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273 到着

■到着■




N火山の裾野にある高原の一地域で、国分寺たちを向かえるセレアムの宇宙機が、夜中の11時半に現われることになっていた。大田原、国分寺、エルフィア人たち、その護衛、そして、Z国の面々は、会見場所に向かっていた。



「二宮、そろそろ、じいさんとの約束場所だ」

俊介が高速道路のパーキングエリアのサインを見て、二宮に確認させた。

「了解っす」


かちかち・・・。

二宮はウインカーを左に出し、ワゴンを減速させた。


るるる・・・。

ぴっ。


「わたしだ」

真紀のスマホの向こうで大田原のしっかりした声が聞こえた。


「おじいさま、今、パーキングエリアに入ったわ。おじいさまの車は、どこなの?」


「一番逃げやすいところさ。わははは」


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ。わかったわ。パーキングエリアの出口、ガソリンスタンドの側でしょ?」

「ご名答。ついでにガソリンも補給し終えた」

「500キロも逃走することになるの?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そんなに走ったら家を通り越してしまう」

「あは。了解よ。今、車をそっちに行かせるわ」

「うむ。待ってるぞ」

ぴっ。


「二宮、聞いたでしょ?ガソリンスタンド脇よ」

「うーーーす」

二宮はパーキングエリア内をゆっくり走り、大田原の待つところに向かった。




「あれぇ、ここじゃないのかなぁ?」

和人は、一旦パーキングエリアに入ったものの、二宮の運転するワゴン車が本線誘導路に向かってそのままずるずる行くを見て、不安になった。


「大丈夫ですわ。そのまま、二宮さんの後ろを着いていきましょう」

にこ。

ユティスはパーキングエリアのライトに笑顔を浮かばせた。


「へぇ、これが地球の車なんだね?」

キャムリエルは初めて見る高速道路とパーキングエリアとに目を見張った。


「リーエス。ガソリンという液体炭化水素を燃やして、できた高温ガスの膨張力を利用してモーターを回すんだ」


「それをタイヤの回転力に変換するんだね?」

エンジニアでもあるキャムリエルは、和人の言葉の途中で、だいたいのメカニズムを理解していた。


「リーエス。アクセルを踏み込んだ時のエンジンが回転数を上げる音がいいんだよなぁ」

和人は二宮の後を見失わないようにした。


「地球の車は、『ぶろろろ』って振動を共って、野蛮な音がするのがいいのよ」

アンニフィルドが付け加えた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「うふふ。大きな音がして走るので、最初は少しびっくりしましたわ」

ユティスは茶目っ気たっぷりに言って、運転席の数とに微笑んだ。


「オレもびっくりしたよ」

「ええ?和人さんがですか?」


「そりゃ、あなたが、運転中の和人にキッスしようとしたりするからよぉ、ねぇ、和人?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええ?」


「危ない!」

その時、左横からセダンが近づいたので、アンニフィルドが叫んだ。


ききっ!


「きゃ!」

「わぉ!」


どん!

ど、どん!

和人が急ブレーキをかけたので、全員前につんのめった。


「痛い!」

「和人!」

「ごめん」


ぱららら、ぱららら!

セダンから、けたたましくクラクションが鳴った。


「気をつけろ、馬鹿野郎!」

一時停止も確認もせずに、自分が無理矢理前に割り込もうとしたくせに、セダンの運転席の窓を降ろして、とっぽい感じの若い男が吼えた。


「安全確認もしないで、そっちが無理矢理割り込んだんじゃない。それを、馬鹿野郎とは、ご挨拶ね!」

アンニフィルドは後部の窓を開けて、即座に応酬した。


「なんだと、このアマぁ!」

「ぶ男!能無し!」

「や、やっかましい!」


「こんな夜中に、男一人でドライブとはご愁傷様。おー、みっともない。べぇーーー!」

アンイフィルドは男にアカンベをして挑発した。


「こらぁっ、下手に出りゃ、つけ上がりやがって!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。こいつ、最初からちっとも下手に出てないじゃないか。地球人てユーモアがあるんだね?」

たちまち、キャムリエルはこの騒動を面白がった


「アンニフィルド、大丈夫ですか?」

ユティスが、またもかという顔で苦笑いした。


「ホント、喧嘩っ早いよなぁ、アンニフィルドは・・・」


ばたん。

「こら、降りろ。落とし前つけさせてもらうぜ!」

セダンから男が降りようとした。



「アンデフロル・デュメーラ?」

「リーエス、SS・アンニフィルド。ご用ですか?」


「あの車、本線に戻してよ。この先500キロくらい」

「リーエス。ガソンリンとかいう燃料が続く限り、走行を支援したします」

「頼むわ」

「リーエス」


ぶろろ!

そして、男は降りたところで、セダンがゆっくりと独りでに動き始めた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「アマ、出てこいっ!」

男はアンニフィルドに吠え立てた。


するする・・・。

しかし、彼のセダンはなにものかに操られるように本線へ通じる誘導路へと向かっていった。


「あんたの車、行っちゃうわよぉ。追っかけなくていいのぉ?」

「なんだとぉ?あ、あーーー!」

アンニフィルドの言葉で、男ははじめて自分の車に異変が起きているのに気づいた。


「オ、オレの車がぁ・・・」


「あーあ。車にも愛想つかされちゃって、可愛そうねぇ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「う、うるさい!」

たったったった・・・。


「待て、こらぁ、待ちやがれ、オレの車!」


--- ^_^ わっはっは! ---


男はゆっくり本線への誘導路を出口へと走っていく車を追いかけた。




「おい、あれを見な、二宮」

俊介は、車を追っかけている男に向かって顎を突き出した。


「夜中にマラソンっすっかぁ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アホ。高速道路にそんなものあるわけない」

「それも、そうっすよね」


「で、なんなのよぉ?」

車を追いかける男を見ながら、真紀も変だと思った。




それを警護官たちも見ていた。

「おい、あれ!」


一台のセダンがゆっくりと誘導路に沿って動いていた。


「車のサイドブレーキ故障ですか?」

「あのままだと、本線に出てしまう。危ないぞ!」


「止めましょう!」

「ああ。よし、行くぞ」

「了解!」


警護官の二人は車を発進させて、男とセダンを追いかけた。

うーーー、うーーー、うーーー!




「ちくっしょう、どうなってやがんだぁ・・・・。はぁ、はぁ・・・」

たったった・・・。

とっぽい男は、必死で自分の車を追っかけた。


「待て、こら!」


たったった・・・。

かちゃ。

男はようやく追いついて、ドアに手をかけた。




「えへ。時速20キロだから、地球人にはけっこうキツイかもね?」

「アンデフロル・デュメーラ、しばらく追いつかれないように、遊んでやって?」

「リーエス。SS・アンニフィルド」


「アンニフィルド、危ないんじゃないかい?」

それを見ていた和人が、心配そうに言った。


「あら、どうして?」

「だって、高速道路誘導路って、200メートルくらいしかないよ。そこを80キロまで加速するんだから。次の車が来たら、撥ねられちゃうよぉ」


「わかったわ。アンデフロル。デュメーラ、あいつを乗せてあげて、それで後の指示は有効よ」

「リーエス。SS・アンニフィルド」


ばん。

男は車にようやく乗り込んだようだった。




すたすた・・・。


「おい、なにをやってるんだ?」

和人の車に俊介が近づいてきた。


「さぁ?変なやつに絡まれちゃったんで、アンデフロル・デュメーラに預けたのよ」


アンニフィルドが俊介を見た。


「はっは。アンディーのやつ、エンジン・システムを乗っ取ったんだな」

「あは。人聞き悪いわねぇ。借りただけよぉ。誘導路を塞いでたんだからね」

アンニフィルドは笑って言った。


「でも、危ないぞぉ」

「すぐに警官が追っかけたわ。今頃、いろいろ質問されて、道交法違反で切符の一つや二つ切られているんじゃない?」


「お手柔らかに頼むぜ」

「はいはい・・・、ふぅ・・・」

アンニフィルドは急トーンダウンした。


「どうした?」

「やっぱり、行っちゃうのよね・・・」


じぃ・・・。

アンニフィルドは俊介を見つめた。


「おい。今さらなんだよぉ?たかだか、10日くらいじゃないか?」

俊介は軽く言った。


「男にとってはそうかもしれないけど、女にとってはそうじゃないの・・・」

しかし、アンニフィルドは違っていた。


「そうか・・・」

「リーエス・・・」


「3日ぐらいか?」

「バカ!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「諸君、こんばんわ。いい夜だね?」

「まぁ、大田原さん、こんばんわ」

大田原がやって来たので、ユティスたちも車を降りて挨拶した。


「ああ、カズト。この前は大変だったようだが、無事でなによりだ。今日は、あまり警護もいないが、その分極秘だからな」


「でも、Z国が狙ってると・・・」

「大丈夫だ。合衆国の連中もGPSをウォッチしている」


「でも、彼らも来てるんですよね、おじさん?」

キャムリエルがくったくのない笑顔で、大田原に言った。


「おじさん?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「え、違うの?」


「キャムリエル、あなた、天下の内閣特別顧問の大田原太郎、国分寺真紀と俊介姉弟の祖父を呼ぶにことかいて、『おじさん』呼ばわりするなんて!」

アンニフィルドがキャムリエルを諌めた。


「わははは。よい、よい。キャムリエルは、まだ地球に慣れないからな」

大田原はぜんぜん気にしていなかった。


「そうそう。ボクは慣れてないんだ」

「自分から言うかねぇ・・・」

アンニフィルドが両手を広げた。


--- ^_^ わっはっは! ---


「みんな、10分休憩を取ったら行くぞ」

大田原がみんなに指示した。




ぶろろろ・・・。


セレアムの宇宙機を迎えるための一行は、10分の休憩をパーキングエリアで取った後、高速道路をN火山の裾野に向かって、再び発進した。


「オ、オレは知らねぇったら!」

パーキングエリアを出た、本線への誘導路の途中で、さっきのとっぽい若い男が、警護官たちの取調べを受けていた。


「運転者不在で車を動かし、誘導路を徒歩で歩き、そして、駐停車禁止の誘導路上で車を停めた。完璧に道交法違反だぞ。免許証を見せろ」


「わぁ、だから、オレは知らねぇったら、勝手に車が動いたんだってば!」

「だったら、整備不良も追加だな。しめて、違反得点4点」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えーーー!」


「ま、一発免停まではいってないから、安心しろ。罰金6万円、ほれ」

びり。

警護官は違反切符を無造作に切ると、男に渡した。


「ん、な、馬鹿なぁ・・・」




ぶろろろ・・・。

「あ、あいつ、さっきのバカ・・・」

そこに、アンニフィルドが和人の車で本線に向かって加速していった。


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。悪いことできないねぇ・・・」

キャムリエルはアンニフィルドにウィンクした。


「リーエス」




ばばばば・・・。

ぴっ。

「キースだ」


一行の数キロ後ろを追いかけている合衆国のヘリでは、ジョバンニたちの上司がGPSモニターを睨みながら、ジョバンニと無線連絡をしていた。


「なんですかい、ボス?」

「Zのやっこっさんたち現われたぞ。GPSで確認してる。ぴったり200メートル空けて追尾してるぞ」


「車間距離は十分だな」


--- ^_^ わっはっは! ---


「日本側へ通知するか?」

「ああ。こっちでしよう。どのみち、高速の出口で検問してるって話はきいてるから、そこでヤツラを取っ捕まえるさ」

「了解」




時刻は夜11時近くになっていた。そこは、耕作を終えた広い畑だった。今は何も植えられていない。


ばたむ。

辺りにある光は、車のライト以外は、満天の光は星空だけだった。


「ここだ・・・」

さくさく・・・

国分寺姉弟はワゴンを降りると、大田原太郎の立つところへ歩いていった。


「あと30分あるわ・・・」

「ああ・・・。じいさん!」


さくさく・・・。

俊介は大田原を呼んだ。


「真紀、俊介、大丈夫か?」

「ええ、おじいさま」

「オレもな」


「すてきな夜空ですこと・・・」

ユティスが満天の星を見つめて言った。


「あそこがエルフィア銀河団のある方向だね?」

和人が乙女座のアルファ星のスピカを見つけて、だいたいの方角を指した。


「うふふ。また、視力の増光をしますか?」

ユティスが和人に言った。


「うん。でも、今日はいいや。この後セレアムの宇宙機が来た時、目が眩んじゃうから」

「そうでしたわね」


「天の川銀河の断面だよ」

「ええ。見えるわ・・・」

アンニフィルドが夜空に大きく横たわる淡い光の帯を指した。


「リーエス。エルフィアの夜空と比べると、少し星が足りないかな」

「はは。エルフィアもそうなんですな。セレアムも銀河の主要過剰腕にほど近いところにあります。それで、夜空に星が多く見えるんですよ」

キャムリエルが夜空を見上げたまま言った。


「リーエス。ところが、太陽系は今は主要渦状腕から外れたところにあります」

「なるほど」


「でも、それが幸いしてるんだぞ」

大田原が言った。


「もし、太陽系が主要渦状腕のの中にあったら、そこら中で超新星爆発を経験してただろうな。ガンマ線を数万年毎に浴びて、多細胞生物に進化していなかったかも知れん」


「そう意味では、やはり、地球は奇跡的な世界なのかぁ・・・?」

二宮が、わかってるのかわかっていないのか、取りあえず言った。


「確かに、あなたがここにいるのは奇跡だわ」

アンニフィルドがみんなにウィンクした。


--- ^_^ わっはっは! ---

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