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259 術中

■術中■




ぶわんっ。

ブレストの前でかすかにに空気が揺れ、ゾーレがユティスを抱えて実体化した。


「でかしたぞ」

ブレストは、気を失ったままゾーレの腕の中にいるユティスににんまりした。


(ユティス、なんと美しい・・・。確かに、トルフォには、もったいない・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「後の二人が戻ったわ」

リュミエラが無表情にブレストを見つめた。


「よくやった、リュミエラ」

「・・・」


「ユティスを渡せ」

ブレストはゾーレに向かって言った。


「リーエス。お好きなように」


(あなたも、トルフォに負けない助平オヤジだこと・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


ずさっ・・・。

ブレストは、ゾーレから気を失っているユティスを奪うように受け取り、両腕に抱えた。


「ユティス・・・」

ブレストは、ユティスの柔らかな肢体をを両腕に感じ、喜びを覚えた。


「ユティス・・・」

ブレストは、目を閉じている美しくも愛らしいユティスの顔に釘付けになった。


(きみは、なんと美しいのだ。エルフィア、いや宇宙一の女性だ・・・)


その時はじめてリュミエラは真実を理解した。


(トルフォは確かにユティスを欲しがっている・・・。だけど、ブレストもユティスを欲しがっているんだ。ブレストはもうすぐ理事になる。トルフォよりは若いしいまだ連れ合いを持ったことはない。いや、持てない理由があったのかも・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


(しかし、ここは知らぬふりをしながら、ブレストの行き過ぎを止めねば・・・)


「ブレスト、ユティスは、トルフォの・・・」


きっ。

「わかっている」

ブレストは苛立った声で言うと、リュミエラを睨んだ。


ユティスにキッスなんかしてごらんなさい、トルフォの怒りの巻き添えを食って、こっちの仮復帰がおじゃんになるじゃない)


--- ^_^ わっはっは! ---


「ブレスト、わかってるでしょ。エルドの娘に、手荒な真似はしないという約束よ」


ブレストの考えていたこととは別のことを、リュミエラが無表情に告げた。


「当たり前だ。きみに、わざわざ指摘されなくても、わかっている」


(ホントかしら・・・?)




「うーーーん・・・」

「おい、きみ!大丈夫か?」

シャデルの日本支配人の黒磯は、3階でひっくり返っている女性店員を見つけ、助け起こした。


「あ、支配人・・・」

「どうしたんだ?」


はっ・・・。


「き、消えちゃったんです」


--- ^_^ わっはっは! ---


「消えた?なにが?」

「ですから、あのモデルの方たち・・・」


「彼女たちが、消えたのいうのか?」

「そ、そうです。目の前に、白い光が出てきて、それに包まれたと思ったら、次の瞬間、消えていたんです・・・」


「そんな、ばかな・・・」

「わたし、ウソは言ってません・・・」


ぶるぶるっ。

女性店員は震えながら言った。


(そういえば、さっきのあのうろたえようは、尋常じゃなかったなぁ・・・)


「わかった。国分寺さんに確かめてみよう」




るるるーー、るるるーー。


「俊介、スマホ」


「姉貴、代わりに出てくれ。運転中だ」

「わかったわ。はい、国分寺です」


「黒磯です」

「まぁ、支配人さん・・・」


「・・・」

「支配人さん?」


「あ、すいません。アンニフィルドさんですか?」

「いえ。姉の真紀です。弟は運転中でして、代わりに出ました」


「あ、はい、そうでしたか。国分寺さんのスマホにアンニフィルドさん以外の女性が出られたんで、一瞬、どなたかと思いました」


(まぁ!わたしの知らない間に進んでるじゃない・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「それは、どうも・・・。で、なにかございます?」

「ええ。こういうこと、申し上げていいのかと思ったのですが・・・」

「どうぞ、なんなりと」


「では、遠慮なく、申し上げます。今日いらっしゃった、アンニフィルドさんたち、あのモデルのお三方、金座見物にお出になられたというのは、ウソですよね?」


「はぁ?」


「うちの店員の話では、彼女の目の前で、白い光に包まれて、消えたということです」


(なっですってぇ。こりゃ、まずいわねぇ・・・。目撃者かぁ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「監視カメラからの録画にも、しっかり写っていました。まるで蒸発するように・・・」


(まいったわ・・。店の防犯カメラにしっかり映ってたんだぁ・・・)


「そうですか・・・」


「うちも社員たちが動転しちゃって・・・、もし、ご説明いただけるならと思いまして」

「わかりました。電話では、なんですから、そちらに戻りましょう」


「そうしていただけると、助かります」

「では・・・」

ぴっ。




「どうした、姉貴?」

「バレたわ。3人が、瞬間移動したところを、シャデルの店員に見られたの。それに、セキュリティカメラに一部始終が写っていたって・・・」


「ちっ。それ、誤魔化すの大変だぞ・・・」

「これから、シャデルに戻りましょう」


「待てよ。シャデルは、オレが行く。姉貴は、和人のところへ。ユティスを脅してなにかさせようとするなら、和人を脅した方が有効だ」

「わかったわ。和人は、ユティスの弱点だものね。わたしは、エルフィア大使館に行くわ」


「会社の寮って言えよ。オレは、そっちに姉貴を送ったら、シャデルに行く」

「お願い・・・」




「ああ、よかった。早速、お戻りくださって」

「それより・・・」


「国分寺さん、申し訳ありません・・・」

「あなたの責任では、ありません。支配人・・・」


「どういうことですか?警察に捜索願いを出しますか?」

「いいえ。それは、止めましょう。彼女たちは、消えたわけではありません」


「では、どこに?」

「もちろん、どこにいるか知っていますよ」


「これは・・・、どういうマジックなんです?」

俊介は真実を話すことにした。


「マジックなんかじゃありません。純粋に彼女たちの能力です」

「理由を知ってるんですね?」

「ええ」


支配人は辺りをはばかるように小声になった。

「国分寺さん、あなたの立場はよくわかります。続きは、わたしのオフィスで、話をしてもらえませんか?」


「総支配人は?」

「今は、外です」


「外・・・?レストランじゃぁ?」

「アンニフィルドさんを探しに、金座に繰り出しました。しばらくは帰ってこないでしょう・・・」

「やっぱり・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あの三人は、当社の専属モデルでもあります。わたしは、心配なのです」

「同感です」

「では、まいりましょう」




「なによ、こいつ。トルフォがいないと思って、すっかりボス気分で・・・」

ゾーレはブレストの態度が気に入らなくて、鼻にしわを寄せた。


「わたしがいるから、勝手にはさせないわ」

リュミエラは、ユティスを両手に抱えて、ソファーへ歩いていくブレストを見た。


「ふっふっふ・・・」

ファナメルは、シャデルでまんまとクリステアたちを騙したことを、思い出していた。


「なにが可笑しいの?」

ゾーレはしかめっ面のまま、ファナメルの薄笑いに、噛み付いた。


「さっきのことよ。アンニフィルドもクリステアも、ぜんぜん、わたしだと気づかなかったわ。目の前で会話したというのにね」

「あはは。そりゃ、けっさく」


「ははは。まったく思いもしなかったんでしょうねぇ」

ファナメルは愉快そうに口の端を上げた。


「ははは。バカな女。よく、超A級だなんて、言ってられるわよね」

ゾーレはファナメルに頷いた。


「あなたたち、いい加減にしたら?要は計画通りなだけじゃない」

二人の会話を聞いていたリュミエラは、冷静に言った。


「いい。始めが成功したからといって、これからもそうだ、という保証はないわよ。あの二人を見くびると、大きな代償を払うことになるわ」


リュミエラは、元超A級SSだった。しかも、クリステアもアンニフィルドも、一時期とはいえ、彼女たちが超A級になるために、彼女自身でその訓練を行なった教官だった。二人の性格も、癖も、好みも、ほとんど知り尽くしていた。


「遠慮することないじゃない?委員会は、地球の予備調査を一時凍結し、ユティスの送還をわたしたちに託したんだから」

ファナメルは不満げに言った。


「リーエス。アンニフィルドとクリステアは、お役御免よ」

「あなたたちは、なんで、このミッションが極秘なのかわかってるの?」

リュミエラは少し苛立ってきた。


「リーエス。エルドに有無を言わさないことよ。地球のことで、判断ミスの責任を取らせるためにね・・・」


「ユティスが戻れば、ライセンスの再停止は免れないわ」

「ミューレスに続いて、なんと運のないこと」

「ふっふ」


「二人とも、そのくらいに、しておきなさい」

リュミエラはそう言うと、ブレストの方へ近づいていった。




シャデルの日本支配人の黒磯と俊介は、支配人室にテーブルを挟んで、座った。


「ここなら、だれも来ません。盗聴器もありません。さ、どうぞ」


「どうも。それで、黒磯さん・・・。これからお話することは、ある国家重要機密に属します。ご他言を控えていただくことは、もちろん、店員のみなさんにも、ご協力をお願いすることになります。守っていただけますか?」


「・・・」

支配人は静かに考え込んでいたが、やがて、納得したのか、口を開いた。


「わかりました。ご条件をおっしゃってください」


「まず、機密事項についてですが、彼女たちは、世界の未来を担う、ある国の重要な使節団です。宇都宮和人が、日本側の代表として指名されました」


「世界の未来を担う・・・、使節団ですか・・・?」

「ええ。詳細について、すべてをお伝えできればよいのですが、これ以上は・・・、彼女たちの身の安全に係わることになりませんので・・・」


「わたしをご信用いただいて、けっこうです。だれにも漏らしません」

「わかりました。彼女たちの身辺の護衛には、日米の特別警護が、シークレットサービス並みに24時間はりついています」


「日米政府が、シークレットサービス同等の・・・。それ程、特別な・・・」

「そうです」


「その彼女たちは、どうやって消えたのでしょうか?」

「それは、彼女たちの能力という他、ありません」


「能力って・・・。ははは・・・、未来から来た猫型ロボットやエスパーじゃあるまいし、まさか、超能力とか言うんじゃないでしょうね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうとも言いますね」


「ええ?ほ、本気で、おっしゃってますか?」

「はい。彼女たちは、自分たちの周辺の超時空を自由に操れます。どっかに瞬間移動することなど、朝飯前ですよ」


「瞬間移動ですって?ははは・・・。あの、わたしは、聞き間違いしてはいませんよね?」

「ええ。黒磯さんは、わたしの言ったことを、ちゃんと聞いておられます」


「しかし、理解できません」

「ご無理ありません。彼女たちは、普通の人間ではありませんから」


「ひょっとして、CIAとかモサドとか、外国諜報機関のエージェントとかじゃ・・・」

「少し違います。彼女たちは、あくまで、地球人類の支援に来たのです。なにか情報を収集して、政治的、経済的優位を、彼女たちの政府が確保しようなんて、そんな気はまったくありません」


「待ってください。今、そのぉ・・・。地球人類と、おっしゃいましたよね?」

「はい」


「どういうことですか?お三方は、地球人類じゃないんでしょうか?」

「いかにも。地球人類とは別の人類です」


--- ^_^ わっはっは! ---


「でも・・・。意味がわかりません」

黒磯は頭を振った。


「じきに、おわかりになる日が来ます。今は、ここまでしか申しあげられません」

「なるほど・・・。それも、極秘事項なんですね」

「ご想像にお任せいたします」

「わかりました」


「ちょっと、電話したいんですが・・・」

「わたしは、外しましょうか?」

「いいえ。けっこうです」

そう言うと、俊介は真紀を呼び出した」




「オレだ」

「ああ、俊介ね。どう?」


「そのことだが、今、支配人さんと合意した。この件、テレビのワイドショーに取材させる。偉大なるマジック・ショーとして」


「はぁ?なにを考えてるの、あなた?」

「エルフィア娘たちのテレビ本格デビューさ」


「なに言ってるのよ、この一大事に?」

「時間との勝負だ、この計画をハッピーエンドで終らすことができれば、彼女らに手を出せるものはいなくなる」


「でも、行方不明なのよ、ユティスは!」

「だから、時間との勝負だ。じいさんの助けを借りよう」

「まったく、あなたって人は、さっぱりわからない!」




俊介は、シャデルの日本支配人の黒磯と話していた。


「テレビに取材させる、というんですか?」

「はい。でも、ニュース番組はだめです。もっと緩くて柔らかめのお昼のワイドショーとかなんかで、あまり真剣みのないものの方が、良いでしょう」


「でも、失踪事件がうちの店となると・・・」

支配人は尻込みした。


「評判、メンツに係わることになる、というわけですね」

「はい。とても心配です。グローバル本社への了承は?」


「そのところは、お任せください。かくかくしかじか・・・。というわけです」

「だいたい、わかりました。最後にもう一つ質問が・・・」

「よろしいでしょう」


「どうして、国分寺さんが、そのような国家的機密に係わっておられるんでしょうか?」

「あーーー。それは、一応、彼女たちと宇都宮和人の会社の経営者ですから、従業員の人事情報は、本人以上に把握が必要かと・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「政府から事前通達とかが・・・」

「ええ。ありました」


「おおよそは、わかりました。仰せの通り、テレビ局を呼びましょう。失踪事件として報道し、実は盛大なマジック・ショーだったということにするんですね?」

「はい。店名は匿名にしておきましょう」

「そうお願いします。ありがとうございます」


「マジックが明らかになった折には、支配人さんのお店はもっと注目されますよ」

「どうも」

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