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274 点滅

■点滅■




「次のN火山温泉出口で降りるぞ」

Z国のリムジンの中で、マイクは運転手に言った。


「了解」

「近づき過ぎだ。距離を空けろ。気づかれるぞ。合衆国SSとの間を500メートル以上に保て、やつらが料金所で抜ける時に、こっちの姿を見られたくない」

「了解です」


ぶっろろろ・・・。

Z国のリムジンはスピードを落とし、ジョーンズたちとは300メートル以上離れていった。


かちかち・・・。

やがて、遥か前の車の方向指示器が左を指して点滅した。


「よし、N火山温泉ランプだ。やつら、降りるぞ。車間距離をもっと取れ」

マイクは運転手が少ししかスピードを落とさないのに不満だった。


「500メートル以上とれと言ったはずだ」

「了解です」




ばらばら・・・。


「こちら、キースだ」

合衆国ヘリに無線連絡が入った。


「キース、オレだ」

「ジョバンニ、例の車は、おまえらの後500メートルをつけているぞ」


「少し空けたな?」

ジョバンニは車の後ろを振り返って、そのヘッドライトを確認した。


「ああ。気づかれたくないらしいが、ヘリからGPSと赤外線スコープで監視されてるとは思うまい」

キースは無線機に語りかけた。


「日本警察へ通知する。オレたちの後ろ500メートルだな?」

「そうだ。作戦とおまえらの検討を祈る」

「了解」




N火山の温泉地帯に向かう高速道路の出口では、合衆国SSたちから日本政府経由で送られてきたZ国スパイの情報を元に、ランプ閉鎖が実施されていた。


「おい、合衆国SSの車が通過した」

「了解」


「500メートル空けてすぐ来るぞ。急げ!」

「了解」


「該当の車は?」

「ソヨタの高級リムジンだ。確か・・・」


「インペリアルだろ?」

「お、それ、それ。黒塗りで、ナバーは外交官用の青ナンバーだ」


「外交官ナンバーか・・・?」

「捕まえることはできんから、あれが来たら、予定通り出口を閉鎖し、追い返せ」


「わかった。すぐに閉めるように指示してくれ」

「了解」


だっだっだ・・・。

ばらばら・・・。

がたがた・・・。


警官が指示すると、係員たちはは出口を塞ぐ工事用のバリケードをあっと言う間に築いてしまった。


「ランプ出口500メートルを通過しました」

Z国のリムジンがそこを通貨したことを無線が知らせた。


「トレーラーとトラックを出せ。そして、パトカーをバリケードの前に2台つけろ」


「了解」

警官合図で、トレーラーとトラックが料金所を出た後、出会いがしらに衝突した様子が再現され、パトカー2台がバリケードの前に陣取った。


ぴかぁーーー。

パトカーの屋根の上の警告灯が、事故の文字と一緒にきらきらと輝いた。


「出口のサインをオンにしろ」

「了解」


ぱぁーーーっ。

料金所の電光掲示板に出口閉鎖のサインが出た。


「事故、N火山温泉、閉鎖中」


「今、ランプから料金所に向けて下っていったぞ」

「了解」


「よし、すぐにもランプを降りてきて、見えるてくるぞ」

「了解」


「おら、案内、トーチをつけて交通整理に当たれ」

「了解」


警官が10人近く、持ち場に散らばり、ある者はトーチを持って、サクラの車を誘導しているように装った。




「なにごとだ・・・?」

マイクは目前の、高速ランプ閉鎖を信じられないように見つめた。


「事故だとぉ・・・?ゆっくり行け・・・」

「了解・・・」

運転手はゆっくりと誘導路を下り、料金所に来た。


ぱぁ・・・、ぱぁ・・・。


前方にはパトヵー2台と警察のワゴン2台、そしてその向こうには、大型トレーラとトラックが、めり込むような形に崩れて、一般道路への出口を完全に塞いでいた。


きーーー。


「下り方面のランプは閉鎖です」

「どういうことだ?前の車は出て行ったではないか?」


「いや、本線に戻りましたよ」

「本線に?」


「ええ。なぁに、よくあることですよ。トレーラーの運転手が、居眠りしたまま、料金所を出て、上り側へ突き抜けてしまってね。下り側はご覧のとおり、車がまったく出られません」


「なんだってぇ?」

マイクは唇を噛んだ。


「前の車みたくすぐにUターンして高速道路に戻るか、片付くまで脇のパーキングで待つかどちらかにしてくださいよ。もし、高速本線に戻るんでしたら、ここでの精算はいりませんから、そこの脇から、本線に戻ってください」

係員は、本線に戻るために開けられた道を指し示した。


「待つとしたら、どれくらいかかる?」

「さぁ、今しがた警察が来たところですからねぇ・・・。最低でも1時間くらいは検分にかかるでしょうし、あの大型トレーラーをどけるとなると、重機を持ってこないとなりませんよねぇ・・・」


「で、どれくらいだ?」

「4、5時間というところじゃ、ないでしょうか?」


「4、5時間?バカな!こっちは急ぐんだ!」

マイクはとんでもないという顔になった。


「お急ぎのところはわかりますが、わたしに言ってもらっても、困るんですがぁ・・・」


「次のランプまで行くんだ!」

リムジンの奥から声がした。


「わかった、次のランプまで行きたい」

「じゃ、そっちの脇を抜けてください」

係員は手振りで、反対側の車線への道を合図した。


「そっち、そっちですよぉ」

「わかった・・・」


ぶろろろろ・・・。

Z国のリムジンは、反対側へ無事通り抜け、また本線へと戻っていった。


「予定通り、次のランプまで行きましたよ」

係員は、側の警官に合図した。


「よし、これでいい。次のランプは40キロ先だ。そこから下に降りて戻ってくるとしたら、2時間はかかるな」

「本線の工事も5キロにわたって制限してますから、実際はもっとかかるでしょう」


「よし、本部に連絡だ」

「了解」




「予定通り、セレアム着地点よXり半径2キロの主要道路の通行規制を敷け」

「了解。Xへの道は3本です」

「よし。連絡しろ」

「了解」


こうして、警察によるセレアムの宇宙機の着地点までは、確実に規制され、車でのアプローチはほぼ不能となった。




ぴっ。

「大田原だ」

「わたしだ、大田原さん」


「やぁ、藤岡さん。いよいよですな・・・」

「ええ。当局の規制で、そっちへはだれも近寄れんはずだ」

「おかげさまで、あまり仰々しくもなっていません。感謝します」

ぺこり。

大田原はスマホを持ったまま頭を下げた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「はは。じいさん、すっかり日本人になっちまってるな」

「ほんと。電話しながら、頭を下げてるわ。見習わなくちゃね」


「なに言ってるんだ、姉貴、格好悪いぜ」

「真心よ。真心、気持ちは行動に表れるって言うでしょ。おじいさまは、藤岡首相に心から感謝しているのよ」

「なるほど」



「藤岡さん、今、どこにおられるんで?」

「官邸じゃよ。わたしが動くと、張り込んどる記者連中が追っかけてくる。つまり、わたしは、そこには行けんというわけだ」


「お察ししたします」

ぺこり。

大田原はまた頭を下げた。




やがて、約束の時間11時半が近づいてきた。


「みんな、聞いてくれ!」

俊介が一同に言った。


「セレアムの連絡宇宙機がここだとわかり易くするために、車を輪にして止めてくれ。各車の間は4メートルくらい空けてくれ。お互いのヘッドライトが前の車の後部に当たるようにしてくれよぉ」


「うーーーす」

「了解」


ぶろろろ。

俊介の指示で、俊介のワゴンをはじめ、和人、大田原、警護官2台、ジョーンズの車、計6台が、互いの後部を照らせるようにして輪になった。


「おれが合図したら、ヘッドライトをハイにして順番につけてくれ。後ろの車がライトをつけたら自分のをつけるんだ。後ろの車が消したら消す。大体2秒間隔でこれを繰り返しする。いいかぁ?」


「了解した」

「うっす」

「了解です」


「それじゃ、リハーサルをするぞぉ!」

「了解です!」


「二宮、つけろ!」

「うっす」


ぱっ。

二宮がライトをつけると、前にいた警護官の1台がつけた。


ぱっ。

次にジョーンズがつけると、和人がつけた。


ぱっ。

そして、和人がつけると、大田原の車がつけ、そして、警護官の2台目がつけた。


ぱっ。

ぱっ。

ぱっ。

そして、2秒後にそれぞれが消していった。それはまるで光の輪がぐるぐると回っているように見えた。


「うぉ!うまくいったぞぉ!いいぞぉ、みんなぁ!」



「車にいる人間以外は、輪の中に集まってくれ」

大田原がみなに指示した。


さくさく・・・。

一同が輪の中に入ってきた。


「いよいよですわね?」

「うん。わくわくするね、ユティス」

「リーエス」


「じいさん、セレアムのランチ船はどっから来るんだ?」

俊介は大田原にきいた。


「さて、わたしもエメリアにそこまで詳しくは聞かなかったな。母船を地球上空に待機させ、地上との連絡は小型宇宙機でするとしか聞いておらん」


「小型宇宙機というと、どれくらいの大きさなの、おじいさま?」

今度は、真紀が大田原にきいた。


「そうだな、母船は500メートルというところだ。惑星連絡宇宙機はせいぜい、直径20メートルくらいだな。

「20メートルというと、近くなら、けっこう大きいわよ」


「うむ。着陸用のギアを降ろすと、高さは5メートルやそこらあるからな。案外大きく感じるかもしれん」


ぽつり・・・。

その時、東の空に黄色く輝く点が現われた。


「星じゃないわね・・・」

アンニフィルドがそれを指して言った。


「光が点滅してない。航空機でもないよ」

キャムリエルは光が点滅していないことを強調した。


「あれかなぁ・・・?」

和人は言われるまま、それを見ていた。




合衆国のヘリのレーダーにも、それは映っていた。

「おい、ジョーンズ、現われたぞ!」


ぴっ。

「どうした、キース?」

「東の方角だ。レーダーに捕らえた」


「セレアムの宇宙機か?」

「そうらしい。いきなり現われた・・・。あ、あれか・・・?」

キースの声は、レーダーの影を実際に肉眼で確かめようとするものだった。


「ジョバンニ、東の空だ!かなりゆっくりとした動きだぞ」

「わかった」

ジョーンズとジョバンニは車を降りて、東の空を見上げた。




「よぉし、みんな、さっきの打ち合わせどおりだ。いくぞぉ!」

「うっす」

「了解」


ぱっ。

ぱっ。

ぱっ。


輪になった6台の車が、1台ずつ順番にヘッドライトをつけたり消したりして、光の輪が回転しているようになった。


「よし、ばっちしだぁ!」

俊介は歓声を上げた。




一方、高速道路上では、Z国のリムジンが立ち往生に近い状態に陥っていた。


「マイク、そろそろ時間だぞ・・・」

リッキーが、空を気にしながら言った。


「いちいちおまえに言われなくとも、わかっている。くっそう、このうすのろトラックめ、どうにかならんのかぁ・・・?」


Z国のリムジンの前には大型トラックが片側規制の1車線を40キロで走っていた。


「おい、東を見ろ!」


リッキーが叫び、高速道路上の次のランプ手前20キロ地点で、Z国の面々がそれを目にした。


「星か?」

「違う、よく見ろ!黄色い明るいやつだ!」

そしてそれは、静かに動いているようだった。


「急げ!」

マイクは運転手を急かした。


「や、やってますよぉ・・・」

運転手は不満そうな声をあげた。


「マイク、どうやら、オレたちはまんまとはめられたようだな・・・」

「なんだと?」


「ヤツらは前のN火山温泉ランプで降りたんだ。オレたちだけを本線に戻した」

「と言うことは・・・」


「フェイクだ。料金所のすべて、そして、今、おれたちの前を走ってるトラックもみなグルだよ・・・」

リッキーはじたばたしても、もう始まらないことを悟っていた。


「オレたちのことを知ってたのか・・・?」

「筒抜けだったようだな」


リッキーは、東の空に浮かんでいる黄色い光から、片時も目を放さないようにした。


「しかし、それは、おまえが二宮を使うからだぞ!」

都合の悪い時のマイクのお決まり、責任転嫁が始まった。


「オレの言うとおり、高速道路ではなく一般道を使えばこんなことにならなかった。違うか?」

「う・・・」

マイクは言葉に詰まった。




すぅ・・・。

光はゆっくり下から上に向かって動いていたが、大きさはわからなかった。


ぴかぴかっ。

と、突然、それは強く数回点滅して色を変えた。


「間違いない!」

大田原の口元に自然に笑みがこぼれてきた。


「じいさん、なんて合図だ?」

俊介が大田原に言った。


「セレアムの認識番号を言っている」

大田原はそれがなにかわかった。


「わたしたちが見えてるのかしら?」

真紀が夜空に点滅する光を見つめながら言った。


「もちろん、お見えになられてますわ」

「そう。ユティスの言うとおり。空から見ると、けっこう見えるのよ」

アンニフィルドが言った。


「ユティス、今よ」

「リーエス。アンデフロル・デュメーラ、こちらに光を当てて」


ユティスが言うと、突然、車の輪の真ん中に、空から光の柱が下りてきた。

ぴかぁーーー。


「な、なんだぁ?」

俊介はびっくりして、光の柱を追っかけて、空を見上げた。


ぴかぴか!

空の光の玉はさらに点滅を早くした。


「あ、わかったみたいだぞ」




「くっそう、工事で、車線規制だとぉ・・・?」

Z国のリムジンの中で、外商部長のマイクは悪態をついた。


どどどど・・・。

おまけに目の前のトラックの列は徐行していた。


「時速は何キロだ?」

明らかに遅くなった速度に、マイクが苛立った。


「40キロです」

運転手はすぐにメーターで確認した。


「次のランプまでは?」

「30キロ前後です」


「ちくしょう・・・。このままじゃ、40分以上かかるぞ・・・」


「路肩を走りますか?」

運転手がきくと、マイクが答えた。


「よし、その手があった。かまわん、走れ!」

「止めとけ!」

すぐにリッキーが運転手に言った。


「後ろにパトカーが走ってるのがわからんのか?」

「ええ?」


ちかちか・・・。

運転手が見ると、バックミラーの中で、非常灯をぴかぴか点滅させ、パトカーが2台前後に並んで走ってくるのが見えた。


「オレたちは、端からマークされてるんだ。いくら外交官ナンバーとはいえ、明らかな違反は取り調べられる。時間の無駄になるだけだ」


「どうすると言うんだ?」

「このまま進むしかあるまい・・・」


「くっそう、間に合わんではないか・・・」

マイクは焦っていた。

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