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260 報道

■報道■




次の日の昼休み、株式会社セレアムの休憩室では、石橋可憐をはじめ数名がコーヒーをすすっていた。石橋は、和人にぞっこん、ユティスとは絵に描いたような三角関係になるかと思いきや、ユティスの真の心に触れた石橋は、逆にユティスを慕うようにさえなっていた。石橋はユティスから大切にされていることを肌身で感じていた。


(ユティスさんは、エルフィア人・・・。でも地球人と同じだわ。わたしと同じく和人さんを愛している・・・。和人さんが愛しているのはユティスさん。わたしは中のいい仕事仲間・・・。でも・・・、わたし、ユティスさんを憎むなんてできない・・・。いえ、それどころか、ユティスさんのことわたしは好き・・・)


石橋は、ユティスが彼女にしてくれた数々を思い出していた。


「石橋さんは、わたくしと同じ『和人さん大好きクラブ』」ですよね」

ユティスは石橋が和人と一緒にいることに妬いているようには見えなかった。それどころか、一緒に和人を愛することを喜んでいた。


「リッキーさんの暗示から、石橋さんを解放します」


石橋は、自分の無意識下の行動が誰かに操られていたことに、大きな不安を持っていたが、ユティスは、石橋がZ国のリッキー・Jに無意識下に深く暗示を掛けられているのを突き止め、それを開放したのだ。石橋は、それを心から感謝していた。


そんなことを思っている時、石橋に声を掛けた人物がいた。




「石橋?」

「なんでしょうか、茂木さん?」


「あれ・・・。シャデル・・・」

茂木はテレビのバラエティ番組を指差した。


「ユティスさんたちが、行くっていってたお店じゃないでしょうか?」

石橋もすぐに気がついた。


「なんだか、様子が変ね・・・」

「そういえば、今日は、3人とも、まだ事務所に来てないわよ」

「和人さんも来てません」

「真紀も俊介もいないわ」


「あ、それだったら、あの二人は、シャデルに行くとか・・・」

「じゃ、みんな、その件?」

「さぁ・・・」


「とにかく、これ見てましょ。関連があるのかも」

「はい・・・」




「さぁ、みなさーーーん、今日もお昼の超ワイドショーの時間が、やってまいりました。今日は、キャシーさんの特別特集です。昨日、午後2時、某高級ブティックで、奇妙な失踪事件がありました。キャシーさん、どうぞ」

キャシーは両手を振った。


「は~い、キャシー宮本で~す」

米国系のハーフのレポーターは真剣さには甚だ欠けていた。


「はぁーーーい。ここのお店とってもステキなんですよ。お店の名前は、えーと・・・」

「それ言っちゃダメです!」


--- ^_^ わっはっは! ---


裏で、ADがびっくりしたようにキャシーを押し止めた。


「いっけない。お店の名前は匿名でーーーす。きゃぁ!黒のレースのドレスだわ。カワイイ!ねぇ、ねぇ、これ、ひょっとして、最新の・・・」

「はい、パリ・コレクションで発表したばかりのお品でございます」


「やっぱり!みなさん、スゴイです。あー、アレも!」

「あちらは、ミラノ・コレクションで・・・」


「うわっ!コレ、コレ、きゃあ!なんてステキなの。それにとってもセクシー」

「はい。みなさま、よくそうおっしゃっていただいております」


「ねぇ、ねぇ、試着できるんでしょ?」

「そりゃ、もう。いくらでもお試しくださって結構でございます」


「えー、本当?」

「はい」

店員はにこにこはしていたもの、少々困ったような表情になった。


「んーーー。幸せぇ!」


「ちょっと、すいません。キャシーさん、生中継の途中ですよぉ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


すっかり、自分の趣味にはまったキャシーに、ADが、レポートに戻るよう、注意をうながした。


「キャシーさん・・・!」

「えー。あ、あなた、なんなの?」

「ADの川田です。レポートに戻ってください」


「レポート?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「キャシーさん、生中継ですよ!」

「あ、あはははは・・・。そうだったわ」

すべては、カットなして、放映されていたが、キャシーは、あっけらかんとしていた。




「なによ、あのキャシーって女?」

茂木がテレビを見ていて、たちまちしかめっ面になった。


「バカ丸出しだわね」

「あれがいいっていう視聴者は、多いのよ」


「あたしは、嫌ッ」

「お金持ちは、仕事そっちのけで、こういうところに出入りしてるんでしょうねぇ」


「あ、アンニフィルドさんとクリステアさん。それに和人さんもいます・・・」

石橋はすぐに3人を見分けた。


「ほんと。絶対、あの3人に間違いないわ」

「朝からいなかったのは、これよ・・・」

「確かに」


「にしても、ユティスはどこ?」

「和人といつも一緒なのにね?」


「こらっ!」

茂木が石橋を気遣って、丸林を突ついた。


「あっはっは。そ、そうだったわ」

「なにが、そうなんでしょうか?」

石橋は気づいた様子ではなかった。


「いや、なんでもない。こっちのこと。ねぇ、丸林」

「は、はい」

「・・・」




「奇妙な事件って、なんでしたっけ?」

キャシーは店員をのぞき込んだ。


「あの、防犯用のビデオに写ってた映像なんですけど・・・」

「それで?」


「たまたま、それに写っていたんです・・・。わたくしの目の前で・・・」

「なぁに、なぁに?」

「こちらをご覧ください」

そこで、テレビは店の防犯用ビデオを再生した。


「ご来店されたお客様・・・、いえわたくしたちの専属モデルの・・・」

「専属モデルが・・・?」

キャシーは、興味津々という顔つきで、カメラのアップを要求した。


「ここにいらっしゃるお三方ですけど・・・」

「ふんふん、なになに・・・」

キャシーはモニターを覗き込んだ。


「うゎ、外人娘?ハーフ?すっごいスタイルいい。きれいだわぁ。羨ましい!まぁ、これ、ここのお店のドレスでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい、そうですが・・・」

「きゃあ、可愛い。すてき。あーん、わたしも着てみたいよぉ!ね、ね、いいでしょ?」


「あのー・・・」

「なんなの?」

「それで消えたんです」


「消えた・・・?なにが・・・?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい。あ、ここです」

店員がそのシーンであることを告げた。和人を連れたエルフィア人SSが白い光に包まれた。


ぱっ。

「き、消えた!」


--- ^_^ わっはっは! ---


キャシーは、一瞬、理解不能に陥った。


「白い光とともに、いなくなったんです・・・」

「なんなの?手品?お店でマジック・ショーやってるんだったら、教えてよ。ねぇ、もういっぺん、やって見せて!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「はい」

店員は、ビデオの再生をスローで行った。


「ここです」

3人はちょうど顔がわかるように写っていた。


ぶわん。

「本当に消えちゃってる・・・」


キャシーは、ようやく大変なことだと気づいた。


「ゆ、幽霊?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ち、違います!」

店員は大慌てで否定した。


「じゃ、やっぱり奇術の類ね。すごいわ!」

「あの、本当に消えたんです」


--- ^_^ わっはっは! ---




「げっ、やっぱり、あの3人よ・・・」

茂木は言い切った


「ユティスは?」

「いいえ、いないわ」


「ちょっと、静止画になったわ。コマ送りね」

オフィスの休憩室では、茂木たちが固唾を呑んで、ことのなりゆきを見守っていた。


「あっ、白い光・・・」

「どこから来たの?」

「わからない・・・」

スロー再生は、極めてゆっくりとコマを送った。


「あっ、き、消えた!」

3人は次のコマでは完全に消えていた。


「・・・」

「・・・なんなの?」




「あの方たちは、わたくしがお相手したのです」

店員は言った。


「わたくしは初めてお会いしたのですが、とてもお美しい方たちだったので、一度見たら絶対に忘れませんわ。もう一人いらっしゃったのですが、3人とも当社のCMに起用されたスーパーモデルです」


「スーパーモデル?」

「ええ、ナオミ・シャンベルさんみたいな・・・」


「あーーーん、会いたかったよぉ!ねぇ、ねぇ、どんなだった、その3人?可愛いかったんでしょ?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ええ、とてもきれいな方たちで・・・」

キャシーはまたまた脱線した。


「名前、なんていうの?わたしと同じハーフよね?」

「申し訳ございません、わたくしは、存じあげておりませんので・・・」


「で、真昼の幽霊って怖くなかった?ねぇ、ねぇ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ですから、幽霊ではありません!」




「だれだ、キャシーをレポーターに選んだヤツは!」

テレビ局では罵声が飛んでいた。


「あれは、あれだから、飛んでていいんじゃないすっか?」

「バカヤロー、ぶっ飛び過ぎなんだよ!」


「あ、CM時間です」

「言わんこっちゃない。なんにも進展しないまま、CMじゃねぇか!」


「バラエティに、シナリオなんか要らん!」

「あ、チーフ・・・」


「いいから、CM見てみろ」

だが、あの有名ブランド・ブティックの提供CMが流れた途端、ディレクター以下、声を失った。それは、以前も流されたことがあるシャデルのプロモーションビデオだった。



「ラララーーー」


ノリの良い心地いい軽やかなサウンドに合わせ、輝く長い金髪を首の後ろで白いシュシュで留めたスーパーモデルが、その店のドレスを着て、金座をさっそうと歩いてるシーンだった。そして、彼女は、立ち止まると、ゆっくりローアングルのカメラに振り向き、覗き込むようにして、えも言われぬ笑顔をこぼした。


「みんな、オシャレしてる?」

アンニフィルドはそういうと、前から来たショートヘアのクリステアと片手を合わせて、軽くパチンとやった。


「キレイになりましょ!」


クリステアは、ウィンクすると、アンニフィルドと並んで歩いた。そして、ダークブロンドのポニーテールを揺らして、美しくも愛らしいユティスが現れると、二人

は片手で、ユティスは両手で二人と軽くパチンとやった。


「女性は、いつだってステキになれますわ!」


CMは、3人が並んで金座をリズミカルに歩いていく様子をスローで流した。数秒後、3人がカメラにゆっくりと振り向いて、信じられないくらいの素晴らしい笑顔なった。そして、画面にはブランドのロゴが写った。


「トゥ・レ・ジュール。アヴェック・シャデル」




「あっ、この3人・・・、いやこの2人・・・」

「今、店で消えたって女だ・・・」

「そういうことだ」

チーフは頷いた。




CMが終わり、キャシーのレポートが再開した。


「それで?」

「それきり、いなくなってしまったのです・・・」


「・・・、でした!」


--- ^_^ わっはっは! ---


テレビ局では再び罵声が飛び交った。


「だーーー、そこで終わらすなよ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「アホか、こいつ」

「これのどこがレポートだよ!」

「あー、また視聴者から苦情が殺到するぞ!」


「AD、繋ぎ、繋ぎ!」


「視聴者の皆様、大変お見苦しいところをお見せしまして、誠に申し訳ございません。当番組への苦情は、弊社会長、または社長へ、メールか電話で・・・」


「バッカモン!俺たちを首にするきか!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「えー、というわけで、お店に来ていたと思われるスーパーモデル3人と連れの男性の4人が消えてしまったのです」

ADが急遽レポートを繋げた。


「3人だよ、3人!」

ADにスタジオからディレクターの声が、ヘッドフォン越しに飛んだ。


「えー、失礼しました。正確には3人です」


「違うよ4人でいいんだ!」

「なに言ってんですか?」

「1人は、他の3人とカメラに写ってないけど、彼女もいなくなったんだ!」


「いったい、何人なんですか?」

「だから、4人でいいんだ!」

ADは店員に活路を求めた。


「もう1人は、どうしたのでしょうか?」

「お店に入られた時は、確かに4人でした。そのうち、お一人はお化粧室に行かれて・・・」


「なになに、その娘もいなくなったってことぉ?」

キャシーが割り込んできた。


「はい・・・」

「以上、真昼の怪でした・・・。だー、疲れたぁ!」


--- ^_^ わっはっは! ---




「そこで切るか?アホ!」

「キャシーめ!まだ、カメラ回ってるじゃねーか!」


「取材終わらせたヤツは、さっさと引っ込んでろ!」

「番組が滅茶苦茶だぁ!」


「バカ野郎。あれでいいんだよ。どうせ、バラエティだし、暇人しか見てるかってんだ。今、これ見てるアンタ!例外じゃないぜ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


「昼下がりのプログラムにうってつけだな」

「もう一度、コマ送りでプレイバックしろ!」

「了解!」


番組は、3人が白い光に包まれて消えたところで、静止画になり、次のレポーターの番に写った。

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