!あなただって、重役なんだからね。人ごとみたいに言うのはよしてよ!」

「へい、へい・・・」

俊介はすごすごと引っ込んだ。




「いやぁ、あん時は、真紀、マジでぶち切れそうだったわ・・・」

茂木が思い返した。


「相当、苛立っていたもんねぇ・・・」

岡本も思い出していた。


「学生、ホントに募集に応募してこなかったんですね?」

イザベルが3人を見た。


「そうよ。マジでさぁ、わたしにきいてきたんだよねぇ・・・」

茂木が言った。




「茂木、新聞と雑誌の方は?」

真紀が心配そうに言った。


「電話で問い合わせが2件来たんだけど、両方とも、応対した途端、がちゃよ」

「どういうことぉ・・・?あなた、なに言ったのよ?」


「わたしじゃないわよ」

「じゃ、だれ、対応したのは?」

くるっ・・・。

真紀は事務所の中を見回した。


「・・・」

岡本の視線が、二宮に向けられた。




「いやぁ・・・。やばかったわねぇ、あの時は・・・」

にたっ。

岡本は苦笑いした。


「ええ・二宮のヤツ、なんかやってると思ってたのよぉ・・・」

岡本が言った。


「それで、わたしに・・・?」

イザベルは岡本を見た。


「そうかもしれないですね」

石橋はイザベルを見た。




「あははは・・・」

ぼりぼり・・・。

二宮は頭を掻いた。


「二宮か・・・」

真紀はよからぬ予感がした。


「二宮、あなた、バイトの募集なにを言ったの?」

「おす。別に大したことじゃなくて・・・。あはは・・・」



「そこで、真紀がわたしに振ってきたのよぉ・・・」

「真紀、あなたに、なんて言ってきたの?」

茂木が尋ねた。




「岡本?」

真紀は岡本に返答を求めた。


「もう、決まってます、だって・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「聞こえちゃった・・・」


ぺろっ。

岡本がそう言うと、二宮に舌を出した。


「えーーー?」


どんっ。

「どういうことだ、二宮?」

俊介は二宮に詰め寄った。


「おす。いや、そのぉ・・・」


「イザベルに色よい返事もらうまでは、バイトのポストを埋めないでくれって、みんなに触れ回ってたわぁ。ねぇ、みんな?」

茂木が吐露した。


--- ^_^ わっはっは! ---


「そう、そう。絶対に、受けるなって、わたしになんか、鬼の形相でさ・・・」

岡本も同意した。


「それ、わたしも聞きました」

ぱちっ。

石橋は、二宮に片目をつむった。


「い、石橋ぃ・・・!」

ニ宮はイザベルを首尾よくアルバイトに誘って、自分の側にいさせるという工作がバレそうなのを知った。


ぴき、ぴき・・・。

見る見るうちに、真紀の形相が険しくなっていった。

ぷっつーーーん。


「二宮ぁっ!」

真紀がニ宮を呼びつけた。


「う、うっすっ!」


「こいつ、イザベルを自分の補佐にしようと企んでたな・・・」

俊介も真相を理解した。


「おす。和人だって、ユティスと一緒に仕事してるじゃないっすかぁ・・・」

ニ宮は二人の怒りの焦点を逸らそうと、和人とユティスを引き合いにだしたが、かえって二人の怒りを大きくしただけだった。


「あの二人は、会社に迷惑かけてないわ。少なくとも費用はね」

真紀は本当に頭に来ていた。


「いいか、ニ宮、ユティスは、国賓なんだぞぉ。国賓の対応として、オレたちは国から銭子をもらってるんだ」

俊介が二宮についに本当のことを言った。


「そうこそ、経営者として、断れない理由があるの!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんな、不公平なぁ・・・」

「なんだとぉ、こいつ・・・」


「1週間も無駄な時間とお金を使わせたわねぇ・・・」

ぐいっ。

真紀は二宮の胸倉を掴んだ。


「二宮、ちょっと来なさい!」

「おす。真紀さん、ご勘弁を。暴力反対、賃上げ賛成・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「このバカもん!」

俊介はニ宮に雷を落とした。


「ひぇーーーっ!」

「こうなったら、バイトの分もあなたが、4人分働きなさい!」

真紀はニ宮に通告した。




「という訳なのよねぇ・・・」

岡本はイザベルを見つめた。


「だから、二宮がいったいどんな風にこの危機を乗り切ったか、とっても興味があるんだけどぉ・・・」


「ええ、わ、わたしがですか・・・?そんな特別のことなんてしてないですよ」

すとん・・・。

イザベルは下を向いた。


「あの後、二宮、絶対にコンビニに行ってたって思うんだけど?」

茂木がイザベルを見た。


「そうよ。きとあなたに会えると思ったんじゃない?」

岡本も付け加えた。




「とほほ・・・」

二宮は、真紀と俊介にこってり絞られ、やっとのことで開放された。


「イザベルちゃん・・・」


「いいか、二宮、おまえのせいで、1週間もバイト確保できなかったんだぞ。もう、イザベルでも構わんから、今日中にアルバイトに引き込め。できなかったら、おまえが4人分するんだ。わかったな!」


「ち、常務は鬼だぜ・・・」




「うーーーん。その後があるはずなのよねぇ・・・。どう思う、石橋?」

岡本は石橋に意見を求めた。


「そうですね。イザベルさんと会えるとしたら、コンビニしかないですからねぇ・・・」

石橋は答えた。


(やだ。こっから、先は、本当に恥ずかしくて言えないわ・・・)

イザベルはその時の様子を一つ一つ思い出していた。




ぴんぽーーーん。

二宮は、イザベルのコンビニに入った。


ちらちら・・・。

「ちぇ、いねぇや、イザベルちゃん・・・」


「いらっしゃいませ・・・。あら?二宮さんかしら・・・?」


くるり。

二宮はイザベルがいないのを確認すると、踵を返し、店の外に出て行った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「ふぅ・・・」

二宮はコンビニから出ると、立ち止まって大きく息をついた。


ぽんっ。

だれかが、二宮の背中を叩いた。


「二宮さんっ?」

「えっ?」

二宮が振り向くと、イザベルがコンビニの制服に身を包んでいた。


にこっ。

「また来て下さいね!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「いたぁーーーっ!イザベルちゃーーーん!」

二宮は振り返ると、イザベルに泣きついた。


「あのぉ、お帰りじゃなかったんですか?」

「お帰りは止めます、イザベルちゃん!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「それで、今までの会話のどこにイザベルさんが承諾する必要があったんですか?」

石橋がイザベルの話してない部分に触れようとしていた。


(まずいわぁ・・・。このままじゃ、決定的なところまでいいちゃう・・・)

イザベルはだんだん小声になっていった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「いえ、結局、二宮さんに泣きつかれちゃったんです・・・」

イザベルは追求の手をこの辺で断ち切ることにした。


「それはわかるけど、二宮がどう泣きついたのかよねぇ?」

茂木がイザベルを見た。


「そうそう。そこなのよ。肝心なのは・・・」

岡本が茂木と目配せし合った。


(絶対に言えないわ、そんなこと・・・)

イザベルはこれ以上言うまいと思った。


「どうっておっしゃられても、普通に・・・」

「普通に泣きつくとは?」

岡本が突っ込んできた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あの。普通じゃないから、泣きつかれるんじゃぁ・・・」

「石橋、鋭い!」

茂木が言った。


「あの、ですから、普通なんです。あんまり二宮さんが頭を下げられるんで、可愛そうになっちゃって・・・」

イザベルは下を向いた。


「可哀想かぁ・・・」

「はい。そういうことです」


(でも、真相はかなり違っているですけどぉ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---




二宮に無理矢理連れ出されたイザベルは、コンビニの近くの公園のベンチに、二宮と一緒に仲良く座っていた。


「二宮さん、結局、バイト抜け出す羽目になっちゃったんですよぉ・・・」

イザベルはうらめしそうに二宮を見つめた。


「すいません。どうしても、今日、バイトの返事もらえないと、大変なことになるんすよぉ・・・」


すりすり・・・。

二宮は両手を合わせた。


「それは、二宮さんの都合でしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「だかさぁ、オレを助けると思って・・・、イザベルちゃん、お願いしますよぉ・・・」


「明日からなんですよね、二宮さんのお手伝い。10日間ですか?」

「おす。もっと長くても、いいんですけど、何十年でも・・・」

「はいっ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「もう、イザベルちゃんなら、バイトどころか、オレが正式採用しまっす」

「4月までまだありますけど・・・?」


「職場研修を兼ねてますから・・・」

「採用通知いただいてません」


「イザベルちゃんに、必要ないっすよ。うちは、個人事業主の集まりっすよぉ」

「そんなこと言ったって、ここの店長さんになんて言えばいいんですか・・・?」


「嫁に行きます、と一言・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「二宮さん?」

イザベルの目が天になっていた。


「おす?」


「いつ、わたしが『結婚する』と言ったんですか?」

「たった今」


--- ^_^わっはっは! ---


「ん、もう、いい加減にしてください」


「だめですか・・・」

「だめとは言ってません」


「ほら、『だめ』と言ったぁ・・・」


「怒りますよぉ・・・」

「もう、怒ってるじゃないっすか?」


「もう・・・。ああ言えば、こう言うんだから・・・」


「オレ、そういうイザベルちゃんの困って怒った表情、嫌いじゃないすよ」

「誤魔化されませんからね」


じーーーっ。

「・・・」


「な、なんですか・・・?」


「・・・」

じーーーっ。

しばらくイザベルを見つめて、二宮はおもむろに口を開いた。


「オレ、毎日、イザベルちゃんと一緒に仕事したいっす。マジ、本気で、そう思ってます」


「ええ?ふざけてるんですか?」

「おす。すみません。追加します」


「ほら、やっぱり・・・」

「仕事の後も、一緒にいたいっす」


「ええっ?」

イザベルはびっくりした。


--- ^_^ わっはっは! ---


「おす。仕事が始まる前も、一緒にいたいです」


「まぁ、二宮さんったら、どこまでも冗談なんですね?」

くすっ。

イザベルはこれが二宮の冗談なんだと思った。


「うちに帰る前も後も、一緒にいたいっす・・・」

二宮の声は低くなった。


「ぷっ。それじゃ、一日中、一緒じゃないですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おす。でも、一日じゃなくて、次の朝もイザベルちゃんと一緒にいたいんです・・・」


どきんっ・・・。


(お泊りして欲しいってことかしら・・・?)


--- ^_^ わっはっは! ---


じぃーーーっ。

「・・・」


どっくん、どっくん・・・。

「二宮さん・・・、それって・・・」


「オレと結婚してください・・・」

突然、二宮はイザベルにプロポーズした。


どっかぁーーーん!


--- ^_^ わっはっは! ---


「え・・・。あの、わたし、まだ二十歳だし、二宮さんとは、デートだってろくろくしてないし、いろいろやりたいことあるし・・・」

イザベルは完全に不意を突かれていた。


「イザベルちゃんに、めちゃ惚れてます・・・」


かぁーーーっ。

どきどき・・・。


「どうしよう・・・」


(やだ、わたしったら・・・。嬉しいと思っちゃってる・・・)


じぃーーーっ。

二宮はイザベルを見つめて、申し訳なさそうに言った。


「まずは、ちゃんとしたデートから始めさせてもらえませんか?」

「デートですか・・・?あの、そんなこと、突然言われても・・・」


どっくん、どっくん。

(困っちゃうなぁ・・・)


とろーーーん。


「じゃあ・・・、デートの前に、とりあえずバイトから?」

「はいっ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぼかっ!


(てなことが発端とは、絶対に言えないわ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---




「どうしたのよ、イザベル、突然だんまりを決め込んじゃって?」

茂木が言った。


「あ、そろそろ、戻る時間じゃないんですか?」

イザベルが時計を見た。


「あ、ホントですね」

石橋が相槌を打った。


「そっかぁ、しょうがないなぁ・・・。戻ろうか」

「はい」


「じゃ、続きはまたね、イザベル」

ぱちっ。

茂木はイザベルにウィンクした。

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