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257 奇襲

■奇襲■




「シャデルの日本支配人さん、なんのことを言ってるんです?」

和人が真紀に耳打ちした。


「つい最近、シャデルの2分間のプロモーション・ビデオを撮ったことがあるわよね?」

「はい」

和人は金座でビデオ撮りしたことを思い出した。


「それで、それを、先週の夜に、テレビのゴールデンタイムの後に何回か流したの」

「それで?」


「とにかく大評判で。あのモデルのようなのが欲しいって」

「すごいじゃないですか」


「ええ。バックミュージックもドンピシャで、とにかく、彼女たちの笑顔も最高だったわ。なんか、天使って感じさえしたわ」


「あの歌の時と同じ生体エネルギー場が、映ってたんですね?」

「そうなの。あれ、エフェクトでもなんでもないのに、画面上では、すごっくいい効果になっちゃって」

「あは。わかりますよ」

和人は笑顔で頷いた。


「それだけじゃないわ。話しはまだ続くのよ。そのことが、ネットで話題になって、あのエルフィアの3人娘だって、あっという間にばれちゃったってわけ」

「常務の計算ずくじゃなかったんですか?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「あは。わかる?」

「当然ですね」


「すぐにネットへアップする人たちが続出しちゃったのよぉ」

「それで?」


「でもって、シャデル日本から、専属モデルの話が出て、パリのグローバル本社まで、トントン拍子で話がいっちゃったの」

「なんと!それ、ひょっとして・・・」


「図星よ。あのアンニフィルドたちなら、保証付きだって、グローバル本社の社長だか会長さんが太鼓判押しちゃって、計画に即ゴーがかかったの」


「あちゃあ・・・。じゃ、次は・・・」

「ワールド・デビューね」


「ひょぇーーー!」

「だから、今日はシャデルの無料ご招待ってわけ」


「どういうことですか?」

「ギャラとは別で、3人には、気に入ったものを一人5着持っていってかまわないって。もちろん、継続的にプロトタイプは全部、持ってっていいのよ」


「えらく太っ腹・・・。本当ですか?」

「マジ・・・。マジによ」


「シャデルっていったら、とんでもなく高いんじゃないですか?いったい、いくらになるんですか?」

「知らないわ。世界のトップブランドだものね。一人頭でも、時価では、いったい何百万することか・・・」


「何百万・・・。それを、ロハでですか?」

「まぁ、そういうこと・・・」

「・・・」


かちゃ、かちゃ、かちゃ・・・。

ちんっ。

ぶ。ぶーーー。

和人の計算機は、そこでオーバーフローした。


--- ^_^ わっはっは! ---




フェリシアスは、シャデルのある金座通りでシャデルに入っていく人間たちを監視していた。


(こんな人通りの多いところでジャンプしたら、即わかりだ。向こうは、リュミエラがついてるんだ・・・。もしかしたら、ここには正面切って、歩いてはいってくるのかもしれん・・・)

フェリシアスは用心した。


「キャムリエル、アンデフロル・デュメーラ、3人に近づく人間に怪しいものはいないか?」

「ナナン、SS・フェリシアス。そのような精神波を捕らえていません」

「ボクにもそのような兆しは見えません」


「よし。では、二人とも、人間がテレポーテーション・ジャンプした様子はあるか?」

「ナナン」

「こちらもありません」


「わかった。二人とも、十分ウォッチをしていてくれたまえ」

「リーエス。SS・フェリシアス」

「了解です」


(ほぉ・・・。あいつは、合衆国のSSでクリステアが配下にした、例のジョバンニという男だな・・・。彼もユティスたちを見守っているというわけか・・・。あそこに散らばっている日本政府も警護官を付けているみたいだな・・・。ふっふ)


フェリシアスは、地球人もユティスたちをちゃんとガードしているのを確認して、店をなおも注意深く観察した。




シャデルの外には、密かにエルフィア人たちを見守っている合衆国のSSたちの姿があった。


「マム、外は異常ありません。通知された写真の人物は、まだ見つけていません」

ジョバンニはクリステアとハイパーラインを使って、精神波で会話していた。


「了解よ。そのまま、警戒してくれる?」

「イエス、マム」


「それから、ジョーンズには駐車場を調べてもらって」

「イエス・マム」




「お一人様、上下一揃いと帽子、アクセサリーを含めて5着、ご自由にお選びください。値札は、気になさらないでけっこうですわ。あくまで、お好みのものを選んでくださってけっこうです」


にこにこ。

にこにこ。

シャデルの店員はエルフィア娘たちに微笑んだ。


「いいんですか?」

「はい!」


「本当にすっごい太っ腹・・・」

「世界に冠たるシャデルだぞ。そんなケチ臭いことするか」

俊介は女性たちに言った。


「うふふ。本当に、そんなに好きなものをいただいちゃって、いいんですの?」

ユティスは満面笑顔だった。


「ええ、もちろん。スポンサーのサービスだもの。好きなのを選んでくださいね」

「くぅーーー、幸せーーーっ!」

アンニフィルドは両手を胸に当てて目を閉じた。



3人のエルフィア娘たちはそれぞれお気に入りを見つけて、後から付き添っている店員にそれらを預けた。


「あーっ、なんか、すっごーく幸せ」

すりすり・・・。

アンニフィルドが選んだ服を入れたパケットを愛しそうに頬ずりした。


「お客さまはとてもスタイルもよろしいですし、大変お美しいですから、どれをお召しになられても、最高にお似合いですわ」


「あは。ホント?」

「はい。本当にそう思いますわ」


「きゃ」

アンニフィルドははしゃいでいた。




「大袈裟だなぁ」

俊介がにやにやしながら、アンニフィルドを見た。


「なによ。男に女性の気持ちなんか、わかるもんですか」

せっかくのいい気分に浸っているところに水を差され、アンニフィルドは俊介に文句を言った。


「へいへい。やっぱり、女の子なんだねぇ・・・」

「文句ある?」

「ありません」


「ちょっと、フロアを見て来ない?」

クリステアが自分の選んだドレスを店員に預けると、アンニフィルドを誘った。

「いいわよ」

アンニフィルドとクリステアは見合って、にっこり笑った。


「せっかく来たんだもの」

「リーエス」

SSの二人はそろってフロア内を見て回ることにした。


「ユティスもいらっしゃいな」

「わたくしは、お手洗いに。和人さん、ちょとお待ちくださいますか?」


「ああ、ユティス。お化粧ね。わかったよ。ここでまってるよ」

「はい」


「パケット、オレ持ってるから」

和人はユティスのパケットを抱えて、お手洗いのドアの前に立った。


「なんかあったら、大声で悲鳴あげるのよぉ」

「リーエス、みなさん。ありがとうございます」

ユティスはにっこり微笑むと、レディスルームに消えていった。




「ジョーンズだ。ジョバンニ聞こえるか?」

ぴっ。

「ああ。聞こえる」


「今、シャデルの駐車場に来ているが、怪しい車はいないな。あ、ちょっと待て・・・」

「どうした、ジョーンズ?」


1台のメルセデスから、超ミニスカートのいかにもモデルといういでたちをした若い美女が、店員の助けを借りて、さっそうと降りようとしていた。


美女が車を降りようとして足を上げると、ミニスカートがめくれて、太腿が完全に露になった。


「いやんっ!」

「おお・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ぱっぱっぱ・・・。

美女は、めくれたミニを直そうとした。


ひゅぅ・・・。


「ジョーンズ、なに、口笛を吹いてる?」


次に、美女は前に屈み、すると胸の谷間がくっきりと見えた。


「そこ、そこ・・・。もう少しだ・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


「なにがもう少しだ?」

「・・・」


「よし、黒のレース!」


(さすがシャデルだ、オレの好みを知ってるぜぇ・・・)


--- ^_^ わっはっは! ---


「おい、なんだ?答えろ、ジョーンズ」

「黒のレースだ」


「黒のレース?なにか重要なことでも起きているのか?」

「いや、なんでもない。チェックに戻る」




ユティスは、鏡の前で、自分をチェックしていた。


さっ。

ユティスは鏡に映る人影を見た。


「え?」

ぱたっ。

「あ、あなたは・・・」


「おとなしくなさい、ユティス」

「リュミエラ・・・?」


ぐぃっ。

リュミエラは、ユティスの首筋を後ろからほんのちょっと押さえた。


「うっ・・・」

ユティスは、小さな一言を発しただけで、悲鳴をあげるひまもなく、リュミエラの腕の中に崩れ落ちた。


ばん。

たったった。

個室から、一人のエルフィア女性が素早く出てきた。


「ユティスは大丈夫なの?」

ファナメルがリュミエラにきいた。


「心配ないわ。気絶させただけよ」

「ゾーレ、あとは頼んだわよ」

「リーエス」


「わたしは、あなたたちのジャンプをシールドするわ」

ぶわん。

ゾーレはユティスを抱えてジャンプし、リュミエラも続いた。




ぱぁっ。

「さてと・・・。あの二人の腰を抜かした間抜け面を見てやるわ」

ファナメルは、鏡の前で化粧を直す真似を始めた。




「あれ、ユティスは?」

アンニフィルドとクリステアが、両手にパケットを抱えて、ファッションフロアを一回り終えて戻ってきた。


「ちょっと、化粧直しに、行ったけど」

「あ、そう。和人はいいの?」

「オレはね」


「そうよね。ここは、レディスフロアだから、和人が着るものなんてないし」


アンニフィルドは、クリステアに同意を求めたが、クリステアの答えは違っていた。


「あら、一回、着せてみてもいいんじゃない?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「少しは、可愛くなるかもよ」

クリステアは最新モードのミニスカートを手に取って、和人にひらひらさせた。


「だれが着るか!そんな、すーすーするもの。オレ、そんな趣味ない!」

「すーすーするって、はいたことあるような言い方だわね?」


--- ^_^ わっはっは! ---


「ドスケベ・・・」

「ない。ない。ありません。そんなこと予想できるでしょ」

「あははは」


--- ^_^ わっはっは! ---




そして、十分が経った。

「おっかしいなぁ・・・?それにしても遅過ぎる・・・」


「どうしたのよ、和人?」

クリステアが怪訝そうな顔をした和人にたずねた。


「その、出てこないんだよ。ユティスが・・・」

クリステアは和人の目を追った。


「それもそうよね。お化粧にしても、確かに、長すぎるわ」

「和人、様子を見てきてよ」

「ええ?やだよ。冗談じゃない」


--- ^_^ わっはっは! ---


「どうして?あなたもスケベの一人なんでしょ?」

クリステアは不満げに言った。


--- ^_^ わっはっは! ---


「なに言ってるんだ、クリステア。男は女性用に入れないじゃないか。そんなことしたら犯罪だよぉ」


--- ^_^ わっはっは! ---


「掃除夫だからいいんじゃないの?」

「オレは客です!家の掃除当番はおかげさまでオレですけど・・・」


--- ^_^ わっはっは! ---


ざっ。

「リーエス。わたし、見てくる」

アンニフィルドは不安を感じて、すぐにレディスルームに入った。

たったった・・・。




「ユティス?ユティス・・・?」

そこには、壁一面の大鏡を前にして、化粧を直している一人の女性がいた。


じぃ・・・。

アンニフィルドは彼女を観察した。


「だれか、お探し?」

ファナメルは、アンニフィルドに何食わぬ顔をして、声をかけた。

「ナ、いいえ」


(危ない。危ない。うっかり、エルフィア語で答えるところだったわ)


--- ^_^ わっはっは! ---


ファナメルは、内心可笑しくてしょうがなかったが、懸命に演技を続けた。


「ユティス?」

アンニフィルドは、すぐに、ユティスがここにいないことを悟った。


「じゃ、わたしは出るから、どうぞお使いください。お先に」

くるっ。

ファナメルはアンニフィルドを残して化粧室を出ると、客のふりをしたまま、和人の脇を通り抜け、レディース・フロアでドレスを選んでいるようなマネをした。


(超A級SSアンニフィルドですって・・・。ふん、バカな女。わたしを甘く見てると・・・。ふっ・・・)




10数秒後、アンニフィルドは青くなって、化粧室から飛び出していった。

ばたん。

だっだっだっだ・・・。


「アンニフィルド?」

「いないわ!」


「いない?どういうこと?」

「いないのよ、どこにも!」

アンニフィルドはパニックになっていた。


「ユティスがいないのかい?」

和人は不安で息が苦しくなった。


「和人、だれかここに出入りしてない?」

「ナナン。女性客が一人出たけど、ユティスは出てきてなんかいない。確かだよ」

和人はそう言って、店員と話しているファナメルを見やった。


「はぁ、はぁ・・・。あの女、ただの客?」

アンニフィルドが落ち着きを取り戻そうとしていた。

「一応、確かめるわ」

クリステアが言った。




つかつか・・・。

クリステアは、女性客に近づいた。


「すみません・・・」

「はい?」

ファナメルは店員ににっこり笑って、クリステアを振り向いた。


(ふぅん・・・。超A級SS・クリステアか。見破れるものなら、やってごらんなさい)


ファナメルは変装していたし、精神のシールドパワーは超A級並みだった。


「し、失礼・・・。人違いでした・・・」

「いいえ」

ファナメルは、自分の表層思考を、SSたちに捕まれるようなヘマはしなかった。


「それでね、店員さん・・・」

「はい。なんなりと、お申し付けくださいませ」

ファナメルは店員との会話に戻った。

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