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286 茶屋

「わたし、アンイフィルドよ。俊介と真紀の姉弟がセレアムに飛び立つと決まって、その10日間、どうやって膨大な業務をこなしていこうかと、俊介たちの間で話題となったわ。結局アルバイトを雇うことになったんだけど、応募してきたのは、なんと二宮の意中の女性、喜連川イザベルでした。うふふ。どうなったんだっけ?」

■茶屋■




茂木がイザベルに言った。


「真紀と俊介がセレアムに出かけるというのでバイトを募集したけど、どうしてあなたが二宮の話しだけでうちに来ることになったか、どうしても知りたいんだよねぇ・・・」


「うふ。話してよ、イザベル」

岡本もイザベルに迫った。


「というより、どういう経過でそういうバイトのお話が出たんですか?」

石橋がきいてきた。


「ふふ。そりゃあ、ねぇ・・・?」

「ええ。ふふふ」

岡本が茂木と微笑み合った


「要はこういうことなのよ」

岡本が話し始めた。




その日、俊介がなにやら困った顔になっていた。


「そりゃ、ちと困るぞ・・・」

「どうしたの、俊介?」

真紀が俊介に寄ってきた。


「姉貴、オレたちがセレアムに行って、仕事を空けることになったら、シャデルへの説明資料だれが作るんだ?」

「ニ宮がいるじゃない?」


「姉貴ぃ・・・。二宮一人でできると思うかぁ・・・?」

「原案はあるんでしょ?」


「そりゃそうだが、結構量があるからなぁ・・・」

「他に空いてる人間はいないわよ」


「石橋は?」

「ダメ!今で、手いっぱいよ。他を探して」


「と言っても、だれもいないぞ・・・」


「あのぉ・・・」

その時、数とがなにか名案でもありそうな様子で言った。


「なんだ、和人?」


「元となるテキストとイラスト、アニメーションはありますから、後は組み立てるだけです。ですから、別にツールさえ使えれば、だれだってできますよね?この際、バイトを雇ってみるという手もあるんじゃないかと・・・」


「バイト・・・?ふむ、なるほどぉ・・・」

真紀は頷いた。

「よし、了解よ。バイト、雇いましょう」

にっこり・・・。


「本気か、姉貴?」

「客の機密事項があるんだぞ?」

俊介は本気にしなかった。


「うちの監督の下に、そこだけすればいいんでしょ?」

「まぁ、そういうことだが・・・」


「あなたが言ったことだけど、二宮一人で、こなせると思う?」

「絶対に思わん!」


「そこだけは自信たっぷりに言うのね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「じゃ、そうしましょう」

真紀は、くるりと後ろを振り返った。


「岡本?」

「なに、真紀?」


「至急、アルバイト1名の募集かけてよ。Web、新聞、雑誌。メディアはあなたに任せるわ。時給は・・・、そうねぇ、相場の5割り増し。ツールの経験者に限るって条件で」


「わかったわ。いつまで?」

「今日中よ。それから、文書選考、面接あり。来週木曜日ね」

「了解」


「それと、募集締め切りは、火曜日」

「はいよ」




「というわけよぉ・・・」

茂木がざっと説明した。


「そう。それがわたしたちがバイトを募集した理由よ」

岡本がイザベルを見た。


「はい。わかりました」

イザベルは納得したようだった。


「じゃ、今度はあなたの話しよ」

模擬がイザベルに言った。


「え・・・」


にこにこ・・・。

岡本と茂木は楽しそうにイザベルを見つめた。




さぁ・・・っ。

イザベルは血の気が引く思いだった。


(ええーーー!どうしよう・・・。二宮さんとの話しなんか、恥ずかしくてできないわ)

イザベルは、二宮に強引に告白されたあの日のことを、思い出していた。




イザベルはその日、いつものコンビでアルバイトをしていた。


「やぁ、イザベルちゃん」

にこにこ。


「二宮さん、どうしたんですか、こんな時間に?」

「おす。どうしても、イザベルちゃんに会いたくなっちゃって・・・」


「まぁ、また、お仕事、おサボリですか?」

「それ、ひどいっすよぉ。旅立つ前に言っておかなきゃと思って・・・」


「旅立つって、どこか遠くに行かれるのですか、二宮さん?」

しゅん・・・。

イザベルは少し寂しい気持ちになった。


「おす。そうなんっす。真紀さんと常務が故郷の星にね」


「はいっ?」

イザベルの目が点になった。


「二宮さんじゃないのですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「違いますよぉ。真紀さんと常務っす。言いませんでしたっけ?」

「言ってません・・・」

イザベルはやっぱりかと思った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「わははは。ごめん、ごめん、ごめんっす。おす」


「それで、なんですか、お話って?」

イザベルは気を取り直して、二宮に向かい合った。


「おす。それが、万が一になんすけど・・・」

「嫌です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おす。まだ、話してないんすけど?」

「嫌です」


「イザベルちゃん、だから・・・」

「嫌です。聞きたくありません。絶対に嫌です」


「おす。あのぉ、まだ、一言も言ってないんすけど」

「だって、二宮さんも、行かれるんでしょ、本当は、セレアムって遠い星に・・・?」


うるるるる・・・。

イザベルの目に涙が溜まっていった。




「で、イザベルさぁ、どうなの?」

岡本も身を乗り出してきた。


はっ。

イザベルは現実に引き戻された。


「あ、はい。確かに、二宮さんに誘われました。コンビニでアルバイトしていた時に、二宮さんが来られて、社長さんと常務さんが遠い星に行かれるって。それで、仕事が全部ニ宮さんのところに来るんで、大変になるから、アルバイトの学生を募集することになるんだって、おっしゃられていました」


「ふぅん・・・。それで、一発OK?」

「いえ。自給は相場の倍近くあって、不満などなかったんですが・・・」


「別のなにかに引っかかったの?」

「え・・・、それが・・・」


「このお仕事、すっごくいいお金になると思いますよ」

石橋が言った。


「それで、お話だと、二宮さんもセレアムに行かれるのかと思ったんです」

「どう思ったのですか?」

石橋がまたきいた。


「10日なんですけど、やっぱり、少し寂しくなるなぁとは思いました・・・」

「へぇ・・・。10日ぽっちでもねぇ・・・。まんざらじゃないんだぁ・・・。うふふふ」

岡本が意味深の笑いを浮かべた。


「え、どういうことですか・・・?」

イザベルは不安になった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「それで、二宮さんも行かれるのですかって尋ねたんです」

イザベルは真実を言った。




「おす。オレはよその星なんかへは行きませんよ・・・」

「本当ですか・・・?」


「おす・・・。というより、行かせてもらえないんすよぉ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はいっ?」


「わっはっは。オレ、留守番なんす・・・」

「留守番・・・?なにか大きな障害でも?」


「おす。そうなんっす。和人たちがいなくなると、会社の業務が止まってしまうんすよ。そういうことなもんで、常務たちがセレアムに行ったら、全部、自分ところにお鉢が回ってくるんすよね」


「二宮さんにですか?」

「おす」


「信頼されてるんですねぇ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「おす。ははは。それほどでも・・・。で、アルバイトでも頼まなきゃ、片付かないぞって。それで、常務がですね、募集をかけようってことになったんんですよ。IT関係に詳しい学生なら最適だって・・・」

イザベルは二宮を見つめた。




「なんか、最初はよくわかんなかったんですが、二宮さんは、わたしにアルバイトに来て欲しいってことなんだと気づいたんです」

「ふむふむ・・・」

岡本と茂木は頷いた。

「そこで、わたし尋ねたんです」




「二宮さん、それって、わたしを誘っています?」

「おす。誘われてください」


--- ^_^ わっはっは! ---




「誘われてくださいか・・・」

茂木が感心したように言った。


「あっはっは。茂木ったら、マジになって言わないでくれる?あーあ、傑作だわぁ、いかにも二宮って感じゃない?」

「ふふふ。二宮さん、ホント、おっかしいですね」

石橋も笑った。


「でも、一度は断ったんです」

イザベルは続けた。


「そうだろうねぇ。コンビニでバイトしてんだもんね・・・」

「はい。それで、ニ宮さんに言ったんです」




「お話は有難いんですが、ここのバイトもありますし、学校も卒業課題とか、道場とか、いろいろ忙しくなってきてるんで・・・」


「おす。バイトの枠が埋まっちゃう前に、OKくださいよぉ」

ニ宮はそんなことは軽く無視した。


「でも、そんなこと、急に言われても・・・」

「じゃ、ゆっくり喋りますから」


--- ^_^ わっはっは! ---


「んもう、二宮さん、そんなこと言ってるんじゃないんです!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「あははは」

岡本は大笑いした。


「まぁ・・・!」

石橋はあきれた。


「さすがは、二宮。ならではの口説きじゃない?」

岡本が茂木を見た。

にたにた・・・。


「うん。うん。最高よぉ!」

茂木は頷いた。


「それで、どうなったのですか?」

石橋がイザベルを見つめた。

「はい。それで、ニ宮さんが・・・」




「おす。オレは、イザベルちゃんに来て欲しいです。常務も、時給を奮発するそうっす」

「ホントですか?」


「おす。相場の5割り増しで・・・」


「違います。わたしが知りたいのは・・・」

ぽっ・・・。


「おす。仕事は、オレと一緒のチームになります・・・」




「ほぇ・・・。二宮、そんなこと言ったんだぁ・・・。驚きだわぁ・・・」

岡本が茂木と石橋とで見合った。


「その時、既にバイトの配属の話しもあったんですか?」

石橋が岡本たちにきいた。


「どうだろうねぇ、でも補充はスライド作りがメインだから、決まってたと言えないこともないわんぇ・・・」

「そうね・・・」




「あのぉ、少し、考えさせてください」

「5、4、3、2、1、0」


--- ^_^ わっはっは! ---


ニ宮のカウントはすぐに終わった。

「了解できましたぁ?」


「二宮さん・・・、あのですね・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---




「きゃははは!」

「あははは!」

「うふふふ!」

石橋も含めて、3人はそこで大笑いした。




「じゃ、もう少しだけ」

「ニ宮さん・・・、後で電話しますから・・・。ね?」

「えへへ。じゃ、いい返事お待ちしてます」


にこにこ・・・。

ニ宮は満面笑顔になった。




「あははは。ニ宮、ばぁっかじゃない?」

「二宮さんらしいです」

石橋は感心していた。


「それで、イザベルがうちに電話を入れたのね?」

「はい」


「わたし、その電話を覚えてます。わたしが最初に取ったんです」

石橋が言った。




「あのぉ、こんにちわ。株式会社セレアムさんですか?」

「はい、そうです」

石橋が答えた。


「喜連川と申しますが、マーケティングご担当の二宮祐樹さんはいらっしゃいますか?」

「二宮ですか・・・?」


「はい。二宮祐樹さんです」

電話を受け取った石橋が、事務所を見渡して、二宮の姿を探した。



「岡本さん、二宮さんは?」

「はいっ?二宮?あいつなら、出かけてるわよ。今日は・・・」

岡本は俊介のスケジュールを確認した。


「なにかあったとしても、戻ってこないわね」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうですか。どうも」

石橋は電話に戻った。



「申し訳ございません。ただいま二宮は外出しておりまして、本日、社には戻る予定はございません。二宮が戻るのは、明日の朝になります」


「わかりました。ありがとうございます。では、また、明日にでも、かけ直します」


「申し訳ございません。お約束でしたら、二宮からお電話差し上げましょうか?」


「いえ、それでは、二宮さんに申し訳ありませんから」

「それは、どうも。二宮には、お電話があったことをお伝えします」

「はい。ありがとうございます」


「もう一度、社名とお名前をお伺いできますか?」

「あ、はい。わたし、まだ学生なんで、学校名でよろしいですか?」


「あ、はい。学生さん、ですか?」

「はい。大山電子専門学校の情報学科の喜連川イザベルと申します」


「喜連川イザベルさんですか・・・?」

石橋が名前を確認した。


「わたしをご存知なんですか?」

「は、はい。いつも二宮がお世話になっています」


ぺこり。

石橋は電話を手に頭を下げた。


「え?」


--- ^_^ わっはっは! ---




「あー、思い出した!」

岡本が言った。


「そっかぁ、その時だったのね・・・」

「ええ・・・」

イザベルの後を石橋が継いだ




つんつん。

岡本が石橋を突いた。


にたぁ・・・。

「今の電話、だれなのよ、石橋?イザベル?」


「あ、はい・・・」

「わたし、イザベルさんになんか悪いことしちゃったかなぁ・・・?」

石橋はイザベルを気にした。


「とんでもないです。お世話になってるのは、わたしの方です・・・」

「は、はい」


「では、失礼します」

「はい、どうも。お電話ありがとうございました・・・」


つーーーっ。

かちゃ。




「そこで、岡本さんが電話を切っちゃったんです」

「はいはい。そうでした。そうでした」




岡本が電話を切って、石橋を覗き込んだ。

にんまり。


「石橋、イザベルが二宮になんの用だって?」


岡本の興味津々の様子に、石橋もようやく、それが仰天の大スクープだと気がついた。


「さぁ・・・」


(まずいわ・・・。わたしと二宮さんのこと、みんな知ってるような感じするわ・・・)

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