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258 呆然

■呆然■




クエイステアは、女性化粧室から出てきた長身の女性チェックし終えて、和人とアンニフィルドの前に戻ってきた。


「どうだった?」

「どうやら、和人の言う通りね。ただの買い物客」

クリステアはみんなが落ち着くように低い声で言った。


「で、化粧室に入ってきた人間は?」

クリステアは和人にきいた。


「それはいない。誓っていいよ」

「化粧室への入り口は、ここだけよ」

アンニフィルドも言った。


「ってことは・・・」

SSたちはすぐに答えを出した。


「大変、待ち伏せよ!」

「やられたわ!」


「リュミエラの仕業?」

「そうに違いないわ」

「でも、ぜんぜん、ユティスの思考派を捉えられなかった」


「アンデフロル・デュメーラ!」

「リーエス。SS・クリステア」


「だれか、ユティスに近づいてた?反応は?」

「ナナン、SS・クリステア。なにも検知しておりません」


「ユティス!」

アンニフィルドがユティスを呼んだ。


「無駄よ。エルフィアから抜け出した5人に、ファナメルがいたわよね。資格はA級となっているけど、精神波を扱うことについては、超A級レベルの非常に強力な使い手よ。あいつらのことだから、事前に、アンデフロル・デュメーラ対策と、ユティスの意識を飛ばすことくらい、してるに決まってるわ」

クリステアが次の一手を考え始めた。


「アンニフィルド。あいつらのジャンプのトレースはできる?」

「だめ。ウォッチできないわ」


「油断したわね・・・」

「ええ・・・」




「おーーーい、いるのか?」

級に静かになったフロアで、俊介がSSたちの姿を捉えて言った。


「どうした?」

血相を変えているアンニフィルドたちに、俊介はただならぬ状況だと直感した。


「ごめんなさい。ユティスを奪われちゃった・・・」


「なんだとぉ?」

「どういうこと?」

ぞくっ。

真紀は髪の毛が逆立つような恐怖に襲われた。


「消えちゃったんです、ユティスが!」

和人は胸が押しつぶされそうになった。


「化粧室行って帰ってこないから、変だと思って!」

「わたし、見てきたのよ!でも、いなかった!いなかったのよ!」


「それに、だれも化粧室から出てこなった!」

「オレがいけないんだ!」

和人が頭を抱えた。


「なに言ってるの?わたしのせいだわ・・・」

アンニフィルドが和人を見つめた。


「ごめんなさい・・・」

クリステアは俊介に謝った。


じぃ・・・。

俊介は厳しい表情でSSたちを見た。そして、静かに搾り出すように言った


「謝罪なんてことは、どうだっていい。全力で、ユティスの居所を探査するんだ。可能性を考えろ。どこでどうなったかだ」


「リーエス」

「リーエス、俊介」

「はい、常務」




その時、表の通りで待機していたフェリシアスから声が、3人に届いた。


「なにをしてる!ユティスの頭脳波が消えたぞ!」

「わかってるわよ!」

クリステアが叫んだ。


「店から、だれか出たの?」

「ナナン。エルフィア人らしき人物は、だれも出てはおらん」


「どういうことよ・・・?」


「キャムリエル!」

「リーエス。フェリシアス」


「アンデフロル・デュメーラ!ユティスの居場所は?」

「姿が、一瞬で消えました!」

すぐに、キャムリエルの悲痛な叫びが聞こえた。


「SS・フェリシアス。ユティスをシャデルの3階で見失いました」

「トレースできないのか?」

「こちらでは、把握できません」


「なんということだ・・・」


「SS・フェリシアス。トレース不能です」

アンデフロル・デュメーラからも、良くない答えが返ってきた。




「アンデフロル・デュメーラ、どうして、ボクたちは掴めなかったんだろう?」

キャムリエルは、エストロ5級母船の中で、呆然としていた。


「ファナメルです。彼女が、SSたちのジャンプの奇跡を、巧妙にシールドしていたに違いありません。わたくしのチェックにもかかりませんでした」


ばんっ!

キャムリエルはテーブルを叩いた。


「くっそう。手がかりはなにもないのかい?」

「ファナメルたちは、ユティスが来る前に、シャデルに予め潜んでいたと予想できます」


「でも、あの3人が、あそこに入ってきたら、一発でボクたちの警戒網に引っかかってばれちゃうよ」

キャムリエルは考え込んだ。


「どうやったんだろう・・・?」

「恐らく変装でしょう。一般的な地球人の格好してお店の客として」


「じゃ、きみは、彼女たちが、白中堂々と、エントランスから入って来たっていうのかい?」

「それが、一番納得できる説明です。わたくしは、時空の揺らぎを捉えていません」

アンデフロル・デュメーラは静かに言った。


「ジャンプしなかった・・・。そう言うことだね?」

「リーエス、SS・キャムリエル。少なくともお店に入る時には」




「うむ。店を出る時に、ステルス・ジャンプをしたな・・・」

フェリシアスの妙に冷静な声に、クリステアも落ち着いてきた。


「リーエス。ええ、そうに違いわ」


「見失っちゃった。ユティスが、連れ去られちゃったわ!」

アンニフィルドはまだパニックだった。


「落ち着け、アンニフィルド」

「だって、ブレストがいるのよ!」

「やつらが、ユティスに危害は加えるとは思えん」


「どうして、わかんなかったの・・・?」

「シールドされていたのよ」


「ファナメルがいるから・・・」

「ファナメルか・・・、彼女がジャンプ軌跡をシールドしていたんだ」

フェリシアスが相槌を打った。

「なんてこと・・・」


「すぐに、スクランブルだ。ここにいてもなにもならない。大至急、大使館に戻りたまえ。体制を立て直す。事実確認、ユティス捜索作戦だ。それに、和人をそこに置いたままにするんじゃない。次に狙われるのは、彼だ。ユティスを奪われて、和人まで奪われる羽目になったら、最悪の事態になる」


ぎゅっ。

「リーエス。和人、さぁ、掴まって」

アンニフィルドは有無を言わさず、和人の手を掴んだ。


「先に戻ってるわよ、俊介」

「アンニフィルド!」


アンニフィルドは和人を掴むと、クリステアとともに、フェリシアスのもとにジャンプの体制に入った。


ぽわーーーんっ。


「お客様・・・」


ぶわんっ。

ぱっ。


「ひーーーっ!」


--- ^_^ わっはっは! ---


シャデルの女性店員の前で、白い光に包まれたと思うと、3人の姿は一瞬で消えた。店員は、泡を吹いて、そこにひっくり返った。




フェリシアスは、今や大使館まで昇格した会社の寮で、慎重に話した。


「いいか、下手に動いてはダメだ。相手の出方を見極めるんだ」

「わかったわ」


「ユティスの拉致は、トルフォの指示だ。ブレストが、ユティスに手荒なまねをして、どうこうしようとするつもりはないだろう」

「トルフォは、ユティスをエルフィアに連れ戻したいんでしょ?そして、彼女を手に入れたら・・・」

和人は不安げに言った。


「リーエス。だが、いくらなんでも、いきなり・・・、その、なんだ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「襲ったりはしないだろう」

「だといいんですが・・・」


「どういう形であれ、一応、意中の女性だ。ヤツもそこまで落ちぶれちゃいまい」

「それで、どう出そうだと思う?」

クリステアがきいた。


「まぁ。最初は教科書どおり、ユティスに対して、ブレストは説得から入るだろう。エージェントは、みな、こういう場合のシミュレーションも十分に行っている。ユティスも相手を冷静にさせる手段は、心得ているはずだ。交渉に入る前の基本だ。それに、ユティスの意識が戻り、気がつけば・・・、和人、きみに必ずハイパーラインで連絡がくる。そして、ユティスを動かそうと、きみを人質に取ろうとしにくる」


「オレを、ですか?」

「きみは、ユティスの最大の弱点だ。肝に銘じたまえ」

「リーエス・・・」


「ユティスが、彼らをかわせるまでが勝負。それまでに、全力で、居場所を突き止めるんだ」

そう言うと、フェリシアスはクリステアの方を向いた。


「ブレストの思考波は、探れるか?」

「だめよ。ファナメルが、ブロックしているに違いないわ。ごめんさない。こんなことになって・・・」

クリステアはフェリシアスに言ったが、フェリシアスは取り合わなかった。


「起こってしまったことは、どうしようもない。悔やんでるひまがあるなら、対応策を考えるべきだ」

フェリシアスのてきぱきした指示に、和人は感心した。


「和人、きみは、ユティスに絶えず呼びかけてくれたまえ。他のだれでもない、きみにしかできないことだ」

「オレですか?」


「リーエス。たとえ気を失い、夢うつつであるにしろ、そういう危機的な状況でこそ、人は、最愛の人間のことを想うものだ。最愛の人間に真剣に呼びかけをされれば、どんな人間も、なんらかの反応をする。それに忘れないでもらいたい。きみとユティスの専用ハイパーラインは、ファナメルがいくらブロックしようとしても触れることすらできん。ユティスが気づけば、必ずきみに助けを求めてくる」


「オレとユティスの専用ハイパーライン?」

「ユティスとの間で構築したと聞いているが、違うのか?」

「和人、初めて、ユティスとコンタクトした時のこと、忘れたの?」

和人はそれが随分前のような気がした。


「いや、リーエス・・・。あれって、そんなにすごいものなの?」

「リーエス。エージェントの最後の頼みの綱よ。心から信頼できる人にしか、それは構築しないわ」


「そうよ、和人。あなた、わかる?」

「ユティスは、もしもの場合に備えて、きみに保険をかけていたんだ」

フェリシアスが冷静に言った。


「ユティス・・・」

「あれはね、エルフィア人は、だれにでもそうするわけではないのよ。家族とか、恋人とか、最愛の人にしか、適用しないの」


「最愛の人って・・・?」


「和人のオタンコナス!あなた以外に、だれがいるというのよ!ハイパーラインでユティスにアクセスが可能なのは、あなただけなの!さっさと言われたとおりにしなさいよ!」

アンニフィルドが叫んだ。


「リーエス」


「ユティスが、力の封印を解いたら、A級SSといえ、ファナメルのシールドを破れん理由がない。ユティスの反応があったら、直ちに報告してくれ」

「リーエス」

和人はユティスとの専用ハイパーラインをオンにした。


「ユティス、聞こえるかい・・・?」


「どう?」

「・・・」


和人は何度か試した。


「だめだ・・・」

「あきらめないで。今、始めたばかりでしょ!」

「リーエス」


「ユティス?ユティス・・・?」

和人はユティスを呼び続けた。


「わたしは、Z国の大使館をウォッチしてくる」

フェリシアスはSSたちに言った。


「Z国?」

「シェルダブロウがリッキー・Jに接触したのなら、必ず、なにか手がかりがあるはずだ」


「ユティスをそこに運んだって言うの?」

「わからん。が、可能性は十分にある。アンデフロル・デュメーラ、Z国大使館の座標はわかるか?」

「リーエス。SS・フェリシアス」


「入り口近くに目立たない場所に転送してくれ」

「リーエス」


ぽわぁ・・・。

しゅんっ。

そう言うと、フェリシアスは一瞬で消えた。


「シャデルの黒磯支配人にどう説明するつもり、俊介?」

「わはは。そう言っても、エルフィア人ってのはこうなんです、と言うのもなぁ・・・」


そうするうちにも、シャデルの日本支配人の黒磯が、にこにこしながら、国分寺姉弟のところにやってきた。


「国分寺様、お連れのお三方は?」

「ははは。なんか、せっかく金座に来たんで、見物してみたいとかで・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうですか。どうりで、さっきからお姿が見えなかったわけですね」

「え・・・、ま、そういうことになるかしら・・・」

真紀も加わった。


「じゃ、われわれも・・・」


「え?お帰りになるんですか?上のレストランで、お昼をご用意しておりますのに」

「悪いですね、黒磯さん。彼女たち、一度出ちゃうと、もう鉄砲玉でして。わたしにも、どこに行ったか、さっぱりで・・・」

支配人の言葉に、俊介は誤魔化すのが精一杯だった。


「はぐれた場合は、事務所に戻るよう言ってありますから・・・」

真紀が助け舟を出した。


「それは、残念です。パリ本社から、総支配人のジャン・ジャックが来てまして、お久しぶりに、あなたとアンニフィルドさんと、お昼をぜひご一緒にと、言っておりましたのですが・・・」


(ジャン・ジャックかぁ・・・。当然、今日はアンニフィルド狙いだな・・・。彼は女房はパリに置いてきてるんだろうから・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


俊介はパリでの社内晩餐会を思い出していた。


「あはは・・・。せっかくのお誘い、本当に嬉しいんですが、またの機会にします」

「そうそう、今度に・・・」


「あ、でも・・・」


「ごめんなさい、支配人。もう、戻らなきゃ。わたしたちも彼女たちが心配なんです」

「きみ、わたしの車を」


ちゃり。

俊介は車係の店員にキーを渡した。


「かしこまりました、国分寺さま」


二人は地下の駐車場から、車が出てくるのをまった。


「おや・・・?」

「大使が消えたとか・・・?」

ジョーンズが真紀たちに話しかけた。


「ああ。大変なことになった」


ぐぃーーーん。

きっ。


ちゃ・・・。

ちゃ。

車が現われた。


「ジョーンズ、オレたちは一旦大使館に戻る。なにかあったら、連絡してくれ」

「イエス・サー」


そこに黒磯がやってきた。




ばたんっ。

「せっかくパリから来たジャン・ジャックが、がっかりします・・・」

黒磯は口惜しそうに言った。


「アンニフィルドは、いないんですよ?」

「はぁ?」

「ですから、グローバル本社の総支配人には、彼女は帰ってしまったので、もういないと、お伝え下さい」


--- ^_^ わっはっは! ---


「そうですか・・・。それは、しごく残念です・・・」

がくっり・・・。

黒磯は真紀を見てがっかりしたように言った。


「国分寺さま、お車です」

「どうも、ありがとう」

「どういたしまして」

「じゃ、黒磯さん、そういうことで」


ぶるぶんっ。


「国分寺さん・・・」

「ありがとうございました」

真紀と俊介は、エンジンをかけると、そさくさとシャデルを後にした。




ぶろろーーー。


「これでいいか、姉貴?」

「ふふふ。ありがとう。アンニフィルドは帰ってしまったか・・・」


「なんだよ、その含み笑いは?」

「あなたにも、総支配人のお誘いを断る理由があるようね?」


--- ^_^ あっはっは! ---


「ほっとけ」

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