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267 負傷

■負傷■




いらいら・・・。

「だ、だれ?邪魔をするのは?」

ゾーレのただならぬ様子に、リュミエラは苛立った。


「どうしたの、ゾーレ、ファナメル!フェリシアスの感覚が戻ってるわ!」

「そんな、バカな・・・」

ファナメルはフェリシアスへ精神エネルギーを強めた。


「だれかが、フェリシアスを助けているわ・・・」

ゾーレが宙を睨んだ。


「馬鹿な。アンデフロル・デュメーラにそのようなことは・・・」


(そのまま、右、真っ直ぐです)

キャムリエルは、フェリシアスの超感覚をサポートした。


(リーエス)

フェリシアスはゆっくりと立ち上がって、目を閉じたまま、リュミエラの方を向いた。


「無駄だ、リュミエラ、やめるんだ!」

「強がり言ってないで、そっちこそ、あきらめたら?」


「はぁーっ!」

リュミエラのエネルギー波は、重力波となってフェリシアスの足下で、その恐ろしい力を発生した。


じゅわぁっ!


(いけません。フェリシアス。重力波です!)

キャムリエルは必死でフェリシアスに告げた。


どぉーーーんっ。

「くっ・・・」


「遅いわ、フェリシアス。ふふふ、いつまでもつかしら、フェリシアス・・・」


「重力波か?」


「そうよ。あなたの足下の時空を超ミニサイズに凝縮したわ。すぐに2G、3Gになる。さて、どこまで時空凝縮が成長するかしら?どう、自分のエネルギーを吸い取られたあげく、体がどんどん重くなるっての。ふふふ」


ぶわぁんっ。


「フェリシアス!」

まさに、重力が2Gになりかけたところで、クリステアが現れた。


「クリステア、気をつけたまえ!重力波だ!」

フェリシアスの声で、クリステアは状況を把握した。


「あいやーーーっ!」


クリステアは、全身全霊を込めて、フェリシアスの足下の黒いシミに、エネルギーをぶつけた。


ばしゅ・・・。

しゅいんーーーん。


鈍い音がして、クリステアのエネルギーは、無残にも吸い込まれただけだった。


「ふふふ、無駄よ、お嬢ちゃん。超ミニ凝縮時空にエネルギーをぶつけても、なんにもならないわね。ブラックホールのように吸い込まれ、逆に重力を増やすだけよ。さぁ、どうするの・・・?」


「はぁ、はぁ・・・」

クリステアは肩で大きく息をした。


(おかしい・・・。超ミニサイズの凝縮時空が、通常時空で、こんなに長時間続くわけない。一瞬で消滅するはずなのに・・・)


クリステアはフェリシアスを見た。


「はぁ、はぁ・・・」


(だめだ・・。周りの時空を、だれかが、シールドしているんだ・・・)

フェリシアスはハイパー通信でキャムリエルに言った。


(リーエス。大至急、探知します!)

(頼むぞ!)




直ちに、キャムリエルはクリステアに精神波で連絡した。


(クリステア、ぼくが、彼女の重力方向を逸らすから、きみは、その隙にフェリシアスの凝縮時空を消滅させてみて!)

(リーエス。やってみるわ)


そこにリュミエラの一撃が襲ってきた。

ばっしーーーんっ。


「きゃあーーー!」

クリステアの鋭い悲鳴が響き、クリステアのシールドは消滅した。


ぼーーーん。

その勢いで、クリステアは、大きくはじき飛ばされた。


どがんっ。

「あぅっ!」


フェリシアスが、カバーに入ったが、一瞬遅れ、クリステアは、背中から壁に激突して、ピクリとも動かなくなった。


ぐたり。

つつぅ・・・。


ぽたぽた・・・。

クリステアの口から、血がしたたった。


「うぉーーーっ!クリステア!」


だっだっだっだっだ・・・!

絶望的な叫びをあげて、フェリシアスが、クリステアに駆け寄り、彼女を抱きかかえた。


がしっ・・・。

「肺を、やられたな・・・」


フェリシアスは、すぐにクリステアが命に関わる重症を負ったことを知った。


ぎりぎり・・・。

フェリシアスは怒りが湧き上がってくるのを懸命に押さえ込んだ。


「リュミエラ・・・。きみは、なんてことを・・・」


にたっ。

「ふふふ、あなたの恋人も、もう終わりね・・・」

リュミエラは静かに笑った。


「きみという女は・・・」


むらむらむら・・・。

フェリシアスは、込み上げてくる怒りを、懸命に抑えて、クリステアを救う手段を考えることに集中した。


(クリステアの麻酔が優先だ!)

フェリシアスは、クリステアの神経を麻痺させ、気がついたら、すぐに味わうことになる地獄の苦しみから、クリステアを隔絶させた。




(みんなっ、クリステアがやられた!)

フェリシアスはアンニフィルドとキャムリエルに伝えた。


(なんですって!フェリシアス、あなたが、ついていながら!)

アンニフィルドはきっと口を真一文字結んだ。


(申し開きは、後だ!彼女は、肺を潰されている。このままだと命が危ない。アンデフロル・デュメーラから、すぐにそちらに転送する)

(リーエス)


(アンデフロル・デュメーラ、大至急、ユティスに!お願いだ。ユティスに!)

(リーエス。SS・フェリシアス。仰せの通りにします)

アンデフロル・デュメーラはすぐに答えた。


(フェリシアス!ユティスは、まだ気づかないの)

アンニフィルドが答えた。


(あきらめるんじゃない。なんとしても、ユティスを目覚めさしてくれ!)

(リーエス)


(さぁ、アンデフロル・デュメーラ、クリステアを、ユティスのところに送るぞ。手伝ってくれたまえ)

(リーエス。SS・フェリシアス。SS・クリステアを転送します)


(和人、クリステアを受け止めてくれ!)

フェリシアスは和人に叫んだ。


ぶわbbっ。

その瞬間、フェリシアスの腕の中から、クリステアが消えた。


「な、なに?」

リュミエラたちは、一瞬、なにが起きたかわからなかった。




「来たわよ!」


ぼわーっ。

部屋の中に白い光が集まり、人影が浮かび上がった。


「クリステアだ!」


ぶわんっ。

あっという間に、クリステアが、和人の腕の中に収まっていた。


がしっ。

「受け止めたぞ」


「和人、そうっと、そうっとよ」

「リーエス」


「頭に気をつけて」

「リーエス。よし、うまく抱えられた」


「酷い血・・・、そこの医療処置セルに」

アンデフロル・デュメーラの力場に支えられ、クリステアの体は中に浮いて、漂うにして医療処置セルに入った。


「仰向けにしちゃダメ!血が逆流して、窒息しちゃう!」

アンニフィルドは、あわてて、和人を制した。


「ストップ!」

「ちくしょう!どうしろっていうんだ?」

和人はクリステアを抱えたまま、アンニフィルドに向かって叫んだ。


「クリステアはわたしが診るわ。あなたはユティスを起こしてよ!」

「どうやって?」


「とにかくやんなさい!クリステアの命が、かかってんのよ!」

「リーエス!わかった。すぐにやる!」


「わたしは、クリステアの血を止める。そして、肺の中をきれいにするわ」

アンニフィルドはそう言うと、クリステアに手をかざした。


ぶわーーーっ。

さぁーーー。

しゅわぁーーーん。

ぴっ。


「これで当面いいわ・・・。アンデフロル・デュメーラ、後は頼んだわよ」

「リーエス、SS・アンニフィルド」




「和人、今、ユティスの医療処置セルを開けるから、一瞬、待ってくれないか」

キャムリエルは、ユティスの医療処置セルを慎重に捜査した。


「リーエス、キャムリエル」


しゅーーーん、しゅん。

キャムリエルの指示で、ユティスはセルのカバーが消えた


「さぁ、和人、もう呼びかけていいよ」

「うん。ありがとう、キャムリエル」


和人は、クリステアの横で、気を失ったまま寝ているユティスの潜在意識深くに、接近した。


「ユティス、ユティス!オレ、和人だよ。お願い、気づいてくれよ。クリステアを助けてよ。肺をやられちゃって、命が危ないんだ!ねぇ、ユティス・・・。お願いだ、意識を戻してくれよ」


ぎゅ。

和人は意識を取り戻さないユティスを抱きしめた。


「ユティス、ユティス!目を覚ましてくれよ!」




Z国大使館の2階の大広間では、SSたちの戦闘が続いていた。


「はぁ、はぁ・・・」

「ふん。クリステアは、どのみち戦線脱落よ。アンニフィルドもいないわ。さぁ、一人で、どう戦う気、フェリシアス?」

リュミエラは勝ち誇ったように、フェリシアスを見つめた。

「ふっふっふ・・・」


「どうかな・・・」

「悪あがきは、よしなさい」


「それは、きみたちだろ?」

「ふざけないで!」


ささっ。

リュミエラはエネルギー波を思いっきりぶつけようと構えた。


「はーーーっ!」


そのタイミングを、見計らったようにして、アンデフロル・デュメーラから、強烈なエネルギー補給が、フェリシアスに届いた。


ぎゅうーーーん!


「え?」

リュミエラは一瞬たじろいだ。


「だぁーーー!」


フェリシアスはアンデフロル・デュメーラのエネルギー補給で、ファナメルのバリアを打ち砕いた。


ばしーーーんっ!

どかーーーん。


ごろごろ・・・。

どってーーーん。


「きゃあ!」

もうんどり打って、ファナメルは後ろに転がった。


「こりゃ、失礼」

フェリシアスは鋭く叫んだ。


「今だ、アンデフロル・デュメーラ!」

「リーエス。SS・フェリシアス」


ぶわぁーーーん。

リュミエラたちの周りに、白い光が輝き始め、あっという間に、元SSたちを包み込んだ。


「うぁ!」

「きゃあ!」

「わぁ!」


次の瞬間、3人は、フェリシアスの目の前から、跡形もなく消えた。




ぶわぁん。

リュミエラ、ファナメル、そしてゾーレの3人は、アンデフロル・デュメーラの中に、転送されていた。


「SS・リュミエラ。あなた方3名を捕捉、収容しました」

アンデフロル・デュメーラの冷静な声が3人に届いた。


「捕捉収容?」

リュミエラは、白い大きな部屋にいる自分たちに気づいた。


「ここは?」

「エストロ5級母船、アンデフロル・デュメーラ。わたくしの中です」

アンデフロル・デュメーラが静かに答えた。


「エストロ5級母船の中・・・?」

リュミエラはそれの意味するところを理解した。

「はっ・・・。ついに焼きが回ったわね・・・」


「強制送還?」

ゾーレがリュミエラを見た。


「リーエス。これから、あなた方は、エルフィアに転送されます」

アンデフロル・デュメーラが答えた。


「ふふふ・・・。どじっちゃったか・・・」

リュミエラは観念した。


「超A級エージェント・ユティスの拉致、超A級SS・クリステアへの傷害、並びに、超時空転送システムの無断使用の容疑で、あなた方5人は裁判に掛けられます。裁判においては、いかなる質問への黙秘を守る権利を有します。ただし、それにより、裁判を、不利にする場合があります」


「弁護士が来るまで、第5条を適用させて」

「リーエス。結構です。SS・リュミエラ」


「第5条って・・・?」

「黙秘権よ・・・」


「どうなるの、わたしたち?」

ファナメルが、リュミエラを見つめた。


「エルフィアへ送還されて裁判よ。その後は判決次第だけど、カテゴリー1の世界に送られて、もう、二度と、エルフィアを見ることはできないわ。SSにも復帰できないわね」

リュミエラが力なく言った。


「カテゴリー1ですって・・・」

ファナメルは絶望的な目をした。


「リーエス。大宇宙の摂理どころか、科学もなく、呪術と迷信に包まれ、自分たちがそのちっぽけな星の住人であることさえ知らない世界かもしれない。そこで、住人に科学文明への方向付け教化を課せられるの。カテゴリー2に進める下準備を、何百年もかけてすることになる、命の保証もなにもない世界で・・・。それが最後の使命よ・・・」


「最後の使命・・・?」

「ええ。死ぬまで、その星に尽くさなければならない・・・」


「リュミエラ、それは本当なの?」

「リーエス。惑星は時空封鎖されているから、惑星からは絶対に逃げ出すこともできない。惑星の静止軌道上には、宇宙機が常に待機して、様子を監視することになるわ」


「そんな・・・。あんまりだわ・・・」

ゾーレはすっかりうなだれた。


「それだけのことをしたんじゃないの?わたしも、あなたも・・・」

「わたしは、ただ・・・」

ファナメルは言い訳をし始めた。


「わたしもよ。こんなことになるなんて・・・」

ゾーレもうなだれた。


「潔く認めた方が、身のためよ。わたしは、この期に及んで見苦しい振る舞いをするのは御免だわ」

そう言うと、リュミエラは目を閉じて、転送されるのを待った。


「エルフィアに転送、2分前。秒読み、開始します」

アンデフロル・デュメーラの声が静かに響いた。




アンデフロル・デュメーラの医療質の集中治療カプセルに、クリステアが横たわっていた。


ぴっ、ぴっ、ぴっ・・・。


「SS・クリステア、脈拍90。血圧130。体温37度5分。細菌感染はありません」

アンデフロル・デュメーラが、クリステアの容態を刻々とモニターしていった。


「アルダリーム・ジェ・デーリア(ありがとうございます)、アンデフロル・デュメーラ」

「パジューレ(どういたしまして)。なんなりとお申し付けください。エージェント・ユティス」


「大丈夫そうね・・・」

アンニフィルドは、クリステアを見て、ユティスに囁いた。


「はい。肋骨2本が折れて、肺を傷つけていましたから・・・。でも、もう平気ですわ」

「あなたの治療が間に合って、本当に良かった。ありがとう、ユティス」

「当然のことをしたまでです。とても大切なお友達ですもの」


「ところで、フェリシアスは、どうしたの?」

「エルドと通信中です」


「フェリシアスったら、重症の恋人をほったらかして、どういうつもりかしら?」

アンニフィルドは、カプセルの中で意識もなく眠っているクリステアを見つめた。


「もう、直ってますわ、アンニフィルド。あとは、体力回復を待つばかりです」

「そんなこと言っても、安心なんかできないでしょうに・・・」

「だからこそ、気を落ち着けたいのだと思いますわ」


「わたしには理解できない。そんな男の恋人なんてご免よぉ。フェリシアス風の解釈は苦手だわ」


にこ・・・。

アンニフィルドは意識のないクリステアを見て、微笑んだ。

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